人口論 (光文社古典新訳文庫)

著者 :
制作 : Thomas Robert Malthus  斉藤 悦則 
  • 光文社
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本棚登録 : 201
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752316

作品紹介・あらすじ

「人口は等比級数的に増加するが、食糧は等差級数的にしか増えない。そして、人の性欲はなくならない。」シンプルな命題を提起し、人口と食糧のアンバランスが生む問題に切り込んで、19世紀の進歩思想に大きな影響を与えた本書は、現在の世界においてもますます輝きを増している。

感想・レビュー・書評

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  • 人口は等比数列的に増加するが、人々の生産性は等差数列的にしか増加しない。この本のポイントだと思います。

    また、人間の経済活動は人口に左右される。これからの人口減少に対してどんな動態を示すのか改めて興味をそそられた。

  • フランス革命直後に書かれ、当時の地球の人口は1億程度、農地拡大の限度が人口限界と看做されたが。現在、文明国では貧困層も肉食が普通となり、適切に配分されれば70億でも餓えることは無いはずで。マルクスの「労働者団結せよ」は大間違いであったが「生物は繁栄するほどより困難なボトルネックに直面する」と指摘したマルサスの正しさは否定できない。著者の言う「性欲は不変」は子孫繁栄願望だが、今日先進国各国は少子化で移民受け入れしないと人口を維持できない。予期しなかったが都市化の最大の問題は失業で良質の仕事が不足しているのだ

  • 1789年にイギリスで刊行されたマルサスが著した古典『人口論』
    人間の人口と食糧の関係性を法則として明確に提示した書物だ。


    「人口は等比級数的に増え、食糧は等差級数的に増える」とマルサスは論ずる。

    つまり人口はかけ算で増え、食糧は足し算的にしか増えないということ。


    その前提にあるのは、
    1つは、食糧は人間の生存にとって不可欠であること。
    2つ目は、男女間の性欲は必然であり、ほぼ現状のまま将来も存続すること。

    そして
    こう結論づける。

    人口の増加は食糧によって必然的に制限される。
    食糧が増加すれば、人口は必ず増加する。
    そして、人口増加の大きな力を抑制し、実際の人口を食糧と同じレベルに保たせるのは、貧困と悪徳である、と。


    この貧困と悪徳では、
    貧困の方が抑制力があると説く。

    悪徳で人口増加を抑制するというのはどういうことか。
    戦争、疫病、そして大飢饉だ。

    つまり人口と食糧のバランスが崩れると、必ず貧困、また悪徳によって人口調整の力が働き、人口増加を抑制するということだ。

    現在にあっては、
    この人口はかけ算で食糧は足し算というのは必ずしもそうだとは言えないし、
    しかも食糧の生産量は土地に制限され、人口が増加し続けることへの問題はすぐにでも勃発するような言い方をしているが、ここに関しても疑問である。

    すぐにでも食糧不足による危機が訪れると書かれてから、すでに200年以上たち食糧不足の地域ももちろんあるにはあるが、今や飢餓で死ぬのが100万人。食べ過ぎが原因で死ぬのがその3倍の300万人であるからして、食糧がないことに困る以上に、あり過ぎて困るという始末だ。


    カール・マルクスによって散々けなされたこのマルサスの『人口論』だが、結局は共産主義というのは幻想であったのだということが、歴史を見れば明白なのであって、マルサスのこの『人口論』というのは、上述したような不正確なこともあるが、それでも今も尚、本質を突いた鋭い洞察として感じるところは多々あり、それが今もこの古典を読む価値なのだろうと思う。

  • 『人口論』(光文社古典新訳文庫 2011//1978)
    原題:An Essay on the Principle of Population. As It affects the Future Improvement of society, with Remarks on the Speculations of Mr. Godwin, M. Condorcet, and Other Writers.
    著者:Thomas Robert Malthus(1766-1834)
    訳者:斉藤悦則(1947-)
    解説:的場昭弘(1952-)


    【私的メモ】
    ・日本語版ウィキペディア「人口論」から、〈これまでの『人口論』邦訳一覧〉を抜き出し。
    ―――――――――――――――――
    □高野岩三郎・大内兵衛[訳]『初版 人口の原理』 岩波文庫、(初版の翻訳)1962年
    □永井義雄[訳] 『人口論』 中公文庫、(初版の翻訳)1973年
    □南亮三郎[監修]『人口の原理』 中央大学出版部、(第六版の翻訳) 1985年
    □斉藤悦則[訳]『人口論』 光文社古典新訳文庫、(初版の翻訳)2011年
    ―――――――――――――――――


    【目次】
    凡例 [003]
    目次 [005-015]
    タイトル [018]

    序文(一七九八年六月七日) 019

    第一章 022
    問題点――意見対立のせいで問題の解決がむずかしいこと――人間と社会の完成可能性に否定的な考え方については、ちゃんとした反論がない――人口増加がもたらす問題の性質――本書の主張の概要 

    第二章 033
    人口と食糧の増加率の違い――増加率の違いの必然的な帰結――下層階級の暮らしぶりの上下運動――この上下運動がさほど注目されてこなかった理由――本書の主張全体の基礎をなす三つの命題――それに関連して検討されるべき人類の歴史の諸段階 

    第三章 046
    未開段階、あるいは狩猟民族について――遊牧民族、あるいはローマ帝国を侵略した蛮族――食糧増加を上回る人口増加――北方からの民族大移動の原因 

    第四章 056
    文明国の状態――現在のヨーロッパはシーザーの時代より人口が多いかもしれない――人口についての最良の規準――ヒュームが用いた人口推計の規準はおそらく誤っている――ヨーロッパの多くの国における人口の伸びの鈍さ――二つの主要な人口抑制法――そのひとつ、事前予防的な人口抑制をイングランドを例に検討する 

    第五章 067
    第二の人口抑制、すなわち、積極的な抑制をイングランドで検証――イングランドで貧乏人のために徴収された巨額の金が、貧乏人の生活を改善しない真の原因――救貧法が本来の目的からそれていく強力な傾向――一時しのぎながら貧乏人の困窮を緩和する策の提言――窮乏化の圧力を下層階級から完全に除去することは、人間の本性の不変の法則により、絶対に不可能である――人口抑制の全体は、貧困と悪徳にわけられる 

    第六章 087
    新しい植民地――その人口増加が速い理由――北アメリカ植民地――奥地の植民地での人口急増は異例――歴史の古い国においても、戦争、疫病、飢餓、天災による荒廃からの復興は迅速である

    第七章 095
    伝染病の原因と考えられるもの――ジュースミルヒ氏の統計表の抜粋――周期的な疫病の発生はありうること――短期間の出生と埋葬の比を、その国のじっさいの平均的な人口増加の基準とするのは不適切――長期間の人口増加の最良の基準――きわめて質素な生活が中国やインドで起こった飢饉の一原因――ピット氏が提案した救貧法案の条項の有害な傾向――人口増加を促す唯一の適正な方法――国民の幸福の諸原因――飢饉は、自然が人口過剰を抑制するもっとも恐ろしい最後の手段――確定できたと考えられる三つの命題 

    第八章 114
    ウォレス氏――人口増加による困難の発生は遠い未来の話と考えるのは誤り――コンドルセ氏が描く人間精神進歩の歴史――コンドルセ氏のいう振動が人類において発生する時期 

    第九章 123
    人間の身体的な完成可能性と寿命の無限ののびにかんするコンドルセ氏の説――限界が特定できないことから、部分的な改良を進歩の無限性に結びつける主張の誤り。家畜の改良と植物の栽培を例に、それを明らかにする 

    第十章 135
    ゴドウィン氏の平等社会――人類の悪徳をすべて社会のせいにすることの誤り――人口増加がもたらす問題にたいするゴドウィン氏の第一次回答はまったく不十分――ゴドウィン氏が実現を予想した美しい平等社会――それは単純に人口の原理によって、わずか三十年で完全に崩壊する 

    第十一章 158
    ゴドウィン氏の推測によれば、男女間の性欲はやがて消えてなくなる――その推測には根拠がない――愛の情念は、理性にも道徳にも反するものではない 

    第十二章 164
    人間の寿命は無限にのびるとするゴドウィン氏の憶測――精神への刺激が肉体におよぼす影響についての誤った考え方とその諸例――過去にもとづかない憶測は非学問的――人間は地上での不死に接近しているというゴドウィン氏とコンドルセ氏の憶測は、懐疑論の不整合性の奇妙な実例 

    第十三章 185
    人間をたんに理性のみの存在と考えるゴドウィン氏の誤り――人間は複雑な存在であり、肉体的な欲望が知的な決断を乱す力として働く――強制についてのゴドウィン氏の考え方――人から人へ伝達しえない真理もある 

    第十四章 195
    政治的真理にかんするゴドウィン氏の五つの命題。それは、彼のすべての基礎であるが、しかし確たるものではない――人口の原理による貧窮のために、人間の悪徳と道徳的な弱さは撲滅できない。それはなぜかという理由を明らかにする――ゴドウィン氏がいう意味での完成可能性は、人間にはあてはまらない――人間がほんとうに完全なものになりうるかどうかの例証 

    第十五章 205
    あまりにも完全なモデルは、改善にとって有益というより、しばしば有害――ゴドウィン氏の論文「吝嗇と浪費」――社会にとっての必要労働を公平に分割することの不可能――労働批判は現実の弊害を増すだけで、将来の改善にはほとんど、あるいはまったく役立たない――農業労働の量を増やすことはかならず労働者に益をもたらす 

    第十六章 221
    アダム・スミス博士は、社会の収入やストックの増加をすべて、労働の賃金にあてられる資金の増加とみなす点で誤っているのではなかろうか――国が豊かになっても、貧しい労働者の生活が良くならない実例――イングランドでは富が増大したが、労働者の賃金にあてられる資金はそれに比例して増加しなかった――中国の貧民の生活は、工業で国を豊かにしても改善されない 

    第十七章 236
    国の豊かさに正しい定義について――製造業の労働はすべて不生産的だというフランスのエコノミストの理屈と、その誤り――職人および製造業者の労働は個人にとっては生産的だが、国家にとってはそうではない――プライス博士の二巻本『観察記』の注目すべき一節――プライス博士は、アメリカ人の幸福と急速な人口増加を主としてその文明の特殊さに結びつけているが、それは誤っている――社会の改善の前途に横たわる困難に目をとじるのは何の益ももたらさない 

    第十八章 250
    人口の原理は人間をつねに苦しめるので、そのために人は未来に希望を託すようになる――人性を試練と見なすのは、神の先見性という観念と矛盾する――この世は物質を目覚めさせ、それに精神を与える力強いプロセスであろう――精神の成長の理論――肉体的な欲求による刺激――一般法則の働きによる刺激――人口の原理がもたらす人生の厳しさによる刺激 

    第十九章 267
    人生の悲しみは、人の心にやさしさと人間味をもたらすために不可欠――社会的な共感能力への刺激は、たんなる才人よりも、もっと上等な人間をつくりだす――道徳的にすぐれたものが生まれるためには、道徳的に悪いものが必要――自然の無限の変化と、形而上の問題のむずかしさが、知的な欲求による刺激をたえずかきたてる――神の啓示にまつわる難点は、この原理によって説明される――聖書で示される程度の神のあかしが、人間の能力を向上させ、人間の道徳心を改善するためには、適度である――精神は刺激によってつくられるという考えで、自然と社会における悪の存在理由は説明されるように思われる 

    解説 的場昭弘(神奈川大学経済学部教授) [284-299]
      自然と理性の相克
      マルサスと「人口法則」
      社会主義者、共産主義者の批判
      なぜマルサス主義はつねに議論になるのか
    マルサス年譜(1766年~1834年) [300-302]
    訳者あとがき(二〇一一年四月 斉藤悦則) [303-307]

  • 2014/07/05

  • [人>>>食の図]等比級数的に駆け上がっていく人口数に対して、どれだけ尽力しても等差級数的にしか食糧の量は増加しない故、人口は一定数にとどまざるを得ないということを明確に指摘した古典的作品。マルクスを始めとする社会主義者から徹底的に嫌われる一方で、今日に至るまで影響力を有している一冊です。著者は、その名にちなんで「マルサス主義」という言葉も生まれたトマス・ロバート・マルサス。訳者は、フランスの社会主義者であるプルードンの研究で知られる斉藤悦則。


    名前とおおまかな内容は他の作品での引用中の言及などで知っていたのですが、改めてしっかりと内容を読んでみるとその説得力の強さに驚かされます。どうしてもその悲観的(もしくは現実的?)な見方に「そうですよね.......」とため息をつきたくなってしまうところ。本書が提示したディストピア的な世界観が読者を引きつけるのみならず、それに立ち向かう必要性がいつの世にもあるからこそ、古典足り得たのかもと感じました。


    解説では、マルサスが生まれた時代や思想背景に加え、どのような影響を後世に与えたかが説明されているのですが、これがまた興味深い。フランス革命における理性への傾斜の挫折とそれに対する反動など、マルサスの考え方の後ろ側に理性vs.自然という枠組みが立ち上ってくる点にはなるほどと覚えざるを得ませんでした。

    〜人類の歴史をじっくりと探求するなら、以上のことから、人類がかつて存在し、あるいはいま存在しているあらゆる国、あらゆる時代において、つぎの命題が成り立つことを認めないわけにはいくまい。すなわち、人口の増加は食糧によって必然的に制限される。食糧が増加すれば、人口は必ず増加する。そして、人口増加の大きな力を抑制し、じっさいの人口を食糧と同じレベルに保たせるのは、貧困と悪徳である。〜

    とても短い訳者解説なんですが、とても面白い解説でした☆5つ

  • マルサスの提示した有名な命題が、果たして今も有効であるか?ということについての議論が決着していないことは、その命題が提示した議題が現在進行形のそれである、と言える。

    産業革命以降、マルサスの命題はかろうじて破られてきているが、いよいよ食糧問題が危機的になるにつれて、改めてこの命題が輝きを放ち始めることになる。それが果たして幸せなことなのかは、分からない。

    この命題に対して明確な反論が出来ていないことに、我々は、もっと畏怖すべきではないのか?そう、これは未解決の問題なのだ。

    この新訳は、その読みやすさから、新たな読者が増えることが期待できることを併せると、意義深い出版だと信じる。

  • とにかく繰り返しと比喩表現が多く、内容云々よりそちらの方が興味深かったです。歴史的事実も、人口という切り口で見ると新鮮でした。

    神の領域に関してはキリスト教圏ならではって感じですね。それゆえ、中には理解できないところもありました。最後の、悪の正当性についても、若干腑に落ちない部分がありましたが、それだけまだ自分の考えが未熟なんだろうと思います。

    新訳ということで、非常に読みやすい印象がありました。こういう古典に対する再認識って大事ですね。

  • 古典派経済学を代表するイギリスの経済学者マルサスが著した本。
    一般的に「マルサス主義」といわれる法則は大雑把にいえば『人口は、何の抑制もなければ、等比級数的に増加する。生活物資は等差級数的にしか増加しない』という一文にまとめられる。
    豊かさこそ人口増加を引き起こす原因だと仮定し、貧民を適当に飢えさせることが長期的な社会の安定につながるとしたマルサスの論は現代において痛烈な批判の対象になりえる、しかし、それでもこの論が100年以上生き残ってきたのは他人と自分に優劣をつけ自らの優等性を確認し続けたいという人間の本性を捉えているからではないだろうか。

  • これは何だろう。議論が荒すぎてビックリ。
    加えて、300ページ弱の紙面を費やしてこれか。

    改良の余地があることと、無限に改良できることは違う、という命題の説明が9章で議論されていて、その命題自体の真偽はマルサスの言う通りだと思う。
    (例えば、人間の平均身長はまだまだ伸びるだろうけど、火星までは届かない、といったレベルの話。非常に単純で、分かりやすい。)
    他の章はともかく、この9章の内容はそれだけ分かりやすい内容であるだけに、筆者の議論の運び方、展開の仕方に目が集まる。
    だが、たったこれだけのことにどれだけ似たような話を挙げて、先人を批判すればいいのか。自己擁護と他者攻撃が過剰すぎる。正直よく分からない他の章も、同じような論調なのだろう。
    中盤、名前が出ないページがないと言っていいほどのゴドウィン氏批判も過剰の一言。救貧法も批判。ハリネズミ?

    本書の主張としては、食料が増え方に比べて人口の増え方の方が急であるため、貧困が生じる。これは、特権階級からその他へ食料を分配しても状況の解決には至らない。食料配分の仕方によらず、食料が増えればその分人口も増えるため、常にどこかで貧困が生じる。貧困は神が与えた試練であり、試練を通して人間は精神上の優れた特質を獲得できる。


    工業は農業と違って国を豊かにしない。と言っている辺りはさすがに時代が変わったなぁ。
    最終盤の、神は試練を与えた、という部分はキリスト圏だなぁ、と思わされる。特に関心のない人から見れば、なんで神が議論に出てきたのか分からない。

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