鳩笛草―燔祭/朽ちてゆくまで (光文社文庫プレミアム)

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  • 光文社
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レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334749729

作品紹介・あらすじ

亡き両親が残したビデオを見た智子は、かつて自分に特殊な力があったことを知る(「朽ちてゆくまで」)。わたしは凶器になれる-。念じただけで人や物を発火させる能力を持つ淳子は、妹を惨殺された過去を持つ男に、報復の協力を申し出る(「燔祭」)。他人の心が読める刑事・貴子は、試練に直面し、刑事としての自分の資質を疑ってゆく(「鳩笛草」)。超能力を持つ三人の女性をめぐる三つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 未来予知能力、念力放火能力、透視能力。
    この「鳩笛草」には、図らずもこれら三つの超能力を持ってしまった女性たちを主人公にした中編、三作品が収められている。

    一般の人間には持ち得ない能力。
    その力を得たがために、彼女たちはもがき苦しむ。
    そして、その力とどう向き合いながら生きてゆくべきか、真剣に悩み、
    試練に直面し、答えを導き出そうとする。

    三人の考え方は三者三様だ。
    今後の生き方、結末もそれぞれ異なっている。
    それでも、彼女たちの苦しみは読者の私たち、なんら特別な能力を所持していない私たちにも共感を抱かせる。

    超能力ともなれば諸手を挙げて喜びたくなる力と錯覚しがちだが、他人と異なること、人間として異質な存在になることが、どれだけ新たな苦しみを抱かせるかを、この作品はまざまざと教えてくれる。
    悲壮感と虚無感に苛まれながら、それでも前に向かって生きていこうとする彼女たちに、私は共鳴する。

  •  常人にはない特殊な能力を持ってしまった三人の女性の姿を描いた中編を三編収録した作品集。

     予知能力、発火能力、テレパシー、描かれる超能力自体は目新しいものではありませんが、その能力を駆使して活躍する女性を描く、というわけではなく、その能力を持ったが故の苦悩というものに焦点を当てているのが珍しく、宮部さんの味なのだろうな、と思いました。

     中でも印象的なのが『燔祭』
     能力を持ってしまった故の苦しみ、自身の能力をこういう形でしか生かせない彼女の生き方に切なさと寂しさを覚えました。彼女の倫理観や正義感も果たして正解と呼べるのかどうか、難しいところでもあり、そういう点でも考えさせられる話です。

     また狂気の描き方の巧さも感じました。彼女が力を発揮する場面は、一線を超えようとした時の人間の恐ろしさがものすごく臨場的に描かれていて少しホラー的な怖さも感じました。

     彼女の再登場する長編もあるので、そちらもそのうち読んでみたいと思います。

     『朽ちてゆくまで』と『鳩笛草』はアプローチがそれぞれ対照的なのが印象的です。一方は自身の能力に気づき、これからその能力と付き合っていかなければいけない女性、もう一方は能力の翳りを感じ始めた女性が主人公です。

     これから能力を持つことへの不安や恐怖、その逆に能力を失う事への不安と恐怖。どちらも今までの自分とは違う自分になることを意味しているように思います。

     そう考えると超能力を持ってしまった女性たちと言っても決して特別な存在ではない、ということが見えてきて、普通の人がどのように新しい自分と折り合いをつけていくのか、という話としてそれぞれを読み解くことができるようにも思います。

     超能力を安易なエンターテインメントに仕上げず、それによって人の倫理観や成長、衰微を描くという発想が良かったと思いました。

  • 著者の超能力者ものは過去『龍は眠る』『クロスファイア』『蒲生邸事件』など長編をおもしろく読んだが、本書はそうした同種中短編三つを収録、同様に愉しめる秀作揃いであった(再読含む)。キングの同題材作品を連想してしまうけれど、それは別に瑕疵(瑕瑾)ではない。『燔祭』『鳩笛草』の二篇は著者の短篇作中もっとも好きな部の二つで、前者のラストシーン(情感)など映像的にも映える秀逸なもの。後者の心身(能力)の衰弱のすすむ中(その過ぎた能力ゆえの後遺症?)、事件解決に挑む主人公刑事貴子の姿が痛々しくも胸をうつ。

  • 宮部みゆき初期の作品かな?連作3つ。それぞれ超能力を持つ女性が出てくる。
    「朽ちてゆくまで」…両親を失った交通事故で記憶を失っていた私。しかし、予知夢をみることができた少女だった。
    「燔祭」…火を使うことのできる女性。同僚の妹の敵をとることにしたが、それは能力を使いたかったからなのか。
    「鳩笛草」…触れることで相手の思考を読むことのできる刑事。しかし最近は力が衰えてきている上に、頭痛がひどい。命にも不安を抱えながら最後の事件を解決しようとする…。

    一番最後の鳩笛草が好きだな。続編はないらしくて、その後が気になった。

  • 【あらすじ】
    亡き両親が残したビデオを見た智子は、かつて自分に特殊な力があったことを知る(「朽ちてゆくまで」)。わたしは凶器になれる―。念じただけで人や物を発火させる能力を持つ淳子は、妹を惨殺された過去を持つ男に、報復の協力を申し出る(「燔祭」)。他人の心が読める刑事・貴子は、試練に直面し、刑事としての自分の資質を疑ってゆく(「鳩笛草」)。超能力を持つ三人の女性をめぐる三つの物語。

    【感想】

  • 宮部みゆきを読み終わるといつも「楽しいけど、東野圭吾の方が好き」って感想で終わる。今回も同じでした。

  • 中編の作品、三作。超能力のある三人の女性をそれぞれ主人公にした物語。超能力が、あるがゆえに悩みながら生きている。衰える時、能力があったと気づく時、普段能力を使えないけど使ってみたいと願っている女性。悩みはさまざま。

  •  この話は、短編……というよりも中編、な感じの三部作。
     全部超能力……というのか不思議な力を持った女の人のお話です。

     一つ目は、「朽ちてゆくまで」で、一緒に暮らしていた祖母をなくした人の話しなんですけど……。
     祖母がなくなったことで、この人は家の掃除を始めるわけです。
     そしたら、そこには不思議なビデオテープが数本……。
     再生してみると、幼い頃の自分が何かを喋っている。
     そしてそれは、未来を予知した内容だった……。
     で、最終的にはこの人、記憶と共に一度失ってしまったその力を取り戻してしまうわけですが。
     苦しい……。

     でもって、次の話が「燔祭」。
     頭の中に銃を隠し持っている女の人の話。
     なんていうか、手を触れずに、何もせずに、物に火をつける能力のある人の話……です。

     で、最後が「鳩笛草」。
     個人的にはこれが一番好きです。
     これは、能力を失っていく人の話。
     苦しくて、痛くて、つらいです。
     人間は持ってるものに頼りがちで、その持ってるものが失われてしまうとしたら……怖いよね。
     他人はどう思うのかわからないけど、個人的には怖いと思う。
     多分それは、私が視力を奪われてしまうようなものだと思うから。
     なかったら一時的にしろ、生きていけないような絶望感にとらわれると思う。
     だって私は、視力のない生活は知らないから。

     最後、どうなるのかわからないけど……。(物語の最後で最終的にどうなるのかはわからない)
     この話が一番好き。

     やっぱり、この人ってすごいんだな……と思いました。

  • いわゆる超能力ものですが、きめ細やかな心の動きやエスパーであるがゆえの苦悩など、とてもよく伝わってきました。
    宮部みゆきといえば長編のイメージだけれど、こうした短編も無駄な描写が一切なく、しまった感じでいいですね。

  • ちと仕事の間が空いてしまったので、宮部みゆき再読週間中。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。
1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。
大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。
『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。

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