カメラ・オブスクーラ (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-1)

著者 :
制作 : 貝澤 哉 
  • 光文社
4.04
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本棚登録 : 298
レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752361

感想・レビュー・書評

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  • ロリータの原型とも言える、少女によって破滅する中年男の物語。物語自体はまったく救いが無い。が、何故か美しい。プルーストの文体模写が笑える。

  • あの「ロリータ」のナボコフの初期作、ということで期待して読んだけど、
    レトリックに関してはやっぱり「ロリータ」ほどではなかった。
    初期作だからこそだと思うけど。ロシア語作品だし、訳の問題もあるかな。
    良くも悪くも読みやすい作品。
    「ロリータ」の前にこれを読んでおけば、もっと早い段階で「ロリータ」も楽しんで読めたかもしれない。

    ストーリーは特にどうということもなく
    クレッチマーが普通の思考回路を持った人だったり登場人物が割と多かったりしたせいで、
    ラストまで現世離れせずにストーリーが進んでいった気がする。
    (だからあまりレトリックにのめり込めなかったのかもしれない。
    「ロリータ」は完全にハンバートとロリータの二人の世界で、
    難解な描写や比喩も全部ひっくるめて「世界」を形作っていたんだな、と今になって思う。)

    ナボコフの作品は、細部を読み解くところに楽しみがある。
    独特の比喩とか表現はもちろんだけど、
    例えばマグダの蛇のイメージとか。(これはちょっと露骨すぎるなとも思ったけど)
    そういう意味ではこの作品も相当読みごたえはあると思う。
    登場人物も多いし、繰り返し読んだらまだまだいろんな発見が出てきそうだ。

    解説によると、この作品のテーマは「見る」「見えない」らしい。
    要素はいたるところに。
    私がいいなと思ったのはマグダがクレッチマーの家に押しかけた後、
    書庫の隙間から赤い裾が覗いていて…のくだり。
    割と象徴的な部分だと思った。
    結局クレッチマーは何を見てて、何が欲しかったんだろう。


    「カメラ・オブスクーラ」と「ロリータ」だったらやっぱり「ロリータ」の方かな、と私は思う。
    もちろん細部の凝りようは言うまでもなくなんだけど、
    ドリーとマグダなら断然ドリーの方がすきだから。
    マグダの悪女っぷりがただの年を取った悪女と同じそれで、なんとなくしっくりこない。
    成熟しきれない素朴さとか、素朴ゆえの残酷さとかそういうものは幼いものの特権だと思う。
    そういう幼さを存分に発揮してるドリーの方が私には魅力的だった。


    全然関係ないけど「カメラ・オブスクーラ」っていうとどうしても
    楠本まきと有村竜太郎が先に出てきてちょっと中二病っぽいイメージを持ってしまう。

  • ナボコフ33才の作品。俗物たちのメロドラマを世にも美しい文章で。この人、30代のころは文章もノリノリで読みやすく、どこか清々しい作品が多い。楽しい!
    マグダのイメージは、ちょっと前のスカーレット・ヨハンソンがぴったりくる。

  • 確かに『ロリータ』にすごくよく似ている。語りが全知の三人称とハンバート・ハンバートの強烈な一人称っていう違いもあって(もちろん、多分それだけじゃない)、ロリータっていう万華鏡の鏡の中に入って、内側から外を眺めている感じ。いや、ハンバート・ハンバートについて言えば『ロリータ』が中で『カメラ・オブスクーラ』が外なのか。

    『ロリータ』より短くて分かりやすい。

  • 「ほんの一瞬であれ人生を晒しものにしようとした者は、人生から復讐されるということだ」「かわいそうな男だ、誘惑に勝てなかったばっかりに、人生を台無しにしたんだからな」。あらすじは"この小説で描かれるのは、美しいが軽薄でずる賢い少女マグダによって、裕福で育ちのよい美術評論家クレッチマーが破滅してゆく過程である。小心な紳士クレッチマーは、たまたま出会った美少女マグダとの火遊びに夢中になるが、そこにマグダの昔の愛人、風刺漫画家ホーンが偶然姿をあらわす。あらゆる物事を皮肉で意地悪な見方で歪めることに言い知れぬ快感をおぼえる悪意の塊のような男ホーンは、ひそかにマグダと縒りを戻し、裏切られていることに気づきもしないクレッチマーの間抜けぶりをあざ笑う。クレッチマーは妻と別居し愛娘をも失い、果ては事故で失明し、療養を理由にマグダとホーンに幽閉され、財産までも二人に騙し取られてしまう。かろうじてそこから救い出されたクレッチマーは、盲目のまま銃を持ち出して、マグダに復讐しようとするのだが……。"という訳者解説に要約されているのだけれど。傍から見たら、ありふれたように見えるきっかけで、堕ちて堕ちて堕ちてゆく、主人公。ただ、確かに、きっと、当人にとってみたら、抗いがたいものだったんだろうと思う。それにしても、これでもか、これでもかというぐらいに、何もかもを失い転がりおちてゆく。たとえ、きっかけが自業自得だったとしても、目を覆いたくなるぐらいに。

  • 初ナボコフ。「アンナ・カレーニナ」を現代風にして「居酒屋」「ナナ」「椿姫」「マノン・レスコー」が混じり合ったイメージ。小説というよりは映画を観ている感じだけどそれは意図したものらしい。プロットは「マノン・レスコー」だけどアイロニーで味付けしてある。題名はラテン語で「暗室」という意味で解説によると「見ること」が隠されたテーマらしい。ナボコフ初期の作品で源ロリータらしいがかなり面白い。時間をおいて再読してみよう。キーワードに注意して。

    ナボコフはイタズラ好きらしい。
    p213
    「トルストイですって」ドリアンナ・カレーニナは聞き返した。「いいえ、おぼえていませんわ。でもどうしてそんなことがお知りになりたいの」
    他にもプルースト風の変な話中小説が出てくるし。

  • 怖い小説。

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著者プロフィール

ウラジーミル・ナボコフ(Владимир Набоков, Vladimir Nabokov)
1899年4月22日 - 1977年7月2日
帝政ロシアで生まれ、ヨーロッパとアメリカで活動した作家・詩人。文学史上、亡命文学の代表者とされることもある。昆虫学者としての活動・業績も存する。
ロシア貴族として生まれたが、ロシア革命後の1919年に西欧へ亡命。ケンブリッジ大学に入学し、動物学やフランス語を専攻。大学卒業後にベルリンで家族と合流して文筆や教師などの仕事を始める。パリを経て1940年に渡米、1945年にアメリカに帰化。1959年にスイスに移住し、そこで生涯を閉じた。
ロシア時代から詩作を開始。ベルリン、パリにおいて「シーリン」の筆名でロシア語の小説を発表して評価を受ける。パリ時代の終わりから英語による小説執筆を始めた。渡米後も英語で創作活動を続け、詩・戯曲・評伝を記すだけでなく翻訳にも関わった。
代表作に、少女に対する性愛を描いた小説『ロリータ』。映画化され、名声に寄与した。ほかに『賜物』、『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』、『青白い炎』、自伝『記憶よ、語れ』。

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