薩摩スチューデント、西へ (光文社文庫 は 26-3 光文社時代小説文庫)
- 光文社 (2010年12月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (554ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334748937
感想・レビュー・書評
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「林望」の長篇時代小説『薩摩スチューデント、西へ』を読みました。
「林望」の作品は5年振り、エッセイ以外の作品は初めてですね… ここのところ時代小説が続いています。
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「坂本龍馬」が「西郷隆盛」と歴史的対面を果たしていた幕末、若き侍たちが荒れ狂う波濤の海を命をかけて渡った。
薩摩藩の命で西を目指したのは俊英十五人と秘密使節四人の十九人。
海外列強の前に日本の将来を按じた薩摩藩は、新しい時代を担う者を育てるべく彼らを海外に派遣した。
海外渡航禁止の時代、まさにその行為は命がけであった。
著者渾身の傑作感動巨編。
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2007年(平成19年)に刊行された、幕末を舞台に薩摩藩が秘密裏に英国に送り込んだ15人の留学生と秘密使節4人の留学行を描く群像小説です。
1865年、薩英戦争後の薩摩藩、攘夷の不可能を悟った薩摩隼人たちは、海を渡る決意をする… 刀を捨て、髷を切り、洋服を纏って牛肉を食らう、、、
西洋文明に全身を浸しながら、本当の愛国心を見つめ続ける彼ら 世界の発展と混沌を目の当たりにし、その体験のすべてを近代日本の形成に注ぎ込む… 東京開成学校(東京大学の前身)初代校長「畠山義成」、初代文部大臣「森有礼」らの若き日々に織り成す青春群像……。
ロンドン留学のことが中心かと思っていたのですが、ロンドンに到着するまでのエピソードが中心で、ほぼ航海記でしたね… 2か月にも亘る船と汽車の旅、当時の人々が、鎖国されていた日本から海外へ飛び出し、驚きやカルチャーショックを伴いながらも、成長する姿が愉しめる冒険譚でした、、、
史実に沿っているので、セミ・ドキュメンタリーという印象ですね… その後、成功した人、戦死した人、行き倒れて死んだ人、その後の人生は様々ですが、日本(薩摩)しか知らなかった若者達が世界を見た驚きと、それを越えようと意気込む姿が印象に残りました。
ただ、登場人物が多く、常に読む側の視点が入れ替わり、気持ちをシンクロするのが難しかったですね… もう少し、限定した人物の視点から描かれていた方が感情移入できたかなと思います、、、
それにしても… 当時のイギリスの国力って、凄まじかったんだなー と改めて感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示