- Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334751135
作品紹介・あらすじ
幼くして両親を亡くしたジェイン・エアは、引き取られた伯母の家で疎まれ、寄宿学校に預けられる。そこで心を通わせられる人々と出会ったジェインは、8年間を過ごした後、自立を決意。家庭教師として出向いた館で主のロチェスターと出会うのだった。ジェインの運命の扉が開かれた。
感想・レビュー・書評
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原題は"Jane Eyre”、初出は1847年。
作者のシャーロット・ブロンテは、『嵐が丘』の作者エミリー・ブロンテの姉である。ジェイン・エアは、ヴィクトリア朝を代表する小説として挙げられていて、以前から読みたいと思っていた。訳はたくさんあるのだけど、図書館ではあまり選択肢がなく、光文社の小尾芙佐訳を。
『嵐が丘』のキャサリンは気性が荒くて情熱的な烈しい女だけど、私は『ジェイン・エア』にはもう少し穏やかなイメージを持っていた。家庭教師が館の主と身分違いの恋をするというあらすじを読んだことがあり、ジェイン・オースティンの作品で出てくるような、聡明で機知に富んだタイプなのかなと想像していたのだ。
いやいや、それがどっこい!さすがに『嵐が丘』のキャサリンほどじゃないにせよ、ジェインもなかなかに烈しい女なのだ。ヴィクトリア朝時代の"理想の女性像"をぶち破ってくる。
ブロンテ姉妹、一体どんな風に育てられたんや。姉妹揃って面白すぎる。笑
主人公のジェイン・エアは、幼いときに両親が腸チフスで相次いで亡くなって孤児となり、母方の伯父に引き取られる。しかし伯父亡き後、伯母のリード夫人とその子供たちからは虐げられ、孤独な少女時代を送る。
10歳の頃、ジェインは従兄の虐めに耐えかねてやり返し、リード夫人にたてつく。
「あなたがあたしの身内じゃなくてよかったわ。この先生きているかぎりあなたを叔母さんなんて呼びません。」
「みんなあなたのことをいい人だと思っているけど、あなたは悪い人です。心の冷たい人です。あなたこそ嘘つきです!」
これがきっかけで、ジェインはローウッド養育院に預けられることになる。そこの食事は貧しく、規律は厳しかったが、公正で慈愛に満ちたテンプル先生や、信心深く優しいヘレンと知り合い、徐々に生活は落ち着いたものとなっていく。
ローウッドで大流行したチフスでヘレンをはじめ、生徒たちは次々と感染。この惨事をきっかけとして、ローウッド養育院の劣悪な環境は改善されることになる。ジェインは生徒として6年間、教師として2年間まじめに務め、フランス語、絵画やピアノなどの教養を身につける。そして新聞の求人に出し、ソーンフィールドの館で、幼い少女の家庭教師の職を得て、独り立ちをすることになったのだ。
ソーンフィールドには普段は主人は不在で、出迎えてくれた温厚な老婦人は、女中頭のミセス・フェアファックス夫人。ジェインが家庭教師をすることになるアデルは7歳、おしゃまで可愛い女の子だ。主人のロチェスター氏が後見人をしているという。
しばらくはアデルに教えるだけの平凡な日々が続いていたが、ロチェスターが館に帰還したことで、俄に賑やかになる。
ロチェスター氏は、風変わりでいわゆる"紳士"らしくもなければ美男子でもないのだが、ジェインは精力的で強固な意志が秘められた瞳のロチェスター氏に惹かれていく。
しかし一方で、ジェインは主に惹かれることを何としても思いとどまろうとともするのだ。それなのに、久々に会ったロチェスター氏を見てしまうと、決意は長続きしなかった。
"私は彼を愛するつもりはなかった。私が、自分のうちに萌えだした愛の芽を根こそぎむしりとろうと必死だったことは、読者もご存じのはずである。それがいまこうして彼と再びあいまみえたとき、その芽はたちどころに生気をとりもどし、いきいきと甦った!"
しかしロチェスター氏は、館に訪問してきたミス・ブランシュに惹かれているようでもある。二人は結婚するのかもしれない─。
…と、ここまでだけだと、身分違いの恋物語?三角関係?と思ってしまうが、ヴィクトリア朝の広大なお屋敷を舞台としたミステリーのような要素もある。
ソーンフィールドの館にの3階には、グレイス・プールという謎のお針子が住んでいて、時々ぞっとするような笑い声が聞こえる。それだけでなく、グレイスはロチェスターの部屋に火をつけたり、滞在客を襲ったり…とんでもなく異常な行動をするのですよ。しかしロチェスターはグレイスを追い出すようなことはしない。この女性は一体何者なのか…。
次巻では解き明かされるのか。ジェインは幸せを掴むのか。次巻が楽しみ。
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この作品は、亡き母の愛読書でした。母は貧しい家庭の育ちでしたが、師範学校を出て教員をしていました。現在の国立大学教育学部に相当する師範学校は、優秀な学生を集めて教員を育成する為に、学費がかかりませんでしたから。
私は高校生の時にこの本を手にしましたが、母は「今の時代には合わない、古い小説だよ」と言って笑っていましたっけ。 -
ブロンテ姉妹のシャーロットによる、ヴィクトリア朝文学の名作。孤児となった少女が力強く生きていく波瀾の物語。
冒頭からもう面白い!幼少からいじめにあい、愛情をそそがれるべきはずの人物からそれを受けられず、それでもいじけず言い返す姿が主人公として最高。子供の頃こんなふうにものを言えなかったよなぁと。家を追い出されるように寄宿学校に入るが、そこで良き出会いがあり……この流れってどこか既視感がある。同時期に書かれたディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』の少女版といっていいような展開。しかしジェイン・エアの個性はコパフィールド以上に強烈なのが魅力だ。賢く誇り高い、しかし未知の世界への冒険心も持ち合わせた彼女の精神性に引っ張られるようにして物語は進んでいく。アニメ世界名作劇場の香りがするのもこの時代の作品の特徴か。
後半でミステリーと恋愛の要素が高まっていくのだが、「え、そうなるの?」と肩透かしを食らいそうな感じで上巻終了。謎もわけがわからぬまま下巻へおあずけか。先が気になりすぎるので、上巻を読んだまま下巻に手を付けないという人はきっといないだろう。とにかくジェインへの感情移入とスピード感ある筋書きが面白くてむさぼるように読める。「古典」「名作」=堅くて真面目で小難しいというイメージが払拭される傑作。 -
約500ページのボリューム満点の文庫本。
主人公、ジェーン エアの子ども時代から家庭教師として働く様子が描かれています。
面白いのは、ジェーンの心情の変化を客観的に見ることができる点です。
彼女の発する一言一言からは、彼女の考えがひしひしと伝わってきます。
下巻も楽しみです。
2019年6月 勤務先の図書館にて閲覧 -
ええええロチェスター様なんなん!?
(下巻への引き)
あんなにちょいちょい思わせ振りな事言っておいてなんなんよ…
それにしてもイギリス古典の少女漫画性よ
ジプシー占い師の下り完全に漫画でしょこれw
レディ達もなかなか凄まじい
そしてジェインの冷静な目
ゲイツヘッド・ホールでのいじめられ振りに
ローウッド養育院での奮闘と成長、
どれだけの女の子がジェインは私だと思った事か
そして自然の描写、
イギリス人にとっての田舎、花鳥風月への愛情は
格別なのよなー。 -
テンプル先生がマクゴナガル先生とダンブルドア足して2で割ったみたい。
ミセス・リードの我が子を夫がかわいがってくれなかったってところからジェインのその後の軌道に少なからず影響を与えてる気がする。
パンとミルクとチーズをもらいたくなる。「バタ」って表記がおいしそう。
古典というけどあんまり堅苦しくなくて、先が気になるロマンスの物語だった -
ジェーン気が強くて最高。
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小尾さんの翻訳が読みたくて再読。小尾さんの日本語も勿論いいのだけど、ジェインの語りはかろやかに饒舌。シャーロッテ ブロンテも三姉妹の中で一番快活で社交的だったらしい事をうかがわせる。
子ども時代の話が意外と面白い。小公女や秘密の花園を彷彿させる。お屋敷に来てからもある種の謎が潜んでいて、どちらかというと秘密の花園のほうが近いかもしれない。 -
「嵐が丘」に引き続き、ブロンテ姉妹の作品を読むこととしました。こちらは古典的な恋愛もの。現代だったら少女マンガになりそうな展開。ヒロインが不幸な生い立ちなのだけれど、上流階級のきらびやかな世界で自身の叡智と公正な立ち居振る舞いで、人生を切り開いてゆく物語。典型的なシンデレラストーリーだけど、名作だけあってなかなか面白い。
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