ビリー・バッド (光文社古典新訳文庫)

  • 光文社
3.54
  • (6)
  • (7)
  • (11)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 156
感想 : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752637

作品紹介・あらすじ

18世紀末、商船から英国軍艦ベリポテント号に強制徴用された若きビリー・バッド。新米水兵ながら誰からも愛される存在だった彼を待ち受けていたのは、邪悪な謀略のような運命の罠だった…。アメリカ最大の作家メルヴィル(『白鯨』)の遺作にして最大の問題作が、鮮烈な新訳で甦る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「神の天使に打たれて死んだのだ! それでも、天使は吊るし首にせねばならん」

    「中動態の世界」で触れられていて、読みたいと思っていた。
    どう受け止めていいか当惑する物語。
    解説で書かれていた曖昧さというのにはかなり納得するのだけど、納得し切れるわけでもなく、納得してしまってももったいないように思う。
    でも納得するしないの手前で、物語は面白い。
    また読もうー!

  • 誰からも憎まれぬ水兵だったビリー・バッドがなぜクラガートにだけ嫌われたのか?というクィア・リーディングのおすすめにされていたので読みたいメモしてあったのだと思われる本
    メルヴィルの饒舌な語り口(解説および訳者の言うシェイクスピア的な朗読劇調)が好き

  • 私が手にしたアメリカの小説は時代に関係なく、悲しみや苦しみ、喜び、悲喜こもごもの感動に浸る類のものは少なく、どちらかといえばあまり読後感は良くないと感じてきた。そして、これです。
    不条理なのか、公平でないのか、世界に背を向けてるわけでもなく、宗教に圧倒的な信頼を寄せるというよりはむしろ科学が発達した現代人みたいに無神論者のごとく物言いにも感じる。悲劇のような、世界に唾を吐きかけているのか、怒りなのか憐憫なのか。

    登場人物それぞれの中に曖昧というよりは決して少なくはない相反する性質、そして矛盾が錯綜していて、神の観念もないはずのビリー・バッドは「神のご加護」と発する。
    原書の文体はとても古めかしいものらしいけれど、ここに書かれている人の心と社会とは現代にもつながっていて、メルヴィルはそれを追求し続けた。

  • 面白いと言っていいのか。
    モヤモヤした感じが残る小説だ。

    水夫ビリー・バッドの人生。
    ビリーは美男子で、周りの人間から愛されるキャラクターだ。
    彼はある船で働いていたが、軍艦に徴用される。
    その船でも彼は愛されキャラクターになる。やがて、こっそり彼に話しかけてくる謎の人物、そして彼を嫌う上官。こんなキャラクターが配置され、いよいよ盛り上がるか、というところで盛り上がらない。いきなり終わってしまうのだ。
    これといったオチがあるわけではない、というか、オチはあるんだけどすっきりしない。突然始まって、突然終わってしまう感じだ。
    いわゆる冒険活劇などではなく、ある人物の人生の1部分を切り取った感じ。

    その中には、様々な人間が登場し、当時の時代背景などが説明される。
    エンターテイメントではなく時代の空気を切り取ることに腐心したような小説だ。

    浦沢直樹のコミックと関係があるのかは不明である。

  • 文学

  • メルヴィル 「 ビリーバッド 」著者の遺作 中編小説

    キリスト教道徳の寓話にも読めるし、共同体の中で 秩序と苦悩を描いた小説にも読める。著者の人生の総決算としての思想哲学 にも感じる。

    著者が描きたかったのは 多様で複雑で曖昧な現実の世界。そんな世界で どのように秩序を守るのかを 伝えたかった と捉えた

    船中という人種や身分が多様な共同体が舞台。一神教的な 善と悪の二項対立では 共同体の秩序は保たれない。善の象徴である主人公のビリーバッド、知性の象徴であるヴィア艦長。ヴィア艦長の苦悩と共同体の秩序を保つ姿が印象的

    キリスト教道徳の寓話
    *狡知に対して 経験、才覚に欠け〜なりふり構わず 身を守ろうという感覚もないことは無力→ 無垢な善では自分すら守れない

    ヴィア艦長の本の好み
    *内容より文体にひたるものではない
    *至上の秩序を備えた全ての真摯な精神〜が惹かれる
    *どんな時代でも 現実の人間と出来事を扱う
    *モンテーニュのように しきたりに囚われない

  • 國分功一郎の『中動態の世界』において、中動態の概念の事例として用いられていたことから興味を覚えた。中動態~の中であらすじは語られてしまっていたので、淡々と読み進めた感じだったが、國分の主張と含めて、人間の意志と決断、そして責任についてあたらためて考えるようになった。なにげにメルヴィルは初めてだったので、巻末のメルヴィル評が、一番集中できたところだった。最近注意が散漫。

    18.3.14

  • 程よい長さの作品でメルヴィルっぽさもあり読む価値のある作家であることが伺える作品。最初に「白鯨」を手にして挫折する前にこの作品でメルヴィルに慣れておくのも悪く無いと思う。たしかに脱線はよくするし衒学的なところもある。それでも、読むに値する内容が伴っている。なので、読み通す価値は十分にあるように思う。読むと色んな事を考えさせられるいい作品だと思います。

  • 白鯨を読む前に一度著者の雰囲気を知っておきたかったので、手短に読めるこの本を一読。何とも言えない終わり方だが、これが作家の雰囲気らしい。物語としては秀逸。白鯨を読むかどうかは暫くおいておこう。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

(Herman Melville 1819–91)
ニューヨーク生まれのアメリカの小説家・詩人。1832年父の事業破綻に続く、父の狂乱死を経験。以降十分な教育を受けることなく、商船体験や捕鯨船体験、軍艦体験を経て、世界の状況を観察。1844年帰国。その体験中、捕鯨船脱走ののち食人種「タイピー族」と暮らした経験を、1846年に『タイピー』として作品化して評判となり、作家として自立した。代表作『白鯨』(1851)は出版時、評価としては不調であった。また本作『ピェール』(1852)は重要な作品ながら厳しい評価を受けた。ほかに優れた短編集『ピアザ物語』(1856)、生前最後の小説『詐欺師』(1857)、長詩『クラレル』(1876)、遺作として『ビリーバッド』(1924年出版)などがある。

「2022年 『ピェール 黙示録よりも深く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ハーマン・メルヴィルの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×