女の絶望 (光文社文庫 い 48-1)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334749293

感想・レビュー・書評

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  • 熟練の味
    しろみさん面白い

  • 「あたしはあたし、人は人」 これがね、難しいんですよね。 比呂美さんが新聞に連載中の身の上相談「万事OK」を下敷きに上梓した一冊。

    人の悩みを読んでいるうちになぜか自分が見えてくる…。 うん、そうなんだよね!.




    育児エッセイの比呂美さんから幾星霜。
    子どもたちは成長し、ご自分は離婚・再婚を経て、更年期や老親の介護を抱えていたころなんですね。

    新聞の身の上相談というものは、
    誰が見てもこれは大変だ!という状況に対して、ぶっ飛んだ回答者の論理でバッサバッサと切り捨てて、そんなことはたいしたことじゃない、あなたの気の持ちようです、となるか、
    私はもっと凄いんだ!みたいな露悪的自慢&武勇伝みたいなものになるか、が多い気がするのだけど、

    比呂美さんは、かなり大胆なことを言っている(はず)なのに、なんかストンと胸にくるものが多く、うんうん、そうかもね、と思えるところが優しいなぁ、と。

    夫のEDにまつわるあれこれに対しては、

    今いい薬がいろいろと出回っていて、じっさいとってもよく効きます。あっ、立たないと思ったら、すぐ医者に駆け込むくらいの良識と勇気がほしいです。セックスをバカにしちゃいけません。家庭をきちんと維持するためにはすごーく大事なことなんです。

    これ、2007年から8年にかけての連載だったんですね。
    こんなにすっぱり、対処療法的に見えて、実は一番大事なメンタルなことまで答えてくれている身の上相談がそれまでにあっただろうか!なんて力瘤を作ってみたりして。

    で、あれこれあれこれ語った後で、(というか、語っている最中も)
    「あたしはあたし、人は人」なんですよね。

    行為が不心得の人に対してはがつんと言う。
    でも、生き方が不心得の人には、どんなに不愉快でも、言う必要はない。かれらの生き方があなたと違うだけなのです。あなたは違う生き方が気に入らないだけなのです。

    と・・・。

    そして、「あたしはあたし」の次に、
    「あたしが一番大切」とはっきり思えるようにならないと
    「人は人」にたどりつけない。
    とくるんですよ。

    うん、ホントだよね!
    「あたしはあたし」とは、結構楽に考えられるけど、「人は人」とまではなかなか・・・。(汗)

    ここのところ、今年に書かれた「閉経記」に始まって、若いころやちょっと前の比呂美さんにさかのぼって一気に彼女の世界に入り込んでしまったけど、なんて気もちのいい人なんだろう、というのが一番の感想です。

    これまでご縁がなかったのに、お互い、こんなに年を取ってから出会えたというのも案外必然だったりして?(#^.^#)
    誰に言っていいかわからないけど、ありがとうございます、とお伝えしたいです。

    • tsuzraさん
      こんばんは。

      >一気に彼女の世界に入り込んで

      伊藤比呂美さんのレビューがたくさん(*^_^*)すごいです。

      じゅんさんの、結びの3行が...
      こんばんは。

      >一気に彼女の世界に入り込んで

      伊藤比呂美さんのレビューがたくさん(*^_^*)すごいです。

      じゅんさんの、結びの3行が胸に沁みます。
      出会いの素敵さや、生きていく中で、ちょうどいい時期に出会えたおもしろさが感じられるのがすごくいいなぁと思いました。
      この先自分にもまた、作家さんや作品とのいい出会いがあるかもしれないんだと思えて嬉しくなりました。

      >誰に言っていいかわからないけど、ありがとうございます、とお伝えしたいです。

      本当にその言葉のまま、私もそういう気持ちになることがあります。今日はじゅんさんにありがとうございます、と言いたいです(#^_^#)
      2013/08/27
    • じゅんさん
      >tsuzraさん
      なんとなく、このままご縁のない人かなぁ、と思っていた伊藤比呂美さんに、こんなに時を経てから巡り会えたと思うと、そうですよ...
      >tsuzraさん
      なんとなく、このままご縁のない人かなぁ、と思っていた伊藤比呂美さんに、こんなに時を経てから巡り会えたと思うと、そうですよね、これからもこんなことがあるかもしれない!と。(#^.^#)

      一度もお会いしたことがないtsuzraさんなのに、お互い根っこが同じなのでは?と感じられる…。
      ネットのおかげでこんなおしゃべりができるって、その意味ではいい時代に生きてますよね、私たち。(#^.^#)

      こちらこそ、どうもありがとうございます!
      これからもよろしくです!!
      2013/08/28
  • しろみ先生が相談者の悩みを自分の事のように受け止め、
    その人と同じ立場に立って考え、
    苦しみを共有する姿に敬服の念を抱いた。

    悩みを解決するよりも
    いかにして相談者の心を楽にしてあげるのかに
    心を砕いておられる。

    大海のような包容力と
    人間に対する深い慈愛を感じた。

  • 人生相談をまとめた本だけど、完全なるフィクションでもあるそうで、ジャンルとしては何になるんだろう。
    とにかく文体が江戸弁で歯切れがよくって爽快。読みながら時に大笑い。
    「女の人あるある」がてんこもりすぎて、これは必読の書だと思う。解説にあるように、若い女の子にも、男の人にもおすすめです。
    悩みに真摯に沿う「しろみさん」の回答が、時に具体的に、時には相談者に共感を示し、常にちゃんと「答え」になっているのがうれしい。さすが人生の達人。やさしくて、かっこいい。
    文庫版は金原瑞人の解説も秀逸。これを読んで佐野洋子氏の「クク氏の結婚、キキ夫人の幸福」も読んでみたくなった。

  • 10年後にまた、20年後にまた読み返そう。
    これからある、いいことやなこといろんなこと、ひっくるめて、ちゃんと歩いていけるといいなあ。

  • 業だねえ… 生きるってことは、様々な業を背負うことだ。
    死ぬときゃ一人、でも生きてる間は一人でおれない。そうすっと、溜まったり噴き出たりするもんがあるわけで…。人生って、きっと、ぐちゃぐちゃしたもんなんですね。思ってるよりずっと。

  • すごい本でした…。人生相談の紹介、という形を取っているけれど、ともかく、相談者に寄り添ってくれている。講演会後にずっと待ってる人の気持ちが分かる。私もしろみさんに相談したいことがある、と思ったら、ちゃんとその答えも書いてあった。もっとしろみさんの本を読みたいけど、文庫になってる本はあまりないのですね…

  • 江戸っ子口調(?)が苦手で読むのを後回しにしてたのですが、慣れてくると女の普遍的な悩みがいっぱいで面白い。どこも同じなんだなあと。「一度思いっきり恋愛した後は、もう幻想を抱けなくなっちゃう」というのはすごくわかる。そうなってから出会った人との方がいい関係を築けるのかもしれないな。

  • 伊藤さんの飾らない回答が、気持ち良い。女性だから口にしにくい、性やsexへの考え方、若さへの許容など、しっかり言葉で励ましてくれる。読んでいて安心する。
    ○○しなければいけない、○○でなくてはいけない、○○にならないようにしましょう、なんて1つの正解を示すのではなく、個人個人への肯定感を感じさせてくれるように思う。
    女として生きる、生きづらさをわかったうえで、応援してくれる力強い味方、伊藤さん!

  • 「あたしはあたし、人は人」

    何度膝を打ったことか。
    伊藤比呂美が子育て、結婚生活、性、更年期、介護について、身の上相談に答える。

    豪快に身も蓋もないように答えているようで、一人一人の悩みに寄り添って、全力で考えて答えている姿勢が愛にあふれている。

    言葉の魔術師、軽快なリズム、冗談と真剣味のちょうどいいバランス。
    絶望と希望。
    女は絶望感に打ちひしがれることも多いけど、自分だけじゃないと思うだけでも救われる。

    最後の金原さんの解説まで読んで、読了。

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著者プロフィール

伊藤比呂美
1955年、東京都生まれ。詩人。78年に現代詩手帖賞を受賞してデビュー。80年代の女性詩人ブームをリードし、『良いおっぱい 悪いおっぱい』にはじまる一連のシリーズで「育児エッセイ」という分野を開拓。「女の生」に寄り添い、独自の文学に昇華する創作姿勢が共感を呼び、人生相談の回答者としても長年の支持を得る。米国・カリフォルニアと熊本を往復しながら活動を続け、介護や老い、死を見つめた『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』(萩原朔太郎賞、紫式部文学賞受賞)『犬心』『閉経記』『父の生きる』、お経の現代語訳に取り組んだ『読み解き「般若心経」』『たどたどしく声に出して読む歎異抄』を刊行。2018年より熊本に拠点を移す。その他の著書に『切腹考』『たそがれてゆく子さん』『道行きや』などがある。

「2022年 『伊藤ふきげん製作所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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