ハックルベリー・フィンの冒険(上) (光文社古典新訳文庫)

制作 : Mark Twain  土屋 京子 
  • 光文社
4.10
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本棚登録 : 87
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752927

感想・レビュー・書評

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  • 相棒の黒人奴隷とひたすら川を下る中で、ハックの逞しさ、賢さ、鋭さが光る。うん、やっぱこいつかっこいい。
    にしても、まさか最後に「彼」が登場するとは……まさに、「ヒーローは遅れてやって来る」??

  • 唯一無二の、きらきらした感じ。

    物語の細部は、実は暴力と非情。ハードボイルドな「みんな悪者」ワールド。なのに、めくるめくピュア。「詩情」という実態の分からないコトバとは、この本の為にあるのかも知れません。

    最強のペアの物語です。DV被害少年・ハックと、逃亡黒人奴隷・ジム。
    ふたりの筏の旅は、ミシシッピーをくだり、黒人自由州へ。「ジムを密告するべきでは?」という張り裂けそうな危機を孕みながら。ハックの決断はー。

    #

    「ハックルベリー・フィンの冒険」光文社古典新訳文庫で上下巻。マーク・トウェイン。1885年発表。

    世界は、(というかアメリカは、なのか)なんてグロテスクに不条理で、残酷で、暴力的で、反知性で、貪欲で下品で偽善的で、そして差別と偏見に満ちていることか。

    だからと言ってそれを写実するだけではなくて、小説というサービス精神の中で描く。
    そして読者は楽しませなくてはいけないし、最後には「良かった」という後味が必要、という作者の側のモラルを感じました。
    なんて瑞々しく、スバラシイ。

    #

    「トム・ソーヤ―の冒険」(1876年発表)の、今風に言えば、スピンオフ。
    なんだけど、元ネタの「トム・ソーヤーの冒険」の倍くらいの長さの長編小説。
    話は「トム・ソーヤーの冒険」の直後から。1830〜40年頃の、ミズーリ州。偉大なる田舎。

    ハックルベリー・フィンのもとに、飲んだくれで最低な父親が現れて、ハックを監禁して暴力を振う。
    脱出したハックは、逃亡奴隷のジムとともに街を脱出。
    目指すは、ジムが奴隷の身分から逃れられる自由州。ふたりの行く手には、さまざまな冒険が現れる。

    発表されたのは1885年。リンカーンによる奴隷解放宣言が1862年、大まか20年前。発表当時の世論は黒人差別反対なんです。建前としては。

    物語の中でハックは、逃亡奴隷のジムに友情を感じながらも、
    「人の持ち物の奴隷を逃亡させるのは、してはいけないことなんだよなあ」
    という、良心の咎めを感じながらミシシッピを流れていきます。密告か、共犯か。社会のルールなのか?個人の心情なのか?

    社会のルール、正義って言うのは、ほんとに正しいのか?強者に都合の良いだけなんぢゃないのか?

    もうこれだけで、永遠不滅の物語。
    2017年現在ニッポンの僕たちも、他人事ではありません。

    #

    微妙に一話完結のように、連綿とつづられるふたりの冒険。親の暴力からの脱走。理不尽な殺戮。道徳にまで昇華している人種差別。拝金主義。詐欺。だまされやすい人々。残酷な集団ヒステリー。エトセトラエトセトラ...
    大人社会の偽善を抉りながら、ジムの逃亡補助を巡る、ハックの葛藤が貫かれて行きます。ドキドキ。

    実にハードボイルドに、そして明るくアッケラカンと局面をしたたかに生き抜くハックの一人称が、もぎたてで食べごろトマトのようなタマラナイ甘さと酸っぱさ。

    人目を避けて、昼間はいかだを隠して休みます。そして日が暮れると流れを下る。
    悠々たる巨大なミシシッピの闇。ウソのようなつぶらに近い星空。その自然を興奮豊かに描く下りは鳥肌もの。
    (自然情景描写って、だいたいは僕は苦手なのですが、コレにはヤられました)

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    話しは随分と豊饒な寄り道を経つつ、大河を下るように不要不急にたゆたいます。
    そして残酷な現実にジムとハックは追い詰められていきます。絶体絶命に。もう、だめか。
    そのときもハックだけは諦めません。

    諦めないハックのもとに、最終盤に現れる最強の味方。そう、トム・ソーヤーその人なんです。「いよっ!待ってました!」
    大向こうの気分。ここからのわくわく感って言ったら、身悶えものです。

    世界観は痛くて辛いんですが、それはそれ。
    小説は小説です。イッキに愉快なハッピーエンドに向けて舵を切ります。この安心感。
    正直、直前まで
    「頼むからハックとジムを幸せに終わってあげてください!」
    とトウェインさんに祈るばかりだったんです...恥ずかしながら。

    #

    ヘミングウェイが、そしてその後の文学者の多くが、「アメリカ文学が始まった瞬間」と位置付けた名作。さすが。

    ではアメリカ文学とは何か?

    大いなる田舎であり、無知であり、欲望であり。剥き出しの暴力と偏見と人種差別の渦。なんだと思います。

    その代わり、欧州よりも宗教も身分制度も弱く、混沌と自由、そして不安と絶望もより強くあります。全て欧州より大味。
    そんななかで、どうやって秩序を持って幸せに生きていけるのか。そんな冒険の物語。
    そう考えると、風土として、習慣として、後味として、ヘミングウェイでありフィッツジェラルドであり。キングやエルロイまで至る大河の源泉をたゆたった気分です。
    (そして考えようによっては、その流れにはジョン・フォードやイーストウッドや、そして村上春樹までが見え。ハックルベリーの子どもたちの、なんと豪華なことでしょう)

    #

    光文社古典新訳文庫、僕は相変わらず素敵な仕事をしていると思います。
    こなれた訳文で、するすると読めました。
    翻訳、大事なんですよね。ほんと。
    (でも、読み終えて、「村上春樹訳で読んでみたいな」と思ってしまいました...。村上さん、やってくれないかなあ...)

  • 読み始めたきっかけは特別覚えていないけど、読みながらディケンズの「デイヴィッド・コパフィールド」を思い出した。デイヴィッドの方は一人称の語りだったような気がするんだけど、もしかしたら違うかもしれない。こっちはハックの一人語りだけども。今と比べるといつの時代の昔も純粋だったし素直だったように見えるんだけど、やっぱりそれはそれでねじれてるしこんがらがっている。そんな時代に必死に明るく生きようとした少年の物語っていう、そういうのが僕は好きなのかもしれない。

    時代は1830年ほどらしい。南北戦争前のアメリカ。直接的に間接的に、黒人奴隷の存在が物語の通奏低音になっている。しかしそれを良し悪しいう直接的な言説はない。ハックは白人でその時の見方で黒人を見下げてるし、黒人は黒人である意味での奴隷根性が染みついている。でもそれに染まりきっていない黒人もいて、それがハックの家のジムで、そのジムの逃亡を不可避的に助けながら冒険をするように話が進む。

    大体こういう時代の話お決まりの、思い込みが激しいキャラの連発で、そんなキャラクターたちががやがやとやりながら話が進んでいく。結構悲惨な出来事も少なくないんだけど(親しくしていた人が死ぬなど)、そこに重力を与えない。

    宗教的な道徳的な正しさを明るく信じているハックだが、不可避的に投げかけられる人間の生に対する問いかけに何度も立ち止まり、考え、時に答えを与えられ、時に悩むままでおわる。黒人奴隷のジムが自由州に到着しそうだと喜ぶ姿に良心がジクジクする。奴隷の逃亡は違法であるし、それを偶然にでも手伝ったのは紛れもなく自分であるし。それはただのコンプライアンスの問題ではなく、命に根差したハックの良心の問題として描かれている。

    トウェインは物語以上の政治的、人格的なメッセージは一切ないし、それを読み取ろうとすることも望まない、と巻頭にわざわざ述べているが、それを読み取らずにおれようか、という感じである。下巻に続く


    17.5.19

  • ハックルベリーフィンの冒険は昔から、
    読みたいと思っていて機会がなかったのですが
    新訳ということで読みやそうだったので購入。
    感想は下巻の後

  • 名作だが、下巻を読んでからの評価としたい。

  • 面白い!トムソーヤーと比べてハックは理屈っぽくて現実的で、ハックの方が親しみやすいと思った。育ちが悪くて教育を受けていなくても、生きていく知恵は身についていて、これぞまさに冒険だと思った。ハックの見事な発想と計画に感嘆した。

  • 御茶ノ水丸善、¥1170.

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著者プロフィール

マーク・トウェイン 1835年ミズーリ州フロリダに生まれる。4歳のとき、ミシシッピ川沿いの村に移り住み、自然に恵まれた少年時代を過ごす。12歳で父親を亡くし、生活のために印刷工、蒸気船の水先案内人、新聞記者など様々な職業についたが、やがて『トム・ソーヤーの冒険』『ハックルベリー・フィンの冒険』『王子と乞食』など多くのすぐれた作品を世に送り出し、アメリカの国民的作家となった。

「2019年 『さらわれたオレオマーガリン王子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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