- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334746780
作品紹介・あらすじ
自由奔放な妹・七葉に比べて自分は平凡だと思っている女の子・津川麻子。そんな彼女も、中学、高校、大学、就職を通して4つのスコーレ(学校)と出会い、少女から女性へと変わっていく。そして、彼女が遅まきながらやっと気づいた自分のいちばん大切なものとは…。ひとりの女性が悩み苦しみながらも成長する姿を淡く切なく美しく描きあげた傑作。
感想・レビュー・書評
-
「立ち止まったり迷ったりしていたいつかの自分に読ませたい。」と思わせてくれる、一人の女性の中学生期から社会に出て何者かになるまでの成長物語。
「羊と鋼の森」でも感じたことだけれど、宮下さんはこうした人の成長ドラマを描くのがとても上手い。しんとした静謐のなかにも心の躍動が伝わってくる。周辺の人物の描写も主人公の輪郭をはっきりさせるのにとても効果的で魅力的。
この物語は大きく4つの章で構成されている。それぞれが絡み合って面白さを形づくっている。なかでも社会人編が特に面白い。靴を取り扱う会社にヒロイン麻子は就職することになるのだけれど、持ち前の審美眼を生かして自分にしかできないことを見つけていく。学生時代に長く続いた迷いや葛藤から解放されていく姿は爽快だ。宮本輝の「ここに地終わり海始まる」を思い出した。
何より、どこか私の人生で体感してきたこととデジャヴしてしまうので共感しながら読みすすめてしまう。それくらい宮下さんの観察眼は優れているのだと思う。まさに王道。
それは、仕事のこと、恋愛のことあらゆる場面に及ぶ。思春期の心の揺れから、大人の葛藤までこれだけ幅広く描けるのだから素直にすごいと思える。
社会人編では、ちょうど私の友人が百科店で靴を取り扱う部署にいたので、とても興味深かった。よく百貨店に行って思うのが、一目見てその客にあったものを見つけてきてくれることだ。その眼力に舌を巻いていたがこういうことなのだと納得できた。
なので私は店員さんが勧める服そのまんま全部買うファッションが面白くてすきだった。予想外の発見があったのを覚えている。
読後感もとてもよくて、女性視点からの物語がとても新鮮だった。よい読書体験ができた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読んでいて、ハミングしたくなるような心地よさを感じる作家は本当に稀だ。私にとってそれは森絵都さんと宮下奈都さん。
何をしても中途半端。自分よりも妹にばかり魅力を感じてしまう姉が変わっていくさまがこの小説の魅力。褒められ慣れていない主人公麻子が、自分の色で輝き出す。気づいてないだけだった。
妹との溝がなくなる瞬間は自分のことのように嬉しくなる。
宮下奈都さんの小説は、私が私でよかったと背中を押してくれる温かさに満ちている。
最後なんて全然劇的ではないのに、至上の幸福感を味わえる。宮下奈都さん、好きだなあという余韻に包まれる。 -
古道具屋が実家の三姉妹の長女・麻子が主人公で彼女の中学時代から高校〜大学〜就職と追う物語。
一つ違いの妹・七葉の自由奔放さに比べて、自分の気持ちを押し殺して実直に生きる麻子だが、成長とともに内面から滲みてくる素直さが良い大人になっているなぁと感じさせる。
特にNo.3の靴店で働くところに彼女の成長を感じ、すごく距離が近くなったような親近感が湧く。
さらにNo.4での恋愛は遠回りしてきたからこその確かなものを感じて嬉しくなる。
いいものを穏やかに講釈する父と笑顔で温和な母にちょっと厳しめだが正しい祖母の存在もいい。
ゆるゆるとじんわりと心に染みてくる。
-
この前読んだ宮下さんのエッセイが面白かったので、今度は小説を読んでみた。
これは、女の子から女の人になる時期を描いた作品かな。色々なことに対して初めて挑戦することもあり、人に対しても家族に対しても気持ちが1番揺れ動く時ですよね。この時期は、自分でも自身の扱いに困ることだってある。
でもね、その時期を抜けると、意外に見通しが良くなってくるんですよ。おばちゃんは知っている。
そしてまた、次から次へと結婚、出産、介護などなど人生のフェーズは変化するのです。その流れに乗りながら、自分を見失わず...。難易度高っ。
ずっと、女の人目線で感想を書いてますが、逆に男の人目線のスコーレNo.4とかあっても面白そう。興味あるかも〜。いや、朝井さん辺りがもう書いてそう〜。
余談ですが、うちの家族が全員次々コロナに罹患していく中、意気揚々と元気にお世話している自分が怖いんですけど。逆に読書が進む〜(^^;)-
K村さん!初めまして!
お心遣い、ありがとうございます!
まさか同じ体験をされているとは…f(^_^;
自分だけかからないって、ある意味こ...K村さん!初めまして!
お心遣い、ありがとうございます!
まさか同じ体験をされているとは…f(^_^;
自分だけかからないって、ある意味こわいですよね。もう精神論で「私はならない!」と強く願ってます。
まあ、いままでリスのようにためてた積読本はこの時のためだったということで(笑)
お互いどんどん読書して、レビューしましょうo(^o^)o
コメント、ありがとうございます!2024/02/12 -
へぶたんさん
お返事ありがとうございます♪
まだコロナ禍だった頃で、何度も家族と一緒に医者に行って検査をしましたが陰性でした
理由はよくわ...へぶたんさん
お返事ありがとうございます♪
まだコロナ禍だった頃で、何度も家族と一緒に医者に行って検査をしましたが陰性でした
理由はよくわかりませんが、たまにそういう人もいるみたいですよ笑
そうです、積読本消化のチャンスですよね〜
これからもよろしくお願いします(๑>◡<๑)2024/02/12 -
K村さん
コロナ禍だったんですか!!
それは心配だったし、大変だったでしょう…。今とは心配の度合いが違いますよ。
うちの家族は皆、何事に...K村さん
コロナ禍だったんですか!!
それは心配だったし、大変だったでしょう…。今とは心配の度合いが違いますよ。
うちの家族は皆、何事に対しても流行の波にのれないという特性があり、今頃…(^-^;
こちらこそこれからもよろしくお願いします!
レビュー楽しみにしてます♪2024/02/12
-
-
『もしも自分に絶対の自信があったら。そうしたら、思ったことをそのまま言える。自信。それは努力して身につけるものでなく、天恵みたいに与えられるものだ。可愛さとまったく同じように。』自分に自信を持って生きている人ってどのくらいいるのでしょうか。自分に自信があると言える人は、なぜそのように思うことができるのでしょうか。自信とは本当に努力で身につくようなものではないのでしょうか。
タイトルと表紙に惹かれて手にしたこの作品。「スコーレ」とは『スクール』の語源となった古代ギリシャ語とのこと。この作品は、主人公・麻子が生きてきたこれまでの道のりを、中学校時代、高校時代、大学・靴屋での研修時代、皮革課勤務の時代の四章に分けて描いていきます。
骨董屋の三人姉妹の長女として育った麻子。No.1では、『真由も未知花ちゃんも首をかしげる。仲がよすぎて気味が悪いみたい、などと言う。今もいちばん親しい友達だ。でも親友と呼ぶほどではない。それは当然だろう。私には七葉がいる。』という位にとっても仲の良い妹・七葉との関係が描かれていきます。
自分には持っていないものに満ち溢れている妹・七葉。『七葉みたいに可愛かったら人生違ってた。そう口走った自分の言葉にいちばん驚いたのは私だ。』この世の誰よりも親しいと思っていた存在。でもそんな七葉に違和感を感じ、七葉と一緒にいたくないと感じ出す麻子。No.2の中で気付きの日が訪れます。
そして、『それぞれのやり方で私たちはお互いから遠ざかった。』スコーレを経るにつれ、やがてそんな妹とも疎遠になっていく日が訪れ、No.3へと舞台は展開していきます。
新しい場所は誰にでも不安なものです。進学して、就職して、全く新しい世界に飛び込んだ時の不安、心細さを感じたことは誰にでもあると思います。そんな時、『居場所をきれいに整えることは、居心地をよくしてその場所を味方につけるようなものだ。もしもまわりに味方がいないのだとしたら、なおさら場所の援護が必要だった。』知らない人ばかりの中での圧倒的な孤独感、周囲が全て敵にも見える絶望的な不安感。永遠に止まったように感じられる時の流れ。ここでの麻子の行動には、そんな時の一つの考え方のヒントをもらった気がしました。
輸入貿易会社に就職し、靴屋に研修に出た麻子。初めての仕事というものにどうやって向き合ったらよいのか、身体が、気持ちがついてゆかない時間。でも、少しづつ前へ、少しづつ上を向く。止まってばかりではいられないと一歩を踏み出す麻子。『自分の目を信じなさい。店長の言葉はじわじわと私の身体に染み込んできた。』初めに味方になってくれた『場所』が応援してくれる、きちんと前を、上を向く人を見てくれている人はきっといる。『違う場所からのぞく世界は、ちゃんとそれにふさわしい、今まで見たこともなかったような顔を向けてくる。靴をもっと、もっともっと知りたいと思った。』そしてNo.4ヘと、物語はまだ見ぬ世界のさらにその先へと歩みを進めていきます。
素晴らしいものを見るとなかなかそれを言葉にすることは出来なくなる。この作品を読み終えて頭に浮かんだのはその言葉でした。人生、回り道をする時だってある。今やっていることが何の意味があるのかと投げ出したくなる時もある。でも、そんな一見意味のない、何もないと思われた時間・時代も全て自分の人生だから。自分に自信を持って一歩づつ前へ。未来に全てが繋がって人生を作っていくんだということを信じて。
大きな事件も出来事も何も起こらない普通の人の普通の人生の四つのスコーレを切り取ったこの作品。でもそこに、読み終えた瞬間に、ありえないほどの圧倒的な爽やかさと、しあわせを感じました。
4月から新年度。新しく社会人となる方の中には残念ながら早々に退職を決意して去ってしまう方も出ると思います。そんな人たちに、その決断をする前にどうしても知ってもらいたい、是非手にとってもらいたい作品だと思いました。その一方で、社会に出て時間の経った自分が、この作品に出会ってまだ心が動いたこと、この作品からしあわせを感じられたこと、それがとても愛おしくもなりました。
今日は月曜日、さあ、今週も頑張ろう!そう思いました。
いい作品に出会えました。 -
少女から女性への成長と片想いを含めた恋愛を描いた作品。恥ずかしながら、宮下さんの世界観に心奪われてしまいました。
-
古道具屋を営む家に三姉妹の長女として生まれた麻子。
次女の七葉は素直に自分の意見を伝えられる子、逆に麻子はおとなしく、地味で目立たない子。可愛い七葉に、麻子はいつも引け目を感じていた。
小さい頃のきょうだいってどうしてあんなにくっついて遊ぶのだろう。もうすっかり忘れていたことを鮮やかに思い出させてくれる。
それから、中学時代の麻子の木月くんに対する淡い恋心と、失恋した時の状況がとてもリアルに伝わってきた。
決して力強くはないのに、心に沁みこんでくる文章が上品で心地よい。
大学入学と同時に家を離れ、就職先でもまれながらも強くたくましく変わってゆく麻子にすっかり心を持っていかれ、後半からは一気に読み進んでしまった。
靴のことを何も知らずに靴屋に配属され、懸命に働くところは、「羊と鋼の森」を彷彿とさせる。真面目でひたむきな麻子に好感が持てるし、エールを送りたくなる。
家族と恋愛と仕事と結婚、女性が辿る道をとても優しく丁寧に書き上げられた、素敵な作品だった。 -
数か月前のこと。著者の本どれにしようと書店で見てたら、この装丁(女性が斜め上を見上げている、と、黄緑色の著者名タイトルの文字)が眩しく、真新しい本を手に取って買った。すぐに読んではもったいないからと、しばらく引き出しに寝かせておいた。
麻子はとてもかわいい女の子(目が大きくて色が白くて、と自分でも言っている)、人の気持ちが痛いほどわかり、賢くて真っすぐでとても魅力的。なのに愛くるしくて可愛くて要領よくて世渡り上手な年子の妹、七葉に引け目を感じていた。七葉は七葉で思うことはあるだろうに。もしかしたら姉のことを羨むことも。
No.1の、初恋のところは甘酸っぱいレモンの味。その子と言葉を交わしたわけでないのに、初めて見た瞬間、全ての景色がその子一色になる感じ。そういうこと、過去にあった私にも。
No.2の愼への気持ちのところは、わかるような微妙な。
「愼ちゃんは家族のようなもの」従兄だからだが。
ペンダントの話にはドキドキしたし。七葉が突然絡んできて、突飛押もない七葉には読んでいるこちらもハラハラした。七葉というのは得な性分だな…。姉の麻子が大事にあたためてあたためて取っておいたものでも、一瞬に持ち去ってゆくんだから。欲しいものは欲しい、と言える、そういうの羨ましい。私も麻子側だから。
No.3のお仕事の場面では、紆余曲折あるわけだが、成長の糧となった。麻子のような店員さんに見立ててもらい高級な靴私も履いてみたい(笑)。
幾つかの恋愛もあったが(どの恋も寂しかったと言っていたが)最後には、降ってわいたように茅野(この字がなかなか読めなくて)さんと出会った。
初めは何の印象も無かった人が、徐々にかけがえのない存在になってゆく。その恋愛のプロセス、微妙な心の動きの描写が心に染み入る文章で釘付けになる。
茅野さんは私を見て、にこにこっと笑った。私を見つけただけでこんなふうに笑ってくれる人がいる。それはもしかしたらすごくしあわせなことなんじゃないだろうか。
(沢山好きな描写はあったが、思い出すのはやっぱここ
)
読んでよかった。若いとき読んでいても、とっても感動しただろう。しかし、年齢行った今だから、自分と照らし合わせて、ああ、自分のしてきたこと全てが今の自分だと思えた。
笑ったこと、泣いたこと、理不尽で屈辱的だったこと、家族で手をつないで歩いた日、息子が少しだけ荒れたあの時(笑)とか。
自分が考えてなかった未来だったとしても、その中にはきっとしあわせがかくれている。 -
自分に自信がないけれど。
それでも生きがいを見つけて、少しづつ自信をつけていく。
私なんて… という言葉が多かったけれど、そんな言葉はいつしか周りから否定されるようになる。自信もって大丈夫だよ、と。
内面から美しくなっているパターンですね。そうした場合、往々にして外見も美しくなっていると思うけれど。
骨董屋さんのことを言ってないよな~。いつ言うんだろう。びっくりするだろうなあ。そんな偶然も楽しい、元気の出る本です。
ーーー
ところで、学年の切れ目は4月2日生まれからですね。 -
正直少し退屈に感じた部分もありましたが、それでも宮下さんならではの感性がたっぷり詰まっていました。
恋を"水色"と表現するセンスには、嫉妬すら覚えました。
まだまだそのセンスを浴びたい、と宮下さんの作品を読了する度に思います。