プロタゴラス: あるソフィストとの対話 (光文社古典新訳文庫 Bフ 2-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752217

作品紹介・あらすじ

「人間の徳(アレテー)は、教えられるものなのか?」「ソフィストとは、そもそも何者か?」。若くて血気盛んなソクラテスは、アテネを訪問中のプロタゴラスのもとにおもむき、徳をめぐる対話を始める。しかし、議論は二転三転。次第に哲学的色彩を強めながら、やがて意外な結末を迎えることになる。プラトン対話篇、最良の入門書。

感想・レビュー・書評

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  • しっかりと研究を積んできた訳者による新訳は、すごく読みやすいし、解説なども行き届いています。これはおもしろい。しかし、この本だけで終わっていてはもったいない。また別でレビューしますが、この訳者が書いている『ソクラテスとフィロソフィア』に、プロタゴラスの解説があるんですが、それを読むと、目からウロコがぼろぼろでて、理解もものすごく進みます。プラトンは、奥が深い。【2022年9月19日読了】

  • 若いな!と感じるのは先に年代が明かされていたせいか?

  • やや毛色の違うプラトン対話篇。
    他の対話篇とあわせて読むことで面白さが増すと思う。


    大抵のプラトン対話篇では、劇中のソクラテスの言葉が執筆時のプラトンの思考に近いものとして受け取って読まれる。
    だが、この『プロタゴラス』でもそうだとは単純には言えない。

    「快は、その帰結などを考慮しなければ、それ自体としては善いものである」
    「善い快と悪い快の区別はない」
    「快苦の大小を現時点からの遠近などで惑わされず(いわば幾何学的に)計算する技術としての知識」
    他の対話篇での記述と整合させるには一手間かけないといけないような、これらの記述があるからだ。

    しかも、これらは「大衆が同意してくれるか」という点で見解の妥当性が問われている。
    いつもの劇中ソクラテスなら対話者と同意が得られるかどうかを問題にするだろうに。


    他のプラトンの対話篇との整合性はおくとしても、当時の知識人たちの知的な遊戯を味あわせてくれる。

  • なんにしても、ソクラテスは本当に性格が悪いw プロタゴラスとの対話で見事に論破したにもかかわらず、自身がアポリアに陥っていることを示してちゃっかりおべっかを使い、その実、自身の立場はソフィストの教えていることは知識に過ぎないというものなのだから、アポリアに陥ったことも織り込み済みだったわけである。はあ。

    この前にテアイテトスも読んでみたけれど、そちらと同じで、本当に議論して欲しいところには決して立ち入らず、瑣末な論理の問題に拘泥して本質の周辺を旋回し続けている印象を受ける。プラトンは合わないのかもしれない。
    ただ、解説は素晴らしく、わかりやすく論旨をまとめるに留まることなく、あらゆる角度から本書の魅力を伝えようという意気込みが感じられた。

  • ソフィストのプロタゴラスと対話する若きソクラテスという設定で、「徳は教えられるのか」「正義や節度・敬虔や勇気などは一つの徳(アレテー)なのか、それとも一つの徳の一部分なのか」という二つの話題が中心になっている対話篇。

    プラトンは「ソクラテスの弁明」しかまだ読んだことがないから分からないけど、若いソクラテスという設定ゆえなのか?ソクラテスが優位に対話を進めるという感じではない。
    前半ではプロタゴラスの方が周りの支持も得ているし、説得力を感じる。ソクラテスは長い話は苦手だと言って話を逸らすが、そのあと詩の解釈でさらに長い話を自分でするのはどうなんだ(笑)。後半もソクラテスのやり方は揚げ足取りのように感じられて、あまりスマートとは思えなかった。「反対のものは一つしかない」などの前提がそもそもおかしいというか、プロタゴラスを罠にはめるための装置としか思えなかったからだ。
    結局最後にはお互い主張があべこべになってしまい、もう一度議論をやり直したいが時間切れ、というところで終わってしまう。読者がこの対話を続けてくれ、ということなのだろう。私は前述のような理由でこの議論自体にもあまり魅力は感じられなかったので、あまり気乗りはしないけれど。もうちょっと別の作品を読んでみようと思う。

  • ソクラテスのチェスのような議論が読んでいて面白かった

  • ・人間というものは、お互いに相手がいろいろな欠点を持つと考えているものだ。だが、欠点が生まれつきや偶然に由来する場合には、そうした欠点を持つ人たちに腹をたてたり、忠告したり、あるいは教育したり、罰を与えたりして、その欠点を矯正しようとする人は誰もいない。むしろ、たんに彼らを憐れむだけだ。たとえば醜い人や、小さな人や、虚弱な人に対して、いま言ったようなことをしようとする愚か者がどこにいよう? わたしが思うに、人々は、人間がこのような美点や欠点を持つのは、生まれつきや偶然によるのだとわかっているのだ。

    ・たとえば、自分の母親や父親や祖国、あるいは何かそれに類するものと反りが合わなくなることが、人間にはしばしば起こります。悪い人たちであれば、何かそのようなことが起こると、まるで親や祖国の欠点を見るのが楽しいことであるかのように、文句を言いながら欠点をあげつらい、とがめだてます。彼らは親や祖国をないがしろにしているものだから、そのことで世間の人たちの非難や叱責にさらされないようにと、そんなことをするのです。そして、その結果、彼らはよりいっそう親や祖国に文句を言うようになり、もとの避けがたい憎しみに、自分から生み出した憎しみを積み重ねていくことになります。

  • 三十代のソクラテスと六十代のソフィスト、プロタゴラスの言葉によるタイマン。
    後半はソクラテスの追及に胃が痛くなりそうに笑
    議論自体は最初の議題から外れてしまい、自分はいつのまにか迷子に。後半の論理展開もついていけなかった。
    詭弁めいたテクニックも使ってプロタゴラスに迫るソクラテスに、若さを感じる。
    少し置いてからまた読み直して頭を整理したい。

  • 難しかったけど、読めなくはなかった。
    対話形式でアレテーについて深めていく内容で、ソクラテスの論理的な思考が物凄いなと思った。仮説を立てて証明を行なっていく様がとても面白かったし、物事を深く考えるのって楽しいんだなと思った。


  • 日々の中で対話不足を感じたため。
    短く話せのソクラテスに共感
    友達に欲しい。
    アレテーが顔の部分とかはわからない。

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著者プロフィール

山口大学教授
1961年 大阪府生まれ
1991年 京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学
2010年 山口大学講師、助教授を経て現職

主な著訳書
『イリソスのほとり──藤澤令夫先生献呈論文集』(共著、世界思想社)
マーク・L・マックフェラン『ソクラテスの宗教』(共訳、法政大学出版局)
アルビノス他『プラトン哲学入門』(共訳、京都大学学術出版会)

「2018年 『パイドロス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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