絶望 (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752798

感想・レビュー・書評

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  • ナボコフ初期の長編。思い込みってこわいね。

  • ふぅ! やれやれ…。印象をとしては、「ヘッポコ主人公のながい知的遊戯に付き合いました」かな(失礼)。タネ明かしはほぼ解説にて。探偵小説を下書きにしたメタフィクション、だそう。なのですが。正直なところ、読んでいる間は、「これが、文学、芸術、なのですね?」ふふふ...コントとしてなら楽しめそうかしらん、といった感じ。
    度々読者を引き止め、「読者よ...」と呼びかけては、コレにはこれこれこういう理由があるんだからね、『なんだからね!』の過剰なエクスキューズに、あ、そう。へーそう。(毛先を弄りながら)そっかそうだねあはは、と上の空で相づちをうっているイメージが続く。
    好きな場面は、風がオリーブの木の葉をいっせいに裏返す様子を、飽きることなく窓から眺める場面で、お?思ったのは、妻に向かっての「脳タリンな女」発言。
    ただ、示唆にとんだ文節が無かったかと言えばそんなことはないし、解説を読んで皮肉たっぷりな小説だったんだと気づいた(解説がいい)。鈍いな自分。
    読書って解釈の自由さがあるから面白いし、それが醍醐味だと改めて気づかされた。

    ドストエフスキーが読んだら何て言ったか、想像すると楽しい。

  • 「カメラ・オブスクーラ」を出してくれた光文社が、またまたナボコフの初期長編を出してくれました。ありがたく買いました。
    内容は思ったよりもシンプルなんですが、ものすごく周りくどいというか、叙述的というか…ミステリ的なんだけど、こう「小説を書く」というそのものが物語のテーマにもなっていて、読者を混乱させます。
    ちょっと「ロリータ」にも通じる信用出来ない語り手路線です。
    個人的には「カメラ・オブスクーラ」の方が面白かったですが、ナボコフファンなら必読だと思います。

  • チョコレート会社の経営が傾きかけている主人公ゲルマンは、ある日自分そっくりな浮浪者の男と出会い、替え玉殺人=保険金詐欺を思いつく・・・というあらすじだけなら、一見ミステリー仕立てのお話かと思いますが、実際にはその殺人計画があまりにもずさんで、読んでるこちらが「それじゃすぐバレるよ!」と心配になるほど(苦笑)。

    「自分とそっくり」というのがあくまで主人公の主観で読者にはその真偽が不明なあたりは、一種の叙述トリックの趣きもあるのですが、顔が似てるだけで死体を自分だと思わせられるというのは安直すぎるし(警察どんだけ無能だと思われてるんだ)、「自分とそっくりな人間に出会ったら人はどうするか」というお題(シチュエーション)の面白さを生かしきれておらず、結果、単に主人公がおバカなだけでしたっていう身も蓋もないオチ。

    解説をじっくり読むと、ナボコフが書きたかったことはそういう筋立てではなく小説そのものを皮肉ったような主人公の記述の仕方だったりするようですが、それも読み手としてはまわりくどい、もってまわった言い方にイライラするだけで、あまり魅力を感じられなかったのが残念。こちらはどうしても筋書きを追ってしまうので、どんでん返しや意外な展開を期待してしまい、例えば記述してるのは実はゲルマンではなく、まんまと入れ替わってゲルマンになりすましたフェリックスのほうでしたとか、実は最初から妻と従兄弟がグルになって、そっくりさんを用意してましたとか、色々予想しながら読んでいたのですけども、ことごとく裏切られ、「絶望」というか「失望」して終わりました・・・

  • ねっとりとした意地悪な文体。解説にて初期ロシア語による翻訳で、それがウリだそう。その解説にて一生懸命、小説の仕掛けを力説されてる訳だが、まず作者を好きで尊敬し、作品に興味を持つ、そこからが開始点であり。

    淡々と読んでいるだけでは、そうなのいやそうじゃない、もったりくったりとした、自分の犯罪を計画して楽しみイラつく男の1人語り。

    場面場面は昔の宝田明が出てるドラマっぽいと思った。

  • いかにもでたらめな”信頼できない語り手”、翻訳でもなお表現される饒舌さや言葉遊び、メタ構造、物語ること見られることに関する追求、ナボコフの巧みさが楽しかった。私は後書きを途中で読む癖があるのだが、解説されすぎているのは白ける。

  • 1936年刊、ナボコフ初期の小説だ。今回は犯罪者の手記といった形をとり、どうやら、ナボコフが嫌いなドストエフスキーをパロディ化しているようだ。どうにもとりとめのない、主観的な饒舌がドストエフスキーの文体を真似ているのだろうが、本家の作品のようななまなましい迫力は全然ない。
    「鏡像」という「虚構」が最後に音を立てて瓦解していくところが、この作品の白眉だろう。主人公の思い込み・勘違いがさっと振り払われ、主体が一瞬消失するような感じは、ナボコフならではかもしれない。
    ドストエフスキーの真似なんて、やめとけば良かったのにな。

著者プロフィール

1899年ペテルブルク生まれ。ベルリン亡命後、1940年アメリカに移住し、英語による執筆を始める。55年『ロリータ』が世界的ベストセラー。ほかに『賜物』(52)、『アーダ』(69)など。77年没。。

「2022年 『ディフェンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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