オペラ座の怪人 (光文社古典新訳文庫 Aカ 2-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (570ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752743

感想・レビュー・書評

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  • 怪人エリックの秘話。エレファントマンのジョン・メリックが浮かぶ。せけんへの復讐心もありながら、普通の人でありたいと願う。巨大な建造物オペラ座の奈落への冒険譚もはらはら、わくわくする。2024.3.14

  • 実在するオペラ座の構造等に着想を得た怪人エリック、舞台俳優のクリスティーヌ、青年貴族のラウールによる三角関係の愛憎劇。
    物語の構成が読み手の興味を惹く。はじめは殺人事件と怪人の謎を提示し、歌姫クリスティーヌと怪人の関係に及ひ、ボンボンのラウールとクリスティーヌの関係が語られる。このラウールがただ愛してると言い続ける薄っぺらな人物として描かれイライラさせられるが、これは怪人エリックの生い立ちが語られるに沿い読者の感情移入をエリックに向けさせる故であろう。建築家や奇術師、優れた歌い手など幾多の才能を持ちながら顔が悪いだけで邪悪な感情を持ちながらも人並みの幸せに憧れる切ない怪人の人物設定故に確立する物語が魅力的である。
    強迫したお金の謎やオペラ座の構想など途中退屈に感る部分があり読みにくい文体から読むのが面倒になるが、終盤の怪人による感情が語られるところと後日談は作品の印象を高める。解説も興味深く読めた。
    ディズニーがこれを映像化するなら怪人がクリスティーヌの愛で魔法を解かれるエンディングにするのではと考える。まんま美女と野獣にはなるが。

  • コンプレックス、愛情の渇望、不信感や恨みなど人間が隠し持っている負の部分が多分に描かれている。怪人に嫌悪感を感じるのは、そんな感情に身に覚えがあるからかもしれない。ありのままの姿を受け入れてほしいという欲求は誰しも持っているのではないか。
    自分に向けられた優しさや愛情は、人間性の基盤となり、優しさは循環していくものかもしれないと思った。

  • 観たことはないが、ミュージカルなどで名前を知る程度だったオペラ座の怪人の本家。正直、ストーリーを最初にこの原作で知ることができた幸運を思わずにはいられない。普通の小説のような形式だと思っていたら、そうではなかったというところからして驚き。心理描写も、伏線回収も、ルポ形式だからこそできたのではないかと思う。全くストーリーを知らなかったので、最初から最後まで楽しめた。ドキドキハラハラする展開に、切ない読後感…。ガストン・ルルー恐るべし。色褪せない名作だ。興味があるなら絶対読んだ方が良いと思う。

  • 長かった…
    ミュージカルを観に行く予習として読んだ。
    はじめは超簡潔にまとめられた英語本を読んでいて、ついていけなかったので副読本としてこちらを呼んだら理解が深まった。

    オペラ座の怪人って、お化けじゃなくて人間だったんだ、というのが意外。
    オペラ座に行ったら本当にカラクリがあるのかな?

  • 分量の多さと人物がカタカナ、オペラ座の図で酔ってしまい挫折
    要再チャレンジ

  • 1910年の刊行。19世紀末ころの時代背景の様子。馬車が走っているが、ガス燈もあるころ。

    異形ゆえの悲劇を背負う男エリック。哀しみと怒りを表出する姿に「フランケンシュタイン」の怪物を連想した。フランケンシュタインの“彼”は名前も無いクリーチャーだったが、こちらの“オペラ座の怪人”は「エリック」という名がある。エリックですか…。ちょっと怪物ぽくない気がする。

    このエリック氏。前半オペラ座の5番ボックス席にたびたび気配を漂わすが、声はすれども姿は見せぬ。物理的な制約や障害物を超越してしまう様子である。物質的な肉体を持つ存在でなく、霊体というか精神的で象徴的な存在なのかな、と解釈して読み進めた。
    ところが終盤では、悩み苦しむ生身の人間のような存在感が濃くなってくる。この点、設定を固めきっていないのか、あるいは自由自在な感じである。
    エリックの超人的な動き、オペラ座の地下世界の超現実的な構造(地底湖があり、湖畔に家を建てている)など、奇想幻想をふくらませて書かれている。この点、ちょっとばかし読み方に戸惑った。
    不思議な小説である。

    ・エピローグでペルシャ人の口からエリックの生い立ちが語られる。これがすごい。フランスの地方都市で生まれ、醜い容貌で親からも疎まれて家出。見世物小屋に入り欧州各地を転々、ロシアにも。その頃、歌唱や腹話術、奇術の技を習得。その後ペルシャの王宮へ。奇術の発想力と発明の才を活かして独創的な建築デザインで腕をふるう。さらにトルコ帝国のスルタンの下で働く。トルコ革命で出国。パリへ赴きオペラ座建設で基礎工事( 地下構造)の一部を担う。

  • アーサー・コピットさん脚本の「ファントム」を以前観に行ったのでせっかくならとこの本を読んだ。けっこう内容が違うのね!
    「ファントム」の良さを語るのは割愛するとして…この作品に登場するエリック、つまりファントムは前半かなり怖い。本当に人間なのかと疑うくらいだった。後半のペルシャ人の手記あたりからファントムの人間味が徐々に描写されていく感じだった。なので後半を読みすすめるとちょっと胸が苦しくなる。特にファントムがクリスティーヌに言った台詞「愛されさえすれば〜」は、幼少期から孤独に生きていたファントムの背景を想像すると涙なしでは読めない。
    最期まで孤独な人だったなという印象だったけど、解説を読むことによってファントムの死への解釈がかなり変わった。クリスティーヌと出会って愛を知ったことによりファントムはファントムではなくエリックとして死ねたんだと思う。

  • ブンガク
    かかった時間180分くらい

    言わずと知れた作品だが、意外に初読。
    はじめの設定にはやや難儀したが、訳者の言うように、流れに乗れれば夢中になって読める作品だと思う。物語は魅力的で、語られる言葉は、これも訳者の言葉にあるように、身近でありながら大時代的で、とりわけ音楽の美しさや愛の至高性について語られた部分は、ほんとうに流麗でよい。

    一昨年くらいから、近現代小説の名作?みたいなものを読むようにしているが、やはり読み継がれているものには価値があるなあと思う。この物語については、別の訳者の訳でも読んでみたいと思った。

  • ミュージカルにもなった名作。

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著者プロフィール

Gaston Leroux(1868-1927)
パリ生まれ。「最後の連載小説家」と称されるベル・エポック期の人気作家。大学卒業後弁護士となるが、まもなくジャーナリストに転身。1894年、《ル・マタン》紙に入社し司法記者となり、のちにこの日刊紙の名物記者となる。評判を呼んだ『黄色い部屋の謎』(1907年)を発表した年にル・マタン社を辞し、小説家として独り立ちする。〈ルールタビーユ〉〈シェリ=ビビ〉シリーズの他、『オペラ座の怪人』(1910年)、『バラオー』(1911年)等のヒット作がある。その作品の多くは、演劇、映画、ミュージカル、BDなど、多岐にわたって翻案されている。

「2022年 『シェリ=ビビの最初の冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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