白光 (光文社文庫 れ 3-6)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334744649

感想・レビュー・書評

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  • 一人の幼い少女の死をめぐり、少女の家族・親族や関係者の独白によって事実が語られ真実が明るみになっていく物語。

    前読の同著者作品【夜よ鼠たちのために】のレビューでも記したが、著者が描く文章や構成が美しく衝撃的だったため、余韻醒めぬうちにと連読に至った。

    本作品の帯には下記文言が綴られている。
    -----------------------------------
    この物語は人間の心の裏側の醜さを隠すことなく書いたミステリーです。
    どんでん返しなどはありませんが、非常にあなたを驚愕させる展開が待ち受けています。
    覚悟が出来た方から本編にお進み下さい。
    -----------------------------------

    覚悟が決まった今朝方5時半より読書開始、夕刻頃に読了した。

    久しぶりに、愛も救いもない作品を読んだ。

    読後しばらく経つが、二転三転して辿り着いた衝撃的な結末、結末に至るまでの各登場人物の独白が未だ脳内で遡及されている。きっと私はこの物語を忘れないだろう。それほど心を抉られた。

    連城三紀彦、天才だと私は想う。
    少なくとも私は本作品で確実に彼のファンになった。
    そして今は亡き天才は、私の読書ライフの中で伝説的存在となるのだろう。

    解説でも語られているのだが、本作品では『事実』と『真実』は必ずしも同じではないということが描かれている。

    各登場人物の語り部は、とても人間らしく主観的で、そこに妬み嫉みが加わることで、思い込みや保身欲も混ぜ合わさった各々の『事実』が創り出される。

    無論、それぞれの『事実』は自己都合により形成されているため、各々によってイロもカタチも異なる。
    よって『結果』はイコールであっても『真実』とイコールになるとは限らないのだよと、勝手ながらも私は同調しつつ、著者からのメッセージとして受け取った。

    愛も救いもない人間観は決して俯瞰ごとではないこと、そして自身の人間観を今一度再確認されたい方に、是非ともご一読いただきたい作品である。

    • NORAxxさん
      暗幇(アンパン)マンはこちらの作品読んだ事ありません。早速次回からの本屋、古本屋さん巡りではラ行を血眼になって探したいと思います(ง ˙-...
      暗幇(アンパン)マンはこちらの作品読んだ事ありません。早速次回からの本屋、古本屋さん巡りではラ行を血眼になって探したいと思います(ง ˙-˙ )ง!!
      ふふふ、楽しみが増えました。ありがとうございます☆
      2021/10/18
    • akodamさん
      NORAxxさん
      もはやアンパンマンになっちゃってる!
      私も今まで本屋、古本屋さん巡りでは【や行】までの探索で終わってましたが今後は【ラ行】...
      NORAxxさん
      もはやアンパンマンになっちゃってる!
      私も今まで本屋、古本屋さん巡りでは【や行】までの探索で終わってましたが今後は【ラ行】まで拡大します!
      2021/10/18
    • akodamさん
      ミキマルさん、こんばんは。
      既に読書中でしょうか。
      しっかと覚悟を決めてお楽しみください^ ^
      ミキマルさん、こんばんは。
      既に読書中でしょうか。
      しっかと覚悟を決めてお楽しみください^ ^
      2021/11/07
  • 初作者!
    この物語に「救い」なんて、ひとかけらもない。
    というのが、カバーに書いてある。
    また、重そうな…で、既に手元に…^^;

    ハァ〜、仮面だらけや…仮面夫婦…
    そんな意地とか、プライドとかで、子供を手にかけるなよ〜!
    自分らで、決着つけたらええのに…一番弱いところにいくのが、何だかなぁ…って思う。
    親、姉妹、その旦那と色々な登場人物の内面を語りながら、進んでいくんやけど、子供死んでも、強烈な浮気されても、みんなどこか冷静な…
    ドス黒い家系というか、家族達…
    こんなとこに、住んでたら、多分、狂ってまう!
    あんたらは、人やない!鬼畜や!

    はぁ〜!ひたすら暗い…
    で、面白くないかというと面白い…
    私もそんなドロドロの裏側を持ってる?
    ………

  • とても頭を使う本なので上手に読めなかったです。悲しくないのかな

  • 子どもを寝かしつけた後の読書タイムに手に取ってみましたが、題名の「白光(びゃっこう)」という綺麗なタイトルと美しい文体とは真逆の、気分が悪くなる暗いお話でした。苦手なテーマのお話しでしたが、夜ふかししつつ一気読みをしてしまうくらい面白かったです。これから読まれる方はあまり皆さんのレビューを読まずに、真っ新な状態で読み始めることをオススメします!

  • 連城三紀彦『白光』光文社文庫。

    連城三紀彦の最高傑作との呼び声の高い長編推理小説である。刺激的な紹介文の踊るオーバーカバーを本屋で見掛ける度に気になっていたのだが、たまたま近所の古本屋の100円本コーナーで見付けて購入した。

    読み進めば、読み進む程に暗澹たる気分に陥って行くような嫌な味わいのミステリー。登場人物の各々の視点で家族崩壊へとつながるドロドロとした悲惨な事件が描かれる。登場人物の誰もが犯人の可能性があり、家族に関する深い闇を抱えている。二転三転する犯人の正体……絡み合った蜘蛛の糸のような複雑な人間関係と驚愕の哀しき結末……

    老人性痴呆気味の桂造、桂造の息子の立介、立介の嫁の聡子、立介夫婦の娘の佳代の4人が暮らす平凡な家庭で事件は起きる。或る暑い夏の日に、聡子の妹の幸子がカルチャーセンターに行くため、4歳になる娘の直子を聡子の元に預けに来る。直子を預かった聡子は娘の佳代を歯医者に連れて行くため、祖父の桂造に直子を託す。聡子が歯医者から家に戻ると直子の姿が無く、桂造に問い質すと見たことの無い若い男が直子を庭の木の下に埋めたことを夢うつつの状態で話す。果たして、桂造の証言通り庭の木の下から変わり果てた直子の遺体は発見され……

    本体価格620円(古本110円)
    ★★★★★

  • 昔から大嫌いだった妹の、四歳の娘が殺され庭に埋められた。
    痴呆の義父と二人きりで留守番している時だった。
    身勝手な大人の事情に巻き込まれ、殺されてしまった直子があまりに不憫だった。
    それぞれの視点から、殺害のきっかけになるような闇が出てきて、最後にはどれが真実なのか疑心暗鬼になってしまう程。
    以前から気になっていた作家さん。
    古本屋でいくつか購入したので次の作品も楽しみになった。

  • 年末年始で家族が集る時期に読むべきじゃなかった(泣)

    解説や帯にある ように 少女にも満たない幼女の死を誰も悲しみ弔う事さえなく 自分の罪を認めず、保身に終始してるのが 気持ち悪いし、関係者の独白 といぅ型で物語が進んで行き 視点が様々 切り替わるが なぜか 読む手が止まらなかった。

    自分の中にもこの物語の登場人物のような感情があるからなのかも知れない。そぅ思うと 自分の事さぇ怖くなってしまう。

    そして何よりこわいのは唯一 佳代(子供)の独白
    「幼い殺意なき悪意」


    家族とは?より 家族になる為には?を強烈に突き付けられる作品でした。

    事実と真実が 一致しなぃ

  • 救いが全く無い物語を読みました。事実と真実は違うのだと改めて思い知らされました。同じ事実でも、見る相手によってそれぞれの感情や思惑、期待や絶望など様々な感情が入り混じって真実が捻じ曲げられる。登場人物達それぞれは自分達の事実を語っているが、やはり家族とはいえ元は他人同士。お互いの本当の気持ちなど完全に分かり合える訳がないのだと冷めた気持ちで読み進めました。家族という場は安全地帯で温かく、心安らげる場所。この小説のような家族ではなく、そういう家族もきっとあるのでしょう。もし次に産まれる事ができたなら、そういう柔らかな家庭に産まれたいと微かに思いました。本当に救いが全く無いです。

    登場人物達それぞれに独白をさせていく手法ですが、読み進める程に誰が事件の本当の犯人なのか分からなくなります。ミステリーの要素もありつつ人間の業の深さや浅ましさ、家族に関しての幻影などを世にさらした作者の筆力は只者ではないと思いました。

  • 家族それぞれに物語と罪があり、この世に生まれてきて何も悪い事していないのに、家族の誰からも愛されなかったし、殺されてしまった直子ちゃん。

    他の家族は皆クズです。

    何となく最後はそうだろうと初めから感じましたので、やっぱり嫌な気分で読み進めました。

    語りの部分がくどかったりするところは、サラッと読んでも理解出来ました。


    後味悪い作品です。
    実際にこんな家族が居ないこと祈るばかりです。

  • この本めっちゃすごい。
    まず文章がとても美しい。
    それから物語全体に流れる不穏な空気感、不気味さ。
    夏の暑気やまとわりつく湿度が余計に雰囲気を盛り上げている。
    独白形式や少し古めかしいセリフも余計に影を感じさせ、この家族に引き込まれた。

    (立介のターンで社内で一番や会社で一番とかいうワードが沢山出てきて、ちょっと笑った。それまで立介についてろくな描写はなかったから親近感が湧いた。)

    初めての作家だったが他の作品も読みたい。

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著者プロフィール

連城三紀彦
一九四八年愛知県生まれ。早稲田大学卒業。七八年に『変調二人羽織』で「幻影城」新人賞に入選しデビュー。八一年『戻り川心中』で日本推理作家協会賞、八四年『宵待草夜情』で吉川英治文学新人賞、同年『恋文』で直木賞を受賞。九六年には『隠れ菊』で柴田錬三郎賞を受賞。二〇一三年十月死去。一四年、日本ミステリー文学大賞特別賞を受賞。

「2022年 『黒真珠 恋愛推理レアコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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