すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)

制作 : Aldous Huxley  黒原 敏行 
  • 光文社
3.93
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レビュー : 92
  • Amazon.co.jp ・本 (433ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752729

感想・レビュー・書評

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  • 未来小説の古典として1984と比較
    人間が機械と同等になる
    妊娠出産しない(フリーセックスと人工授精)
    宗教のない世界での支配者vsインディアン=野蛮人
    老いと死(の概念)がない世界で⇒自死という終末

  • 「1984」が大好きなので、この本も読んでみました。新訳というのも買うきっかけになりました。
    1984はうわーやだなーこんな世界…とおもいますが、本書で描かれる世界は、なんだか悪くないです。作中で「ソーマ」といわれる薬は、抗鬱剤やドラッグの良い部分を併せ持つような薬で、未来人たちはガンガン使って嫌な気分を吹き飛ばしてます。
    人々は結婚・出産・育児から開放されているのでフリーセックスを謳歌し、恥じらうこともありません。
    労働は完全に階級化され、新生児の段階から「条件付け」されているので、反抗心もないし進路に悩むこともなし。
    年取ったら苦しみなく美しいまま死ぬことができるのです。ブラボー。

    この作品が1932年に書かれたということがある意味びっくりで、この未来の楽園の一部分は、21世紀に実現しているかもしれません。
    ソーマはありませんが、一部の薬品は似たような効果があります。頭痛薬でも辛い頭痛から痛みを和らげる効果があるわけで、ある意味ソーマともいえるし、老化を止めることはできませんが、これからもっとアンチエイジング技術は進むのではないでしょうか。
    人間らしさとは何か。苦痛やめんどくさいことがなくなれば人は幸せになれるのか。「すばらしい新世界」の住民は、自由で苦痛ない世界なのに、結局やっていることは低次元の娯楽にとどまっています。
    技術や医療の進化はもちろん人間を幸福にし、苦痛を取り除いてくれてそれはそれで素晴らしいものですが、それがイコール人間の「幸せ」に直結しているかというとそれは違うのかもしれない。
    そのような皮肉な物語だと思いました。

  • ❖古臭い印象はあるけれどそこそこおもしろく読んだ。同じディストピア(国家・社会の暗黒)を描いた『一九八四年』との対比より、モリスの牧歌『ユートピアだより』との近似を見る方が(逆説的に?)本作の本質は(歪も)明確になるような気もする。作品中盤から存在感がうすくなるが、バーナードの人物像はおかしかった。屈折してアウトサイダーぶっているかと思えば好機を得て俗気を露わにする・・ただの嫌なヤツである。物語の終盤(終幕)、野蛮人ジョンのたどる末路、彼を追いこむ狂気(狂躁)はそのまま現代を映していると思った。

    《西暦2540年。人間の工場生産と条件付け教育、フリーセックスの奨励、快楽薬の配給によって、人類は不満と無縁の安定社会を築いていた。だが、時代の異端児たちと未開社会から来たジョンは、世界に疑問を抱き始め…驚くべき洞察力で描かれた、ディストピア小説の決定版! 》(アマゾン紹介記事)。

    ●著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    ハクスリー,オルダス
    1894‐1963。イギリスの作家。祖父、長兄、異母弟が著名な生物学者、父は編集者で作家、母は文人の家系という名家に生まれる。医者をめざしてイートン校に入るが、角膜炎から失明同然となり退学。視力回復後はオックスフォード大学で英文学と言語学を専攻し、D・H・ロレンスなどと親交を深める。文芸誌編集などを経て、詩集で作家デビュー。膨大な数のエッセイ、旅行記、伝記などもある

    ●黒原/敏行
    1957年生まれ。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 超有名なディストピア小説。
    社会というシステムを合理的に形成する上で、排除すべきは不安定な要素を巻き起す感情。
    本作の世界では、”快楽””感情”さえも単純化し麻痺させた形でシステムに組み込む。
    文字だけ読んで噛み砕いてみると、この社会の思想は合理的で”素晴らしい新世界”に思える。でも、それは本当に歪まないのか?愛とはなんであるか?なにがなくなるんだろう?
    うーん。でも少しずつ、ここに近づいてるかもしれません。

  • ・あまりにも有名なオルダス・ハクスリー「すばらしい新世界」(光文社古典新訳文庫)、 所謂ディストピア、反ユートピア小説である。オーウェル「一九八四年」やブラッドベリ「華氏451度」等と並ぶ名作である。久しぶりにこれを読んで、ハクスリーがかなり異質であるのに驚いた。その出自によるものか、あるいはその資質、思考によるものか。単純に物語に対する好き嫌ひといふ点から言へば、私は ハクスリーよりオーウェルやブラッドベリの方が好きである。こちらの方が物語としておもしろいし、それゆゑに分かり易くもある。
    ・「新世界」前半、苦悩せるバーナードとその友人ヘルムホルツの物語になりさうである。それはたぶんオーウェルやブラッドベリに近い物語となつていくはず である。ところがさうはならない。バーナードは優生学的に失敗作のアルファといふところである。それゆゑに劣等感を持ち、憂ひに沈む。その憂ひが反体制的 な想念を生む。ヘルムホルツはそれに共感する。その共謀を阻止するために、バーナードは左遷されさうになるのだが、その前に彼は恋人(とでも言つておく) と北米のインディアン居留地に行く。インディアンとは野蛮人である。基本的に私達と同じ生活様式である。生業も生活も私達の知るインディアンである。ここで出会つたのがリンダとジョンの親子である。ここから物語後半、リンダはかつて行方不明になり、この居留地の人々に助けられたベータであつた。それゆゑに 2人は居留地から「すばらしい新世界」に連れてこられる。ここに於いて先の2人に共謀の目は完全になくなる。バーナードはジョンの世話役となつて皆の注目の的、以前の劣等感はなくなつたかのやうである。この物語がどのやうに構想されたのか私には知る由もないが、ジョンの登場により、作者は反乱よりも新世界 のすばらしさを述べることに重点を移したやうである。それを語るのが世界統制官ムスタファ・モンドである。支配階層アルファの頂点に位置する人物である。 たぶんハクスリーはこの2人の論争を書きたかつたのである。それによりユートピアのユートピアたる所以のものから、その反ユートピア性を際立たせたかつた のである。同じく全体主義を描くといつてもこれが決定的な違ひである。強固な大堤防もアリの小さな巣穴から崩壊は始まるやうに、いかなる独裁体制、全体主 義体制も必ずどこかからほころびてくる。ハクスリーはそれを信じないかのやうである。モンドの論理は完璧な独裁支配の論理である。しかも、モンドは禁書を 何冊も読破した後にさういふのである。ブラッドベリと違ふのは新世界が予め定められた階級社会であるといふこと、誰も異論をはさまず、疑問を持たず、唯々諾々として生かされてゐることである。反抗は基本的に無い。バーナードとヘルムホルツはその希少な例外であるが、最後は喜んで極地に送られていく。ここまで人を飼ひ慣らしてしまふ社会である。ジョンが違和感を抱かないはずがない。そこでジョンははかない抵抗をするのだが、最後は自ら縊死するしかない。基本的な思考のベースが違ふのである。これではなかなか物語にならない。どうしてもお説教になる。実際、モンドはジョンにお説教してゐるのである。ただし、理 解できないことを百も承知で説教してゐるのである。だからジョンを泳がせ、縊死させる。それが全体主義だと言へばそれまでである。ただ、それでも世界はまだそこまで進んでゐないことに安心はするのである。いかな中国や北朝鮮でも優生学のかくの如き利用法を知らないはずであるし、反体制的な動き、反抗がなくはないからである。この完璧な新世界、いつ実現するのであらうか。

  • 優生思想による産み分け、思想教育、フリーセックスと麻薬(ソーマ)による快楽。人間の行きつく未来がここにはある?
    ディストピアというテーマ自体は分かりやすいが、シェークスピアを始め様々な文学に精通していないと完全には楽しめない難解な小説。

    科学技術により労働は必要無いものの、余暇を与えすぎると人間は不幸になるため無駄に7時間働かさせる。優れた知能を持つアルファ型人間だけにすると戦争を起こし大半が殺し合い不幸な結末になった。

  • いろいろと気持ち悪いってか。ディストピア小説なので当たり前か。考え込ませてしまうという意味では、人によっては変えられてしまう小説かもしれない。たしかに、作者が後年振り返って、ナイープな結末は、変えた方が興味深いのは、私も同意する。とはいえ、作者(ハクスキー)の作品であるから、別の物語を語るなら自分でやれという話になるかもしれないけど。2016/08/20

  • すばらしい新世界はユートピアかディストピアか。

  • ブンガク
    かかった時間 こまぎれなのでわからない。2時間ぐらい?

    ホモ・デウスの冒頭を読んでいると、その筆者のとらえた現代の姿とともに、SF?のディストピア小説について言及がある。ちょっとそのあたりが気になって読んでみた。

    受精〜出産(試験管で育てられるのでこの言い方が適切かどうかはともかく)の過程ですでに、遺伝子によって選別され、肉体や能力をコントロールされて生まれた、それぞれの階級の一卵性多生児たち。彼らは、その階級に見合った教育を受け、社会を動かすための仕事と、健康で老いのない肉体と、いつでも快楽に浸ることができる薬物とを与えられている。
    また、この世界においては、1人が1人をずっと愛することや、孤独に浸ること、家族のつながり、自我を持つこと、等々は不必要なものとして、というか、むしろ忌むべきものとして位置づけられる。

    その中で、上位の階級に生れながらも、出産までの過程からか、階級にそぐわない貧弱な肉体をもつ男。彼は、自分が生きる「現代の生活」とは異なる生活を送る「野蛮人」の生息区域へ赴き、そこで、「現代の生活」からはぐれた女性と出会う…

    みたいな話。

    この1932年に書かれた小説は、なんていうか、いろんなところで言われているように、まさに人間の行く先の予言であるなぁ。というか、人間は想像できないことはできない。逆に、想像できることにはなりうるので、ブンガクはやっぱり必要だと思った。想像できたなら、推進も抑制もそれぞれの価値観でやってゆける。こういった世界が見えていない人に、あるかもしれない姿を物語として見せる、という、なんというか、小説というカタチのもつ価値を再認識した。

    というか、オルダスハクスリーすごすぎ。

  • 『1984年』と並び称されることの多いディストピア小説。
    孵化・条件付けセンターによる、人間の大量生産と思考管理、塞いだ気分を副作用なしに取り去るソーマという薬、廃止された全ての文学の代わりに導入された触感を楽しむだけの愚劣な映画、「みんながみんなのもの」というスローガンのもとにフリーセックスに耽る、科学の力で若さを保つ人々…徹底された管理社会に生きる登場人物たちと、そこに放り込まれた「野蛮人」の物語。

    小説としては盛り上がりが少なく、設定にも粗さが見られるものの、現代に通じる示唆に満ちている。現実の世界には、何が幸せで何が不幸かを教え込む孵化・条件付けセンターはないけれど、人間は自分で自分に条件付けを行わずにいられないのかもしれないとも思う。

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