飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751050

作品紹介・あらすじ

孤独なジョニー、弱虫のウーリ、読書家ゼバスティアン、正義感の強いマルティン、いつも腹をすかせている腕っぷしの強いマティアス。同じ寄宿舎で生活する5人の少年が友情を育み、信頼を学び、大人たちに見守られながら成長していく感動的な物語。ドイツの国民作家ケストナーの代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 言わずと知れた名作。
    第一章はなかなか少年のキャラクターが描けず、無理矢理読み進めた。それぞれの個が、雰囲気が感じられてからは読み終えるのが勿体なかった。

    どの面を切り取っても美しい。
    そんな大切なことがギュウギュウに詰まった宝箱みたいな本。

    素敵な大人しかでてこない。

    ヨーロッパのクリスマス。

    初めて他の訳者のものも読んでみたいと思った。

    2020.5.12

  • 読み始めてしばらくして「エミールと探偵たち」と同じ作者だと気づく。個性ある子供たちがそれぞれの持ち味で活躍する物語。はじめは人物紹介の多さに面倒になるが、きちんと覚えなくともキャラの特徴がしっかり描かれておりざくざく読み進めるといいと思う。興味深いエピソードが立て続けに起こり読み手を飽きさせない。先生の正義さん、電車に住む禁煙さんの存在が心地よく、もっと活躍してもらいたいと感じた。

  • 特典小冊子欲しい、、、

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    https://www.kotensinyaku.jp/news/006931/

    飛ぶ教室 | 光文社古典新訳文庫
    https://www.kotensinyaku.jp/books/book07/

  • 児童文学小説なので読みやすく、登場人物も魅力的。

    大人が読んでも頷ける名言も多く、良い作品だった

    「教師には、とんでもない義務と責任がある。自分を変えていく能力をなくしちゃダメなんだ。
    ぼくらに必要なのは人間の教師であって、2本足の缶詰めじゃないんだ。ぼくらを成長させようと思うんだったら、教師のほうだって成長してもらわなきゃ」

    「どんな迷惑行為も、それをやった者にだけ責任があるのではなく、それを止めなかった者に責任がある」

  • ギムナジウムを舞台に、クリスマス前の少年たちの数日間を描いたケストナーの児童文学。子供の頃には読んだ記憶がないのだけど、たしか三浦しをんさんがエッセイでギムナジウム萌えみたいなことを書かれてたような記憶がうっすらあったので、今さらですが読んでみることに。

    ギムナジウムと聞いただけで自動的に脳内が萩尾望都の絵柄で変換されるオタクなので、序盤はわくわくしながら読み進めたのだけれど、気付くとヨハン・ジギスムント・ギムナジウムの生徒たちは長年対立を続けている近所の実業学校の生徒たちとの抗争を開始、『トーマの心臓』のはずが何故か『クローズ』の世界に(苦笑)

    しかもこの喧嘩、意外と暴力的。まず寄宿生ではなく通学組の一人が帰宅中に実業学校の連中に拉致され、逃げてきた一人が主人公グループに助けを求める。彼らは早速作戦を練り、仲間を集め報復に繰り出し、まずはタイマン勝負、その間、捕虜にされた子は10分につき6回殴られている。タイマン勝負に勝ったのに相手が捕虜を返さないので結局乱闘。あれ?私の思い描いてたギムナジウムとちょっと違うよ?

    そんなわけでこの喧嘩が全体の半分くらい続くので後半は誰と戦うのかとドキドキしていましたが、後半はふつうに生徒たちの友情やクリスマスのエピソードでホッとしました。ここで登場人物をメモ。ちなみにギムナジウムは10歳から1年生が始まり9年生まで。主役グループの子たちは全員5年生なので、15歳くらいかな。


    ○マルティン・ターラー:成績1位の優等生で、みんなのリーダー格。しかし家が貧乏でクリスマスに帰省するお金がない。絵が上手。

    ○ジョニー(ジョナサン)・トロッツ:クリスマス劇「飛ぶ教室」の台本を書いた文学的少年。アメリカ人の母とドイツ人の父の間に生まれたが離婚した両親に4歳で捨てられ、アメリカからドイツまで彼を運んだ船の船長が今は親代わり。

    ○マティアス・ゼルプマン:いつもお腹を減らしている食いしん坊だがボクサー志望で腕っ節が強い。実業学校との戦いでもタイマン勝負で勝利をおさめる。喧嘩っ早いけれど心優しくチビのウーリをいつも庇ってやっている。

    ○ウーリ・フォン・ジメルン:チビで弱虫。いつもマティアスの影に隠れていたが、突然勇気を出して傘を持って飛び降りる。名前にフォンが入っている貴族の子。

    ○ゼバスティアン・フランク:頭の回転が速く、口が達者。いつも軽口を叩いている皮肉屋だが、自己分析も的確、とても利巧。

    ○正義さん=ヨハン・ベーク先生:生徒たちに人気のあるいつも正しい先生。35歳くらい。

    ○禁煙さん=ローベルト:学校近くの市民農園で、廃車になった鉄道の禁煙車の中で暮らしている謎多き人物。生徒たちに慕われており実業学校との喧嘩の際はアドバイスも。実は辛い過去があり世捨て人になったが元医者。

    ○テオドール:9年生。枕詞のように常に「美男のテオドール」と書かれている。最初は嫌な上級生として登場するが、すぐに改心。とくに活躍はしないが、美男(笑)


    マルティンたちは5人組だけど、その中でもマルティンとジョニーが親友、マティアスとウーリも親友、ゼバスティアンは自分の孤独を自分なりに分析できる知性派で、個人的にはこのゼバスティアンと、アホ可愛い単細胞マティアスがお気に入りキャラでした。

    主人公マルティンは、主人公ゆえに正統派すぎてイマイチ共感できず、あとクリスマスに寮に残らなくちゃいけなくなったときに、同じく寮に残るジョニーについて(船長は航海中)彼にはそもそも帰る家も待ってる人もいないけど、自分は愛してくれる家族が待ってるのに帰れないから自分のほうが可哀想的な独白部分があり、ちょっと引いた。まあそういうのも成長の過程なんだろうけどさ、そこで同じように帰れなくても自分は愛されてるだけ幸せ、って思うとこでしょって。

    彼の貧しさに対する解決方法が、親切な正義さんが現金をくれる、というのも若干モヤりました。どうするのが正解か、難しい問題だけど、児童文学なのに、他人がくれるだけのお金で解決しちゃうんだ!?ってちょっとビックリした(苦笑)正義さんと禁煙さんの友情、マティアスとウーリの友情にはホロリとしました。

  • 心の清涼剤。
    40も半ばを過ぎたおっさんでも、子供時代はあるわけで、たまた中学1年と高校3年間は親元から離れて暮らしていたこともあり、学校生活の描写にグッとくる。
    親としてこの本を読むと、子どもとどういう関係であるといいのか、いいヒントになる。
    決して上から押さえつけるのではなく、温かく優しい眼差しでサポートし、1人の人間として尊重している。そういう大人になるためには、心の余裕がなくてはならないだろうし、適切なことばを持たなければいけないのだろう。

  • 『賢さのない勇気は乱暴に過ぎない。勇気のない賢さは、冗談に過ぎない。』 いい言葉です。 前々から読みたかった本。

  •  別の小説でまさにこの本が出てきたので、先に読むことに。日本でいうと中2、3くらいに当たる子たちのクリスマスまでの間の日常生活を描いている。だんだんと5人を好きになってくるし、正義さんのような大人はとても大事な存在だと思った。そして大人である自分はそんな正義さんや禁煙さんのような存在になれたらとも思った。

  • ギムナジウムのクリスマスを舞台にしたドイツの児童文学。

    個性的で全然タイプの違う子供たちが、それでもとても仲が良さそうで、生き生きしていてとても良い。仲良しの学友に、信頼できる大人たちがいる、素敵な学生生活。
    けれど、子供たちにもそれぞれ悩みがあって、それを乗り越え学友や大人たちとともに成長していく姿は感動的でした。
    キラキラしていて爽やかで切なくて、大人の自分が読むと何だか眩しすぎるくらい。
    自分の子どもの事を思い返して、大切な時間だったと再確認できるような、美しくまっすぐなお話です。

  • ドイツのギムナジウム(中高一貫校)を舞台に、寮生活を送る五人の五年生(十五歳前後)の生徒たちを中心として、クリスマスまでの数日間が描かれます。

    五人の生徒たちには、正義漢の優等生、腕白な食いしん坊、やや理屈っぽい参謀タイプ、書名の"飛ぶ教室"の劇作を担当している作家志望の文学愛好家、女性的な外見の気弱な少年といった、それぞれわかりやすい属性が与えられており、彼らの友情やそれぞれに抱える悩みが本作のポイントとなります。そして、この五人のほかに彼らが慕う人物として、舎監を兼任する一教師である"正義さん"ことヨハン・ベーク先生と、学校付近にある、かつて列車として使われていた車両に住む謎の多い"禁煙さん"という二人の大人が存在し、彼ら尊敬するにふさわしい大人たちに見守られて少年たちが学園生活を送っていることも人物配置上の大きな特色です。

    登場人物の年齢がやや高いことや、女性がほぼ登場しないことを除けば、世界名作劇場の原作にでも選ばれそうな内容であり、正統派児童文学作品として読んで差し支えなさそうです。また、本書における訳の特徴かもしれませんが、あからさまに子供向けの文体とはなっていないため、大人でも違和感なく読み通すことができます。なお、書名の"飛ぶ教室"は、前述のとおり少年たちがクリスマスに演じる劇作品のタイトルであり、教室自体がさまざまな場所に移動して課外授業を行うというSFと呼ぶべき内容ですが、基本的に作品内の道具として扱われるだけで、作品のテーマを託すような特殊な要素を含んでいるようには見受けられませんでした。

    通読後の主な所感として、他校生徒との抗争における暴力やいじめのような行為も扱ってはいるものの、思春期の難しい年ごろの少年たちを主人公に据えているわりには葛藤が少なく、"正義さん"、"禁煙さん"といった大人たちが理想的すぎるうえ、彼らに対する子どもたちの反応があまりにも素直なため、かえって違和感があります。執筆当時のドイツはナチスの支配下にあったとされており、そのことは作品に直接的な影響はありませんが、優等生的な作品内容に落ち着いた一因だろうかなど、邪推しないでもありませんでした。

    補足として、まえがきとあとがきでは作者自身が登場して本文を挟む構成となっており、あとがきではささやかなサプライズが用意されています。

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