肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫)

  • 光文社
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本棚登録 : 559
レビュー : 70
  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751487

作品紹介・あらすじ

第一次大戦下のフランス。パリの学校に通う15歳の「僕」は、ある日、19歳の美しい人妻マルトと出会う。二人は年齢の差を超えて愛し合い、マルトの新居でともに過ごすようになる。やがてマルトの妊娠が判明したことから、二人の愛は破滅に向かって進んでいく…。

感想・レビュー・書評

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  • 1923年ラディゲ20歳のときの作品。ラディゲはその年、腸チフスで死去。

    主人公の僕の12歳から16歳までのお話。

    人が恋をしたときに感じる不安や疑心暗鬼、心理描写なんかが繊細に描かれてる。
    手にしても、手にできなくても何かしらの引っ掛かり。
    僕のお父さんは、なんでマルトの肖像画もってたのかな?マルトの家と僕の家はどんな関係にあったのかな。

    ドルジェル伯の舞踏会、借りてたの返却したけど、やっぱり読もうと思う。

  •  素晴らしい。すばらしすぎる。奇跡のような至高の小説。

    「僕はさまざまな非難を受けることになるだろう。」書き出しの1文である。
    この1文でグイ!とひきこまれた。この書き出しで面白くないわけがない(計算された技巧的な書き出し、とも言えるが)。みがきぬかれた文章表現、構成。なるほど完成度が高い。18歳でこれを書きあげたラディゲの天才は疑いない。

     作中、秀逸なまるで老成した表現が次々に現れる。

    「体の触れあいを愛のくれるお釣りくらいにしか思わない人もいるが、むしろそれは、情熱だけが使いこなせる愛の最も貴重な貨幣なのだ。」
    などなど。名文句は数しれない。

     物語は、15歳の「僕」と19歳の人妻マルトの恋愛、そして愛憎。10代の青年でもあり、理性も分別の制御もきかないわけで、感情や想いのままに突き進む。痛々しいほどの疾走。焦燥。マルトと「僕」は、救われることのない道行きをゆく。破滅の予感。その川の流れにやがて崖と瀑布が、終りと破滅が現れること。二人は、そのことを感じている。
     「僕」の苛立ち哀しみを、読者である私もまた、強く生々しく感じながら読み進めたのであった。
    ところで、読者である自分自身もまた記憶を喚起される。中学の頃の片思い、そして若き日の恋愛のこと。久しく思い起こすことのなかった記憶。その生々しい手ざわりを思い出した。「僕」のように、私もいつも苛立っていた。それでも相手の女性は、いつも従順についてきてくれた…。「愛情のせいでマルトのなかの奴隷のような性質がめざめていた。」ということだったのか…。

    そう、マルトは背徳の女、というより、意外にも、純で一途、従順なのであった。

     屋根上の狂った娘を夢中で見物したこと。パリの夜、ホテルを探して歩き続ける二人、疲労、倦怠、焦燥。これらの場面もまた印象深い。寛容で理解ある父のありようにもおおいに感心。父になるなら、あんな父になりたいと思った。
     図書館で借りて読んだのだが、後日、あらためて文庫を購入し、折にふれて再読したいと思う。

  • ラディゲと言われても良く知らない。コクトーと言われると「オルフェ」を思い出す。その程度の知識で読んでみた。
    物語自体は刹那的で破滅的なひたすら身勝手な若者の恋愛悲劇で、正直、だから何?的なものではある。だがしかし、一人称の語りが一貫して第三者的であり、なおかつ詩的で、この小説を単なる恋愛悲劇と呼ばせない文学的な厚みを持たせている。実際、その表現力は実に的確で、詩的だ。
    「猫だって一生軽いコルクに悩まされるより、ひと月だけ重い鍋を引きずるほうがましだと思うにちがいない。」
    「この残忍な愚弄は、愛が情熱に成長するときの声変わりだった。」
    「妻を亡くし、これほど誇り高く絶望を克服する男を見て、いつかは世の中の秩序が自然に回復していくことを悟った。」
    肉体の悪魔というタイトルだが、悪魔は出てこない。ここにあるのは、永遠に刹那的には生きられない人間の運命と、実態としての肉体をもって続いていく人間の血縁と、その檻に囚われて叫び声をあげる人間の精神なのだと思った。

  • ラディゲの作品を初めて手に取った。

    15歳の少年(男性)だからこその感性を描いている。
    周囲の空気や戦争の気配、そして女性に対する愛情や
    女性を理解することの細やかな描写。
    戦争を背景にしていることは、物語に少なからず影響を及ぼしている。

    自分しか見えていない主人公は、自分を中心に世界を眺めている。
    周囲のことも、女性のことも、考えているつもりで考えられていない。
    自分を客観視できていない。
    だからこそ、物語の緊張感を煽る。
    先が分からない。
    10代の少年の心情が面白い。

  • お話の内容は単純でした。でも主人公の感情が痛いほど伝わってきて、その単純さをいい意味でぶち壊した。ラディゲが私と同じくらいの歳でこの小説を書いたなんてとても思えない…。深すぎます。

    こんなにすごい小説久しぶりに読んだ気がします。次はもう少し大人になってからまたこの本を手に取りたいです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「主人公の感情が痛いほど伝わってきて」
      一部夢見て、勿論あり得ないなぁと思いつつ。若かったです、、、
      「ポケットの中の握り拳」と言う名作を作...
      「主人公の感情が痛いほど伝わってきて」
      一部夢見て、勿論あり得ないなぁと思いつつ。若かったです、、、
      「ポケットの中の握り拳」と言う名作を作った、マルコ・ベロッキオが映画化していて、非常にエロかったです(当時は免疫無かったからかな)。。。
      2012/12/07
  • 引用。

    僕はマルトにキスをした自分の大胆さに呆然としていたが、本当は、僕が彼女に顔を寄せたとき、僕の頭を抱いて唇にひき寄せたのはマルトのほうだった。彼女の両手が僕の首に絡みついていた。遭難者の手だってこれほど激しく絡みつくことはないだろう。彼女は僕に救助してもらいたいのか、それとも一緒に溺れてほしいのか、僕には分からなかった。

    平静に死を直視できるのは、ひとりで死と向かいあったときだけだ。二人で死ぬことはもはや死ではない。疑り深い人だってそう思うだろう。悲しいのは、命に別れを告げることではない。命に意味をあたえてくれるものと別れることだ。愛こそが命なら、一緒に生きることと一緒に死ぬことのあいだに、どんな違いがあるというのだろう?

    精神的な類似は身体にまで及ぶことがある。目つきに、歩き方。しばしば知らない人がマルトと僕を姉弟だと思いこんだ。僕たちのなかにあった類似の芽を愛が育んだのだ。

  • なかなかここまで不快に感じる不倫小説も珍しいな、と思い、いや、それこそ感情移入してるのではないか。出兵している旦那がいるのに未成年と関係を持つ女。見た目外見ともに記述が皆無で、ただの空っぽな女という印象。対する少年も、この状況に飲み込まれているだけで、女性を愛する苦悩などが伝わらず。女が妊娠するも、自分の子供と確信するくせに責任とるのは絶対ありえない、周りも醜聞を恐れ何もしない。この表題の意味がわからなかった。戦争に対する刹那的な感傷なのかな?ちょっとこの本はないなー。

  • 2019.08.15 図書館

  • フランス文学は読みにくくわかりにくい、という偏見がありました。
    コクトーとか、ちょっと苦手で。
    でも、この本はすごく読みやすく、共感もでき、面白かった。
    若いな、と。
    向こう見ずで、刹那的で、疑い方も愛し方もまっすぐで。
    おなかに子供ができたと知って、男は逃げ出すのかと思った。
    そうでないところに真剣さを感じた。
    時をおいて、もう一度よみかえしてみたい。


  • フランス文学。
    第一次世界大戦の時期にも重なってくる約100年前にラディゲが著した。

    結末にショックを受ける。
    誰にとっても救われない淋しく切ない恋の物語。

    戦争というのは直接的なだけでなく、間接的にこんな不幸の爪痕も残すのか。

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