- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334752910
感想・レビュー・書評
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犯罪を犯して幸せをつかんだとしても、罪の重さに耐えられない。そこには不毛と恐怖と絶望がある。
クレマンの子供はなぜ死者に似ているのか?私にはわからない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久々に古典に手を出してみた。現代は多様化というなんでもよさを受け入れているのに対して、昔は文字を読んだり書いたりするのが上流階級のしかも教養のある人だったの時代の、多分なんだけど、学者の論文みたいな世界だったと思うんだよね。なので読む側にこび売ってない。現代のように意味のない表記をたくさん入れて文字数(金)を稼ぐ必要もない。読んでて結構扱いづらい物だなと感じた。シンプルな言葉で展開が早いのでよーく考えて読み進めないと一気においてけぼりを喰らう。
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19世紀中ごろ、既存の価値観が崩れていく中で何を拠り所にして生きるかを人々が模索していた時代に書かれた中編小説。推理・怪奇小説として面白く読んだ。
裏表紙でほとんどネタバレしてるじゃないか!と思いつつ最後まで熱心に読めたし、「おや?」と引っかかった疑問点に合理的な解答はなく怪奇もの的に収束していったことにもなんだか納得してしまった。クレマンもマックスもそれぞれの立場で真摯だったからだと思う。「良心とは何か」とは、ほとんど考えたことがないテーマだ。考えないで済んでいるのは幸運かもしれない。
マックスは作者の分身なんだけど、本物よりかっこよくしちゃったせいでふわふわしたキャラになってるのが微笑ましい。 -
19世紀フランスの作家、音楽家でもあり、
ボードレールと親交のあったシャルル・バルバラの中編。
セーヌ川から引き揚げられた証券仲買人の遺体、その死の背後の犯罪。
探偵小説の要素もあるが、
殺人者の苦悩と贖罪意識に重点が置かれたヒューマンドラマ。 -
『罪と罰』に影響を与えたに違いない哲学心理小説!19世紀パリ、かつての貧乏暮らしから急に生活が豊かになり社交界の中心人物となった無神論者のクレマンと病気の妻ロザリ。ある夜サロンで判事が語った殺人事件の話にクレマンは露骨な動揺を見せる。描かれるのは「神が存在しなければ全てが許される」と考えた当時の反神思想と神の存在を否定しきれない不安というキリスト教社会的なジレンマであり、殺した男の面影が後に生まれた子供に現れるという雨月物語的な恐怖。そこに結論はなく、まるでありきたりの人生同様に悲劇と幸福が哲学的なモヤモヤと共に訪れる。ある人には幸福が、ある人には不幸が、それはサイコロを振って偶然出た目のようなもの。悲劇も幸福も因果関係から生まれるわけではない。そして幸不幸が人の知覚による違いでしかないなら神もまた偶然出たサイコロの目でしかない。
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バルバラを再発見した亀谷さんの調査と物語を交互に織り交ぜながら映画を作ったら面白そうなんだけど、誰か作ってくれませんかね?
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だいたいもって自分は、「これは現代の『○○(有名な文学作品)』だ!」とか、『○○の再来だ!』そういう惹句が好きではないタイプなので、帯に『これぞフランス版『罪と罰』だ!』と書かれていて、少し興ざめもしたのだけれど、それでも買うことにした。
『罪と罰』を読んだのがもう相当前のことなので、実際どのような共通点があるのかはいまいち思い出せないけれども、これ単体で見ても佳作だと思った。人間は一度犯した罪を本当に浄化できるのか、できるのだとしたらどのような手段によってなのか。ストーリー自体はやや凡庸だけれども、十分に考えさせられた。
訳者あとがきの私が発見しました自慢と、作中に実在の人物をモデルにした登場人物がいるというのは、自分には割とどうでも良かったかな。