幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

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感想 : 251
  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751449

作品紹介・あらすじ

地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的とはなにか?異星人との遭遇によって新たな道を歩み始める人類の姿を哲学的に描いた傑作SF。

感想・レビュー・書評

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  • 人類のまえに突如現れた圧倒的な高度文明を持つ“オーヴァーロード”。彼らの出現によって人類は争い・犯罪・貧困・宗教のしがらみ等から解き放たれる。彼らは一体何者なのか。なぜ地球にやってきたのか。人類はどのような未来を辿るのか。

    海外SFの金字塔として名高い本作。「『幼年期の終わり』のように……」と様々な作品にモチーフとして登場するのでいい加減元ネタを読まねばと思い手に取りました。
    オーヴァーロードとの邂逅~人類の繁栄期~そしてラストまで、全3章を通じて150年に渡るオーヴァーロードとの軌跡を描きます。
    最初こそ未知の生物(?)の到来に恐れ反発もありましたが、人間とは良くも悪くも慣れるものでいつしかオーヴァーロードたちは日常の一部となりその恩恵に甘受します。皆が“理性的”に生きる時代。それは表面状としては平和な反面、人類の創造性は退化する一方でした。

    それぞれの時代で主役が異なり、その時々での人間対オーヴァーロードが向き合うシーンは程よい緊張感が伝わってきます。その間、目を引いたのは“圧倒的知”に対峙したときの人間の行動や思想についてです。
    好奇心は人にとって生きる原動力です。人はまだ見ぬ答えを得ようと努力し、自分と向き合い、時にもがき葛藤を繰り返し、年齢を問わず成長します。しかしオーヴァーロードという存在がすでに明らかな答えを知っている。他者から答えを与えられたり、探求心や好奇心の芽を摘まれる日常はつまらない、もっと言えば苦痛だと思います。
    そんな相手を前に、自身の湧き立つ好奇心や譲れない信念に従って、相手をどうにか出し抜こうと奮起する人々はどの時代にも少なからず登場します。その姿は滑稽に映るでしょうか。その素直なまでの人間らしさ・人間味は私はとても魅力的に映りました。

    冒頭からオーヴァーロードの目的はなかなか明かされませんが、3章でそれらの謎が一気に解明されます。それは宇宙にとっては希望でも、人類にとって絶望に違いません。辛く苦しい真実を突きつけられた後、読者を引き付けて止まないのは圧倒的で刹那的な映像美。一読の価値があります。
    読み終えた頃には地球終焉までの宇宙誌を読み切った気分になり、本を閉じた瞬間それが手の平に収まる本のなかの世界で心底ほっとしました。しかしぞっとする程のリアリティ。もしかして私は地球の未来を先取りしただけでは……と不安に駆られるほど臨場感があります。50年以上前に刊行された作品ですが今なお読み継がれるのも納得。

  • 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」「星を継ぐもの」に引き続き、SFの古典的名作を読んでいる。本書の初版発行は1953年、第1部に改稿が施された新版が出たのが1989年。1953年の初版発行からは、70年近くが経過しており、まさにクラシックだ。

    文庫本の裏表紙に書かれているあらすじは下記の通り。
    【引用】
    地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的とは何か?異星人との遭遇によって新たな道を歩み始めた人類の姿を哲学的に描いた傑作SF。
    【引用終わり】

    本書は3部構成となっている。第1部が「地球とオーヴァーロードたち」、第2部が「黄金期」、第3部が「最後の世代」である。第1部から第2部、また、第2部から第3部に進む際に、物語は大きな展開を見せる。
    ネタバレになるので、内容は書けないが、特に第2部から第3部に進む際の話の展開は、私にとっては衝撃的なものだった。
    上記のあらすじには「新たな道を歩み始めた人類」を描いた作品・物語という紹介がされているが、実際には、人類が主人公ではない。もっと大きなものが主人公であり、それが明らかになる展開に衝撃を受けたということだ。

  • 異星人の宇宙船が地球上空に現れ、
    暴力的な手段を用いず人類を統治し、
    平和で安定した社会へと導く……。

    恥ずかしながら初めて読みました。
    で、この作品のパワーは凄まじく、
    様々な形で影響を受けた後発作品が
    多々生み出されたことも理解。
    作者が世界の恒久平和を願って、
    善の心で書いたらしい――というのも、わかる。
    発表は1953年、第二次世界大戦終結の八年後。

    得心するけれど強烈な感動を味わうわけでもなく、
    サラッと読み終えてしまったのは、
    キャラクターの誰にも感情移入できなかったせいか。
    大人は覇気がないし、子供らも騒ぐでなし暴れるでなし(笑)。

    大集団の価値観を一本化すれば争いは回避される、
    安寧が保証される……的な考え方が好きではないことも、
    本作への没入を阻害していたかもしれない。
    もっと年を取ってから読み直せば印象は変わるだろうか。

  • 突如世界中の大都市の上空に現れた巨大な飛行物体。攻撃するでもなく、静かにそこに在り続ける。
    その日から始まる未知の世界。
    これは凄い。
    圧倒された。

  •  自分が好きなSFは『火の鳥 未来編』のパターンのやつだなあということに何年か前に気付きまして、その類型を遡ると辿り着くのがこの『幼年期の終わり』でした。
     『幼年期の終わり』が1953年、『火の鳥 未来編』が1967年ごろ、そして’80年代になると『ブラッド・ミュージック』、’90年代になると『新世紀エヴァンゲリオン』・・・と、いうよりガイナックス作品、庵野監督作品はSFマインドいやSFエキスが濃縮されてて『ふしぎの海のナディア』のレッドノアもそうだと思う。たぶん。(『トップをねらえ!』のウラシマ効果はこれではなく『終りなき戦い』の方だそうです)そして’00年代になると『電脳コイル』のヒゲ回とかですかねー。
     
     以前『ミッション・トゥ・マーズ』(たぶん駄作)を観た時に『2001年宇宙の旅』のよさを再確認できまして、それは異星人を出さずにモノリスのみにした点で、そのおかげであの映画は古びないということでした。これはクラークではなくキューブリックが出したアイデアだそうで、さすがキューブリックGJだなと。
     その15年前に出版されたクラークの『幼年期の終わり』、第1部は『地球の静止する日』のようなファーストコンタクトものですが、『2001年宇宙の旅』と同じくやはり異星人の容姿が重要な鍵でした。この部分は永野護のFSSにそのまま引用されてます。
     異星人オーヴァーロードの容姿、仏教(たぶん禅)、そしてクジラというのは英国人であるクラークだからこそなんじゃないか、あとニューエイジ系の人達にやはり影響を与えてるんじゃないのかなあと思いました。英国といえばダーウィンを生んだ国で無神論者も多い、と同時にオカルトやファンタジー大国でもあるという・・・トールキンとか、最近だとハリーポッターとかもそうですね。また、クラークが移住して晩年まで住んだスリランカは仏教国でもあります。
     お話自体は『2001年宇宙の旅』に近いけど、モノリスが無機物、板だったのに対してオーヴァーロードについては人類が右に行くか左に行くか試されてるような、タイトロープの上に立たされてる感覚を強く感じました。

     後継作『2001年宇宙の旅』を名前を出しましたが、あんなに難解ではなくとても読み易いんでびっくり。クラークは理系のものすごい人なんですが比喩表現がけっこうロマンティック。
     面白さで言うと途中までが★5で、後半は途中で話わかっちゃう(そうする他ない)ので悲しいだけ、★4なのですが歴史的に重要な作品なのでトータル★5にしました。

  • 宇宙からの使者は敵か味方か。
    読みたいと思いながら長く読めてなかったので、新訳の方で。宇宙開発が予想より早いから慌てて書き直したとまえがきにあって、笑ってしまった。
    第1部のラストがよかったので、墓参りしてくれているところがほしかったな。

  • 人類を遥かに凌ぐ高次知性生命体が地球を訪れ,それによって世界政府が実現される…という話であるが,全体からするとそれらはあくまで導入に過ぎず,彼らが何のためにそれを行っ(てき)たかという部分が次第に明らかになっていく.
    歳月を経ようが知恵を結集しようが,根源的なスケールの違いによって,到底及びもしないような,遥かに高度なものを有する存在を前にしての無力感というのが通底したテーマのようである.序盤は人類のオーバーロードに対するそれが繰り返し描かれ,無力感を振り払って抗おうとする人々に焦点が当たっている.が,展開が進むにつれ,実はオーバーロード自身も,その種のコンプレックスをより上の高度な存在に対して抱えており,更には人類も含め,オーバーロードが面倒を見ることになる種族は,最終的には彼らが及びもつかない高みへと進んでいくことに,言い知れない寂寥感を抱えていることも明かされる.
    果てしない階層構造の中で,人類が技術や概念の進歩を重ね,どんなに高みへ行ったとしても,上には上がいる…ということになるのだろうか.

  • さすがに年間500冊くらいの本を読んでいると、「本を読む」ってのは「昼食をとる」くらいの日常になってしまっている。
    昼食をとったあとに深い感慨を得ることがあまりないように、本を読み終わったあとは「うん、読み終わったな」と淡々とページを閉じることがほとんど。
    だけどたまに「ああ、なんていい読書体験をしたんだ」と、じんわりと幸福感に包まれることがある。本書の読了時、その幸福感が来た。

    いや~、実にすごい本。壮大なストーリー。
    名作との誉れ高いだけあって、なんで僕はこんな歳まで本書を知らなかったのだろうと悔やむほど面白い。

    いろんなSFの原型になっている、古典中の古典なんだろうね。今後もSFを頑張って読もうと強く思わされる本。

  • 2021年2月
    (わたしの話だが)コロナ禍で急に、在宅勤務をしたり、ウェブセミナーを受講したり、オンライン飲み会してみたり…なんとか今の環境に順応しているつもりでも、たまの出社でがらんとしたオフィスを見ると、ものすごい違和感。
    必要な会話はチャットやオンラインミーティングで可能だけど、こんなんで本当にいいの?という迷いもある。

    宇宙人オーヴァーロード(最高君主)の出現で世界が一変する、60年前に描かれたSF小説の中の地球はなんだかそんな今に通じるものがある。
    オーヴァーロードのおかげで平和な世界がもたらされ、人間は何の不安もなく生活を送ることができる。何の不安もない?本当に?
    物語の中の人々の迷いや葛藤に共感した。
    今の気分にぴったりの小説だった。

  • 中間管理職的なオーヴァーロードが悲しい存在。芸術はつまり大人になって忘れてしまった根源的な何かを思い出すことで、黄金期でニューアテネに集った人たちは、勢いと若さのある幼年期に戻りたかったのかもな…オーヴァーロードが人類を統制し監視してきたことに理由はない、というところが愕然とし、納得。進化も滅亡も、原因はあるけど理由はない。こんな大きな力に実は支配されてるのかも、何百年も前に埋め込まれた記憶を辿っているのかもしれない。

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