道徳の系譜学 (光文社古典新訳文庫)

制作 : Friedrich Nietzsche  中山 元 
  • 光文社
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本棚登録 : 398
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751852

作品紹介・あらすじ

ニーチェが目指したのは、たんに道徳的な善と悪の概念を転倒することではなく、西洋文明の根本的な価値観を転倒すること、近代哲学批判だけではなく、学問もまた「一つの形而上学的な信仰に依拠している」として批判することだった。ニーチェがいま、はじめて理解できる決定訳。

感想・レビュー・書評

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  • 西洋文明のキリスト教的な価値観の起源を探り転倒を試みる。現代思想の源流がここにある。ニーチェが暴露する、西洋社会が隠蔽した人間の弱さというものは、つまるところ社会的諸関係のなかにあってあらゆることを覆い尽くし目を背けなければ生きていけない人間の哀しみそのものであり、弱さを抱えながら生きるにはどうしたらいいのか、という根本的な問いかけに他ならない。目を背けるなというニーチェのメッセージは重く、逃れ難いこの社会というものの強固さを思い知らされる。

  • 読み物としては、善悪の彼岸のほうが面白かった。テンポも良かったし、語り口にキレがある。とはいえ、ルサンチマンやニヒリズムといったニーチェ用語に生で接することができて嬉しい。どこまでも冷徹な目で世界を眺める様子はさすが。
    論文形式といえど、結局はニーチェ節が満載で、敵対者に対して恐ろしいほどの語彙力であらん限りの悪口雑言を尽くすさまは、つい笑ってしまった。
    結論を小出しにしつつコネコネ、ネチネチと語る語り口で、途中でちょっと飽きた。でも解説が秀逸で、結論を一息で語ってくれる。

  • 第一論文は語源的に、良いと悪い、善と悪の系譜をたどっていく。これまでのニーチェの直感的、詩的な記述に比べ、論理的な記述が明晰である。

    第3論文まで読んで、人間の底無しの深淵を覗き込んだような気がした。すごい筆力だった。

    ヨーロッパとキリスト教、そして学問体系に挑み、瓦解させ、それでも、さらに生きよと言う。恐ろしい本だ。

  • 人は欲望を満たすために社会を形成したが、その社会によって人は欲望を抑制されることとなった。社会における善は、自己肯定から辛抱強さへとその価値観を奴隷により逆転された。良心は自分の自由な本能を外ではなく内に向けざるを得なくなり、疚しい良心、として成長した。その良心は、禁欲的な生に高い価値があると解釈し体現する司牧者によって点検される。学問もまた価値を生み出す権力を必要とし、自らは価値を創造することが出来ないため、禁欲的な理想を求めるものである。禁欲的な理想の果実たる、真理の価値を問い直そう、というのがニーチェの主張だ。
    神に罪を被せたギリシアと神に罰を背負わせたキリスト教との対比が興味深かった。また、純粋な理性、への批判。見るとは能動的な力が無ければ出来ないという指摘。統計など科学的なデータの裏にも意図があることを忘れてはならない。

  • これまでの文化、哲学、さらには学問全体を、徹底的に分析し批判することで、ヨーロッパを支えてきた従来の価値観を転倒し、新たな価値観を探る。

    「どう生きるべきか?」という問いに、徹底的に、本気で向き合った、不朽の名著。

    以前、岩波文庫版『善悪の彼岸』で挫折してしまったが、今回、『ニーチェ入門』を読んでから本書に挑戦。
    内容は難解だが、訳文は読みやすい。

  • F.ニーチェが『善悪の彼岸』を補足・説明する本として1887年に発表した論文集です。

    わたしは『善悪の彼岸』(光文社古典新訳文庫)に先に手をつけたのですが、内容がさっぱり理解できず、何も頭に残りませんでした。

    本書は『善悪の彼岸』よりは読みやすいと思われます。わたしは「特定の、自分がもっとも嫌いな人(たち)」を「敵」に設定する、という下卑た読み方をしました。以下、どうでもいい話になって恐縮ですが、どういうことか説明させて頂きます。

    まず、本書にはざっくり二つの特徴があるように見受けられす。ひとつは、本書は論文調といえども「ニーチェの言葉」で書かれている、すなわち、いかようにも解釈可能な文章で構成されているということ。ふたつめは、きわめて大雑把に捉えれば、本書ではC.シュミット的な「友敵構造」が成立している、ということです。
    (都合の悪そうな文章はとりあえずスルー。例えば"無力から生まれた精神が存在しなければ、人間のすべての歴史はきわめて面白みのないものになったに違いない"(P.49)等は無視)。

    以上の二つの特徴から察するに、本論においては事実上なんでも「敵」として代入可能である、という推測が立ちました。そこで「自分の個人的な私仇」を「敵」として投入します。すると、不思議なことにニーチェが説く熱いメッセージも、やや見えにくい論理構成も、するすると頭に入ってくるようになったのです。読んでいてとても気持ちいい。逆に教科書通り「西洋文化」、「キリスト教」、あるいは「自分自身」といった抽象的なものを入れてしまうと、途端に混乱してしまいました。

    ただ、この方法には「本の内容を自分の行動にフィードバックしにくい」という欠陥があります。「ルサンチマン」を槍玉に挙げている本を、よりによって読者自らの「ルサンチマン」をテコにして読み解いていく、という珍妙な事態になるため、あちこちで論旨が転倒してしまい、ニーチェが言っていることの当否判断がつけられなくなるのです。

    しかし、本書には訳者・中山元氏の秀逸な「解説」と「あとがき」がついています。またWikipediaもよくまとまっている。これがあれば大枠の理解はバッチリ!

    ・・・結局のところ本書や『善悪の彼岸』を本当に理解するために必要なこと、それは当のニーチェが言う通り、"「現代的な人間」であってはならず、ほとんど牛になること、すなわち反芻すること"(P.27)であり、これ以外の道はない。まずはそのことを繰り返し「反芻」しているところです。

  • さまざまな事柄に関して思いの丈を打ち明けているような印象を受けました。

    論文を読んでいるというよりは戯曲などの文学作品を読んでいるように思えてくるほど、言い回しがドラマチックで、滾るような情熱を感じます。

    ニーチェ自身が自分の到達した境地を公の場に示すためには、文学の力を利用することが不可欠だったのかもしれないなと思いました。

  • 新訳だけど、ルソーの『社会契約論』(同文庫・同訳者)と違って、あまりお得感はない。

  • この本では、禁欲、疚しさ、罪、悪の意味についてお話している。
    愉快だったり、イライラさせたり。
    ニーチェは重要なことをいうのを後ろのほうにとっておいたりするので、途中、言及の意図がわからなくて、読むのが辛かったりする。
    いやむしろ、なんども読み返して欲しいがゆえにそうしているのだろうか。

  • 人には二種類あって、物事を良い・悪いで判断する人と、善・悪で判断する人。
    ってことが書いてある本らしい。(byたち)

    就活終わったら読みたい。

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プロフィール

1844-1900年。ドイツの哲学者。近代がはらむ問題を一新に受け止め、古代以来の哲学との対決に挑み、現代思想に衝撃を与えた。代表作は、本書(初版1882年)のほか、『ツァラトゥストラはこう言った』(1883-85年)、『善悪の彼岸』(1886年)など。

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