市民政府論 (光文社古典新訳文庫 Bロ 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752347

作品紹介・あらすじ

人は生まれながらにして生命・自由・財産を守る権利があり、国家の成立は、この人権を守るための人々の合意に基づく。ロックの唱えた人権、社会契約思想はのちのアメリカ独立宣言、フランス革命を支える理念となった。自由、民主主義を根源的に考えるうえで必読の書である。

感想・レビュー・書評

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  • 1689年に発行された政治・国家論であり、いわゆる歴史的名著とよばれるものだ。キリスト教が基軸にある、産業革命前にある、など、現在とは前提が違う点を除けば、現在の民主主義、自由主義の考えにも通じるものが多くあり、まさに基本理念だ
    当時は君主制度が根幹にあったが、その権力は古来に民主主義で決まったものであることから説明しているなど、論説のような文章となっているので、読みやすい(それが諄く感じられるかもしれないが)

    また自由主義の根源を語るために、個人の権利、そして父親の権利・義務に関しても、多くの紙面を費やしているのも特徴だろう。ここでは男性は女性より優れているという、時代錯誤な内容もあるが、それでも女性の権利をしっかりと書いている。

    国家とは何か。国民とは何か。国家は国民の生命・自由・財産を守るために存在していると、ロックは語る。そのためにルール(法律)を設けているのだと。それを理解したうえで、「日本のため」という言葉を思うと、違和感を強く感じる。訳者の解説で哲学者の言葉が紹介されている。「1940年現在において、父権論を基軸とした国がある。それが日本だ。日本は拡大した家族にほかならず、天皇は家族の父だ」というものだ。戦後、日本は憲法を改め、天皇は象徴化したが、基本構成は何も変わっていない。2020年代となった、いまも、それは変わらず続いているように感じた

  • このリベラルアーツと言う分野にもっと自分自身が興味を持てればよかったのにとすごく感じる。
    学生の頃からチャレンジしてきたがやはり興味が持てない。

    またリベラルアーツの分野の表現は「何々である」「何々であるべき」と言う表現が多く私の感性に合わないと感じてしまう。

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    ジャンル:リベラルアーツ
    出版社:光文社
    定価:1,210円(税込)
    出版日:2011年08月10日

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    ジョン・ロック(John Locke)
    (1632―1704)イギリスの哲学者・思想家
    イギリス経験論の父とも呼ばれる

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    flier要約
    https://www.flierinc.com/summary/3021

  • プーチンが横暴なロジックでウクライナに侵攻する今、ロックの著書を読むことの意味とはと思ってしまう。
    本書でロックは、民主主義と自由主義についてその正統性を説く。市民は自由に財産・生命・自由を自らの意志に従って保全する権利があるということ。そして立法権や執行権は一度社会契約として権力側に引き渡しているが、権力は市民の所有権を保全する形で権力を行使する必要があること。市民は権力が市民の権力を犯していると判断した場合には戦う権利を持っていることを論ずる。
    それにしてもこの著作が書かれ、イギリスで名誉革命が起こったのが17世紀であることを考えると人類の進歩のなさに驚きを感じる。この思想を実現するためには数世紀を経ないとダメであり、自由民主主義陣営にいる日本も一歩間違うとどうかという危うさを感じる。その他の権威主義的な国なもっとだめだ。そんなことを言っていたらアメリカでもトランプの様な人が出てきているし、これほどまでに自由と民主主義は併立しないものなのか思ってしまう。結局は所有権の保全をどのように考えるのかという点で、他人の権利を犯す可能性がある時にどこまで所有権を主張できるのかということなんだと思うけど、ロックもこの点は論述に苦労している様には思えた。
    また解説で本書は『統治二論』のうちの第二編であり、第一編では王権神授説の否定に当てられているという。日本はこの点かなり危ういのでそれはそれで興味深かったりもする。
    いずれにしてももっと読まれてもいい本だと思う。

  • イングランド生まれのジョン・ロックによる政治論・国家論『市民政府論』

    この書はのちのアメリカ独立宣言やフランス革命思想の元になった歴史的名著である。

    ホッブスの『リヴァイサン』に対して、
    ロックは人間は本来ほっておいたら仲良くしているという前提に立っているところが一番の相違点。
    自由主義や民主主義の父といえる存在である。

    また、ロックは別の著書『寛容についての手紙』で政教分離という極めて明瞭な思想を展開しこれもまた非常に面白い本だが、聡明な人物だ。

    人民と国家との在り方を書いたこの本には、
    今読んでも古びていない内容であり、
    欧米の国家の様相はこの本抜きでは語れないといえるだろう。

    万人は本来的に平等であり、自身の自由、財産、生命を所有し守る権利。

    古代ローマのカエサルの時代にはこのような概念がまだなく、膨張する国家に対して帝政なる国家体制を敷いていったが、
    それでもやはり一人の人間に権力が集中し世襲していくタイプの政治では、遅かれ早かれ愚帝が現れた時点で衰退に向かっていくのだろう。


  • 日本の憲法がロックの思想を基礎として作られ、論じられていることがよくわかった。
    君主の力を制限して民主主義を実現する考え方が、今から300年も前に存在していた事に驚く。
    現在、ロックの考え方を踏襲していると考えられる日本。果たして300年前のイギリスと同程度に民主主義が成熟していると言えるか。不安すら覚えた。

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著者プロフィール

ジョン・ロック(JOHN LOCKE, 1632-1704)
 17世紀の英国の哲学者。当代のヨーロッパ「学問共和国」の一員としての自負を持ち,
英仏をはじめとする絶対主義諸国の暴政に対して,
著作及び実践を通じて人間の尊厳を尊重する社会実現のために身命を賭した。
 主著は,『人間知性論』『寛容書簡』『キリスト教の合理性』『利子・貨幣論』,
それに本訳書『統治論』など多数。
現在オックスフォード大学出版局から,クラレンドン版「ジョン・ロック著作集」
The Clarendon Edition of the Works of John Locke が刊行中。

「2020年 『改訂版 全訳 統治論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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