カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)

制作 : 亀山 郁夫 
  • 光文社
3.88
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本棚登録 : 2153
レビュー : 150
  • Amazon.co.jp ・本 (541ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751234

感想・レビュー・書評

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  • 当時の社会情勢や市民が抱いている哲学などが非常に興味深い。 罪と罰でも見られるが、容疑者と予審のやり取りはさすが

  • やっと3巻まできて話の流れを掴めた。それにしても、ロシア人というのは話している途中でこんなにも激昂したり、ヒステリックになったりする人たちなのか?近年はプーチン大統領のイメージが強すぎるのと、身近にロシア人の知り合いがいないために想像がつかないが、どうにも主人公達の感情の上下についていけない場面が多い。葬式の泣き女状態の人たちの会話をずっと聞いている(実際、彼女達は泣くだけで話をせず、商売だけに冷静なのだろうが)ような変な疲れを感じるのは否めない。

  • 文学
    古典

  • 4部構成の3部、転に当たる本巻。いよいよ殺人事件が起こってしまい、カラマーゾフ家に激震が走る物語展開。あえて経時的配列を取らず、多少の時間的前後をもって描かれる見せ方が絶妙で、さすがに世界観に引き込まれる。更に良いことに、これまでの1部や2部で繰り返された、宗教観などをめぐる論争みたいなのが今回は無くて、それも個人的にはポイント高し。あまりに幼稚な長男の言い訳が嘆かわしいけど、え、これってホントに彼が犯人じゃないとかあり得るの?その回答を含む、ここからのクライマックスに期待。

  • 2018.04.26 予約

  • 5

  • ⑧少年たち
    突然不思議な少年コーリャが登場する。コーリャはあるとき自分より少し年長の少年たちと言い争うことになる。そして、いかに自分に勇気があるかを見せることにする。何をしたかというと、線路の間で横になり、列車が通り過ぎるのをじっと待つというのだ。列車がいよいよ近づいたとき、他の少年たちは怖気づいて逃げるように言うのだが、コーリャはじっと動かない。列車が通り過ぎた後、コーリャはやはり動かない。死んでしまったのか、少年たちが恐る恐る近づいてみると、コーリャはむくっと起き上がり、してやったりという自慢げな顔になる。そのうわさが町に広まると、コーリャは少年たちからは一目置かれるようになり、親たちからは乱暴な子だから付き合わない方がいいと言われるようになる。このコーリャが通う学校にイリューシャがいた。主人公アリョーシャの手をかんだあのイリューシャだ。イリューシャは学校でイジメの対象になっていたのだけれど、コーリャが助けてやり、二人の関係が深まっていく。イリューシャがコーリャの子分(年齢的にも下だし)のような存在になっていた。ところがある日、イリューシャが犬にいたずらをする。パンのかけらに針を入れ込んでおき、それを腹をすかせた犬の前に置く。すると犬が思わず一気にパンを口にし、針がのどに刺さる。犬はキャンキャン泣きわめきながら逃げ去っていく。このいたずら、どういうわけかスメルジャコフ(カラマーゾフ家の下男)からの入れ知恵だったらしい。この話を聞かされたコーリャはイリューシャのことを怒り、友だち関係をやめると言う。本当はしばらくの間だけのつもりだったらしい。少し時間がたてば許すつもりだったようだ。ところがその間に、イリューシャは病におかされていく。今はもう死期が近づいてきている。犬にあんなひどいことをしたからこんな目に会うのだと考える。その犬が生きてイリューシャの前に現れれば、ひょっとするとまた元気になるのかもしれない。イジメをしていた少年たちも、アリョーシャの呼びかけで(どういうわけかアリョーシャがここで活躍している。やはり子どものことを放っておけなかったのだろうか。)イリューシャの家に日々お見舞いに来ていた。しかし、コーリャだけは現れない。イリューシャは寝言で何度もコーリャの名前を呼ぶ。そして、とうとうその日が来る。コーリャがイリューシャの見舞いに行くのだ。それも大きな犬を連れて。みんな、それを期待していた。きっと、コーリャが犬を見つけてくれると。コーリャ自身はこの犬は別の犬だと言ってはいるが、どうやらイリューシャがひどいことをした犬を見つけ出し、コーリャの家に連れて行くまでに、手名づけて、大人しくできるようにしつけをしていたらしい。さて、家の近くまで来ても、素直にすっと入ることができない。まずは、アリョーシャを呼び出し、今までの経緯を話す。ここでの、アリョーシャとコーリャの会話がおもしろい。アリョーシャが19歳。コーリャはもうすぐ14歳。コーリャはかなり大人びた話し方をしている。かなり背伸びをしている。アリョーシャに大人だと思って欲しそうな話し方だ。社会主義を少し聞きかじり、読みかじっていたようだ。アリョーシャに、何々の本を読んだのですかと聞かれ、ほんの数ページしか読んでないのに、全部分かったようなふりをしている。一昔前なら、学生時代に読んでいないとはずかしい思いをするような本があったそうだ。会話の中で自分が読んでいない本の話しが出てきたら、その場は適当にごまかしておいて、一人になってからすぐに買ったり借りたりして読んだのだそうだ。いまはそんなこと気にする人はいないだろう。というか、知らないこと、読んでいないことをそんなはずかしいこととは思わなくなったのかもしれない。私の学生時代にも、もうそういう思いというのはほとんどなかったと思う。でも、私自身にはちょっとコーリャに近いところがあって、見栄を張ったり、背伸びをしたりしたものだ。だから、この部分の描写が実によく分かる。ところで、アリョーシャもかなり若いのだけれど、もうすっかり大人という感じだ。まあ、100年前の20歳はいまの30歳くらいに相当しているのかもしれない。さて、コーリャの訪問を知ったイリューシャは当然喜んだ。犬のこともたいそう喜んでいる。しかし、そこに訪れた医者(この医者は父殺しの疑いでとらわれの身のドミートリーを診てもらうためにカテリーナが遠くから呼び寄せたということだ)は、コーリャの生命はそう長くないだろうと言う。もっと空気のいいところにでも連れて行けば可能性はあるが、とのこと。コーリャはそんな医者のいう言葉を信じない。そして、その医者に対して、暴言を吐く。どうも、医学あるいは科学に対する不信感のようなものがあったようだ。さて、ここでこのエピソードは終わり。この後にどう関係するのか全く見えないまま、幻覚症状を起こすまでに精神的にまいってしまっている兄イワンの話に移っていく。

    ⑨兄イワン
    ミーチャ(ドミートリー)は裁判で判決が下されるまでの間、拘置されている。グルーシェニカはなんどもミーチャを訪ねている。ミーチャは精神的にもかなりまいっているのか、グルーシェニカに対して大変嫉妬(しっと)深くなっている。医者(カテリーナ・・・ミーチャの元婚約者が呼び寄せた)が精神鑑定をして、父親殺しをしたときには、精神錯乱状態で、判断能力がなかったと、罪の軽減を求めようとしたりしている。もちろん、ミーチャ本人は、自分は殺していないわけだし、精神的にもどこもおかしくないと思っている。弟のアリョーシャも何度もたずねて行っている。そして、イワン(ミーチャの弟・アリョーシャの兄)も。どうも、アリョーシャはイワンがミーチャのところに来ているということを知らなかったようだ。しかも、どうやらイワンはミーチャによからぬ話を持ちかけているらしい。それは「逃げる」ということ。ここから逃げ出してグルーシェニカといっしょにアメリカにわたる、そのためのお金を用意してくれると言う。どういう思いでそんな話を持ち出したのか。イワンは父親殺しの犯人を兄ミーチャだと思っている。アリョーシャは、ミーチャの言葉を信じて、ミーチャは犯人ではない、真犯人はスメルジャコフだと考えている。しかし、スメルジャコフが殺したという証拠は全くない。さあ、裁判で判決が下されるのは明日というところまで迫っている。さて、その話に進む前に一つおもしろいエピソードが登場する。アリョーシャがリーズ(前にラブレターをくれた少女。結婚の話はなくなっているようだ。)に呼ばれてホフラコーワ夫人(リーズの母)の家に行ったときのこと。夫人からこんな話を聞かされる。しばらくの間、ラキーチン(アリョーシャの友人?で、グルーシェニカのいとこ)が夫人の家にしょっちゅう顔を出していた。そしてどうやらその夫人(未亡人)に好意を持っているらしい。しかし、ホフラコーワ夫人は、今は別の若い男性に興味がある。それで、ラキーチンにはもう家に来てくれるなと告げる。それからしばらくして、新聞への投稿で、ホフラコーワ夫人がミーチャのことが好きだった、などという話が書かれていた。もちろん、個人名は伏せられていたが。そして、それを書いたのがどうもラキーチンらしい。嫌がらせで書いたのかもしれない。この父親殺しの事件は世間の注目を集めていたから、そんな噂話までもが新聞に取り上げられていた。新聞と言うか、いまで言う写真週刊誌のようなものだったのかもしれない。これはあとから、アリョーシャがミーチャを通して聞くことになるのだけれど、どうもラキーチンの狙いは、ホフラコーワ夫人が持っている財産にあったようだ。とんでもない男だ。さて、イワンの話にもどろう。どうやら、ミーチャよりもイワンの方が精神的にどうにかなっているようだ。幻覚症状が現れるようになっている。悪魔が出てくるのだ。(今で言う多重人格のようなものかもしれない。自分の中の別の人格と、本人とが会話をしている。)悪魔のささやきで、父親を殺したのは自分だと感じるようになっている。スメルジャコフは癲癇(てんかん)の発作からは立ち直って、いまはフョードル家とは別のところで寝泊りをしているのだけれど、そこにイワンは何度も訪ねて行っている。スメルジャコフが真犯人であるということを最初はいくらか信じていたが、いろいろな状況証拠から、やはり父親殺しの犯人はミーチャだろうと思っている。ところが、判決が明日にと迫ったその日、スメルジャコフから3000ルーブルという大金を受け取る。そして、スメルジャコフ自身の口から、スメルジャコフが自分の主人であるところのフョードル・カラマーゾフを殺した。そして、この3000ルーブルを盗んだ。癲癇の発作は芝居であった。という話を聞くことになる。それをどのような方法で実行に移したか、どのような思いで主人を殺したか、そういう話を聞く。イワンは次の日の裁判で、このことを話すと言う。スメルジャコフも裁判に連れて行くと言う。イワンはその日のうちに、警察にこのことを届けた方がよかったのかもしれない。しかし、精神的にかなり追い込まれた状態だった。自宅にもどったイワンはまた悪魔を見る。スメルジャコフをそそのかして父親殺しをさせたのは自分だと追い込まれていく。もう、ほとんど正常な意識がなくなっている中へ、アリョーシャが訪ねてくる。そして言う、スメルジャコフが首をつって死んだと。

  • 長過ぎる!

  • 『カラマーゾフの兄弟 3』あらすじ

    第3部第7編 アリョーシャ【3日目 朝~夜】
    早朝からゾシマ長老の納棺がはじまるが、午後3時頃には亡骸から腐臭が漂いだす。修道院に近寄りもしなかったフェラポント修行僧がやってきて芝居がかった悪魔祓いをはじめる。奇跡を期待して浮足立っていた民衆は幻滅しゾシマ長老を見損なう。アレクセイは、奇跡はともかく、正義がなされなかったことに失望する。ラキーチンが打ちひしがれるアレクセイをグルーシェンカのところに連れていく。
    着飾ったグルーシェンカは訪ねてきたアレクセイを歓待し、その膝の上に乗って打ち明け話を始める。彼女はドミートリーにおびえていて、ドミートリーには自分が老人サムソーノフのところにいると嘘をついている。実はこうして家に潜んで当時将校だった昔の男が迎えに来るのを待っているのだという。しかし、かつて自分を棄てて出ていって他の女と結婚までしたその男を本気で許すかどうか内心では揺れている。アレクセイは彼女の誠実さに感心して「あなたがぼくの心を甦らせてくれた」(…このアレクセイの心の動きはよくわからない。)という。グルーシェンカはそれを聞いて大いに気をよくする。やがて男の使いが馬車で彼女を迎えに来ると、グルーシェンカはドミートリーによろしくと言い残して何の迷うこともなく馬車に乗って去る。
    修道院に帰ったアレクセイはゾシマ長老の棺の前に跪いたまま眠りに落ちる。パイーシー神父がガリラヤのカナを朗読するのが聞こえてくる。夢の中でゾシマ長老はアレクセイに「おまえの喜びの涙を大地に注ぎ、おまえのその涙を愛しなさい」と言う。夢から覚めたアレクセイは確固たる戦士として立ち上がる。

    第3部第8編 ミーチャ【2日目 朝10時~夜】
    グルーシェンカとフョードルの動向から一瞬も目を離せないドミートリーだったが、とにかく早急にやらなければいけないのはカテリーナに三千ルーブル返すこと。「でないと、おれはスリで卑怯者といううことになる」から。加えてそれなりの資金を用意しておかなければいけない。なぜなら肝心のグルーシェンカを連れ出して新生活を始めなければならないから。そこで本来自分の持ち物であるチェルマシニャーの森を(権利書は持っている)、よりによってグルーシェンカの囲い主サムノーノフに売却して金を得るという離れ業を思いつく。サムソーノフは、ドミートリーの提案を、自分のビジネスではないからと断ったうえで、かわりに森を欲しがっているリャガーヴィを紹介してやる。希望の光が見えたドミートリーはその男がいるヴィローヴィアに急ぐが、サムソーノフにとってはドミートリーの提案など笑止千万で、このアドバイスは彼をおちょくっての与太話であった。
    ドミートリーはその日のうちにヴィローヴィアに着き、地元の神父を介して山小屋にいるリャガーヴィまでたどり着いたが、この男はすでに泥酔していて意識不明。酔いが覚めるまで、ドミートリーは小屋の暖炉で酸欠状態にくるしみながら眠れぬ夜をやり過ごす。が、朝方ウトウトして気付いてみたらリャーガーヴィの飲酒はすでに絶好調、会話がまったく成り立たない。貴重な一日を棒に振ったことを知ったドミートリーは狂ったようにグルーシェンカの元に取って返す。

    引き続き 第3部第8編 ミーチャ【3日目夕方~4日目午前5時】
    ドミートリーは、金の計算があるというグルーシェンカをサムソーノフのところに送り届けて一息つく。が、フョードルの隣家のマリアからスメルジャコフが癲癇で倒れたこと、イワンがモスクワに発ったことを聞かされ、フョードルの見張りが今いないことに不安を抱く。一方今度は、絶交状態にあるホフラコーワ夫人にまるまる三千ルーブリ借りるという奇策を思いつき彼女を訪ねる。しかし、頼りのホフラコーワ夫人は現実離れした金鉱行きを一方的に勧めるだけで、泥酔したリャガーヴィー以上にお話にならない。夫人にぺしゃんこにされて彼女の家を出るとき、ドミートリーはなぜか再び胸の一部を叩く。
    広場に出るとサムソーノフの女中に出くわし、グルーシェンカはあれからすぐに家を出たと教えられる。「嘘だろう、くそ婆あ!」 全速力でグルーシェンカの家に行き不在を確認。しかしこの時女中フェーニャは、グルーシェンカが昔の男の元に行ったことは告げず、事情は知りませんの一点張り。ドミートリーはグルーシェンカが当然フョードルのところに行ったと察し、手近にあった銅製の杵をとっさに掴んでフョードルのところに走る。
    ドミートリーはかつてスメルジャスチャヤがよじ登った高い塀を乗り越える。明かりの点いたフョードルの部屋までこっそり近づき外から内部の様子を窺う。物音や話し声は何も聞こえない。グルーシェンカがいるかどうかもわからない。ドミートリーはスメルジャコフから教えられた合図のとおり、窓の桟をノックしてみる。フョードルはグルーシェンカがやってきたと思い、恐る恐る窓から顔を出す。窓から突き出たフョードルの横顔にドミートリーは猛然たる憎しみを覚え、自分の金を奪ったことへの復讐心が燃え出す。

    一方この時離れで、グレゴーリーが虫の知らせを覚えて目を覚ます。フョードルの部屋の窓が開けっぱなしになっているのを見て異状を察し、フョードルのところに駆けつけようとする。が、その途中、中庭から塀を乗り越えて逃げようとするドミートリーに遭遇、ドミートリーを「父殺し!」と叫んで捕まえるが、逆に杵で一撃されて倒れる。ドミートリーは頭から血を流すグレゴーリーを心配してハンカチで血を拭ってやるが、死んだのか気絶しているのか判別がつかないままその場を後にする。
    ドミートリーはまたグルーシェンカの家に行きフェーニャを問い詰める。フェーニャは、グルーシェンカはかつて将校だった昔の男が待っているモークロエの旅籠(前回ドミートリーがグルーシェンカやジプシーたちと豪遊した場所)に向かったと白状する。ドミートリーはこの事実を知ってショックを受ける。自分やフョードルが狂奔しているあいだずっと、彼女の想いは変わらずその男にあったということだ。呆然とするドミートリーは「見た目も恐ろしい高い塀なんだが、太陽が昇る明日の夜明けには、ミーチャはこの塀を飛び越えるんだよ」、そうフェーニャに優しく言って自殺をほのめかす。

    ドミートリーはペルホーチンのところへ行き、金を返して自分の銃を受けだす(前日、銃を担保に金を借りていた)。ペルホーチンはドミートリーのそこかしこについた血や無造作に握りしめた大金を不審に思って問いただす。ドミートリーは真面目に取り合わず、「全人生に対し自分を処刑する。ぼくの全人生を処罰する」と書いた書状を披露する。ペルホーチンはその文面が理解できずにますます彼をいぶかしむ。ドミートリーはプロトニコフの店に、前回グルーシェンカと豪遊したのと同じだけの酒、食料を大量に用意させる。グルーシェンカを載せていった馭者チモフェイを追うため、別の馭者のアンドレイに3頭立て馬車を仕立てさせる。ドミートリーはペルホーチンに「この世のけだかいものに栄光あれ ぼくの中のけだかいものに栄光あれ ・・・いつだったかぼくの魂から迸ったことがありましてね、詩というよりも、涙ですよ・・・」「ねえ、君、人生のために飲みましょう! 女王のなかの女王のために」とモークロエに誘うが、ペルホーチンは断ってビリヤードに出かける。「いいやつだが、根がバカときているからな」。しかしこのあとペルホーチンはビリヤード場で、ドミートリーがフョードルを殺して金を盗んだというただならぬ噂話を耳にする。胸騒ぎを覚えたペルホーチンは深夜だが、真偽を確かめるためフェーニャのところへ押し入る。

    準備ができた馬車がドミートリーを載せて走りだす。一時間でチモフェイに追いつけると豪語するアンドレイは「旦那、あなたさまは何もかも赤ん坊と同じですわ・・・だから、あっしら、あなた様を敬ってるんです・・・旦那、あなたさまはたしかに怒りっぽいお人ですが、あなたさまの真っ正直なところにめんじて、 神さまも許してくださいますって」
    午後11時頃ドミートリーたちはモークロエの旅籠に到着、主人のトリフォーンに徹夜の大宴会を宣言し、グルーシェンカを探す。果たして一室に、グルーシェンカそしてポーランド人の昔の男(小太りの冴えないやつ)とその長身のボディーガードがいるのを確認する。そこには他に、ミウーソフ、カルガーノフ、マクシーモフもたまたま居合わせていた。そしてついにドミートリーは彼らの前に姿を現す。「ああ!」グルーシェンカは驚きのあまり声を上げる。
    ドミートリーは一同に、「この世の見納めに」仲間に入れてくれるよう頼む。彼は泣いたり笑ったりして興奮している。小太りの男は不審がるが、グルーシェンカは「この人が出ていくなら、わたしも出ていくわ!」と言い切る。皆でシャンパンを飲み、マクシーモフは自虐的な笑い話を披露する。そうした中でポーランド人のロシア語と、その偏屈さが鼻につき始める。ドミートリーとポーランド人の間で“銀行ゲーム”と称する金を賭けてのカードゲームが始まる。ドミートリーは負け続けるが、ふとある考えに行き当たり、隣の部屋に小太りの男を引っ張っていく。ドミートリーは男に三千ルーブル渡すからここから消えるよう提案する。「グルーシェンカからなら、もっと巻き上げられると考えている(だろう)」と挑発する。ポーランド人たちはグルーシェンカに、「(ドミートリーに)侮辱された」と訴える。しかし逆に三千ルーブル受け取ろうとしたことがばらされる。「昔のこと忘れ、(グルーシェンカを)許すために来た」という言い方がグルーシュンカの気に障る。小太りの男が“銀行ゲーム”でインチキのカードを使っていたことが旅籠の主人トリフォーンとカルガーノフによってばらされる。グルーシェンカは「ああ、恥ずかしい、なんて恥ずかしい!」「なんて男になり下がってしまったんだろう!」小太りの男はグルーシェンカに向かって「売春婦のくせして!」、そう言い終わらないうちにドミートリーに隣の部屋に叩き込まれる。
    再び始まったどんちゃん騒ぎの中で、グルーシェンカはドミートリーに「わたしね、ここにいる、ある人のことを愛しているの。それって、どの人?それをちゃんと教えてほしいの」。ドミートリーから激しくキスを浴びながら、「じゃ、許してくれるのね、苦しめたこと? …愛するといったらどこまでも愛するの!」 幸せの絶頂に持ち上げられたドミートリー、「どうとでもなれ、何がどうなってもかまうもんか・・・この一瞬のためなら世界ぜんぶだってくれてやる」。
    その時、ネリュードフ判事、イッポリート検事が旅籠に乗り込んできて高らかに言う「カラマーゾフ殿、…あなたは、あなたの父親、フョードル・カラマーゾフ殺害の罪で、起訴されています」。

    第3部第9編 予審【4日目午前5時~午前時】
    (なおここだけ3日目午後11時頃のペルホーチンの続き)
    あれからペルホーチンは、グルーシェンカの家に行ってフェーニャから聞いた内容におののき、フョードルのところに確かめに行ったが門が閉まっていたので埒が明かず、ホフラコーワ夫人の元を訪れると、夫人からはドミートリーに金を貸してはいないと言われる。ペルホーチンはドミートリーの犯行を確信するが、端無くも、この場でホフラコーワ夫人と変に仲良くなってしまう。
    ペルホーチンは続いて警察署長の自宅を訪れるが、そこにはすでに警察署長マカーロフ、分署長マヴリーキー・シメルツォフ、青年医師ワルヴィンスキー、イッポリート・キリーロヴィチ検事、予審判事ニコライ・ネリュードフが集まっており、被害者フョードル・カラマーゾフをめぐる強盗殺人事件の対策が講じられていることを知る。
    この場でペルホーチンが知った詳細は以下の通り。グレゴーリーが起きだしたあと、隣の部屋のスメルジャコフが苦しそうに唸りだした。それを聞いてマルファの目が覚め、グレゴーリーがベッドにいないことを知った。庭からうめき声が聞こえてきてそこに駆けつけてみると、グレゴーリーが頭から血を流して倒れていた。フョードルの部屋のドアが開けっぱなしになっており、部屋の中で彼は頭を割られて即死状態だった。グルーシェンカに渡そうと用意していた三千ルーブルは、それを入れていた封筒を残して跡形もなかった。
    ペルホーチンは警察署長たちに、ドミートリーが人生最後の大宴会をしたのち、自殺を目論んでいることを伝え、一同でモークロエに急ぐ。フョードルの死体を解剖するためその場に残ったワルヴィンスキー医師は、スメルジャコフは朝までもたないと診断していた。(前日11時頃のペルホーチンの続きはここで終わり)

    飲酒と、不眠と、グルーシェンカに愛された幸福感と、殺したかもしれないグレゴーリーに対する罪悪感とで極度の興奮状態にいるドミートリーに、ネリュードフ予審判事、イッポリート検事の審問が始まる。フョードルに対する最近の言動、現在の血まみれの身なり、予審判事が現場から持ってきた銅製の杵、フョードルの部屋のドアは閉まっていたとする証言、忽然とその手に現れた大金。すべての証拠がドミートリーの犯行を裏付けした。不利を自覚したドミートリーは恥を晒すのを覚悟の上、金の出どころを明かす。…そもそも前回の豪遊では、カテリーナから拐帯した三千ルーブルのうち半分しか使っておらず、残りの千五百ルーブルは上着に縫い付けた布の中に隠し持っていた。その金の目的はグルーシェンカとの新生活のための費用である。今回の散財は、グルーシェンカにフられたのでそのための金がもう必要なくなったからである。なぜ今まで誰にもそれを言ってないかというと、これはあまりにもセコい行為なので恥ずかしさのため言っていないのだという。しかしドミートリー一流の熱い理屈はしょせん検事、判事には全く通用せず、挙句の果て、ドミートリーは、検査のため全裸にされ大いなる屈辱を味わう。グルーシェンカは「わたしはこの人を知っています。…良心に恥じることなら、ぜったいに嘘はつきません。…それを信じてください!」 長い審問のすえ、疲れ果てたドミートリーは一瞬眠りに落ち、「餓鬼(がきんこ)」の夢を見る。「どうして泣いているんだ? なんだって泣いているんだ?」「教えてくれ、…どうしてみんな貧しいのか、どうしてがきんこはあわれなのか、…どうしてがきんこに、乳を飲ませてやれないのか?」 ドミートリーは目覚め「誰が頭の下に枕をもってきてくれたんです? そんな親切な方がいらっしゃったんですね?」「すばらしい夢をみたんです、みなさん」。ドミートリーはこの時生まれ変わり、もうだれひとり泣く者がでないようがむしゃらに生きることを誓う。「雷が落ちました。ぼくは、告発の苦しみを、すべての人々の責めを、受け入れます、ぼくは苦しみたい、苦しみでもって浄化されたい」。
    ドミートリーは冷たい衆目にさらされながら護送されるが、グルーシェンカは「あんたのもの、って言ったわ、これからも、あんたのものよ、一生あんたについていくわ、どこにおくられることになっても。」唇はふるえ、目からは涙が迸った。

  • や……やっと読み終わったぞ(ぜい、ぜい)という感じ。
    普通2巻で挫折する人が多いと聞きますが、むしろ宗教話の多い2巻の方が、私には面白く、この3巻では、長男坊の行動と心情に、かなりイライラさせられました。

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著者プロフィール

ロシアの小説家、思想家。トルストイやチェーホフとともに19世紀後半のロシア文学を代表する文豪。

「2008年 『罪と罰 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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