- Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334751449
作品紹介・あらすじ
地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的とはなにか?異星人との遭遇によって新たな道を歩み始める人類の姿を哲学的に描いた傑作SF。
感想・レビュー・書評
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すっかり光文社の手先と化したわたくしが今回選んだのは池田真紀子さん訳の『幼年期の終わり』です
なぜか訳者で読む本を選ぶ行為を「通」と思っているふしがある
蕎麦を最初に1本だけそのまますするみたいな
さらに池田真紀子さんがSFとは珍しい
実に興味深いんですが作者クラーク?
はて、クラークとな誰やねんクラークて
アーサー・C・クラークだわバカタレ!
そしてSF界の巨匠の代表作はやはりとんでもなく面白かったのです
もう序盤から引き込まれまくり!
人類の統治者たるオーヴァーロードが初めて姿を現した時なんか、うわーそう来たか!やられたー!思いました
頭の中で「やられたー!」がこだましました
さすがアーサー!
そしてこの概念とか設定は非常にSFチックでありつつ哲学チックでもあって、ごちゃごちゃしてるんだけど、ちゃんとより分けられたら自分だけの光の道が見られるようになってくるのよ(伝わらん)
と、とにかくCの代表作にとどまらない
SF小説はとっても面白くて、とっても思考させられる至極の一冊でした詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人類のまえに突如現れた圧倒的な高度文明を持つ“オーヴァーロード”。彼らの出現によって人類は争い・犯罪・貧困・宗教のしがらみ等から解き放たれる。彼らは一体何者なのか。なぜ地球にやってきたのか。人類はどのような未来を辿るのか。
海外SFの金字塔として名高い本作。「『幼年期の終わり』のように……」と様々な作品にモチーフとして登場するのでいい加減元ネタを読まねばと思い手に取りました。
オーヴァーロードとの邂逅~人類の繁栄期~そしてラストまで、全3章を通じて150年に渡るオーヴァーロードとの軌跡を描きます。
最初こそ未知の生物(?)の到来に恐れ反発もありましたが、人間とは良くも悪くも慣れるものでいつしかオーヴァーロードたちは日常の一部となりその恩恵に甘受します。皆が“理性的”に生きる時代。それは表面状としては平和な反面、人類の創造性は退化する一方でした。
それぞれの時代で主役が異なり、その時々での人間対オーヴァーロードが向き合うシーンは程よい緊張感が伝わってきます。その間、目を引いたのは“圧倒的知”に対峙したときの人間の行動や思想についてです。
好奇心は人にとって生きる原動力です。人はまだ見ぬ答えを得ようと努力し、自分と向き合い、時にもがき葛藤を繰り返し、年齢を問わず成長します。しかしオーヴァーロードという存在がすでに明らかな答えを知っている。他者から答えを与えられたり、探求心や好奇心の芽を摘まれる日常はつまらない、もっと言えば苦痛だと思います。
そんな相手を前に、自身の湧き立つ好奇心や譲れない信念に従って、相手をどうにか出し抜こうと奮起する人々はどの時代にも少なからず登場します。その姿は滑稽に映るでしょうか。その素直なまでの人間らしさ・人間味は私はとても魅力的に映りました。
冒頭からオーヴァーロードの目的はなかなか明かされませんが、3章でそれらの謎が一気に解明されます。それは宇宙にとっては希望でも、人類にとって絶望に違いません。辛く苦しい真実を突きつけられた後、読者を引き付けて止まないのは圧倒的で刹那的な映像美。一読の価値があります。
読み終えた頃には地球終焉までの宇宙誌を読み切った気分になり、本を閉じた瞬間それが手の平に収まる本のなかの世界で心底ほっとしました。しかしぞっとする程のリアリティ。もしかして私は地球の未来を先取りしただけでは……と不安に駆られるほど臨場感があります。50年以上前に刊行された作品ですが今なお読み継がれるのも納得。 -
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」「星を継ぐもの」に引き続き、SFの古典的名作を読んでいる。本書の初版発行は1953年、第1部に改稿が施された新版が出たのが1989年。1953年の初版発行からは、70年近くが経過しており、まさにクラシックだ。
文庫本の裏表紙に書かれているあらすじは下記の通り。
【引用】
地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的とは何か?異星人との遭遇によって新たな道を歩み始めた人類の姿を哲学的に描いた傑作SF。
【引用終わり】
本書は3部構成となっている。第1部が「地球とオーヴァーロードたち」、第2部が「黄金期」、第3部が「最後の世代」である。第1部から第2部、また、第2部から第3部に進む際に、物語は大きな展開を見せる。
ネタバレになるので、内容は書けないが、特に第2部から第3部に進む際の話の展開は、私にとっては衝撃的なものだった。
上記のあらすじには「新たな道を歩み始めた人類」を描いた作品・物語という紹介がされているが、実際には、人類が主人公ではない。もっと大きなものが主人公であり、それが明らかになる展開に衝撃を受けたということだ。 -
SFを超えた哲学小説
という帯と、SFの古典ということで
ぜひ読みたいと思い手に取りました。
とりあえず、面白い!哲学的!でもわかりやすく
難しい知識も必要ないのに深い!
最後の展開、よく考えつくなーー
素晴らしい創造力です。
今のSFではもっと科学的なものを発展して
創造されたものが多い気がしますが、
根底に、平和を愛する気持ちや
哲学があり
今のSFを読みなれてる人は、ところどころ
古いと思うかもしれないけれど
私は本当に大好きです。
途中平和になりすぎたことが退屈にならないか?
ってとこで
最近読んだ 暇と退屈の倫理学 という本のことを
思ってました。
なので、それをどう捉えてるのかも興味深かったし
それでどうなるの?先が読みたくて
どんどん進みます。
最後の展開は、もう少し咀嚼したいとこです。
また再読をぜひしたい本に出会いました! -
異星人の宇宙船が地球上空に現れ、
暴力的な手段を用いず人類を統治し、
平和で安定した社会へと導く……。
恥ずかしながら初めて読みました。
で、この作品のパワーは凄まじく、
様々な形で影響を受けた後発作品が
多々生み出されたことも理解。
作者が世界の恒久平和を願って、
善の心で書いたらしい――というのも、わかる。
発表は1953年、第二次世界大戦終結の八年後。
得心するけれど強烈な感動を味わうわけでもなく、
サラッと読み終えてしまったのは、
キャラクターの誰にも感情移入できなかったせいか。
大人は覇気がないし、子供らも騒ぐでなし暴れるでなし(笑)。
大集団の価値観を一本化すれば争いは回避される、
安寧が保証される……的な考え方が好きではないことも、
本作への没入を阻害していたかもしれない。
もっと年を取ってから読み直せば印象は変わるだろうか。 -
突如世界中の大都市の上空に現れた巨大な飛行物体。攻撃するでもなく、静かにそこに在り続ける。
その日から始まる未知の世界。
これは凄い。
圧倒された。 -
自分が好きなSFは『火の鳥 未来編』のパターンのやつだなあということに何年か前に気付きまして、その類型を遡ると辿り着くのがこの『幼年期の終わり』でした。
『幼年期の終わり』が1953年、『火の鳥 未来編』が1967年ごろ、そして’80年代になると『ブラッド・ミュージック』、’90年代になると『新世紀エヴァンゲリオン』・・・と、いうよりガイナックス作品、庵野監督作品はSFマインドいやSFエキスが濃縮されてて『ふしぎの海のナディア』のレッドノアもそうだと思う。たぶん。(『トップをねらえ!』のウラシマ効果はこれではなく『終りなき戦い』の方だそうです)そして’00年代になると『電脳コイル』のヒゲ回とかですかねー。
以前『ミッション・トゥ・マーズ』(たぶん駄作)を観た時に『2001年宇宙の旅』のよさを再確認できまして、それは異星人を出さずにモノリスのみにした点で、そのおかげであの映画は古びないということでした。これはクラークではなくキューブリックが出したアイデアだそうで、さすがキューブリックGJだなと。
その15年前に出版されたクラークの『幼年期の終わり』、第1部は『地球の静止する日』のようなファーストコンタクトものですが、『2001年宇宙の旅』と同じくやはり異星人の容姿が重要な鍵でした。この部分は永野護のFSSにそのまま引用されてます。
異星人オーヴァーロードの容姿、仏教(たぶん禅)、そしてクジラというのは英国人であるクラークだからこそなんじゃないか、あとニューエイジ系の人達にやはり影響を与えてるんじゃないのかなあと思いました。英国といえばダーウィンを生んだ国で無神論者も多い、と同時にオカルトやファンタジー大国でもあるという・・・トールキンとか、最近だとハリーポッターとかもそうですね。また、クラークが移住して晩年まで住んだスリランカは仏教国でもあります。
お話自体は『2001年宇宙の旅』に近いけど、モノリスが無機物、板だったのに対してオーヴァーロードについては人類が右に行くか左に行くか試されてるような、タイトロープの上に立たされてる感覚を強く感じました。
後継作『2001年宇宙の旅』を名前を出しましたが、あんなに難解ではなくとても読み易いんでびっくり。クラークは理系のものすごい人なんですが比喩表現がけっこうロマンティック。
面白さで言うと途中までが★5で、後半は途中で話わかっちゃう(そうする他ない)ので悲しいだけ、★4なのですが歴史的に重要な作品なのでトータル★5にしました。 -
「知性ある者は、運命の必然の腹を立てたりはしない」
その考えかたは、人類のには最後まで受け入れられなかったわけだな。
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地球外知的生命体「オーヴァーロード」(最高君主)に地球のオーナーシップが移行され、人類最後の人間ジャンが地球の終わりをレポートする最後はまるで自分がその瞬間に立ち会っているみたいに具体的ですごかった。
「自分の悩みなんて宇宙の大きさに比べたら大したことない」という考え方の処世術にうんざりするほどの説得を与えてくれる作品。
「草を食べる虫を食べる鳥を食べる獣を食べる人間」という仕組みを食物連鎖というなら、このSFで描かれてたのは「文明・知識連鎖」って言える。
私たち人間は人間の間だけで優れている劣っているって比べあっているけど、オーヴァーロードたち、さらにその上位に君臨するオーヴァーマインドたちからしたらアリの巣を眺めてるくらいの感覚。ちょっと遊びで月を回してみるくらいの技術力の前に、たかが一惑星の生命体がどう抗えるのか。
タイトルの「幼年期」が「人類の(宇宙全体の知的生命体と比較した)成熟度」って解釈できたけど、皮肉すぎて著者のセンスすごい。
SF作家ってほんとすごいな。
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#読書記録
#幼年期の終わり -
プロローグは米ソの宇宙開発競争が描かれる。米国で働くエンジニアも秘密主義で専制的に物事を進められるソ連が技術開発には有利と考えている。米軍の情報部大佐は以下のように言うが、エンジニアの納得は得られなかった。
「われわれの情報技術交換という建前は、なるほど敵に若干情報を漏らすというマイナスはあっても、技術進歩の速度は高められる。ソ連の研究陣はおそらく、自分の仲間がなにをやっているかのさえ知らん場合が多いだろう」
ソビエト連邦の崩壊を知っている21世紀人からすれば情報部大佐の発言が正しい。情報部という隠蔽体質に走りそうな部門の人間でも上記の発言をしてもおかしくないと感じさせるところに冷戦を制した米国の強みがある。 -
文学ラジオ空飛び猫たち第71回紹介本
https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/71-C-e1f9f09
間違いない名作! なんでももっと早く読まなかったのかと後悔したので、気になっていたのに読んでない人は是非読んで欲しい! いろんな作品の原型になっているのが、読めばすぐわかる。この想像力はすごい。ただ非常に読みやすく、書かれた当時の読書側も書き手側もSFの素養がまだ出来上がっていないことが伺えて面白かった。