魚舟・獣舟 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 736
レビュー : 128
  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334745301

作品紹介・あらすじ

現代社会崩壊後、陸地の大半が水没した未来世界。そこに存在する魚舟、獣舟と呼ばれる異形の生物と人類との関わりを衝撃的に描き、各界で絶賛を浴びた表題作。寄生茸に体を食い尽くされる奇病が、日本全土を覆おうとしていた。しかも寄生された生物は、ただ死ぬだけではないのだ。戦慄の展開に息を呑む「くさびらの道」。書下ろし中編を含む全六編を収録する。

感想・レビュー・書評

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  • 上田早夕里さんの短編集。ジャンルで言えばSFホラーということになるのかな。
    やはり、表題の『魚舟・獣舟』と『くさびらの道』が良かった。
    読後に感じる一抹の喪失感とちょっと背中が寒くなるような感じ。嫌いじゃない。

    この短編集の全体の雰囲気として遺伝子操作された人間が普通に暮らし、アンドロイドが人間の代わりに危険な仕事をし、そのような中でも妖怪や異形の者が当たり前のように存在する。非常にダークな未来観でありながらも何となく古風な日本の雰囲気も醸し出している。映画『ブレード・ランナー』のような猥雑な感じでもなく、すべてがクリーンで管理された未来都市とまでは行かない。このどっちつかずなリアルな雰囲気、すごく好きですね。

    上田早夕里さんの著書はかなり前に『火星ダーク・バラード』を読んだ記憶があるのだけれど全然覚えていない。本書の約半分を占める中編の『小鳥の墓』が『火星ダーク・バラード』の前章譚らしいのでいつかもう一度読んでみよう。
    次は、『魚舟・獣舟』の世界観が引き継がれている『華竜の宮』をじっくり読んでみたい。

  • 表題作が圧倒的!「華竜の宮」から入ってるので、すんなり世界観に馴染んで読めた。青澄の時代より少し前の時代が舞台。自分の半身を、知らずに虐めてしまった女性と、獣舟を狩る、もと海上民の男性のお話。ハッピーエンドじゃないけど、華竜で花開く設定がたっぷり詰まってて、短編なのに読みごたえずっしり。

    その他、くさびらの道がすごかった…。栗本薫の黴を思い出した。面白いくらいに読後感が一緒。

  • かなり上質のSF短編集。ホラー色が強いものもあれば人間心理を深く抉る作品もあり、どの話も読者を休ませず楽しませてくれる。表題作は別格。中編「小鳥の墓」も読み応え有。

  • 少し暗めのトーンて、ややホラーよりのSFといった物語が多い。筆力は申し分なく、完成度が非常に高い。少しずつ引き込まれていきます。

  • とんでもないものに出会ってしまった。表題作の評価が高いようだが、他も同じくらいすごい。特に『くさびらの道』。

  •  長編『華竜の宮』『妖怪探偵・百目』『火星ダーク・バラード』にもリンクするSF短編集全6篇。

    「魚舟・獣舟」
     陸で生きることを選んだ主人公と、海で生きることを選んだ幼馴染の、再会と決裂の物語。もともとは人為的操作で生み出された「魚舟」が、人間の手を離れ、生存のために進化していく。
     ハンディキャップ理論に着想を得て描き出される生命の進化の営み、人間の暴力的な力さえ利用して生きようとする凄みを感じた。

    「くさびらの道」
     茸の寄生型感染病により九州地方が壊滅した日本を舞台にしたバイオホラー。茸の胞子から出る化学物質が、人間に幽霊の幻覚を見せるという設定で、幻覚とは思えないほどの幽霊の苦悶の姿が印象に残る。
     思い出を美化してしまう人間だからこそ、故人への思いに縛られるさまはとても悲惨だった。

    「饗応」
     ビジネスマンが旅館でくつろぐお話かと思ったら、浴場でいきなり関節パーツが外れて驚いた。いったいどんな種類の話か見えずに読み終わってしまったが、ようやく話の趣旨を掴むと、切ない結末ではあるけどシンプルで良い雰囲気のショートショートだった。

    「真朱の街」
     人体がデバイスで補完可能となった街で、人間と妖怪が同じ「異形」の者として共存を始めるという世界観が面白い。珍しくファンタジー要素が強めで読みやすかった。
     中途半端な悪意で他人を傷つけ殺してしまう人間の弱さが痛々しくて、読んでいて少し辛い。

    「ブルーグラス」
     変態ダイバーが感傷に浸っていたら職質された話。基本的にロマンチストは好き。

    「小鳥の墓」
     実験的教育都市に放り込まれた少年が、そのシステムゆえに歪んだ価値観を作り上げていく様子を描いた中編小説。人物描写や台詞回しが芝居じみていてあまり好きになれなかったけど、お話の軸がしっかりしていて面白かった。
     倫理的問題から、実際には人間に多大な悪影響を及ぼす可能性のある実験が許可されることはない(だろう)と思うけど、犯罪者の生まれる過程を割り出そうとする試みは魅力的だと思ってしまった。

  • SF短編集。前半4つ<魚舟・獣舟>は出だしから引き込まれるバイオSF・<くさびらの道>はぞわっとくるバイオSF・<饗応>は雰囲気がたまらないショートショートだし<真朱の街>はSFかつ妖怪というすごい組み合わせが美しくもあり…すごく好み!冷たくて薄暗くてちっともハッピーエンドじゃないのに魅力的。<小鳥の墓>は好きになりたくないのにすごく好きな気がする。結局魅力的なんだろうなぁ。『火星ダーク・バラード』のスピンオフ的な短編のようなので、そっちも読んでみましょう…。おもしろかった〜

  • どれもはっきりスッキリ終わるという感じの話ではなく、なんとなく物悲しいのが印象的だった。

  • 「深紅の碑文」を読んだら、つい再読したくなって。

    表題作「魚舟・獣舟」は、やはり傑作です。
    陸地の大半が水没した近未来。
    初めて読んだ時も、特殊な設定にも関わらず、
    すんなりと受け入れられたのを覚えています。
    ここから「華竜の宮」「深紅の碑文」が作られたんだなぁ…

    寄生茸が増殖する「くさびらの道」も好き。ホラーですな。
    「真朱の街」も、恒川光太郎さんを思わせる奇妙な味で好き。
    中編「小鳥の墓」も傑作ですね。

    改めて暗い雰囲気の短編集だなぁと思いました…(笑)

  • 全体的にちょっと哀しい物語集でした。全六編。

    「魚舟・獣舟」現代社会崩壊後、陸地の大半が水没した未来―
    そこに存在する魚舟、獣舟と呼ばれる異形の生物と人類との関わり方は…
    『華竜の宮』『リリエンタールの末裔』と同世界の物語。かなり前に出てたのに知らなかったので、これ目当てで。親や大人や長老はもっと早くに教えとけよ-

    「くさびらの道」寄生茸に食い尽くされる奇病が日本全土に広がろうとしていた。しかも寄生された生物は、ただ死ぬだけではなく…
    怖い…感染した方も残された者もキツイな-三村は幸せだよね。

    「饗応」これも『華竜の宮』に出てきた設定だよね。私も安楽死法はあった方が良いなと思ってるので、貴幸の選択はアリだな-と。

    「真朱の街」妖怪もの。邦雄が身勝手過ぎて…翔子が幸せならいいんでない?

    「ブルーグラス」海洋もの。本当に海中の描写が凄いと思う。いちばん(というか唯一)この先の生活に光を感じる話でした。

    「小鳥の墓」『火星ダーク・バラード』の重要な脇役の過去物語だそうで、未読なので手に取らなきゃと思いました。
    ダブルE区って気持ち悪そう…上っ面を取り繕って演技してるのも、枠を超えず真実を知らずに終わりそうなのも沢山いそうで。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。2011年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。同作は「SFが読みたい! 2011年版」国内篇第1位に選ばれ、『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』の各表題作、『華竜の宮』の姉妹編『深紅の碑文』と合わせて《Ocean Chronicleシリーズ》と呼ばれ、読者からの熱い支持を集めている。近著に『妖怪探偵・百目』シリーズ、『薫香のカナピウム』など。

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