奇想と微笑―太宰治傑作選 (光文社文庫)

著者 :
制作 : 森見 登美彦 
  • 光文社
3.71
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本棚登録 : 1211
レビュー : 82
  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334746926

作品紹介・あらすじ

中学校の国語の時間。「走れメロス」の音読テープに耳をふさいだ森見少年は、その後、くっついたり離れたりを繰り返しながらも、太宰の世界に惹かれていった-。読者を楽しませることをなによりも大切に考えた太宰治の作品群から、「ヘンテコであること」「愉快であること」に主眼を置いて選んだ十九篇。「生誕百年」に贈る、最高にステキで面白い、太宰治の「傑作」選。

感想・レビュー・書評

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  • 登美彦氏が「ヘンテコであること」「愉快であること」をテーマに選んだ太宰作品19編。
    登美彦氏は編集後記で「私は、太宰が手を替え品を替え読者を愉快にさせようとしている作品が好きである」と書かれていますが、太宰治のサービス精神や愛矯が感じられる作品が多かったです。
    テーマがテーマだけに、自虐性の弱い太宰作品が多いので気軽に楽しめました。

    「走れメロス」「ロマネスク」などの有名どころもあれば、「『井伏鱒二選集』後記」などの初めて読む文章もあり。
    「黄村先生言行録」は思わず笑ってしまいました。
    「親友交歓」は何度読んでも中間でお腹の中がムカムカするのですが、最後になると妙な清々しさを感じてしまいます。

    太宰流ユーモアのセンスに惚れ惚れしてしまう1冊でした。

  • 太宰のオマージュ作品。作者も編集後記で言及しているように、この小説は太宰の作品の中から「ヘンテコであること」「愉快であること」に主眼を置いて選別されたもの。太宰というと暗いイメージが強いが、この小説では所謂太宰らしい作品は掲載されていない。リズミカルな文章に堅実な構成。特に、これまで太宰を苦手としていた読者に固定観念は捨てて素直に楽しんで欲しい。

  • 太宰治をずっと避けていた。なんとなく、暗く内向きなイメージが強かったからかもしれない。
    この短篇集はそのイメージを一新してくれた。
    なんといっても、太宰が既存の物語を独自の解釈で再構成する物が面白かった。『カチカチ山』では童話のカチカチ山を、たぬきは30歳の醜男、うさぎは17歳の処女として解釈し直すのは、ぴったりすぎて感服した。その他にも『女の決闘』など。
    井伏鱒二集編集後記も愛にあふれた名文だった。本文が読みたくなる編集後記というのは、実はとても少ないように思う。
    この視点で短編を集めた森見登美彦氏に感謝。

  • 森見さんの選書ということで読む前からワクワクしていた。解説で「太宰治って『走れメロス』と『生まれてきてすいません』の人でしょ」という読者が…とはまさに学生時代の私。今は太宰のユーモアとリズムある文章にはまると同時に、『女の決闘』のような小説の新解釈小説?に森見さんの『新釈走れメロス』にも共通する笑いと真面目な馬鹿馬鹿しさと悲哀に惹かれている。

  • 久しぶりに読んだ太宰の、なんと面白いことか。

  • 「暗い」と言われる太宰治の本を今まで読んだことがなく一度は読んでみようと思っていた。で見つけた太宰治の面白い短編を集めたこの本。ん~。私には面白いと思えず。なんとか頑張って3/2くらいまでは読んだけど全く頭にも入ってこないから読むのは止めた。時間帯のある時に「走れメロス」だけは読んでみようと思う。

  • ドロドロしていない太宰作品集。愛すべきダメ人間がいっぱい出てくる。編集後記も面白い。

  • 太宰治の短編をまとめた『傑作選』。まとめたのは走れメロスを聞いて「恥ずかしくて耳をふさ」いだ、という森見登美彦氏。

    最初に収められた「失敗園」を読んで思い出したのは「宮沢賢治」で、最後に収められた「走れメロス」を読んで思い出したのは「雨ニモマケズ」だった、というのが個人的な感想。

    「失敗園」は【農作物の擬人化】作品。田舎に住んでいる人間の「あるあるネタ」を読ませるものにした一作。田舎の津軽出身であることをコンプレックスにしている作品が多い太宰治が、こうも生き生きした農作物を書けるのか、と驚きを感じる一作。

    「走れメロス」は教科書に載せたくなる【己の弱みに打ち勝った美談】。しかし、この『傑作選』を読んだ上で走れメロスを読むと、太宰治自身が【己の弱みに打ち勝ってこうなりたかった理想像】をこの話に委ねたのかな、という気がしてくる。それは、大吐血をして死を覚悟したとき、来世では「サウイフモノニワタシハナリタイ」と詠んだ宮沢賢治に似ている。

    この『傑作選』を通して思うのは、太宰治が己の「よく見られたいという弱さ」を、いかに”嗤い”ではなく”笑い”にできるか、と試行錯誤していた、ということ。主人公はたいていどこか情けないんだけど、そんな話がどこか”笑える”。

    もう一つ思うのは、多くの作家が「小説を読むことで『作者の想い』をも読み取ろうとしてきた」こと。太宰治にとって、井伏鱒二は太宰治が『想いを読み取りたい』と願った人で、本著の編者である森見登美彦にとっては太宰治が『想いを読み取りたい』と願った人なんだろう。

    「人が小説などの創作物を人に勧めるとき、勧めた人はその作品に自分自身の何かを投影している」というのが持論なんですが、作家自身が多くの作家の読者でありファンだった、ということをこの『傑作選』で強く感じさせられた。小説の読み方が、ちょっと変わった一冊。

  • お伽草子や新釈諸国噺など、他の作品を下敷きにしたものが特に面白いと思いました。

  • 純文学の中で唯一触れることが多かった太宰治の作品集でしたので、これは迷わずにシュバッと手に取ることができました。
    それに加えて森見さんが、世間一般とは異なる太宰治の別の顔(暗い話ばかり書いてたわけじゃないんだよ、愉快傑作なものもあるんだよ、ほら見てみー、といったもの)を切り開きつつ親切に教えてくれてすこぶる楽しかったです。

    太宰治がもっと好きになれて、中学の時以来読んでなかった走れメロスがまた別の味で読めてよかったです。また読むべや。

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著者プロフィール

1909年(明治42年)、青森県金木村(現五所川原市)生まれ。本名、津島修治。東大仏文科在学中に非合法運動に従事し、やがて本格的な執筆活動へ。35年、「逆行」で第1回芥川賞の次席となり、翌年には処女作品集『晩年』を刊行。以後「走れメロス」「斜陽」など多数。

「2018年 『津軽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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