魚舟・獣舟 (光文社文庫 う 18-2)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334745301

作品紹介・あらすじ

現代社会崩壊後、陸地の大半が水没した未来世界。そこに存在する魚舟、獣舟と呼ばれる異形の生物と人類との関わりを衝撃的に描き、各界で絶賛を浴びた表題作。寄生茸に体を食い尽くされる奇病が、日本全土を覆おうとしていた。しかも寄生された生物は、ただ死ぬだけではないのだ。戦慄の展開に息を呑む「くさびらの道」。書下ろし中編を含む全六編を収録する。

感想・レビュー・書評

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  • 表題作は最初の33ページ。この作品だけでも良いと思い買った。
    華竜の宮を読んでいるので世界観や背景は分かっている。火薬で魚舟を傷つけるところは「ああ・・」となった。獣舟が進化する描写も良く、買った甲斐があったと思った。
    華竜の宮では見られなかった魚舟に対するドライな感情を持った人物が主人公であったので、共感する部分があった。遺伝的にイジられているとはいえ「皆が皆魚舟に執着するわけでは無いだろう」と思っていた違和感が払拭された。
    他の作品を読んでからでないと分からないが、この作者の作品はいつも悲しい。物語の背景に悲しさや寂しさが濃淡を変えながら漂っている様に感じる。

    解説には「傑作(短編)選」や「その年の最高の短編」の文字があるが、これが誇張ではないと感じる。
    どの作品もバイオサイエンスを強固な基盤としているのだが、第二軸として人間の心理やファンタジーを絡めることで驚くような広がり、多様さを感じる。
    それでも読んで感じる雰囲気は一貫しており、(作品の幅を持たせるために)無理に要素を追加している感じはせず、作者の度量、手腕に感嘆する。

    最後の書き下ろし中編では心理描写の巧みさに舌を巻いた。異常心理でありながら共感してしまうような描写に、思春期のエネルギーや心の揺らぎ、賢い主人公を完全に包括する社会実験の枠組み。SF作品であるが、そう分類したくないほどに強烈な人間の描写がある。この作品はSFを描画不足の隠れ蓑にしていない秀作であると感じた。

  • 短編集
    どれも、読みやすくおもしろい。
    オーシャンクロニクルシリーズである表題の「魚舟・獣舟」は短いながらも世界観、物語の奥深さを感じる傑作。

    「真朱の街」これは別で3冊シリーズ化している妖怪探偵・百目の始まりの物語。個人的に、人ではない異形の物語にひかれるのでかなりおもしろかった。シリーズ化したものも読んでみたい。

  • 「魚舟・獣舟」「くさびらの道」「饗応」「真朱の街」「ブルーグラス」「小鳥と墓」の6篇収録。どれも面白かったが、特に「くさびらの道」「ブルーグラス」「小鳥と墓」がよかった。

    「魚舟・獣舟」
    「華竜の宮」のベースとなる世界を描いた第1作。知らずに虐めて追い払ってしまった朋が獣舟になってしまった悲しい話。

    「くさびらの道」
    オーリ症(寄生茸による感染症)に罹って死ぬと幽霊になる。オーリ症で死んだ家族の元を訪れた私が見たものは…。

    「饗応」
    出張先ビジネスホテルで起きた夢幻の出来事。ショートショート。

    「真朱の街」
    五歳の娘が妖怪に連れ去られた。

    「ブルーグラス」
    音に反応して樹木状に育つ青いガラス。失恋の痛手。

    「小鳥と墓」
    死にたがっている女性を見つけては自殺を幇助し、震えるような快感を味わう異常犯罪者の生い立ち。中篇。

  • ずっと気になっていた上田早夕里さんのオーシャンクロニクル・シリーズ。いきなり「華竜の宮」といきたいところだけど、まずは順番通り中短編集の本作から。とは言えリンクするのは表題作の1編だけ。ほんのさわりだけという感じながら、陸地の大半が水没した未来の地球を舞台にした独特な世界観は味わえた。他も妖怪探偵シリーズに繋がる「真朱の街」、デビュー長編「火星ダーク・バラード」の前日譚という読み応えある中編「小鳥の墓」、ゾッとするバイオ・ホラー「くさびらの道」など粒揃いで、様々な形態のSFを楽しめた。

  • 魚舟
    ウォーターワールドみたいな世界。プラス、人が魚に進化?する。海と陸で生きるものの葛藤みたいな。。
    壮大だけど、初期設定が広大過ぎてまとまりがない気がする。

    くさびらの道
    九州に真菌感染症が発生。キノコが生えて死者多数。
    近い人を見せる菌の成分で被害拡大。

    饗応
    AI ロボットの束の間の休暇。

    真朱の街
    子どもが妖怪に拐われて百目鬼と探索。

    ブルーグラス
    海に沈めたドームグラスを探しに行く。

    小鳥の墓
    未来。教育特区に馴染めず外の世界に染まる少年。最後は殺人を繰り返す。

    総じて初期設定は面白い。ただ、人間の残念な所は変わらない、、なんか後味が悪い。
    読んじゃったけど。

  • 不思議な非現実的なストーリーの世界観であり、一方で説得力のある内容であるため、読み終えた後になんとも言えない満たされない気持ちが残る笑(読めば共感してくれるのではと)。読む中で、ストーリーの背景・設定にあるメッセージ性を強く感じた。個人的には、作者の思いをあまり感じず、考えずに、ストーリーの世界を想像しながら読みたい派なので、ここは好みが分かれる気がしたが、読み応えがあることは間違い無く、評価も高いことも納得。

  • 魚舟の世界観、足りない!!
    「オーシャンクロニクル」シリーズの最初の1冊

    関連するのは「魚舟・獣船」だけで、他は別なSFで全部で6編が入ってます。
    「魚舟・獣船」★★★★(ストーリーは出来てて、あえてこのシーンを初出しで使ったんだな。作戦成功ですね。)
    「くさびらの道」★★★★★コロナ禍で身につまされる。
    「饗応」★★★★疲れたAIの話
    「真朱の街」★★★妖怪の話
    「ブルーグラス」★★★★近未来の黄昏
    「小鳥の墓」★(この文庫の約半分がコレですが退屈で、途中で止めた。)

    でした。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50297841

  • [鹿大図書館・冊子体所蔵はコチラ]
    https://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB07182304

  • 上田早夕里も私の好きな作家だ。
    ホラー、SFはたまた現代への警鐘を鳴らすディストピア小説。奢った人類の行き着く先を暗示しているような小説たちに、背筋を凍らせながら引き込まれる魅力を堪能した。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。11年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。18年『破滅の王』で第159回直木賞の候補となる。SF以外のジャンルも執筆し、幅広い創作活動を行っている。『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』『深紅の碑文』『薫香のカナピウム』『夢みる葦笛』『ヘーゼルの密書』『播磨国妖綺譚』など著書多数。

「2022年 『リラと戦禍の風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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