緋文字 (光文社古典新訳文庫 Aホ 5-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752675

作品紹介・あらすじ

17世紀ニューイングランド、幼子をかき抱いて刑台に立った女の胸に付けられた「A」の文字。子供の父親の名を明かさないヘスター・プリンを、若き教区牧師と謎の医師が見守っていた。各々の罪を抱えた三つの魂が交わるとき、緋文字の秘密が明らかに。アメリカ文学屈指の名作登場。不倫の罪を背負いながらも毅然と生きる女、罪悪感に苛まれ衰弱していく牧師、復讐心に燃えて二人に執着する医師-宗教色に隠れがちだった登場人物たちの心理に、深みと真実味を吹き込んだ新訳。

感想・レビュー・書評

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  • みなさんは海外の作品を読むときに翻訳家というものをどの程度意識されているでしょうか

    え?★5付けといてまた関係ない話し始めるの?と思ったみなさん
    安心してください
    この素晴らしい名作は光文社の他に多彩な出版社から刊行されていて
    それぞれに素晴らしいレビューが存在しています
    そっち読めばいーじゃん!(清々しい開き直り)

    というわけで話し進めますね
    翻訳家さんです
    翻訳家さんにもっと注目して読書生活を送ってみませんか?という新生活の提案です

    かくいうワタクシも、そこまで翻訳家さんを気にしていたわけではないんですが
    今回のように気が付くと小川高義さん祭りになっていたりしてあれこれはどういうことかと思いつつ(今回もヘミングウェイの小川高義さん訳をよんですぐにホーソーンを読んでるんですが全く意図してませんでした)
    データ好きのワタクシはちまちまと翻訳家さんのタグ付け作業を営みつつ振り返ってみたのです

    ※せっかくデータ取ったので2023年5月27日現在の既読翻訳家さんベスト5〜〜

    1位 池田真紀子さん 25冊
    全体のベスト5にも顔を出す翻訳家さん
    ジェフリー・ディーヴァーを中心にいろいろなミステリーやSFなど本当に長く活躍している方です

    2位 安田均さん 15冊
    ドラゴンランスシリーズの翻訳家で、今なお日本ファンタジー界の中心で活躍を続けるレジェンドです

    3位 成川裕子さん 10冊
    大好きなミネット・ウォルターズは全てこの方

    4位 柳沢由美子さん 9冊
    北欧ミステリ、刑事ヴァランダーシリーズとエーレンデュル捜査官シリーズを手掛ける
    方やスウェーデン方やアイスランドです
    言語違うはずなんですがどうなってるんでしょう?

    5位 山田蘭さん 7冊
    アンソニー・ホロヴィッツを手掛ける

    5位 三角和代さん 7冊
    カーソン・ライダーシリーズはこの方

    まぁ、シリーズで読んでる作品を扱ってる方が上位に来ちゃうんで順位づけはあまり意味がないかもしれませんが圧倒的に女性が多いですね
    なにか理由があるんでしょうか?

    そして調べてる過程で、今回の小川高義さんもそうなんですが、何故か同じ翻訳家さんの作品を続けて読むということがけっこうありました
    原作は全然違う人なのにです
    これまたどういうことか
    あまり同じ人の作品は続けて読みたくないけど、深層心理で似たような作品を求めている?

    とにかくなにか翻訳家さん個人に惹かれるものがあるのかもしれません
    もちろん原作というモノはしっかりとあるんですが日本語で読む以上、そこに翻訳家さんの色が出ないわけがないですもんね


    そしてみなさんにお勧めしたいのが、翻訳家さんで検索をかけることです
    面白い!と思った海外の作品の翻訳家さんの別の翻訳作品から思いもよらないあなただけ傑作を見つけ出すことができるかもしれませんよ!

    余談ですがアンソニー・ホロヴィッツの『絹の家』(コナン・ドイル財団が認定したホームズの新作という位置づけ)を訳した駒月雅子さんはもともと本家ホームズシリーズの訳者さんだったりって知れたりしました

    • 1Q84O1さん
      池田真紀子さん、チャック・パラニューク作品を読んで最近よく見かけました
      池田真紀子さん、チャック・パラニューク作品を読んで最近よく見かけました
      2023/05/27
    • 1Q84O1さん
      ひまわり師匠の肝心の作品レビューがないのはいつものことですねw
      ひまわり師匠の肝心の作品レビューがないのはいつものことですねw
      2023/05/27
    • ひまわりめろんさん
      mendakoさんのレビューも良いです!
      mendakoさんのレビューも良いです!
      2023/05/27
  • かなり昔に新潮文庫版を読んだのだけれど、最近ホーソーンの短編集を読んで面白かったので、古典新訳文庫で再読することに。短編集のときに学習したホーソーンのバックボーンが頭に入っているだけで随分わかりやすかった。にしても序文「税関」は長すぎて、若い頃なら本編入る前にここで挫折してたかも。一応、ホーソーン自身が税関で働いていたときに見つけた古文書に記されていたのが緋文字の物語だったという体裁になっている。

    出版は1850年、小説の舞台はそれより約200年遡る1640年代、合衆国独立前の植民地時代のニューイングランド、ボストン。獄舎から引き出されたまだ若く美しい女性が胸に緋色の「A」の文字(姦通:Adulteryの意)をつけて赤ん坊を抱き、衆人環視の中、晒し者にされる刑罰を受けている。彼女の名はヘスター・プリン。夫がありながら不義の子を産み落とし、こうして罰を受けるも、相手の男の名前を頑なに黙秘する気丈な女性。

    数年前、英国で年上の学者と結婚した彼女は、夫婦で新大陸アメリカへ渡ることになり、夫より一足先にニューイングランドへ渡航するが、後から別便でむかったはずの夫の乗った船は難破、行方不明になり、ヘスターは一人で暮らしていた。不義と出産はその間の出来事で、折しも彼女が晒し者にされているその場へ、生きて夫は帰ってきたが、事情を知りヘスター以外には正体を明かさず、姦通の相手を見つけ出し復讐するため医師チリングワースとしてその地で暮らし始める。

    一方ヘスターの姦通相手で娘パールの父親であるところの、人望厚いが病弱な若き牧師ディムズデールは、罪の意識から精神をすり減らしますます衰弱していたが、主治医として近づいたチリングワースは彼こそが復讐相手と知り、同居しながらじわじわと彼の精神を痛めつけていく。すでに7才になる娘パールと町外れでひっそり暮らしていたヘスターは、元夫の魔手からなんとかディムズデールを救おうとするが・・・。

    ものすごく表面的な人間関係だけをみれば、要するに三角関係の話。まあチリングワースが邪魔者なだけで若い二人は相思相愛と言えるけど、じゃあチリングワースが極悪人なのかというとそういうわけではなく彼は彼で同情に値する面もあって複雑。学問一筋で初老になった彼が家庭を持ちたいと思い世間知らずな若く美しい娘ヘスターを口説き落としたこと自体は別に犯罪ではないし、求婚を受け入れたヘスターが選択を間違えただけ、しかもその点に関してはチリングワースは自分が悪かったと言ってくれている。

    緋文字を付けられ晒し者にされその後も恥を背負って生きて行かなくてはならない、つまりすでに罰されているヘスターを、チリングワースは憎まない。そして妻を寝取った犯人であるディムズデールのほうを憎むのは、嫉妬というよりは、ヘスターの黙秘に甘えて彼が名乗り出なかったこと、罰を受けずにのうのうと生きていることが許せないという側面が強い。

    一般的に恋愛もしくは婚姻関係にある男女のどちらかが浮気した場合、女性の憎悪は男性ではなく相手の女性にむかい、男性の憎悪は相手の男ではなく自分を裏切った女性のほうにむかうと言われているけれど、常に女が憎まれるというのは理不尽な話。その点、罪人のレッテルを貼られたヘスターより聖人君子面で説教してる牧師ディムズデールにムカツクというチリングワースの考え方はわりと正論だし理性的だと個人的には思うのだけれどどうかしら。ベッキーよりゲスの人のほうが最低だよね?(違)

    とはいえ、ディムズデールが一切罪悪感を持たない極悪人ならまだしも、彼は罪の意識に苛まれて苦しみ続けている。裁かれて償うことのできるヘスターは彼から見ればまだ幸せで、罰されないがゆえに苦しみ続ける誠実さが彼にはある。ナイーヴな牧師とは反対にタフなヘスターは、逆にどんどん聖女じみてきて頼もしい。二人の出逢いや、恋に落ち、愛を交わすにいたるまでの過程は一切描かれていないのだけれど、牧師を救うために待ち伏せしたヘスターと森で密会する場面などとても切なく、恋愛ものとしても結構秀逸なものがあった。

    余談だけれど何度か映画化されているものの中では、二人が手に手をとってハッピーエンドで終わるものもあるようで、宗教的な赦し云々とは隔たってしまった現代人が読むぶんには、そういう恋愛脳まるだし解釈もアリになってるということだろう。むろんホーソーンは不本意だろうけど(苦笑)

    短編集のほうの解説にあった、ホーソーンの母方のご先祖の近親相姦事件(アメリカで成功した青年が二人の姉を英国から呼び寄せるが、この姉二人と近親相姦だと現地妻から訴えられ、姉二人はIncest(近親相姦)の「I」の文字を縫い付けられて鞭打ち刑、姉の一人は妊娠していた)が、おそらくこの物語をホーソーンに書かせた発端だろうし、作中にはのちのセイラム魔女裁判をにおわせる魔女の老婆なども登場する。ホーソーンのご先祖様たちが英国から渡ってきたばかりの頃の混沌とした新大陸の活気と闇を、ホーソーンは夢想し作中に甦らせたかったのかもと思う。

  • 数年前にも違う訳者さんの本を読んだのですが再読。やはり良いです。
    清教徒の多い、宗教と法律がほぼ等しい土地で不義の子を産んだヘスター。ヘスターが名を明かさなかった、相手の牧師、ディムズデール。そしてヘスターの本来の夫であるチリングワース医師。三人を中心に描く、罪と贖罪の物語。
    罪を犯し、それを悔やみ、苦しみ、許し、自己を追い詰め、人を憎む、それぞれの心の動きが丁寧に書かれています。

    罪を犯し、恥辱の印を身にまといながらも、愛情深く高潔に生きるヘスターも、罪を犯した妻のヘスターではなく罪を隠し生きるディムズデールを追い詰めんとするチリングワースも良いですが、ディムズデール牧師と、彼の罪に押しつぶされそうな心の内を描く章が特に好きです。

  • 愛と苦悩
    (実際に読んだのは角川版)
    古典の名著といえば、そのうちの一冊にホーソンの『緋文字』があげられるだろう。
    なるほど、清教徒入植間もないアメリカで、姦通の罪で晒されたへスター、その夫、姦通した相手の若い牧師のそれぞれの心のうちを巧みに描いている。
    また、罪の子、パールの無邪気な姿が、その無邪気さのために光源となってそれぞれの姿に影を作っている。
    たしかに、たしかに文学作品としては素晴しいのであろう。

    ただ、私の感想はそうではない。
    まずは『緋文字』の序として『税関』という物語が併せて掲載されているのだが、これが淡々として、43頁まで読むのに、酷く苦労した。
    ここで少し面白くなってくるのだが、61頁まで、またこの淡々に付き合わされる。
    挫折しかけた。本当に。

    さて、物語がやっと始まってくるのだが、一冊読み終えるのに一週間かかってしまった。
    読後は何とも言えぬ不快感。
    いや、物語自体は希望ある終わりかたではある。しかし......。
    鴎外の『舞姫』に似たような展開だと思った。
    内容が類似しているというのではない。
    男、姦通した側のディムズデイルの情けなさに心底腹が立ったのだ。
    へスターが相手の名前を明かさず、罪の証を胸につけ、さらし者になり、罪の子を育て上げる強さに対し、ディムズデイルは私は罪を犯したと自らの救いを求めるばかり。
    挙げ句の果てにその罪の重さに堪え兼ねて告白をするはいいが、そのまま天に召される。
    何とも勝手な御仁である。
    神よ、私を許したもう、そればかりだ。
    多少はへスターに対する気持ちや、自らの子を愛するそぶりも見せるが、結局彼が悩んでいるのは自分のため。
    へスターやパールに対してではないのだ。
    それを美辞麗句で飾り立て、「苦悩」という自己満足を完結させる。

    それに対し、裏切られたことで復讐を考える老博士のほうがよっぽど「悪」に徹していて好感が持てる。
    また、へスターの強さは「愛」故の行動なのだろうと思われる。
    二人とも「愛」のために選んだ道が異なっただけで、己の身勝手さを理解している。

    この三人とも紛うことなき人間の姿であるといえば、確かにその通りだ。
    どこに感情移入するかで物語はまったく異なる様相を見せるだろう。
    それが名作たる所以なのかもしれない。

  • この話の主旨はどこにあるのだろう?まず聖職者のほうは、しらぬぞんぜぬでいくつもりだった。しかしそれもつらいので二人して、表沙汰にしたわけだが、そこから同一の道をたどらなくなる。何故か?
    緋文字の文字のAというなんとも見えるはずのない愛がそこに見えたとして、このスキャンダラスなちっぽけな聖域を一途に守ろうとしたかどうかなのかもしれない。なんだかんだいってもそこに光るものを残しつつ一歩一歩進むことに、糧を得てゆくのであった。

  • 愛の力は聖職者である牧師をも罪人にしてしまうのだなと。へスターが罪を背負いながらも毅然と生きれたのはパールの存在があったからなのだろうな。しかし最後三人で心中せず安堵しました。当時の姦淫問題がどれほど罪深いことかは察せるけれど命をもって償うのは…負けずに牧師にはへスターのような生き方をして欲しかったなと感じました。

  • 登場人物達の行動、心情から宗教的な教えが分かりやすかった

  • 有名な米文学ですが、私は「ひもじ」作者は「ホーソン」だと思い込んでいた。ダメですね。生半可な知識は。書かれたのは19世紀半ばですが、舞台は17世紀です。日本は江戸時代です。アメリカがまだ新天地だったころでしょう。主要人物は若く美しい主人公へスター・プリンと、男二人。そしてへスターの生んだ幼い娘。古い話です。信仰というものが命と同じくらいの重さであるということがわかります。へスターは不倫の罪で、忌み嫌われ後ろ指をさされながら生きていきますが、強靭で優しく魅力的です。人間の力を教えてくれます。

  • 3.2

  • いつか読もうと思ってここ数年過ごしていた#緋文字 も、ようやく読了。十重二十重と包まれているような文章で、裾を踏んづけながら歩くよう。不倫という罪(姦通罪)が、17世紀のアメリカにおいてどういうものだったのか。その罪の重さで、心身共にに病むって大袈裟…と思ってしまうしまう、現代に生きる私…。主題みたいなものより、17世紀アメリカの空気を感じることが面白かった。

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