60秒の煉獄 (光文社文庫 お 39-7)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334747961

感想・レビュー・書評

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  • もし、あなたが時間を60秒間止められる力を貰ったら、果たして、何をするだろうか?

    そんなイフの数々を、短編集にした本作。
    なかなか癖のある登場人物が、少女から授かったその力をどう使うかが、見どころですね。

    そして、最後、不可解な連続殺人事件を追う刑事。
    なかなか真相に迫れないが、やがて刑事の元に、不思議な少女が現れる。
    真相を知り、時間を止めるその力を得た刑事は、その力を事件解決に使うのか...と思いきや、なんと

    なかなかブラックな展開ですね。
    こういうのもアリかと思います。

  • たかが60秒、されど60秒。完全に自分のものだけになるそんな時間があったなら。さて、いったい何をすればいいのでしょうね。
    そんな時間を与えられた人たちの物語。しんみりとする話ありぞくりとする話ありですが。やはり良くないことに使う人が多いようで。うーむ、恨む人を殺したいというなら分からないでもないけど。なぜこういうことをしたくなるのかなあ。怖いというより、そういうことしか考えられないのって悲しいよね。でもそれぞれの人生観が感じられて、深い作品です。
    お気に入りは「微笑む老人」。一見鬼畜度は薄いように思えつつ、実は一番怖かったのでは……。

  •  ある日、一度だけ60秒間時間を止めることができる力を、与えられた者の見た世界。

     短編集で、様々な60秒が語られていく。
     タイトルの「煉獄」が効いてます。
     力を得たゆえに、その力を持っていると自覚してるだけなのに、それまでの幸せが崩れて行く者。自分の邪悪な欲にあらがえなくなる者。

     人を超えた力に先にあるのは、人がいかない場所でしかないのかもしれない。

  • 「たった一度だけ、60秒間、時間を止められる能力を手に入れたら、どうする?」

    他愛のない想像のような出来事が本当に起こった時、人間の欲は、心理はどのように動くのか。
    同一のテーマで様々な人物にスポットを当てた、連作短編集。

    それまで読んできた大石さんの作品とは異なる雰囲気で、また違った大石ワールドを味わわせてくれた作品。しかしもちろん、気持ち悪い読後感(褒め言葉)と暗いあとがきは期待通り。

    暗く重い気持ちで読み終えた時、「自分だったらどうするだろう…」と考えてみると、この本に毒された読者は、つい暗い想像をしてしまうかもしれない。
    それも含めて、この作品の魅力であると思う。

  • 予想を大きく裏切り、とても面白かった。大石圭作品は大昔に読んだきり、なぜか良い印象がなかったのだが、間違った認識を改めたい。そして本作を読んだ人は必ず想像するだろう、自分は60秒で何をするのかを。
    あらすじ(背表紙より)
    「あなたに特別な力を授けます」。天使か悪魔か―謎めいた美少女が人々に授けたのは、たった1度だけ時間を1分間止める能力だった。世界のすべてが静止する60秒。誰にも知られず、邪魔されることもなく、思うがままにどんなことでもできるのだ。大金を強奪する。憧れの女性を恣にする。憎い男を抹殺する…。欲望と妄念に翻弄される男女の姿を描く、異色連作集。

  • 初読み作家さん。
    たった1度だけ時間を60秒止める能力を与えられた人たちの短編集。
    世界のすべてが静止し、誰にも知られず、邪魔されることもなく、思うがままにどんなことでもできるという。
    設定の面白さに惹かれた読んだが、後味は悪い。
    人助けに使う人、人を傷つけることに使う人、自分の人間性に気がついた人など様々。
    結局のところ、人間は悪意が勝つということなのか。
    (図書館)

  • いつもの大石圭のテイストとは少し趣を異にした短編集。不思議な少女が与える1回だけ60秒時間を止めることができる能力。選ばれる人に共通点はない。従って、彼らがそれを何に使うかは様々となる。その使い方が本書の面白さである。1話目が意外に前向きな話だったので、おぉ、こんな感じかーと思いきや、以降はその大半が暗い欲望に従っている辺りは安心のクオリティ。第10話でこれまでの話に微妙に触れられていくような繋がりが見えるものの、結局は人間の醜さを見るばかり。個人的に好きなのは大石圭らしさを裏切る第1話、殺人というミスリードとメジャーがないという伏線が生きる第5話、いい事をしようと回顧した結果満たされていたはずの人生が崩れていく第9話。最終話はおまけ的な話とは言いつつも、問いかけられたら自分だったらとやっぱり考えちゃうよね。でも、多分、自分だったら何が得かを迷った挙句、一生使わずに死んでしまいそうな気がするのだった。ちなみに毎回重いあとがきは今回は特に重くて、しんみりしてしまった。

  • たった1度だけ時間を60秒止められる能力を与えられたら…。 その設定が気になって手に取ってしまった本。大石さんといえばホラーなだけに、怖いシーンがあるかどうか2番目に気になったところでしたが(笑)
     その時間を人助けに使う人もいれば、今まで幸せに暮らしていた人が欲がでてしまったために…という話もあり、人間の業の深さを考えさせられます。
     実際に60秒で何が出来るか、と思ってしまったところはあるけれど、何かピンチの時は役に立つかもしれません。

  • 特別な力を授けられる男女の話。その力とは60秒だけ時間を止められるというもの。たった60秒。けれど、様々な使いかたによって、人の本性を暴き出す。とはいっても、使い方は自由だし、それが幸せととるのか、不幸なのかは判断しかねるよね。私が一番人を殺めたいと思うのは、通勤で、一瞬だえけ殺意が芽生えてしまう。
    だからといって、この60秒でどうにかしようと思うほどの強い気持ちはないと思うのだけど、根底には人を殺めてのいいとするそれを肯定する気持ちがあるわけで。
    この話の中にも無差別に人を殺すチョイスをする人がいるんだけど、すごく普通の生活を送っている人だったんだよね。え、こんな残酷なことができるの?っていう。
    でもできちゃうんだよね。
    全員がいいことに使うわけないし、他人を巻き込まないなんてきれいごともない。
    その点ではリアリティがあるかな。
    自分だったらどうするかって思うと、60秒の時間を止めても仕方ないかな。できれば過去に戻りたいと思うかも。

  • 60秒、時を止める力を手に入れたらあなたはどうするか。悪戯に使おうと思ってたのに人助けに使う人、善良なことに使おうと思ってたのに結局そんなことに使えず人を見殺しにした人。自分の欲望を満たすために他者を傷つけた人。自分の罪を隠すために使う人。なぜこんな力をくれたのかはわからないが、ホッとするときもあれば嫌な気分にもなり、後味が悪すぎる小説だった。赤ちゃんのくだりは正直トラウマ。

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著者プロフィール

1961年、東京都出身。法政大学文学部卒業。93年、『履き忘れたもう片方の靴』で第30回文芸賞佳作を受賞し、デビュー。『アンダー・ユア・ベッド』『殺人勤務医』『絶望ブランコ』『愛されすぎた女』『裏アカ』など、著書多数。2019年には『殺人鬼を飼う女』『アンダー・ユア・ベッド』が立て続けに映画化され、話題に。

「2023年 『破滅へと続く道 右か、左か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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