眼ある花々/開口一番―開高健エッセイ選集 (光文社文庫)

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著者 : 開高健
  • 光文社 (2009年10月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334746742

眼ある花々/開口一番―開高健エッセイ選集 (光文社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • ホーチミンを旅しながら読んでいたのがベトナム戦争を描いた「輝く闇」だったからか、この人の文章は鉛と湿度のイメージが強い。
    そんなイメージの著者が描く花、というのが気になって、手にとってみました。
    パリの窓辺のゼラニウム、北京の屋台で氷の上に売られるジャスミン、世闇に浮かび上がる光の花、アンコールワットとベルサイユ宮殿を同時に想起させる薔薇の花・・・世界各国の花のある情景をテーマに、開高おじさんが思いをめぐらせます。
    汚さや下卑さに浸かった肉体から、清廉な官能をにおわせるような点で、フランス文学が持つ雰囲気と似ていると思う。


    記憶も助けてか、私にはジャスミンの花の記述が一番かぐわしく感じられました。
    インドのぼろい長距離バス。
    風とともに容赦なく舞い込んでくる砂埃は上下の歯の間で軋むわ、肌にはりつくわ…鉱物の臭いが夏と、貧しさと、むれた小便を伴って充満するので、意識は窓の外へ外へと逃避しようとする。
    そこにふと乗ってきた数人の少女たちの髪にゆれていた、ジャスミンの花。その「ひめやかで、何かしら凛とした気配をたてた」香り。
    その優しい一撃が、「しなやかな香りが糸のように、煙のようにたちのぼる」瞬間が、鼻先に揺れたのです。

    あと、薔薇の花についての文章はそのまま額縁に入れて部屋に飾りたいほど好き。

    記憶の中にある光景が、他人の言葉を受けて、自分の目を通して見たときよりも輝きを増す瞬間って、感動的であり切ないですね。でも快感。
    世界に存在する色、匂い、温度、感情、味・・・感覚を使う全ての情報において、圧倒的な「量」をその肌で感じてこられたんだなぁ・・・と、肌が粟立っつ描写。決して派手ではなく、煌びやかでもなく、男くさく粗野。しかし間違いなく豊穣の海なんだなぁ。
    下ネタ言うし、趣味はおじさん全開だし、ねっとりとした指使いをしそうだし。それでも、豊かな人だなぁと、惚れ惚れしてしまうのです。

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