奇想と微笑―太宰治傑作選 (光文社文庫)

著者 :
制作 : 森見 登美彦 
  • 光文社
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本棚登録 : 1215
レビュー : 83
  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334746926

感想・レビュー・書評

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  • 登美彦氏が「ヘンテコであること」「愉快であること」をテーマに選んだ太宰作品19編。
    登美彦氏は編集後記で「私は、太宰が手を替え品を替え読者を愉快にさせようとしている作品が好きである」と書かれていますが、太宰治のサービス精神や愛矯が感じられる作品が多かったです。
    テーマがテーマだけに、自虐性の弱い太宰作品が多いので気軽に楽しめました。

    「走れメロス」「ロマネスク」などの有名どころもあれば、「『井伏鱒二選集』後記」などの初めて読む文章もあり。
    「黄村先生言行録」は思わず笑ってしまいました。
    「親友交歓」は何度読んでも中間でお腹の中がムカムカするのですが、最後になると妙な清々しさを感じてしまいます。

    太宰流ユーモアのセンスに惚れ惚れしてしまう1冊でした。

  • 太宰治をずっと避けていた。なんとなく、暗く内向きなイメージが強かったからかもしれない。
    この短篇集はそのイメージを一新してくれた。
    なんといっても、太宰が既存の物語を独自の解釈で再構成する物が面白かった。『カチカチ山』では童話のカチカチ山を、たぬきは30歳の醜男、うさぎは17歳の処女として解釈し直すのは、ぴったりすぎて感服した。その他にも『女の決闘』など。
    井伏鱒二集編集後記も愛にあふれた名文だった。本文が読みたくなる編集後記というのは、実はとても少ないように思う。
    この視点で短編を集めた森見登美彦氏に感謝。

  • 久しぶりに読んだ太宰の、なんと面白いことか。

  • 太宰治の短編をまとめた『傑作選』。まとめたのは走れメロスを聞いて「恥ずかしくて耳をふさ」いだ、という森見登美彦氏。

    最初に収められた「失敗園」を読んで思い出したのは「宮沢賢治」で、最後に収められた「走れメロス」を読んで思い出したのは「雨ニモマケズ」だった、というのが個人的な感想。

    「失敗園」は【農作物の擬人化】作品。田舎に住んでいる人間の「あるあるネタ」を読ませるものにした一作。田舎の津軽出身であることをコンプレックスにしている作品が多い太宰治が、こうも生き生きした農作物を書けるのか、と驚きを感じる一作。

    「走れメロス」は教科書に載せたくなる【己の弱みに打ち勝った美談】。しかし、この『傑作選』を読んだ上で走れメロスを読むと、太宰治自身が【己の弱みに打ち勝ってこうなりたかった理想像】をこの話に委ねたのかな、という気がしてくる。それは、大吐血をして死を覚悟したとき、来世では「サウイフモノニワタシハナリタイ」と詠んだ宮沢賢治に似ている。

    この『傑作選』を通して思うのは、太宰治が己の「よく見られたいという弱さ」を、いかに”嗤い”ではなく”笑い”にできるか、と試行錯誤していた、ということ。主人公はたいていどこか情けないんだけど、そんな話がどこか”笑える”。

    もう一つ思うのは、多くの作家が「小説を読むことで『作者の想い』をも読み取ろうとしてきた」こと。太宰治にとって、井伏鱒二は太宰治が『想いを読み取りたい』と願った人で、本著の編者である森見登美彦にとっては太宰治が『想いを読み取りたい』と願った人なんだろう。

    「人が小説などの創作物を人に勧めるとき、勧めた人はその作品に自分自身の何かを投影している」というのが持論なんですが、作家自身が多くの作家の読者でありファンだった、ということをこの『傑作選』で強く感じさせられた。小説の読み方が、ちょっと変わった一冊。

  • 「ヘンテコ」で「愉快」な太宰治傑作集。まさにその通り。いい意味で太宰のイメージが壊れた気がします。やっぱり文体は読みにくいのだけど、太宰ってこんなに楽しい話も書くのか、という感じ。太宰の他の話も読んでみたい。

  • 国語教科書で『走れメロス』を読み,自宅の書庫にあった『人間失格』の冒頭で読むことを諦め,太宰を読むことはそれから数年無かったのだが,森見登美彦氏が好き勝手に書いた『新訳走れメロス』を読み,京都を走る桃色ブリーフに腹を抱えていたのは既に二年ほど前のことである。
    文庫の森見作品もほとんど読んでしまっていた頃,書店でふと目についたのがこれであり,当初はまだ見ぬ森見作品かと思い色めき立ったのだが,読んでみると何かおかしい,いや何もおかしくない。これは森見登美彦の文章ではないのだから当然で,では誰の小説かとよくよく題を見てみれば太宰傑作集としかと書かれていた。
    なんという思い違い,しかし面白い。太宰作品とはこんなにも面白いものだったのか,などと思ってしまったからには「ヘンテコ」で「愉快である」ものとして選んだ森見氏の策にまんまと嵌ったこととなる。くやしい。
    太宰は小難しい,分からない,暗い,などと思っている人にこそ勧めたい一冊であると同時に,太宰入門書としても推したい一冊である。

  • 読んで良かった。

  • 森見登美彦氏の『太陽の塔』を読んだ時、これを書いたのは本当に現代人なのかと不思議に思った。まるで太宰治の書いた小説のようだったから。その原点はこれらの小説だったんだなと納得。私は太宰の『斜陽』に心酔し、スウプはひらりと食したいと思っている馬鹿者であるが、こういうヘンテコで愉快な小説も書いていたのかと新鮮だった。「酒の追憶」の途方もない酔いっぷりと、「女の決闘」の創作的解説が印象的だった。最後に「走れメロス」を久しぶりに読めてよかった。

  • 森見さんが太宰さんの作品を元にして書いたのかと思いきや太宰さんの作品だったらしい…

    初めて太宰さんの作品をまともに読んだけど面白い。
    面白いの集めたって書いてあったからそりゃ面白いんだろうけど面白い。
    他の作品も読んでみたいという気にさせられたけれど、鬱々した作品はあまり好きではないのでどうしようかと悩むところ。

  • 高校生のときに読んだときは、義務的だったのだが、最近読み直してみたらとても面白く感激した。太宰治は人間の厭らしさを書かせたらまさに天才である。自分の体験談を元に書いた小説が多いため、半分ほど私小説を読んでいるような気になるのだが、そのためか、太宰の描くダメ人間の述懐はとてもリアルで身近に感じられる。

    しかし、この作品集は森見登美彦が撰集したものである。ダメ人間の述懐にもどことなく愛嬌とユーモアがあるものが多く、読んでいて思わず笑みがこぼれる。そして、太宰治という人間に会ってみたくなる。愛嬌のあるダメ人間…森見登美彦が最も得意とする人物である。そんな人物が大好きな人は、きっとこの作品も楽しめるだろう。

著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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