スコーレNo.4 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 3223
感想 : 410
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334746780

作品紹介・あらすじ

自由奔放な妹・七葉に比べて自分は平凡だと思っている女の子・津川麻子。そんな彼女も、中学、高校、大学、就職を通して4つのスコーレ(学校)と出会い、少女から女性へと変わっていく。そして、彼女が遅まきながらやっと気づいた自分のいちばん大切なものとは…。ひとりの女性が悩み苦しみながらも成長する姿を淡く切なく美しく描きあげた傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 『もしも自分に絶対の自信があったら。そうしたら、思ったことをそのまま言える。自信。それは努力して身につけるものでなく、天恵みたいに与えられるものだ。可愛さとまったく同じように。』自分に自信を持って生きている人ってどのくらいいるのでしょうか。自分に自信があると言える人は、なぜそのように思うことができるのでしょうか。自信とは本当に努力で身につくようなものではないのでしょうか。

    タイトルと表紙に惹かれて手にしたこの作品。「スコーレ」とは『スクール』の語源となった古代ギリシャ語とのこと。この作品は、主人公・麻子が生きてきたこれまでの道のりを、中学校時代、高校時代、大学・靴屋での研修時代、皮革課勤務の時代の四章に分けて描いていきます。

    骨董屋の三人姉妹の長女として育った麻子。No.1では、『真由も未知花ちゃんも首をかしげる。仲がよすぎて気味が悪いみたい、などと言う。今もいちばん親しい友達だ。でも親友と呼ぶほどではない。それは当然だろう。私には七葉がいる。』という位にとっても仲の良い妹・七葉との関係が描かれていきます。

    自分には持っていないものに満ち溢れている妹・七葉。『七葉みたいに可愛かったら人生違ってた。そう口走った自分の言葉にいちばん驚いたのは私だ。』この世の誰よりも親しいと思っていた存在。でもそんな七葉に違和感を感じ、七葉と一緒にいたくないと感じ出す麻子。No.2の中で気付きの日が訪れます。

    そして、『それぞれのやり方で私たちはお互いから遠ざかった。』スコーレを経るにつれ、やがてそんな妹とも疎遠になっていく日が訪れ、No.3へと舞台は展開していきます。

    新しい場所は誰にでも不安なものです。進学して、就職して、全く新しい世界に飛び込んだ時の不安、心細さを感じたことは誰にでもあると思います。そんな時、『居場所をきれいに整えることは、居心地をよくしてその場所を味方につけるようなものだ。もしもまわりに味方がいないのだとしたら、なおさら場所の援護が必要だった。』知らない人ばかりの中での圧倒的な孤独感、周囲が全て敵にも見える絶望的な不安感。永遠に止まったように感じられる時の流れ。ここでの麻子の行動には、そんな時の一つの考え方のヒントをもらった気がしました。

    輸入貿易会社に就職し、靴屋に研修に出た麻子。初めての仕事というものにどうやって向き合ったらよいのか、身体が、気持ちがついてゆかない時間。でも、少しづつ前へ、少しづつ上を向く。止まってばかりではいられないと一歩を踏み出す麻子。『自分の目を信じなさい。店長の言葉はじわじわと私の身体に染み込んできた。』初めに味方になってくれた『場所』が応援してくれる、きちんと前を、上を向く人を見てくれている人はきっといる。『違う場所からのぞく世界は、ちゃんとそれにふさわしい、今まで見たこともなかったような顔を向けてくる。靴をもっと、もっともっと知りたいと思った。』そしてNo.4ヘと、物語はまだ見ぬ世界のさらにその先へと歩みを進めていきます。

    素晴らしいものを見るとなかなかそれを言葉にすることは出来なくなる。この作品を読み終えて頭に浮かんだのはその言葉でした。人生、回り道をする時だってある。今やっていることが何の意味があるのかと投げ出したくなる時もある。でも、そんな一見意味のない、何もないと思われた時間・時代も全て自分の人生だから。自分に自信を持って一歩づつ前へ。未来に全てが繋がって人生を作っていくんだということを信じて。

    大きな事件も出来事も何も起こらない普通の人の普通の人生の四つのスコーレを切り取ったこの作品。でもそこに、読み終えた瞬間に、ありえないほどの圧倒的な爽やかさと、しあわせを感じました。

    4月から新年度。新しく社会人となる方の中には残念ながら早々に退職を決意して去ってしまう方も出ると思います。そんな人たちに、その決断をする前にどうしても知ってもらいたい、是非手にとってもらいたい作品だと思いました。その一方で、社会に出て時間の経った自分が、この作品に出会ってまだ心が動いたこと、この作品からしあわせを感じられたこと、それがとても愛おしくもなりました。

    今日は月曜日、さあ、今週も頑張ろう!そう思いました。
    いい作品に出会えました。

  • 少女から女性への成長と片想いを含めた恋愛を描いた作品。恥ずかしながら、宮下さんの世界観に心奪われてしまいました。

  • 古道具屋を営む家に三姉妹の長女として生まれた麻子。
    次女の七葉は素直に自分の意見を伝えられる子、逆に麻子はおとなしく、地味で目立たない子。可愛い七葉に、麻子はいつも引け目を感じていた。

    小さい頃のきょうだいってどうしてあんなにくっついて遊ぶのだろう。もうすっかり忘れていたことを鮮やかに思い出させてくれる。
    それから、中学時代の麻子の木月くんに対する淡い恋心と、失恋した時の状況がとてもリアルに伝わってきた。
    決して力強くはないのに、心に沁みこんでくる文章が上品で心地よい。

    大学入学と同時に家を離れ、就職先でもまれながらも強くたくましく変わってゆく麻子にすっかり心を持っていかれ、後半からは一気に読み進んでしまった。
    靴のことを何も知らずに靴屋に配属され、懸命に働くところは、「羊と鋼の森」を彷彿とさせる。真面目でひたむきな麻子に好感が持てるし、エールを送りたくなる。

    家族と恋愛と仕事と結婚、女性が辿る道をとても優しく丁寧に書き上げられた、素敵な作品だった。

  • 数か月前のこと。著者の本どれにしようと書店で見てたら、この装丁(女性が斜め上を見上げている、と、黄緑色の著者名タイトルの文字)が眩しく、真新しい本を手に取って買った。すぐに読んではもったいないからと、しばらく引き出しに寝かせておいた。
    麻子はとてもかわいい女の子(目が大きくて色が白くて、と自分でも言っている)、人の気持ちが痛いほどわかり、賢くて真っすぐでとても魅力的。なのに愛くるしくて可愛くて要領よくて世渡り上手な年子の妹、七葉に引け目を感じていた。七葉は七葉で思うことはあるだろうに。もしかしたら姉のことを羨むことも。

    No.1の、初恋のところは甘酸っぱいレモンの味。その子と言葉を交わしたわけでないのに、初めて見た瞬間、全ての景色がその子一色になる感じ。そういうこと、過去にあった私にも。

    No.2の愼への気持ちのところは、わかるような微妙な。
    「愼ちゃんは家族のようなもの」従兄だからだが。
    ペンダントの話にはドキドキしたし。七葉が突然絡んできて、突飛押もない七葉には読んでいるこちらもハラハラした。七葉というのは得な性分だな…。姉の麻子が大事にあたためてあたためて取っておいたものでも、一瞬に持ち去ってゆくんだから。欲しいものは欲しい、と言える、そういうの羨ましい。私も麻子側だから。

    No.3のお仕事の場面では、紆余曲折あるわけだが、成長の糧となった。麻子のような店員さんに見立ててもらい高級な靴私も履いてみたい(笑)。
    幾つかの恋愛もあったが(どの恋も寂しかったと言っていたが)最後には、降ってわいたように茅野(この字がなかなか読めなくて)さんと出会った。
    初めは何の印象も無かった人が、徐々にかけがえのない存在になってゆく。その恋愛のプロセス、微妙な心の動きの描写が心に染み入る文章で釘付けになる。

    茅野さんは私を見て、にこにこっと笑った。私を見つけただけでこんなふうに笑ってくれる人がいる。それはもしかしたらすごくしあわせなことなんじゃないだろうか。
    (沢山好きな描写はあったが、思い出すのはやっぱここ


    読んでよかった。若いとき読んでいても、とっても感動しただろう。しかし、年齢行った今だから、自分と照らし合わせて、ああ、自分のしてきたこと全てが今の自分だと思えた。
    笑ったこと、泣いたこと、理不尽で屈辱的だったこと、家族で手をつないで歩いた日、息子が少しだけ荒れたあの時(笑)とか。
    自分が考えてなかった未来だったとしても、その中にはきっとしあわせがかくれている。

  • 自分に自信がないけれど。
    それでも生きがいを見つけて、少しづつ自信をつけていく。
    私なんて… という言葉が多かったけれど、そんな言葉はいつしか周りから否定されるようになる。自信もって大丈夫だよ、と。
    内面から美しくなっているパターンですね。そうした場合、往々にして外見も美しくなっていると思うけれど。

    骨董屋さんのことを言ってないよな~。いつ言うんだろう。びっくりするだろうなあ。そんな偶然も楽しい、元気の出る本です。

    ーーー
    ところで、学年の切れ目は4月2日生まれからですね。

  • これは、ものすごく、よかった。
    ずっと家に積んでいた本の1冊ですが、まさかこんな掘り出し物が眠っていたなんて。いまだ余韻が残ってます。

    本書は、一人の少女の成長の軌跡を綴った物語です。
    行間に風を感じる軽やかで物腰のやわらかい文体。
    等身大の日々が丁寧に描かれ、押し付けのない距離感。
    読んでいて、ものすごく居心地がいいです。

    そして、それぞれのステージで語られる家族のこと、恋愛のこと、仕事のこと。
    どれもが重くなく、さらりとしてる。それでいて求心力があるから、胸を打つ。
    どんな風に表現すればこの質感を伝えられるのかわからないけど、今まで読んだ宮下さんのどの作風とも違ってました。まだ、ドキドキする・・・。

    どのステージもいいけれど、特にNo3とNo4はいい。
    原石が磨かれて光っていく様・・・というのは、なんて心地いいものなんでしょうね。
    家族の話も、恋愛の話も、仕事の話も、どれもこれもが本当にいい。とくに厳しくもブレない祖母やとびっきり大人な茅野さんがお気に入りです。

    心が荒んだらまた読み返そう。
    胸を爽やかな風が通り抜ける気持ちのいい読了感でした。おすすめです。

  • ひとりの女性の成長を静かに追っていくような話し。
    愛することはどういう事なのか、彼女とその周りにいる人達にとっても愛することはどんな事なのかそれぞれ違う。
    彼女の見つけた愛することは今思う事とこの先ではまた違うものになるかもしれない。
    好きな人、物を見つけて大事にしたいと思う気持ちが愛することなのかな。

  • 父親の営む古道具屋に生まれ育った中学一年生の少女・麻子は
    一年違いの妹と、小学生になったばかりの妹がいる三姉妹の長女なのだけれど
    一歳違いの妹とはついつい比べてしまって自分は平凡だとばかり思っている──

    そんな麻子が大人になるまでの心の成長は、一歩一歩、一つ一つ
    ゆっくりと穏やかに吹く爽やかな風のように心地よく伝わってきます。

    中学、高校、大学、そして就職と
    4つのスコーレ(学び)のなかで麻子が得ていくものは....?

    "薄暗い穴倉のようなところから空を見上げている。
    ──中略──私の最初の記憶だ。"

    冒頭のここに麻子の本質が表れているような。
    古道具が好き、という生い立ちや家庭環境というのにも
    きっと影響があるでしょう。

    それでも麻子は麻子、自分らしくね。それでいいのよ...と呟いて
    靴屋さんで働く麻子には自分にもあったあの頃とも重なって
    ちょっぴり懐かしい気持ちにもなったりして。
    平凡ではありながら、気持ちの和む心に優しい物語でした。
    茅野さんはとっても素敵な人ね。^^

    おばあちゃんの教えがいいです。
    手伝いをしているのは私たち大人のほうであること。
    女の子のけんかはどなったり叫んだりした方が負け。
    家は古くても掃除はきっちりやっておくこと。
    朝起きた時に飲みたいお茶が決まっていればその日はいい一日になること....。
    凛としていて背筋が伸びます。

  • 麻子さん、お久し振りです! 情景が目に浮かぶ秀逸な表現と脇を固めるキャラたち。「好もしい」という表現が出てきて夏目漱石の『こころ』を思い出した。前回は中高生時代の甘酸っぱさに心惹かれたが、今回は就職後に特に感情移入。今春、社会人になる方々や2~3年目の方々に読んで欲しい一冊。

  • 宮下 奈都 著
    以前、初めて 宮下 奈都さんの「羊と鋼の森」作品を読んで
    とても心地よい作品だったので、奈都さんの他の作品も読んでみたくなり 遅まきながら 「スコーレ No.4」を熟読しました いやぁ〜本当に何というか 清々しいほど 優しくて…何だろう 家族や恋愛や仕事の事を淡々と描いているのに、とても懐かしい感覚と凛としてるところは少し 勇気をもらったような気さえする。
    家や家族 恋愛のこと、仕事の内容など 置かれた環境や立場 景色は自分のとは違うのに 描いている背景が自分のもののように見えて 麻子(主人公)の気持ちが伝わってくる 。
    真面目で繊細で頑な 色々なアンバランスな思い 性質の中でバランスをとる形が 見事に描かれていて…すっと本の世界に入っていけた。

    「どうしても忘れられないもの、拘ってしまうもの、深く愛してしまうもの。そういうものこそが扉になる。
    広く浅くでは見つけられなかったものを、捕まえることができる。
    いいことも、悪いことも、涙が出そうなくらいうれしいことも、切ないことも、扉の向こうの深いところでつながっている。」
    きっと 一人一人がいつも自分の人生の一部を生きている
    この私でも これでもいいんだ!って思わせてくれる素敵な作品でした。

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著者プロフィール

1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年、第3子妊娠中に書いた初めての小説『静かな雨』が、文學界新人賞佳作に入選。07年、長編小説『スコーレNo.4』がロングセラーに。13年4月から1年間、北海道トムラウシに家族で移住し、その体験を『神さまたちの遊ぶ庭』に綴る。16年、『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞。ほかに『太陽のパスタ、豆のスープ』『誰かが足りない』『つぼみ』など。

「2018年 『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。   』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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