きまぐれ砂絵かげろう砂絵 (光文社文庫 つ 4-43 光文社時代小説文庫 なめくじ長屋捕物さわぎ)
- 光文社 (2010年12月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (585ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334748944
作品紹介・あらすじ
「長屋の花見」「舟徳」「野ざらし」と落語に材をとった作品で構成した、さながら"都筑寄席"ともいえる『きまぐれ砂絵』、水に浸すと花開く酒中花、南蛮渡来の燈篭、かいやぐらの太刀など、珍奇な風物を巧みに織り込んだ、江戸情緒溢れる『かげろう砂絵』の二冊を合本。砂絵書きのセンセーを中心に貧乏長屋のおかしな連中が繰り広げる人気捕物帳シリーズ第三弾。連作時代本格推理。
感想・レビュー・書評
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カタカナ語の漢字表記や、カタカナ表記の人名など独特の表現の時代推理小説。
著者のあとがきにもあるように、落語を題材に書かれた捕物帳だが主人公は岡っ引きでも同心でもなく、センセーと呼ばれる砂絵師が探偵役で手下は同じ長屋に住む、特異なアウトローたちという設定。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2010年12月20日、初、並、帯無
2015年8月1日伊勢BF -
『なめくじ長屋』シリーズの5、6巻の合本。全篇が落語ネタという『きまぐれ砂絵』の趣向が個人的にツボ。謎解きもさることながら四季折々の江戸の風物が愉しい。お気に入りは、次いで『』野ざらし」、「夢金」、「酒中花」かな。
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落語「擬宝珠」を喬太郎師の口演で聞いた。面白い噺なのにあまり聞いたことないなあ、と思ったら、師が「速記録」から掘り起こした噺とのこと。で、喬太郎師がその噺を知ったのが、この「きまぐれ砂絵」。
落語を題材に捕物帳に。「『夢金』が夢でなかったら」「『野ざらし』の隣の女が幽霊でなかったら」「『船徳』の船宿の女将さんが殺された」とか、落語を知ってたらにやりとする設定。
都筑道夫はほんと楽しませてくれる作家。まだ、「小説」が一般的な「娯楽」として存在していたころの職人的な作家だ。 -
江戸時代の話なのにあまり時代物という感じがしない、と常々思っていたのですが、その理由として武士の心構えがどうこうとか、武士の本分がどうこうとか、このシリーズにはそういうものが出てこないからだと『深川あぶら堀』を読んで初めて気づきました。
むしろ江戸の習俗なんかはたくさんちりばめられているのに。
これまで読んだ時代物のほとんどが武士や大店を抱える町人のように建前だの誇りだのを気にする人たちだったからかな。でもいま出ている時代物のほとんどは武士を扱ったもので、つまり手に取るもの自体偏ってるといえば偏ってる。
話は少し血腥いのが多いかな。どちらかといえば、落語に題材をとったきまぐれ砂絵の方が好きな話が多かったです。
巻末の本人が語った砂絵シリーズのことも面白かった。