ガリレオの生涯 (光文社古典新訳文庫)

  • 光文社
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感想 : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752644

作品紹介・あらすじ

地動説をめぐり教会と対立し、自説を撤回したガリレオだったが、幽閉生活で目が見えなくなっていくなか、じつは秘かに『新科学対話』を口述筆記させ、秘匿していたのだった…。ナチス支配下から冷戦までの状況下で書き続けられた"自伝的戯曲"であり、ブレヒト最後の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 読書中のメモを転載。

    この作品中のガリレオはしたたか。自説を撤回したのもそうだが、自分に有利なように権力者や聖職者を利用しようとする。
    その一方で、弟子のアンドレアなどに対しては純粋で優しい。
    でも本来なら感謝しなければいけないおかみさんや娘にはどこか冷たい。彼らは科学に興味がない、ただの人間だったからか。
    そういう、人間ガリレオの多面性を描くのがすごくうまい。ブレヒト自身の自己投影か。

    …解説を読む限り作者はそういうことを意図していなかった、または重要視していなかったのかもしれないが、この作品にはそういうところにあふれている。

  • 科学と真理の関係、弾圧と抵抗の関係、政治と人生との関係。

    ナチスの台頭と共に亡命を繰り返したブレヒトは、火あぶりになったコペルニクスを目の前に見ながらそれでも真理を探求せずにはいられない1人の男を、自分と被せながら書いていったのだろう。

    科学的真実は実験と推論を経てやがては証明されるだろう。しかし、その時代の社会で広められるとは限らない。人間は、果たしてその科学的真実に対して、どのような態度を取るべきなのか。

    フクシマ的な課題を背負っている現代に、新たな問いを投げ与えながら、感慨深くこの書を読んだ。

    ひとつひとつの台詞がとても練られていて、やはり現代文学の収穫だろう、と思う。

    「真理とは、時代の子供であって、権威の子供ではありません。無知は限りなく大きいのですから、一立法ミリメートルずつでも、取り除いていくしかない!」

    「これが彼らの政治のやり方なんですよ。実をつけなくなったイチジクの病気の枝みたいに、私らを切り捨てる」

    「真理知らぬ者は馬鹿だが、真理を知りながらそれを嘘だという者は犯罪者だ!」

    「ひもじがってる熊に蜜蜂などやったら、手まで食われちまう!」

    アンドレア「英雄のいない国は不幸だ!」
    ガリレオ「違うぞ。英雄を必要とする国が不幸なのだよ」

    「私は思うんだ。科学の唯一の目的は、人間の生存の辛さを軽くすることにある、と。科学者が利己的な権力者に脅かされて、知識のための知識を積み重ねるのに満足するようになったら、科学は不完全になり、君たちの作る機械だって、新たな厄災にしかならないかもしれない。時を重ねれば、発見すべきものはすべて発見されるだろうが、その進歩は、人間からどんどん遠ざかっていくだけだろう。君たちと彼らの溝はど大きくなって、新しい成果に対して君たちがあげる歓呼の叫びが、全世界のあげる恐怖の叫びになってしまう、という日もいつか来るかもしれないのだよ。」

    2014年7月13日読了

  • R2/2/19

  • 真実が時代の子供ではなく、権威の子供になることの滑稽さを見事に浮き彫りに描き出した傑作。

    政治と宗教を一体化させていた、キリスト教を中心にまわっていたヨーロッパ世界で、絶対権力である教皇の権威を完全に崩壊させかねない、地動説。

    その地動説を唱えた人間達をことごとく滅殺してきた権力者達は、地球を宇宙の中心に置き続けることを強制する。

    最後まで幽閉され続けたガリレオの地動説が正しいと、再度見直し認められたのは1992年になってから。
    ガリレオが1642年に没してから実に350年後。

  • 原書名:LEBEN DES GALILEI

    著者:ベルトルト・ブレヒト(Brecht, Bertolt, 1898-1956、ドイツ、劇作家)
    訳者:谷川道子(1946-、ドイツ文学者)

  • 教皇ヨハネ・パウロ二世がガリレオに謝罪した日に,読んでみた。前半は全15景の戯曲。数学教師だった彼の半生は七転八起である。望遠鏡を発明してコペルニクスの天動説を証明したが,教皇庁によって禁書の憂き目に遭う。次に科学者である新教皇のもと太陽黒点の研究に着手したが,10年後,これも当の教皇によって学説を撤回させられる。異端審問所の監視のもと生涯を終えた彼だったが,その中でも新科学対話を執筆する。戯曲のあとは,アインシュタインと大震災とガリレオを結びつけた訳者の論考。真理探求への内面に共感する。

  • 明らかにそれが真理と悟っていながら、時代によって探究を諦めなければならなかったガリレオの生涯。発明家としての名誉と金、時の権威が交錯する世界で、彼が闘い貫こうとしたものは何だったのか。その人間模様もそうだけれど、中世キリスト教の封建的な価値観への認識も深まり、面白い本だった。

  • ガリレオって本当は、ガリレイなんだ(判り易さを採ったのでしょうね)

    岩波文庫(岩淵達治訳)「ガリレイの生涯」のPRを借用
    「地動説の撤回をめぐって教会とガリレイとの間に起った歴史的事件は「それでも地球は動く」という伝説的名句とともに誰もが記憶にとどめている。ブレヒト(1898~1956)はガリレイの人物と時代を知悉してそれを戯曲化し、彼の生き方を問うことによって、ナチ時代を生きた作者自身の、そして我々の生き方をも問うている。」

    光文社のPR
    「3.11以降、もっともアクチュアルに読まれるべき問題作! ガリレオは本当に屈したのか? 

    作品
    「いまこそ科学の光を監視して悪用せずに、活用すること。でないとそれがいつか火の玉になってわれわれみんなを焼き尽くす、そう、そんなことにならぬよう」(第15景より) 自らの生き方をも問うたブレヒトの遺作を渾身の新訳で。

    内容
    地動説をめぐり教会と対立し、自説を撤回したガリレオだったが、幽閉生活で目が見えなくなっていくなか、じつは秘かに「新科学対話」を口述筆記させ、秘匿していたのだった......。ナチス支配下から原爆投下、そして冷戦までの状況下で書き続けられた"自伝的戯曲"であり、ブレヒト最後の傑作。」
    http://www.kotensinyaku.jp/blog/books/book162.html

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著者プロフィール

1898年生まれ。ドイツの劇作家、詩人。「叙事的演劇」を提唱して、劇団「ベルリーナー・アンサンブル」を創設し、二十世紀の演劇に大きな足跡を残す。1956年心筋梗塞のためベルリンで死去。代表作に本書収録作のほか『三文オペラ』『マハゴニー市の興亡』『肝っ玉お母とその子どもたち』『ガリレイの生涯』などがある。

「2020年 『アルトゥロ・ウイの興隆/コーカサスの白墨の輪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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