黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 143
  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751104

作品紹介・あらすじ

推理小説が一般的になる半世紀も前に、不可能犯罪に挑戦する世界最初の探偵・デュパンを世に出した「モルグ街の殺人」。160年の時を経て、いまなお色褪せない映像的恐怖を描き出した「黒猫」。多才を謳われながら不遇のうちにその生涯を閉じた、ポーの魅力を堪能できる短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 謎解きミステリーにどんでん返しは私の大好物。

    本作におさめられている「モルグ街の殺人」から始まった推理小説の歴史。

    まさに原点となる作品をようやく手にしました。

    本書は「モルグ街の殺人」以外にも「黒猫」「本能vs.理性ーー黒い猫について」「アンモティリャードの樽」「告げ口心臓」「邪鬼」「ウィリアム・ウィルソン」「早すぎた埋葬」の計8作からなる短編集。

    「モルグ街の殺人」も60p弱の作品なので、サクッと読み終えました。

    まるで詰将棋。

    作者が決めた答えに導いていく思考は、今の時代の何気ない日常の中でも使える思考法で、作品の舞台裏を覗き見たような感覚を味わいました。

    本作で謎解きをするデュパンこそが世界初の推理探偵であり、モルグ街…こそが推理小説の扉を開いた作品。

    古い作品ではありますが、古さを感じる事なく読み終えました。

    お見事。

    説明
    内容紹介
    ■黒猫の真の恐怖がよみがえる。眩惑へと誘う、ポーの決定訳

    怪奇趣味の奥に仕掛けられた真の狙いとは。難解な原文の中に著者ポーが残した手がかりから、「現場」を見事に再現する、翻訳家=探偵の「名推理」がここに。

    出版社からのコメント
    ■怪異と知性、恐怖と探索
    推理小説が一般的になる半世紀も前に、不可能犯罪に挑戦する世界最初の探偵・デュパンを世に出した「モルグ街の殺人」。160年の時を経て、いまなお色褪せない映像的恐怖を描き出した「黒猫」。多才を謳われながら不遇のうちにその生涯を閉じた、ポーの魅力を堪能できる短編集。

    内容(「BOOK」データベースより)
    推理小説が一般的になる半世紀も前に、不可能犯罪に挑戦する世界最初の探偵・デュパンを世に出した「モルグ街の殺人」。160年の時を経て、いまなお色褪せない映像的恐怖を描き出した「黒猫」。多才を謳われながら不遇のうちにその生涯を閉じた、ポーの魅力を堪能できる短編集。

    著者について
    エドガー・アラン・ポー [1809-1849]
    アメリカの作家、詩人。推理小説の祖とも言われる。計算された恐怖を創作する「理詰めの芸術派」。旅役者の両親に早く死なれ、27歳のとき13歳の従妹と結婚するが病気で先立たれ、職に恵まれず酒に溺れる。断酒会に参加したものの40歳で死去。主な作品に「アッシャー家の崩壊」、「黄金虫」、詩集『大鴉』など。

    [訳者]小川高義
    1956年生まれ。横浜市立大学準教授。訳書に『永遠を背負う男』(ウィンターソン)、『リリィ、はちみつ色の夏』(キッド)、『調律師の恋』(メイスン)、『灰の庭』(ボック)、『さゆり』(ゴールデン)、『停電の夜に』(ラヒリ)、『第四の手』(アーヴィング)、『骨』(イン)ほか多数。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    ポー,エドガー・アラン
    1809‐1849。アメリカの作家、詩人。推理小説の祖とも言われる。計算された恐怖を創作する「理詰めの芸術派」。旅役者の両親に早く死なれ、27歳のとき13歳の従妹と結婚するが病気で先立たれ、職に恵まれず酒に溺れる。断酒会に参加したものの40歳で死去

    小川/高義
    1956年生まれ。横浜市立大学準教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 森晶麿さんの『黒猫』シリーズ(早川書房)を読んで、ふと本家を読んだことがないことに気付きました。
    怖そう…と思い読めずにいたポー作品に挑戦です。

    本書には表題作を含め、8編の短編作品が収められています。
    「理詰めの芸術派」と評されているように、じわじわと読者を恐怖の真綿で包みこんでいく感じでした。
    「黒猫」ラストシーンの鮮やかな惨たらしさに、心拍数が上がってしまいました。
    「ウィリアム・ウィルソン」や「告げ口心臓」などで描かれる、主人公が自分自身に追い詰められていく様子は、結末を見届けずにはいられない不気味さがあります。

    訳者あとがきに「ポー作品の話の運び方が落語に似ている」と書かれていたのですが、言われてみると確かにそう感じます。
    他のポー作品も読んでみたい、と思わせるクセになる感じも落語に似ているような気がしました。

  • いやはや、ポーである。
    普通の小説を「、」や「。」の句読点だとするならば、この短編集を読んだ読後の印象は「!」や「!!!」の感嘆符だ。
    そんな印象を受けた僕が末尾の解説を読んで連想するに、ポーとは映画で言えばスピルバーグであり、漫画で言えば楳図かずおなのではなかったか!!と思うのだった。

    「黒猫」~去らぬ黒猫の記憶=自虐の発露
    「本能VS理性ー黒い猫について」~人間のみが理性的か?
    「アモンティリャードの樽」~なぜ俺を罰しない!?
    「告げ口心臓」~行き詰りの呵責
    「邪気」~だめなことほどやってみたくなるだろう?
    「ウィリアムウィルソン」~待っていたのは大鏡
    「早すぎた埋葬」~マイナスベクトルの想像力パワー
    「モルグ街の殺人」~戯画化された究極の分析力と知性

    江戸川乱歩がこの名前を選んだのは、やはりベクトルが同じなのだな、と納得できた。

  • ぞくぞくぞくぞく
    恐怖が頭でなく、心でもなく、皮膚にまとわりつく感覚。首筋に氷を当てたようなとはまさにこのこと。ふるい落としたい、でも落ちない、なぜなら「私」も「モントレサー」も「ウィルソン」も、多分、自分の中のどこかにいるから。恐怖。

  • 「アモンティリャードの樽」

    一文あらすじ

     幻のワイン「アモンティリャード」を餌に、憎き男を生き埋めにして復讐を果たす、ある貴族の話。

    メモ

     首尾一貫して、主人公の男がなぜ殺人を決行するのか、その理由が明かされない。わかるのは、彼の家の訓戒が「侮辱ニハ逆襲アリ」ということだけ。彼が憎む男は、永久に地下墓所の岩にくくりつけられたまま、完全犯罪が成し遂げられておわる。謎が謎のままにされるところ、それがこの作品のおもしろさだろうと思う。復讐する男の歓喜と恐怖の雄叫び、復讐される男の吠えるかのような絶叫・・・ふたつの声の不協和音が、いつまでも耳にこびりつく。

    引用

     すると鎖につないだはずの影が、喉から振り絞った声を、裂帛の気合いのように浴びせてきた。思わずたじろいで、おかしいと思いながら、身震いする。私は剣の鞘を払って、穴の中にさぐりを入れた。だが、ちょっと
    考えればわかることだ。地下墓所の岩肌に手をあてて安心する。また石の壁に寄りつく。わめき立てる声に応じてやった。響きを返し、唱和してから、大きく強くおしかぶせた。それでもう奥の騒ぎは静まった。―46頁



    「告げ口心臓」について

    一文あらすじ

     ある男が、老人の禿鷹のような眼をわけもなく恐れ、ついには殺してしまうが、自分自身の心臓が激しく波打つのに耐えかね、罪を自白してしまう話。

    メモ

     主人公の男は、老人を嫌っているのではない。そうではなくて、彼の禿鷹のような眼を恐れている。理由は明かにされない。事件がおこる直前、真夜中、男は老人の眼をランプで照らす。暗闇のなかに浮かぶ眼・・・つぎの瞬間、老人は切り刻まれた屍に変わり、床下に隠される。男は上機嫌だった。けれど、時間が経つごとに胸がざわつく。次第に心臓の打つ音が高まり、屍のある床下からとくに激しくきこえる。男は耐えきれず、ついに罪を自白する。
     主人公の男は、「老人の眼」=「自分を縛ろうとするもの」が怖かったのだろうか。暗闇に眼だけを浮かび上がらせるポーの手法は、読者に強烈な恐怖感を与える。物語前半の息苦しいほどの慎重さ、後半の刹那。このコントラストが、なんともいえなく美しい。殺人と自白の衝動がどんどんと高まっていく描写は、読者が頁をめくるスピードをも早める。人間の心性を、見事に描き出した作品であると思う。

    引用
       
     だが鼓動が高まる。高まる。もう破裂すると思った。こうなると別の心配にとらわれる。近隣に聞こえるのではないか!もはや生かしてはおけない!私は大きく叫び、ランタンを全開にして、部屋へ飛び込んだ。老人が一声だけ悲鳴をあげた。たったの一声。すぐに私が床に引き下ろし、重いベッドをかぶせて下敷きにした。ここまでは上首尾で、にんまり笑ってしまった。ところが、かなり長いこと、心臓がこもった音を出して打っていた。―55頁


    「ウィリアム・ウィルソン」について

    一文あらすじ

     同姓同名、誕生日も同じ男に半生を追いまわされる話。

    メモ

     話はイギリスからはじまる。貴族の子息であるウィリアム・ウィルソンは、学校で自分と同姓同名、誕生日も一緒の少年に出会う。性悪な主人公に対し、この少年は分別があり、よくできた人間だった。彼は主人公の悪を明らかにし、打ち負かす。主人公は、少年の言葉や行動の妥当性に言い返す言葉もない。さらには、容姿やしぐさまで日増しに自分とそっくりになっていく少年に、恐怖さえ感じるようになる。
     再転校で少年と別れたのち、主人公は悪事に身を染めはじめる。しかし、罪を犯そうとするたび、自分と瓜二つの彼があらわれ、主人公を窮地に追い込む。彼から逃れるように、主人公はヨーロッパを転々とするが、どこにいても彼はあらわれ、主人公を断罪する。彼に対する憎悪を高める主人公は、ついに彼を殺す。
     主人公に瓜二つの少年を、ここでは「善きウィリアム」と呼ぼう。善きウィリアムは、主人公の良心の象徴であり、彼の死は、主人公の良心の滅びを意味するようである。すなわち、この物語は、悪人の良心がいかにして滅びるのかを、主人公ウィリアムと善きウィリアムのせめぎ合いでもって表現している。
     ポーの短編は、どれも理詰めの作品であり、あるゴール(ポーの狙い)に向かって物語が進む。それゆえか理解しやすく、読み終えたあとに腑に落ちた感覚が残る。謎めいた言葉、長たらしい導入部分、一見すると無意味な節が、終盤になっていきなりつながりはじめる。バラバラだった破片が、あっという間に一つの絵となり、読者に強烈な印象を残して幕が下りる。この作品であれば、冒頭の引用文―「何と言おうか、この真面目くさった良心 行く手に立つ亡霊」(チェンバレン『ファロンニダ』)―がこの作品のオチを暗示し、善きウィリアムが死ぬクライマックスは、読者の視覚にうったえる表現でもって、映像をみているかのような錯覚をもたらす。見事だと思う。教訓めいていないところが、人間のその実をあらわすかのようで、またさらによい。
     推理小説的要素と映画のような迫力、そういうものがあいまって、ポーの作品は現代でもなお愛されているのだろうと思う。
     
    引用

     さあ、おまえの勝ちだ。おれは負ける。だが、これからは、おまえも死んでいると思うがいい。この世にも、天界にも、希望にも、無縁になったと思え。おれがいたから、おまえも生きた。おれが死ぬところを、ようく見ておけ。この姿でわかるだろう。これがおまえだ。どれ
    だけ己を滅ぼしてしまったか知るがいい。―110頁

  • コレは面白い。読み終わった後に、思わず『おもしれー』と、声が漏れました。いまから190年近く前の作品たちですが、どれもコレも内容は秀逸で、暗くて、怪奇的です。アメリカで発表された時、日本に初めて入ってきた当時の読者の感想や驚きが、今からでは全く想像できません。中でも黒猫、ウィリアム・ウィルソンは素晴らしいですね。モルグ街の殺人はとても有名なので一読したかった作品です。当時のヨーロッパの空気感を感じる素晴らしい内容でした。

  • 行けるかな?と思ってる読書会の課題本。

    犯人私きのう撮影した!!!

    まさかあの。
    レスパネー親子は、まさかあいつが窓から入ってくるなんて想像もできなかっただろうな。
    まさかね。

    • keisukekuさん
      まさかっ!って意外と起こりますよね(^^ゞ
      まさかっ!って意外と起こりますよね(^^ゞ
      2019/07/19
    • ゆさん
      そうですね^_^
      そうですね^_^
      2019/07/19
  • 「良心に追い詰められるという恐怖のアレゴリー」

    愛猫の黒猫を自ら手にかけたのちエスカレートした残虐性の行き着いた果ては…怪奇作家としてポーの名を世に知らしめた表題作「黒猫」他「本能vs理性ー黒い猫について」「アモンティリャードの樽」「告げ口心臓」「邪鬼」「ウィリアム・ウィルソン」「早すぎた埋葬」「モルグ街の殺人」の8編収録。

     常々、小説を読むことによって自分の脳内に再現される世界ほど、怖いものはないと思っている。なぜなら、読者はたった1人でそこへ踏み込んで行かねばならないからだ。ポーの短編集は19世紀という少しさかのぼれば手が届きそうな時代で繰り広げられるノスタルジックな恐怖の世界へ誘ってくれる。

     「黒猫」もそうだが、ポーの作品の中にはしばしば「埋める」「閉じ込められる」といった場面が出てくることに注目したい。語り手はそれによって全てを「無かったこと」にしたつもりにもかかわらず、最終的にすべてをカミングアウトする、あるいはカミングアウトさせられる、という展開になる。「どうだ!やったぞ!ハァハァ…ごめんなさい!犯人は私です!」というようなパターンが多いように感じる。

     つまり、ポーが一番恐ろしいと感じていたのは自身の中にある良心ではなかったろうか。良心に追いかけられ問い詰められる過程こそが彼のイメージする恐怖の世界ではなかったのだろうか。そう考えると、常に自分と同じ行動をとる同姓同名の男にどこまでも追い詰められる「ウィリアム・ウィルソン」や埋葬したはずの遺体は、墓場を暴いてみればその多くが実は土の下で蘇生し棺桶から出ようともがいているのだという「早すぎた埋葬」なども、消そう消そうとしても無くならない良心から追われる恐怖のアレゴリーとも見える。

     ポーが「埋めて」永遠に「閉じ込めて」しまいたいほど恐れていたものは自らの良心なのであり、裏返して言えばエドガー・アラン・ポーはそれを決して葬り去ることが出来ない人だったのだろう。

  • そういえば超有名作家なのに読んだことがないと気づいて、今さらこっそり読んでみた。

    意外だったのは、謎解きメインの話が「モルグ街の殺人」のみだったこと。
    たまたまこの短編集がそういうつくりだったのかもしれないけれど、犯罪者心理の方に重点を置いた作品が多かった。
    どちらかというと純文寄りのミステリ。これはこれで。

    ウィリアム・ウィルソンのような、人間の堕落してゆく話がなぜか好きだったりする。ドリアン・グレイを思わせるラストが本当に好みで。

  • 江戸川乱歩への興味から読んでみた。当たり前のことだが似ていた。表題作より、「告げ口心臓」や「早すぎた埋葬」などの方が、作者の病的なこだわりが感じられておもしろかった。

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