経済学・哲学草稿 (光文社古典新訳文庫)

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感想 : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752064

作品紹介・あらすじ

勃興する資本主義を鋭く分析・批判し、のちに『資本論』に結実する経済学的思考。そしてヘーゲル批判から発し、労働の意味を肯定的に捉え直そうとする哲学的思考。この二つの思考が交わるところで、青年マルクスは革新的な思想を打ち立てた。

感想・レビュー・書評

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  • 「経済学・哲学草稿」は、昔、岩波文庫を買ったことがあり、長い間――数十年間(笑)――持っていたのだが、結局、中をチラと覗いたっきり、1ページも読まないで棄ててしまった。

    なぜ読まなかったかといえば、もちろん難しかったから。

    いや、1ページも読んでないんで、難しかったかどうかもわからん。
    難しそうに感じたからというのが正確か。なんか漢字も多かったし。

    そして実際読んでもやっぱり難しかったはずである。
    なんせマルクスの本ですから。

    ところで、長谷川宏という人の名前は、ヘーゲルをわかりやすく訳した人らしいということをどこかで聞いていて、光文社古典新訳文庫もなかなか粒のそろったラインナップで、表紙のデザインもいいので、つい手にとってみた。

    冒頭、こういうふうに始まる。

    「賃金は、資本家と労働者の敵対する闘争によって決まってくる。資本家の勝利は動かない。資本家が労働者なしで生きのびられる期間は、労働者が資本家なしで生きのびられる期間より長いからだ。」(第一草稿「賃金」p17)

    なんと、非常に分かりやすい。

    「賃金を決定する際の、これだけは外せない最低限の基準は、労働期間中の労働者の生活が維持できることと、労働者が家族を扶養でき、労働者という種族が死に絶えないこととに置かれる。通常の賃金は、アダム・スミスによれば、ただの人間として生きていくこと、つまり、家畜なみの生存に見合う最低線に抑えられている。」(同p18)

    「労働者は、資本家がもうけるときいっしょにもうけにあずかるとは限らないが、資本家が損をすれば必ずいっしょに損をする」(同p19)

    「労働者と資本家がともに苦境にあるとき、労働者は生きていけるかどうかで苦しんでいるが、資本家は金もうけできるかどうかで苦しんでいる」(同p20)

    かっこいいなマルクス。

    「分業の細密化は、労働者をますます一面的かつ従属的な存在とし、とともに、人間同士の競争だけでなく、機械との競争までも招きよせる。労働者が機械に転落したとなると、機械が競争相手になるというわけだ。」(同p23-24)

    「国民経済学はプロレタリアを――つまり、資本も地代もなく、純粋に労働によって、すなわち一面的・抽象的な労働によって生きていく人間を――労働する者としか見ない。そこで、プロレタリアは、すべての馬と同じく、働くことができる程度に稼がねばならない。それが国民経済学の掲げる命題だ。国民経済学は働いていないときのプロレタリア――人間としてのプロレタリア――を考察の対象とすることがない。その考察は、刑事裁判所や医者や宗教や統計表や政治や乞食や取り締まり官にゆだねられている。」(同p28-29)

    正直、分からないところもあちこちあるが、ずいぶん理解しやすい。
    これはありがたい。

    マルクスがこの「経済学・哲学草稿」を書いたのは、なんと26歳のときだ。
    凄い人は凄いとしかいいようがないな。

  • 初マルクス。
    言葉は平易だが、内容は難しい。
    この本はある程度マルクスを読んだ人が読むものではないか。音楽で言うとブートレグ版みたいな。もうスタジオ・アルバムやライブ盤は一通り聴いていて、なんでもいいから新しいものを聴きたい人が手に取るもの。

  • 「賃金を決定する際の、これだけは外せない最低限の基準は、労働期間中の労働者の生活が維持できることと、労働者が家族を扶養でき、労働者という種族が死に絶えないこととに置かれる。」(p18)

  • マルクスが26歳の時に書き著した草案。

    全体を通して感じることは、
    労働者の隷属状態に対しての批判。


    これが書かれたのは1844年。
    産業革命は1700年代後半からイギリスでおこっていった。

    マルクスはドイツ人だ。
    この時にはドイツにも産業革命の波は届いていただろう。

    波とは、工業化の波である。
    前提として意識しておきたいのは、マルクスの批判しているのはこの時代の主産業が工業であるということだ。

    工場というのは、
    なるだけ24時間フル稼働させている方が工場にとって利益が出る構造になっている。

    すなわち、労働者にとっての長時間労働が工場主にとっての利益につながる。

    自然と労働者をできるだけ長時間働かせて、フル稼働で工場を動かそうとするインセンティブが工場側に働く。

    といった背景がある。




    マルクスは、
    労働者のことを奴隷とし、
    労働のことを奴隷労働と言っている。

    資本家が労働者を牛耳っていると見ているからだ。

    結果的には、
    失敗したマルクス主義であるが、
    何故マルクス主義はあれほどに世界を巻き込み影響を与えたのか?
    その中に含まれる今でも通用するような原則はなにか?

    などの視点を持って見てみても非常に面白い。


    マルクスはシンプルに言って何を書いてるのか?

    お金と人のこの世界で、
    在るべき関係性だ。

  • 2016年4月24日に開催されたビブリオバトルinいこまで発表された本です。テーマは「金」。
    まちライブラリー ブックフェスタ2016in関西参加イベント

  • 労働について考えたいと思う。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784334752064

  • マルクス26歳の草稿とのこと。
    「私有財産の否定という人間主義」という共産主義。

    ヘーゲルを読みたい。

  • 新訳とはいえ、やっぱり一筋縄では読めないマルクス。これはマルクス26歳の時の草稿だという。1/3も理解していないし、なぜ共産主義が支持されるまでに発展したのかという答えも出なかったが、読み終えた達成感はあった。

    マルクスは、イギリスの産業革命の様子を目の当たりにした。劣悪な環境で非人間的に働かされる労働者と、一部の富を得た経営者。現代日本でも、残業地獄で人間性を失う程働かされる労働者と、高い給料をもらってバブルの感覚に今なお浸っている経営者という構図は同じだと思った。

    格差が大きくなるにつれ、差を是正する動きが出てくる。これらがマルクスが登場する土壌になったのではないか。日本でも民主党が政権を握り、格差を是正するために数々の提案をした。当時、「頑張って上を目指そう」という勝間氏と「そのままでいいんだよ」という香山氏の対決が注目を浴びたのもそんな時代背景だったからだろう。一緒にゴールする徒競走が話題になったのもちょうどこの頃だ。

    ただ、我々は理想的な共産主義がフリーライダーや官僚の汚職によって成立しなかったことを知っている。なので、日本がこの先真っ赤に染まることはあり得ないだろう。

    1つ気になるのは、マルクスが弁護士の息子で裕福な家庭に育っていることだ。なぜ裕福な家庭に育っているのに、あえて自分の富を手放すような平等主義を唱えたのか。難解な文章だけれども、この答えを求めてまだまだ共産主義者の本を読み進めていくだろう。

  • 読みやすさに定評のある長谷川訳ではあるが、ついに読み通すことができたという感慨がある。
    経済学のほうはたいして見るべきことはない。経済学史の授業で習うような事がわかっていればよいのだろう。
    面白いのは、マルクスの疎外、外化の概念や類的存在の概念が説明されているところと、さらに面白いヘーゲル批判である。
    マルクスのヘーゲル批判は、まず、マルクスは人間と生活手段を非理性的なもの、ヘーゲルは理性的になりうるものと考えていたという前提の違いから始まる。そしてマルクスは、ヘーゲルの論は意識に始まり精神で終わり、理念の域を出ないものであると批判する。さらに進んで価値の点で、ヘーゲルの考える人間は神、絶対知によって確証を得るが、マルクスはその否定と破棄によって確証されるという(p193)。それは人間の現実的な本質を生成するような運動であるというのだ(p.197)。この辺りが最高に面白い。その本質とはなにかについてもこの本の中に散りばめられているが、やや具体性に欠ける。僕の読解力不足か。

    また、アレントの人間の条件を読んだあとだったので、アレントの概念に手伝ってもらいながら楽に読んだふしもあり、もう少し無垢な視点から読めるようになりたいとも思った。

    最後に付け加えれば、長谷川氏の解説は学者の良心に基づいて大変簡素にまとめられているが、もうちょっとボリュームがあるとよかったろう。あるいは、彼の『初期マルクスを読む』を読めということか。

    とにもかくにも、これは読める人は必ず読むべき本である。これは近代の最後の良心なのであるから。

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