スナ-ク狩り (光文社文庫 み 13-9 光文社文庫プレミアム)
- 光文社 (2011年7月12日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334749705
感想・レビュー・書評
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力強い作品でしたー
同時多発な描写は読んでてスピード感ありますね
最後の盛り上がりも迫力満点
ただ気になるのは事件後の慶子がどうなった?かですね!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
スマホの普及していない時代だから成り立つ物語だが、時代背景も一緒に楽しめた。悪人が痛い目にあって、スッキリ終わらないのが宮部みゆき作品。人が持つ善と悪の境目の曖昧さが悲しいほど。
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自業自得という言葉がある。
自分がした悪い事の報いを自分の身に受けること…という意味だ。
何の罪もない人間の命を、自分のくだらない欲望の邪魔になるからといとも簡単に奪うことができる人間。
そんな人間にふさわしい最期だったのでは?と思う。
第三者は、誰が聞いても納得するような「正義」というものをふりかざす。
裁判などでよく耳にする「更生の余地がないとは言えない」
更生する可能性がゼロでない限り、そのあるかどうかもわからない可能性を信じるということだろう。
何らかの事情があってやむなく他者の命を奪う人もいるだろう。
けれど、自分勝手な言い分で平然と命を奪うような人間が本当に更生できると思っているのだろうか?
日本の刑務所は更生施設ではない。
建前では更生や社会に適応できるように働きかけをするために施設なのだろうが、実際は罪を犯した人間を社会から一時的に隔離するだけのような気がする。
罪もない人を殺しておいて「反省しています」と言うだけで罪が軽くなるようなことがあってはならないと思う。
織口も、関沼慶子も、佐倉も、自分の命を賭けている。
安全地帯にいては出来ない事をやろうとしている。
法律的には許されないことに違いないが、その心情は理解できる。
この物語はいろいろなものを投げかけてくる。
共感も、怒りも、悔しさも、後悔も…共有できるものがたくさん詰まっていた。
そして、最後の付記にあったこと。
罰せられるべき人間がしっかりと見合った罪で罰せられること。
本当に大切なことをそれなのだと思う。
死んでしまった人間はもう何も語ることができない。
だからこそ余計に、生きている人間だけが有利になるようなことは慎むべきだと。
こんなことを思うのは偽善だろうか。
ずいぶんと昔に書かれた物語だ。
そのことをすっかり忘れていた。
警察に慶子の車が発見されたことを何故佐倉に知らせないのか。
不自然に思い、そして気づいた。
この物語が書かれた当時は携帯電話などなかったのだと。
機器の進化は小説にも影響を及ぼしている…とあらためて感じた出来事だった。 -
なぜか母さんから送られてきた荷物の中に潜り込まれていた本。ちょwww小説とか俺明治文豪と森見登美彦しか読まねーのにwwwいらねーwwww宮部みゆきとかブレイブストーリーの印象しかねーwwって思いながらも割と暇だったのと、学術書的なものから離れたかったので読んでみた。
・・・
意外に面白かった悔しいwwwなんか最後はハッピーエンドになるんだろうなーはいはいワロスワロス・・・えっ
って感じで終わったったww気になるやつは読めwwうぇうぇ
92年に出版されたらしいが所々に時代を感じさせる。まず、携帯電話がない。あれば一気に解決する感じなのに。テレフォンボックス、電話帳、時刻表もうなんか懐かしいもののオンパレードwww技術の発展はまさに日進月歩ですな。
なんでもいいけど小説と同じくらいの早さで経済学書も読めるようにならないかなーと思った23の冬 -
登場人物の思いを複雑に交錯させながら、およそ半日の出来事をスピーディーに描き出す手法が映像的で、裏表紙にあるノンストップ・サスペンスという言葉通りの作品でした。
三十年以上も前に発表されたとはいえ、犯罪被害者の家族と加害者の隔たりや、司法に対する不条理さ、そして人が人を裁く是非を問う内容は今日的でもあり、それらを内包しながらサスペンスというエンターテインメントにまとめ上げる技量は流石だと思います。 -
サスペンス、ただ年代が色濃くてたまに描写がイメージしにくかった
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銃身を塞いだ散弾銃が結婚式場から関越を抜けて金沢の裁判所へ向かう。
久しぶりに手に取った宮部さんのミステリ。それなりに面白かったですが、頭の中を20〜30年ほど巻き戻さないと、やっぱり周囲の環境が変わりすぎてるのでなかなか入り込めないです。
二連銃の片方の銃身を塞ぐというアイデアがここまで緊張感を持たせるとはさすが宮部さん。
東野圭吾さんのさまよう刃といっしょにどうぞ。銃身に異物がないか、薬室に実包がないかをつねに確かめましょう。それと銃を人に向けてはいけません。矢先はちゃんと確認を。 -
宮部みゆきの初期作品だか、完成度がやはり
素晴らしい。
色々複雑な人間模様が交錯して、関係の無い
人間関係からまた一つづつ事件へと繋がって行く
様は、読んでいてスピード感もあり事件の結末
への展開がとてもハラハラする仕掛けになっている。 -
「スナーク狩り」
スナークとは。
織口邦男の勤める釣具店に関沼慶子は鉛版を買いに来た。不思議に思った織口だったが、後日再び店にやってきた慶子から銃を持っていることを聞く。そして、織口はある計画を思い付く。その為に今晩中に銃を盗まねばならないが、その晩、慶子は銃を持ってある場所に現れた。
あらすじにある様にkey personは織口と慶子。織口は公判に通っていることが明かされ、慶子は辛い過去を抱えている。それぞれの理由により銃を手に取ったことでミステリーが深まっていく。過ぎる時間はたった半日、登場人物も数人。少ない時間に少ない人物で濃厚な展開が繰り広げられる。小悪党も極悪人も出てくる。
小悪党に対しては、国分、和恵、範子の順で腹が立つ。小悪党として十分な役目を果たしていたということなのだが、どうにもこういうやつらへの耐性が落ちてきている。織口が立ち向かう極悪人は、取り敢えず殴りたい。腹が立ってしょうがないのだ。範子に関しては、若さ故の過ちと100歩譲ってやろうとは思えど、自己都合で慶子を駆り立てた訳で決して許されることではない。
ポイントとしては、スナークを上手く取り入れている所と解説にある映像型の宮部みゆきが挙げられる。スナーク(the snark)とは、「スナーク狩り(ルイス・キャロルによるナンセンス詩)」の中で探索隊が捜し求める架空の生物である。スナークには様々な異なった品種が存在し、あるスナークは羽毛を持っていて噛み付き、あるスナークは頬髭を生やしていて引っ掻く。あるスナークはブージャムであり、ブージャムに出くわした者は突然静かに消え失せて、二度と現れることはない。殺意に絆された慶子、取りつかれた織口、問われた修治は、怪物になり、そして消えていき、また消えそうになった。
後者は、解説を読んで頂きたい(書評を書きながら思うのだが、解説者の様な視点を取り込みたいと思うが、難易度は高い)。映像型だからこそ、宮部みゆきの作品は映像化しやすいという点はあるかもしれない、映像化の出来不出来は置いといて。
宮部みゆきの長所である「圧倒的なストーリーテリング」と「感動的な物語」も充足された小説。