赤と黒 (上) (光文社古典新訳文庫 Aス 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (465ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751371

作品紹介・あらすじ

ナポレオン失脚後のフランス。貧しい家に育った青年ジュリヤン・ソレルは、立身のため僧職に身を投じる。やがて貴族であるレナール家の家庭教師となり、その美貌からレナール夫人に慕われるようになる。ジュリヤンは金持ちへの反発と野心から、夫人を誘惑するのだが…。

感想・レビュー・書評

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  • ナポレオン失脚後のフランスが舞台。
    製材職人の息子ジュリヤン・ソレルの野望とこじれた恋愛の物語。

    ナポレオンに憧れを抱くジュリヤンは、ラテン語で聖書を暗記するほどの知性により、出世の野望を持っている。僧職につき、レナール家の家庭教師となるが…。
    ジュリヤンは果たして本当にレナール夫人を愛しているのか?心の内が多く描かれるが、理解に苦しむ。金持ちを蔑む心からその女を落としたいだけなのか、レナール夫人の純粋な気持ちに対してジュリヤンはよこしまな感情のようで、こじれた恋愛に思える。この頃のフランス貴族は不倫が珍しくなかったようだ。
    レナール家を追われ、神学校に入学するが、その中でも孤立するジュリヤン。そんな逆境においても知性を発揮し、認めてくれる人に恵まれ自分の地位を上げていく。

    生まれや身分で一生が決まる時代において、軍人(赤)と僧侶(黒)は、実力で将来をつかむ事ができる。
    ジュリヤンは、ナポレオン時代に生まれ、軍服を着て戦い、実力出世できたほうが良かったに違いない。僧服をまとっていても神を信じる姿勢は感じられない。
    レナール夫人とはどうなるのか?
    その後、ジュリヤンの人生はどのようになっていくのか?
    下巻が楽しみだ。

  • ジュリアン・ソレルは、製材小屋の息子だが、体が小さく役立たず扱いをされていた。ジュリアンはナポレオンを尊敬していたが、この時代はナポレオンが失脚したあとの時代。ナポレオン信仰は隠すべきことだったみたい。
    ジュリアンはラテン語がとても良くできたので、地元の大物であるレナール家に子供の家庭教師として招かれる。
    最初は「度胸試し」のようなつもりで、レナール家の奥様を誘惑しようとするジュリアンだが、奥様との道ならぬ愛の沼に堕ちていく。この時代、姦通は死に値する罪だったようで、奥様は自分の罪に悩み苦しむ。
    近所では奥様とジュリアンの関係を怪しむ人が増え、ジュリアンはレナール家を出て神学校に入校することになる。
    神学校に入校してから、ジュリアンは優秀さゆえに妬まれたり嫌がらせをされたりしたが、野心と賢さで偉い人を味方につけながら出世していく。そんな中でもレナールの奥様のことを忘れられず、ジュリアンは神学校からの移動の夜にレナール家に忍び込む。奥様はジュリアンと会っていない1年の間、自分の罪を思い知り信仰を深めていたので最初はジュリアンを拒むが、結局二人はもとさやに戻って一夜を過ごした。
    侵入者に気付いたレナール家の人たちが発砲する中、ジュリアンはレナール家からゆうゆうと逃げていく・・・というのが、大まかな上巻のお話。

    子どものときに「漫画で読む世界文学全集」的本を読んでいて、その中に赤と黒もあった。
    その時は赤と黒は面白い話だと思ったんだけど、実際に読んでみると、まぁ難解!!
    なかなか話が進まないと思いながら読んでいると、途端に倍速送りされたように急展開があり、理解が追いつかない部分もあった。
    特に理解できなかったのは、ジュリアンが神学校に通うことになったところ。
    奥様とジュリアンの仲が、レナール氏にも疑われるようになり、奥様が手紙の偽装をしたり色々と動き回るんだけど、その描写がすごーく長い割に、レナール氏がジュリアンの処遇を決めるところはあっさりしすぎてて「読み落とした??」と思うほど。

    国王が来訪した際にジュリアンが馬に乗って行進に参加したというのは漫画の本でも印象的だったな。高貴な生まれでないジュリアンにとってこれは「大抜擢」だったわけだが、これはレナール婦人の交渉の結果だったということはこの本を読んで理解した。レナール婦人、大胆だなぁ。

    私の記憶では、ラストは死なんだけど、どうしてそこに至るのかの記憶が曖昧でね。
    しかし、このまま下巻を読み終えたとしても「???」という感じで終わる可能性もあるな。
    漫画や舞台などの二次創作ではジュリアンの女性遍歴を中心に制作されるこのお話。小説を読むと、ジュリアンの内心描写の比重が重くて若干辟易とした。常に周囲の空気や力関係を伺い、人を出し抜いてやろうと考えているジュリアン。
    恋愛も、野心を満たすためだったり、度胸試しの側面が強い。
    友達から木材事業を一緒にやらないかと誘われると「それもいいな」と思ったり、レナール家を訪問したイタリア人音楽家(ジェロニモって名前だった。ミュージカルの語りべであるジェロニモってこの人?)を見ては「こんな生き方(出世や信仰に縛られない自由な生き方)いいな」と思ったりする。本心のジュリアンは、結構素朴なところがある。それでも、彼を動かすのはプライドと野心なのだ。
    この時代の賢い人、頭が回る人ってこんなだったの?と、私は、宇宙人を見ているような気持ちにすらなった。
    当時のフランスでは、本心をさらけ出すことができなかったのだろうか。
    私のように歴史に疎いと、「???」となるだろう本だ。

    追記。ジュリアンが神学校で「マルティンルター」と呼ばれて嘲笑されていた、という表現が、私には特に???だった。
    ルターはプロテスタント派を作ったドイツの宗教家だが、当時のフランスでは嘲笑の対象だったということ?
    宗教、キリスト教に関する深い造詣がないと、作中と同じ温度で笑うこともできない…悲しみ。自分の狭い世界と教養の浅さを思い知る読書だった。

  • 何度も叫んでしまった。「ジュリヤンこのやろーーー!!!」と。
    この野郎、一人の親友に恵まれ二人の女性に愛され三人の恩師に助けられ(ピラール神父、シェラン司祭、ラ・モール侯爵)多くの民をその美貌と才知と得体の知れなさで魅了し死んだ後は小説になっちゃって今でも数え切れない人間の心に語り残り続けているというのに、出世?権力?なんじゃそりゃ!人間不信にも程があるし、勘違いも甚だしい。感情に煽られっぱなし。コミュ障。KY。挙げだしたらきりがない。でも憎めないんだ。嫌いになれないんだよ。「死ぬな」って願っちゃうんだよ。愛しちゃうんだよ。君みたいな男を。君だから。だからもう一度叫ばしてもらおう。「ジュリヤンこのやろーーー!!!」と。

  • ジュリアンという若く聡明な主人公の野望と挫折の本である。
    野望とは出世と恋愛であり、恋愛のつけにより頓挫する。
    フランスでは婚外子が約50%となり、結婚そのものの意味が変貌している。今日であれば死刑にはならない。

    この本は実際におきた事件をもととしているので、安定した地位を得ている貴族がなぜそんなことを・・・。という多くの当時の人が思った疑問に応えたのではないだろうか。
    また そういうことも起こり始めたんだという、19世紀の時代を表しているのではないだろうか。
    様々な事件が今も昔も起きてはいるが、どういう事件に注目が集まるかはその時代精神が反映されるのである。

  • ミュージカル化、バレエ化もされた作品。
    ソレルの内面の葛藤や、時代背景が濃厚で、
    読むのは大変だが、確かに面白い。
    舞台等から受ける印象とかなり違う…

  • まずタイトルがいいじゃないですか。ルージュとノワール!!これが『軍服と僧衣』とかだったら人々も注目しないかも。もちろん青年の野心の物語だけど、そこにじりじりする身分違いのロマンスやら、聖職者の卑俗な根性やら、貴族のせこさやら、いろいろ盛ってあるからおもしろくて、次へ次へと読み進んでしまいます。もちろん古典の読書にありがち、キリスト教や欧米史の知識不足は否めないけど、それを置いといても、人間ドラマは味わい深い。なんだ?なにやってんだこの人たち?と思う。主人公は繊細で大胆で矛盾だらけで愛おしい。人間だもの。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/687036

  • まずはスタンダールさんがフランス人であることをこの本の解説で知りました。
    ナポレオン失脚後のフランスが舞台で、副題に「十九世紀年代記」とあるように時代背景を知らないと主人公のジュリアン・ソレルくんが単なる僻みやに思えてしまい、どうして上流階級の女性陣が彼にハマるのかがよくわからない。

    まずは後ろにある翻訳者の野崎歓さんの読書ガイドから読まれることをおすすめします。
    野崎さんのこの本は誤訳問題とか色々紛争があったらしいけれど、自分は別に気にしませんでした。

    しかし、このジュリアンのどこが良いのだ?
    文章だけじゃよくわからなかったので、勝手に20代前半のトム・クルーズをキャスティングし、向上心に燃える若くてちょっと暗めの神経質なイケメンを妄想して読んだら…。
    こりゃ惚れるわっ!
    by太郎

  • 名著を読もうキャンペーン中だが、名著と呼ばれる本で合う本が今のところなくて…本著も微妙すぎた…。主人公が鼻持ちならないやつらばっかりだよ名著。

  • 冒頭の舞台説明を耐えればあとは文章の勢いで最後まで連れていかれる。誤訳論争を抱えている翻訳ではあるが、このキレのある飲み口は正確性を犠牲にしてでも魅力的だ。フランス史やキリスト教に詳しくない場合は巻末の解説から読んだ方が物語の対立構造がよく理解できる。わたしも詳しくないため大いに助けられた。

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著者プロフィール

スタンダール(本名アンリ―・ヘール)は、フランス革命からはじまるフランスの歴史的な激動時代を生き抜いた、フランスの代表的な作家。著書に「赤と黒」「パルムの僧院」「恋愛論」など。

「2016年 『ディズニープリンセス 「恋愛論」 Disney Princess Theory of Love』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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