魚舟・獣舟 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 733
レビュー : 126
  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334745301

作品紹介・あらすじ

現代社会崩壊後、陸地の大半が水没した未来世界。そこに存在する魚舟、獣舟と呼ばれる異形の生物と人類との関わりを衝撃的に描き、各界で絶賛を浴びた表題作。寄生茸に体を食い尽くされる奇病が、日本全土を覆おうとしていた。しかも寄生された生物は、ただ死ぬだけではないのだ。戦慄の展開に息を呑む「くさびらの道」。書下ろし中編を含む全六編を収録する。

感想・レビュー・書評

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  • 上田早夕里さんの短編集。ジャンルで言えばSFホラーということになるのかな。
    やはり、表題の『魚舟・獣舟』と『くさびらの道』が良かった。
    読後に感じる一抹の喪失感とちょっと背中が寒くなるような感じ。嫌いじゃない。

    この短編集の全体の雰囲気として遺伝子操作された人間が普通に暮らし、アンドロイドが人間の代わりに危険な仕事をし、そのような中でも妖怪や異形の者が当たり前のように存在する。非常にダークな未来観でありながらも何となく古風な日本の雰囲気も醸し出している。映画『ブレード・ランナー』のような猥雑な感じでもなく、すべてがクリーンで管理された未来都市とまでは行かない。このどっちつかずなリアルな雰囲気、すごく好きですね。

    上田早夕里さんの著書はかなり前に『火星ダーク・バラード』を読んだ記憶があるのだけれど全然覚えていない。本書の約半分を占める中編の『小鳥の墓』が『火星ダーク・バラード』の前章譚らしいのでいつかもう一度読んでみよう。
    次は、『魚舟・獣舟』の世界観が引き継がれている『華竜の宮』をじっくり読んでみたい。

  • 表題作が圧倒的!「華竜の宮」から入ってるので、すんなり世界観に馴染んで読めた。青澄の時代より少し前の時代が舞台。自分の半身を、知らずに虐めてしまった女性と、獣舟を狩る、もと海上民の男性のお話。ハッピーエンドじゃないけど、華竜で花開く設定がたっぷり詰まってて、短編なのに読みごたえずっしり。

    その他、くさびらの道がすごかった…。栗本薫の黴を思い出した。面白いくらいに読後感が一緒。

  • かなり上質のSF短編集。ホラー色が強いものもあれば人間心理を深く抉る作品もあり、どの話も読者を休ませず楽しませてくれる。表題作は別格。中編「小鳥の墓」も読み応え有。

  • 少し暗めのトーンて、ややホラーよりのSFといった物語が多い。筆力は申し分なく、完成度が非常に高い。少しずつ引き込まれていきます。

  • とんでもないものに出会ってしまった。表題作の評価が高いようだが、他も同じくらいすごい。特に『くさびらの道』。

  •  長編『華竜の宮』『妖怪探偵・百目』『火星ダーク・バラード』にもリンクするSF短編集全6篇。

    「魚舟・獣舟」
     陸で生きることを選んだ主人公と、海で生きることを選んだ幼馴染の、再会と決裂の物語。もともとは人為的操作で生み出された「魚舟」が、人間の手を離れ、生存のために進化していく。
     ハンディキャップ理論に着想を得て描き出される生命の進化の営み、人間の暴力的な力さえ利用して生きようとする凄みを感じた。

    「くさびらの道」
     茸の寄生型感染病により九州地方が壊滅した日本を舞台にしたバイオホラー。茸の胞子から出る化学物質が、人間に幽霊の幻覚を見せるという設定で、幻覚とは思えないほどの幽霊の苦悶の姿が印象に残る。
     思い出を美化してしまう人間だからこそ、故人への思いに縛られるさまはとても悲惨だった。

    「饗応」
     ビジネスマンが旅館でくつろぐお話かと思ったら、浴場でいきなり関節パーツが外れて驚いた。いったいどんな種類の話か見えずに読み終わってしまったが、ようやく話の趣旨を掴むと、切ない結末ではあるけどシンプルで良い雰囲気のショートショートだった。

    「真朱の街」
     人体がデバイスで補完可能となった街で、人間と妖怪が同じ「異形」の者として共存を始めるという世界観が面白い。珍しくファンタジー要素が強めで読みやすかった。
     中途半端な悪意で他人を傷つけ殺してしまう人間の弱さが痛々しくて、読んでいて少し辛い。

    「ブルーグラス」
     変態ダイバーが感傷に浸っていたら職質された話。基本的にロマンチストは好き。

    「小鳥の墓」
     実験的教育都市に放り込まれた少年が、そのシステムゆえに歪んだ価値観を作り上げていく様子を描いた中編小説。人物描写や台詞回しが芝居じみていてあまり好きになれなかったけど、お話の軸がしっかりしていて面白かった。
     倫理的問題から、実際には人間に多大な悪影響を及ぼす可能性のある実験が許可されることはない(だろう)と思うけど、犯罪者の生まれる過程を割り出そうとする試みは魅力的だと思ってしまった。

  • SF短編集。前半4つ<魚舟・獣舟>は出だしから引き込まれるバイオSF・<くさびらの道>はぞわっとくるバイオSF・<饗応>は雰囲気がたまらないショートショートだし<真朱の街>はSFかつ妖怪というすごい組み合わせが美しくもあり…すごく好み!冷たくて薄暗くてちっともハッピーエンドじゃないのに魅力的。<小鳥の墓>は好きになりたくないのにすごく好きな気がする。結局魅力的なんだろうなぁ。『火星ダーク・バラード』のスピンオフ的な短編のようなので、そっちも読んでみましょう…。おもしろかった〜

  • どれもはっきりスッキリ終わるという感じの話ではなく、なんとなく物悲しいのが印象的だった。

  • 「深紅の碑文」を読んだら、つい再読したくなって。

    表題作「魚舟・獣舟」は、やはり傑作です。
    陸地の大半が水没した近未来。
    初めて読んだ時も、特殊な設定にも関わらず、
    すんなりと受け入れられたのを覚えています。
    ここから「華竜の宮」「深紅の碑文」が作られたんだなぁ…

    寄生茸が増殖する「くさびらの道」も好き。ホラーですな。
    「真朱の街」も、恒川光太郎さんを思わせる奇妙な味で好き。
    中編「小鳥の墓」も傑作ですね。

    改めて暗い雰囲気の短編集だなぁと思いました…(笑)

  • 全体的にちょっと哀しい物語集でした。全六編。

    「魚舟・獣舟」現代社会崩壊後、陸地の大半が水没した未来―
    そこに存在する魚舟、獣舟と呼ばれる異形の生物と人類との関わり方は…
    『華竜の宮』『リリエンタールの末裔』と同世界の物語。かなり前に出てたのに知らなかったので、これ目当てで。親や大人や長老はもっと早くに教えとけよ-

    「くさびらの道」寄生茸に食い尽くされる奇病が日本全土に広がろうとしていた。しかも寄生された生物は、ただ死ぬだけではなく…
    怖い…感染した方も残された者もキツイな-三村は幸せだよね。

    「饗応」これも『華竜の宮』に出てきた設定だよね。私も安楽死法はあった方が良いなと思ってるので、貴幸の選択はアリだな-と。

    「真朱の街」妖怪もの。邦雄が身勝手過ぎて…翔子が幸せならいいんでない?

    「ブルーグラス」海洋もの。本当に海中の描写が凄いと思う。いちばん(というか唯一)この先の生活に光を感じる話でした。

    「小鳥の墓」『火星ダーク・バラード』の重要な脇役の過去物語だそうで、未読なので手に取らなきゃと思いました。
    ダブルE区って気持ち悪そう…上っ面を取り繕って演技してるのも、枠を超えず真実を知らずに終わりそうなのも沢山いそうで。

  • SF作品は初です。
    最初のお話、魚舟・獣舟
    ヒトと同じゲノムから形態の異なる生物が作り出せるっていうのにビックリ!
    しかも変異を起こしやすい性質にしておけば、環境に順応して進化、退化を繰り返す事から、そういう操作をして、ミオたちのような海上民を作ったっ て発想に興味津々!
    それ以外の作品はハッキリ言って全然おもしろくなかった・・・
    登場人物にあまり魅力も感じられなかったし、話の内容も・・・
    この作者の長編「華竜の宮(上)(下)」も買っちゃったんだけど、楽しめるか不安・・・

  • 全編共通するのは、あまりハッピーとはいえないキャラたちが主人公ということ。
    でも視点はキャラクタから一歩引いた距離感が保たれているので、ハードな内容でも重くなく、ドライでハードボイルドな印象。この淡々とした調子、嫌いじゃない。

  • 存じ上げない作家さんでしたが、評価が高いようなので気になって読んでみました。異形の世界を描いた短・中編集。おどろおどろしい世界なんだけどなぜか引き込まれます。特に「小鳥の墓」がいい。他の作品とリンクしているみたいなので読んでみたいです。

  • 異形物のSF。独特の世界観がハードなSFを構築してて良い。長編の前に読めばよかった。

  • 前からずっと作者の作品を読んでみたくてやっと手に入れた作品でした。
    すっーと流れ込んでくる流麗な文章でさらさらとページを捲れます。一作一作の物語の世界観がとても独創的で全てを映画化出来るんじゃ無いかな…って思っちゃいました。
    作品を通して「人間とは…」と何やら哲学的な想いが底流にあり、ディストピア的であったり片やオカルティックであったりとありきたりの設定に酔うだけでなく、
    そこからもう一歩踏み込んだような結末が面白くて色んな想像が頭の中を渦巻いて作者の世界に没頭出来た…最高にいい読書体験ですね。他の作品も読んでみたいと思います。稀有な才能の素晴らしい作品でした。お勧めです。

  • ☆3.7
    なんていうか、どれもこれも不思議な話。近未来っぽくもあるし、妖怪も出てくるし、ホラー要素もあるし...それらの要素が複雑に入り混じって、マーブル模様を作ってるような。

    「魚船・獣船」
    現代社会崩壊後、陸地の大半が水没した未来世界。そこに存在する魚船や獣船と呼ばれる異形の生物と人類との関わり。
    「くさびらの道」寄生茸に体を喰い尽くされる奇病が、日本全土を覆おうとしていた。しかも寄生された生物はただ死ぬだけではない。立入禁止区域になった実家に戻った「私」と、妹の婚約者が見たものは...
    「真朱の街」テクノロジーの発達した未来と、妖怪が共存する世界。妖怪やってくのも楽じゃないよね、きっと。
    「ブルーグラス」水質汚染が深刻になり、一部海域が海洋ドームによって区切られ立入禁止になることが決まった。ダイバーの伸雄は、昔その海に沈めた思い出の品「ブルーグラス」を回収しようと1人潜るが...。この話は、てっきりあのまま毒の生物に触れて、自分もブルーグラスの一部になるのかと思った。
    「小鳥の墓」中編。完全に外部から隔離され、子供を健全に育てることに特化したダブルE区。そこに引っ越した"僕"は、こ綺麗だが退屈な街で日常を過ごしていた。ある日同級生の勝原に「外にでないか」と話しかけられ...。

  • 豊かな想像力で、ファンタジーのようなホラーのようなSFを描く
    作品集。
    なんか思ってたのと違う印象を受けたが、元々自分がどんなイメージを持って読み始めたのか分からない。
    そもそも、初めて読む本に大してイメージが作られるはずもないのだが。

    最後の中篇は社会派SFかな。
    終盤、タイトルの意味が分かった時はぞくりとした快感を味わったが、それから突然筆が走り始め、ダイジェストみたいな軽い調子になってしまったのが残念。

  • 短編集だが読み応えがあった。SF大賞受賞の『華竜の宮』は、収録の『獣舟・魚舟』から生まれた。『小鳥の墓』では健全な子どもを成長するシステムを描き、世界観が素晴らしい。

  • 最近のSF作家では最高クラス。短編集の出来も秀逸。

  • 表題作タイトルから、少し民俗学系の幻想ホラーかな?と勝手に想像していたのですが、意外にもどの短編も純然たる「サイエンス・フィクション」という印象でした。どの作品もだいたい近未来が舞台で、なんというか「進化」の先にあるものを描いているところが共通していたのではないかと。

    まず表題作の「魚舟・獣舟」は、都市が水没した未来の世界で、人間自体が進化(変化といっても過言ではないかも)して身につけた新しい形態が主題だし、「くさびらの道」はある種のウィルス(てかキノコ)の進化、「饗応」は人工生命の魂、「ブルーグラス」はなんていうか、新素材?が登場します。

    単純に怖いなと思ったのは想像すると絵的に怖い「くさびらの道」。「真朱の街」はちょっと異色で、なんだろう、妖怪と人間が共存する近未来の街で妖怪ハンターが活躍する、こういう少年漫画がありそうな。

    最後の中篇「小鳥の墓」は、別の長編のスピンオフというか前日譚らしいですが、そちらを知らなくてもとくに問題なく読めました。これまた近未来の閉鎖された実験都市で育てられている子供が<外>に出たがるという設定も、なんらかの情緒が欠如していて平気で人を殺せる快楽殺人者というのも、ありがちなテーマではあるんですが、途中ちょっとしたどんでん返しがあり、なんというか独特の遺伝論(人間にはそもそも「殺人」という本能が刷り込まれてるんじゃないか的な)が展開されてくあたりは興味深かったです。

  • 【読了レビュー】時に目を背けたくなるような、しかし実に人間的な狂気に満ちた美しさを、SFとして表した短編集。
    一話一話に独特な世界観があり、短編集としても実に秀逸。ただ、表現したいテーマ自体の存在を認められない人にとっては、酷く目を背けたくなる内容かもしれないと感じた。

  • ちょっと筆が安定しないのが気になるけれども、評価が高くて気になっていた表題作「魚舟・獣舟」は、短編なのによくぞこの世界観を描き切ったと感心した秀作。収録の多作品はこれにはかなり劣る上に、まだ作風が安定してないのか、幼い印象を受けたが、それでもかなり楽しめて読んだし、他の作品も読んでみようと思わせる出来であった。

  • 不思議という他言いようが無い世界観。

  • 先端技術の知識を元に想像力を駆使してそれぞれの話の世界を構築してるのが、説得力あり。
    しっかし、全体的に怖かった…。「くさびらの道」でもぞわっとしましたが、最後の「小鳥の墓」が、特に。
    あまり主人公に同調したらおかしくなりそうなので、半分心を閉じて読みました。
    表題作はあの短さなのに濃かった!続編楽しみです。

  • 『小鳥の墓』が一番好き。ほうっとするように、良い意味で軽く裏切られた。表題作の『魚舟・獣舟』に、攻殻機動隊の草薙素子の言う、ゴーストってこんなものなんじゃないかと漠として感じた。

  • ハードSFっぽい設定も素敵なのですが、ミステリアスなストーリー展開が一気読みさせる力を持っています。なにより、セリフ回しとテンポが抜群に心地良いですね。日本人女流SF作家のすばらしさを教えてくれた短編集です。

  • リリエンタールから華竜、そして本作と発表年代とは全く逆に辿って読むことになったが、最初に本作から読んでいたら、正直、この作品だけでは作者の凄さは分からなかったかもしれず、次を読まなかったかもしれないので、まあ読み方としては結果オーライだった様だ。本作の魚舟の世界観は、短編として語られるだけでは伝わり切らず、やはり長編をまって詳らかやに明かされることになるのだが、この短編を持ってして、あれだけの世界観を予め見通していたとすると、本当に素晴らしい。ただしこの短編を持って獣舟の子放出やヒトゲノムをもつ獣舟の逆進化としての疑似人変性体というガジェットが、長編にも無理に引きずられた感もあり、その結末が長編においても語られきれなかったことについては、無理に世界観を繋げる必要もなかったのではないかと思われる。その他、真菌の話は子供のころ見てトラウマ気味になった名作映画、マタンゴを彷彿させるが、兎に角、人ならざる物に人が変わることについての恐怖感はSFというよりホラーである。火星ダークバラードは随分昔に読んだ覚えがあるが、全く覚えていないので、中編の背景を楽しむために再読したいと思う。

  • 良質なSF。
    短編でこれだけの世界観はスゴイ!
    一話一話の世界観が強いのに打ち消し合わないし、同化もせず被らないで独立していて、すごく残る。
    気持悪いだけの異形ではなく、ある意味美しい異形でインパクト大っていうのは秀逸。

  • 友人からのおすすめ。くさびらの道が怖かった…!文字だからいいが映像だったらトラウマだろうな…

  • 途中でやめてしまった。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。2011年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。同作は「SFが読みたい! 2011年版」国内篇第1位に選ばれ、『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』の各表題作、『華竜の宮』の姉妹編『深紅の碑文』と合わせて《Ocean Chronicleシリーズ》と呼ばれ、読者からの熱い支持を集めている。近著に『妖怪探偵・百目』シリーズ、『薫香のカナピウム』など。

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