ツァラトゥストラ (上) (光文社古典新訳文庫 Bニ 1-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752170

作品紹介・あらすじ

「人類への最大の贈り物」「ドイツ語で書かれた最も深い作品」とニーチェが自負する永遠の問題作。神は死んだ?超人とは?…。キリスト教の道徳を激しく批判し、おごそかさや重さをせせら笑い、歌い、踊る。これまでのイメージを覆す、まったく新しいツァラトゥストラの誕生。

感想・レビュー・書評

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  • ※作品全体を通しての感想は、下巻に書きます。

    【読もうと思った理由】
    そもそも古典(哲学・思想書)に興味を持ったのは、哲学・古典思想書の書籍紹介を主に配信しているYouTuberのアバタロー氏に影響を受けたからだ。もしアバタロー氏のチャンネルを見たことが無い方がいらっしゃれば、ぜひ一度だけでも見て欲しい。哲学や思想書の事前の知識など全くなくとも、気づけば、色々な書籍紹介の動画を見入ってしまう。動画の細部に至るまで、どうすれば哲学・思想書に興味を持ってもらえるかを、とことんまで考え抜いて作り込まれているのが、ひしひしと伝わってくる。それは、書籍の中でもほとんど人気が無いであろう哲学・思想書ジャンルで、チャンネル登録者数30万人越えが、そのクオリティの高さを物語っている。

    【ニーチェが生きている間はまったく売れなかった?】
    このツァラトゥストラは、ニーチェが生きている間は悲しいぐらいに評価が低く、まったく売れなかったんだとか。
    全部で4部構成であるが、3部までで全く売れなかったため、4部に関しては、引き受けてくれる出版社が1社もなく、自費で40部のみが印刷され、それでも売れず、最後は本人自らが知人友人に配って回ったんだそう。
    そこまで売れなかったのには、とうぜん理由があり、内容はある意味、聖書のパロディの箇所も多いんだそうだ(上巻巻末の訳者あとがきによる)。
    また、哲学書には珍しい文体らしく、論文的な文体ではなく、小説や神話のような文体でまた、自問自答している箇所も多く、かなり独特な文体をしている。

    ゴッホにしても時代にマッチしてないあまりに先進的な作品は、生前には理解されないことが、多いんだと納得。

    【雑感】
    次は「ツァラトゥストラ」の下巻を読みつつ、図書館で予約していた村上春樹氏の新刊「街とその不確かな壁」の順番が回ってきて現在手元にあります。返却期限の兼ね合いから、2冊を併読して読みます。

  • 前に読んだ泉谷閑示『「普通がいい」という病』でふれられていた「三様の変化」の話を、原著で読んでみたくて手にとる。

    実際の文章(本書では「3つの変化について」という題)は、抜粋よりもさらに肉付けが豊かで、情景に迫力があり、読めてとてもよかった。

    どの鱗にも「汝なすべし」が金色に輝く、「つくられたすべての価値」である龍に対し、ライオンの精神が「われ欲す」と言い、新しい創造のための自由を手に入れるーーここの描写が圧巻で、とても好き。

    さいきん、なんとなく社会から「こうしろ」「ああしろ」と言われている気がして、それを受け入れてしまいそうになることが多々あるのですが、私の心にもライオンをすまわせて、「われ欲す」と吠えていたいなあ。

    下巻にすすみます。

  • こんな感じだったんだ……。全然想像していたものとは違った……。超人・ツァラトゥストラさん、なんか思考がやたらマッチョじゃない?笑
    女性蔑視とまでは言わずとも男性優位が根幹なのか、ちょっと読んでいて疲れた。女性の存在を男性を惹き立てるための道具のようにとらえている文脈が多いので、フェミニストが読んだら怒り狂うような気がするよ。

    〈俺たちは薔薇のつぼみと共通点があるだろうか? 薔薇のつぼみは、ひとしずくの露を乗せているだけでも震えている。〉

    〈(子どもと結婚について)神にも、やってきてもらいたくない。あいつ、自分がくっつけたわけでもないのに、祝福するために、足を引きずってやってくるからな!〉

    〈短期間のたくさんの愚行——それが、君たちの恋愛だ。そして君たちの結婚が、短期間のたくさんの愚行を終わらせる。長期間のたったひとつのへまが始まったのだ。〉

    〈ああ、天と地のあいだには、詩人しか夢見ることのできなかったものが、なんとたくさんあることだろう!〉

    〈虚栄心のつよい人間は舞台にあがり、別の自分を演じる。俺はそのそばにいて、人生という芝居を見物するのが大好きだ。——憂鬱な気分を治してくれる。〉

  • 隠遁することによってしか産み出しえない表現の数々!訳も一か八かのスタイルで伸び伸びしている。内容のごく一部でも読者が理解しうるように、そして哲学的な思考に支配され生きづらさを抱えている人であればあるほど、深淵を覗こうとするならばたどり着く境地が本書に描かれているのかもしれません。次に読む予定のシリアルキラー系の本を見たら、冒頭に本書の引用があったので何たる偶然。2001年宇宙の旅で同タイトルの曲が使われたのは「超人」というテーマゆえでしょうか。町田康の「どつぼ超然」みたいなタイトルの小説がありましたね。

  • 面白いがわからない。

    生を否定的にではなく、肯定的に捉え、
    自らを超え出ていこうとする原動力を、力への意志とよんで、
    新約聖書に対抗しようとした。
     
    あの世の精神ではなく、この地上の身体から、
    自由への感度=欲望を発揮させること。
    神ではなく、人間の解釈=欲望が世界に意味を与えてきたこと。

    こうした核心は分かる。
    わかるし、おもしろいけれども、
    数多くの断片、解釈がきかない断片が大量にある。

  • 読み終わったのは2022年だが、読めば読むほど「今読むべき本!」と感じた。自分の人生の流れと、この本が一致した。なかなかそんな本はないので、嬉しい。「重さ」を断ち切れ!

  • ・兄弟よ、俺は心からお願いする。この地上に忠実であれ!地上を超えた希望を説くやつらの言うことなんか、信じるな!やつらは毒を盛る。自分が毒を盛っているとわかっていても、いなくても。やつらは、生を軽蔑している。死にかかっていて、自分も毒に当たった。連中にはこの地上のほうでもうんざりしている。とっとと消えうせるがいい!

    ・創造する者が求めているのは、相棒だ。死体ではない。群れでもなければ、信者でもない。いっしょに創造する者を求めているのだ。新しい価値を新しい石板に刻む者を求めているのだ。

    ・以前、ツァラトゥストラも、向こうの世界を説く者の真似をして、人間の彼岸に妄想をたくましくしていた。そのときは、苦しみ悩んだ神の造った作品が、この世界なのだと思っていた。神の見た夢が、神の書いた詩がこの世界なのだと思っていた。この世界とは、不満たらたらの神の目の前に立ちこめているカラフルな煙なのだと。

    ・苦悩と無能──それが向こうの世界を創造したんだ。もっとも苦しむ者だけが知っている、幸せというあの短い狂気が、向こうの世界を創造したのだ。

    ・君たちは高められたいと思うとき、上を見る。俺は、高められているから、下を見る。

    ・勇気をもて、動じるな、嘲笑せよ、暴力的であれ──と、知恵が俺たちに要求する。知恵は女だ。いつも戦士しか愛さない。

    ・だが、俺の愛と希望にかけて、心からお願いしておこう。君の魂のなかにある英雄を投げ捨てるな!最高の希望を聖なるものとしてあがめるんだ!

    ・隣人愛よりも、戦争と勇気のほうが、大仕事をたくさんやった。君たちの同情ではなく、勇敢さが、不幸にあった人たちをこれまで救ってきた。

    ・以前、悪魔にこう言われた。「神にも地獄がある。それは、人間を愛していることだ」

  • 一言でいうと
    【徳を積み過ぎたツァラトゥストラが街に降りてきて徳について話してくれる内容の本】

    ニーチェの最高傑作と名高い「ツァラトゥストラ」。何も知らない時は、私はそれが人物の名前だと気づかなかった。

    山で徳を積み過ぎて、「あー、暇になりすぎた!太陽だって持っている燦々とした日光を何の見返りもなく分け与えてるんだから、私もそうしよう!」という設定が個人的に面白かった。

    人間は、ラクダ→ライオン→子どもの順に成熟する「三様の変化」が私は好きだ。

  • 伊坂幸太郎の「ペッパーズ・ゴースト」のテーマだったので読んでみた。
    こうした古典的作品かつ翻訳物は読んでも分からないだろうなと思いつつ、出来るだけ最近の訳書をと思って選ぶ。
    まぁ読めはしたけれど予想通り意味は正直よく分からず。

  • この本は聖書のパロディーだと訳者あとがきに書いてあったけど、聖書を知らなすぎて元ネタが全くわからなかった。でも、パロディーなんだとしたら当時のキリスト教世界の人々にとって衝撃的な問題作であったことは容易に想像できる。私なら、お釈迦様とかのエピソードを色々出してきてそんでもって「釈迦は死んだ」とか言われたら、はぁ?ってなるかもしれない。いや、まぁ、釈迦は死んでるんだけど。というか、私は仏教徒ではないけど…
    ニーチェの無神論は、なんとなく禅宗などの考え方とニアミスな部分がある気がする。
    坂口安吾ともなんとなく通じるような。
    ハッとする言葉がたくさんあった。
    下巻が楽しみです。

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著者プロフィール

1844-1900年。ドイツの哲学者。近代という時代の問題を一身に受け止め、西洋思想の伝統と対決し、現代思想に衝撃を与えた。代表作は、本書のほか、『愉しい学問』(1882年)、『善悪の彼岸』(1886年)ほか。

「2023年 『ツァラトゥストラはこう言った』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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