チャタレー夫人の恋人 (光文社古典新訳文庫)

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感想 : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (674ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752972

感想・レビュー・書評

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  • 本作を読んでいると、SNSには「成功という雌犬に腰を振る」ヤツばかりいるように思えたし、私自身も「ゴムとプラチナ」で出来てるヤツに思えてきて仕方がなかった。坑夫たちが鉱山に宿る霊ならば、コニーとメラーズは森に宿る霊だろう。やがて破壊される運命の森の霊。いつまで守れるかわからないけど、たとえ短いあいだであっても名もなき神に守られてほしい。柔らかく温かい二人の肉体は、森に咲く花々のように美しいけど、はかなく脆い。コニーとメラーズの心の揺らぎも、魅力的だ。生身の人間らしく、恐怖や不安に揺らぐ意識は、香水やスパイスのように、美しく、魅力的に描かれている。常に一貫性を保つブレない意識など、ありはしない。意識の揺らぎは、甲殻類的人間(外側が堅い甲羅で、肝心の中身が溶けている人間)ではない証左だろう。沢山の「ハイライト」をKindleに引いた。記憶に残したいフレーズが沢山あったからだ。主人公達以外の人物も、興味深く描かれていて、会話部分もお洒落である。

  • なんというか、惹かれ合う二人がかわいいと思ってしまう。

    花で飾ったジェインとジョン・トマスの結婚式に思わず顔がほころぶ。恋人同士は時にこんなちょっとしたおふざけをするものだ。

    機械化が進み人々はお金を求め、大きく変化しようとしている世の中を悲観しつつ描かれるイノセントな恋に、ロレンスの繊細さが伺える。

    草木を潤しイングランドの空気を感じさせる雨も印象的。

  • クリフォード・チャタレーの妻コニーは、“男と恋に落ちるには、まず言葉で親密な関係を築く必要(p21)”がありました。そのため、性生活をあまり重視しないクリフォードとの、“性を超え、男の性的な満足感も超えた自分たちの間柄に”、“多少の誇らしい喜びを覚え(p31)”ていました。

    “ただコニーはどうしても子供が欲しいと思った(p31)”のですが、クリフォードが戦地から送り返されてきたとき、ずたずたの状態で、一命は取り留めたものの、体の下半分、つまり腰から下が永久に麻痺したままとなってしまいました。

    いつしかコニーには、“自分を犠牲にし、クリフォードに一生を捧げてどうなるというのか(p151)”という“反抗心”がくすぶります。そして、森番のメラーズに恋をします。

    裏表紙には“地位や立場を超えた愛に希望を見つけようとする男女を描いた至高の恋愛小説”と書いてあります。確かに二人の地位は異なっており、それでも関係なく惹かれ合う恋愛でした。

    しかし、読んでいて二人はいつか別れるのではないかと思っていました。メラーズが妻バーサ・クーツとなかなか手を切れずにいて、彼女が下品な話を触れまわっているとコニーが知ったとき、“遠方に来ている自分までもが汚辱にまみれようとしている”と、“メラーズに怒りを覚え”(p550)ています。また、コニーが「赤ちゃんができたの(p572)」とメラーズに言ったとき、メラーズの顔からは、いっさいの表情が消えます。コニーが「うれしいと言ってちょうだい(p572)」と言っても、メラーズは言ってくれません。

    それでも、最後のメラーズからコニーへの手紙は、美しく、愛している気持ちと、希望を感じることができました。

  • 猥褻か芸術か。という裁判チャタレイ事件が余りにも有名なので、そんなに争われるなんて一体どんな内容なのだろうと興味をそそられたから読み始めた。
    性的な描写は至って短く淡々としている。ねちっこいいやらしさを感じないし、読んでみれば性の描写はほんの一部で大半は階級制度のこと、女性の自由のこと、資本主義に対する批判と、現代の社会に通ずる作者の思想が見えてきて大変興味深かった。
    そして、最後は性がとても純化したものになっていた。人と人の温かい優しい繋がりであると、とても清純な結論に至った。
    作者ロレンス氏の思想に俄然興味が湧いてきたので、他の作品も読んでみようと思う。

  • 思ったより読みやすくて面白かった。あとエマニエル夫人と混同してた。笑
    金か愛か?みたいな論になりがちだけど、愛情にはもっと複合的に理由があるよな、とあらためて感じました。柔らかで暖かな肉体の愛情と、理性的な知性に基づく尊敬、自然と工業化の対比と言いますか。

  • 乱歩の芋虫は人としてのコミュニケーションは成立せずに性でのみ繋がっているのに対して、本作はコミュニケーションは成立するけれど性の繋がりはない。
    性というものを考えるのにこの2作品の比較はヒントになり得るけど、私の頭じゃ難しい。
    時間を置いて再チャレンジしたい作品。

  • 今月の猫町課題図書読了。伊藤整による翻訳が(「チャタレー事件」で)有名だが、今回は光文社古典新訳で読む。文庫本なのに 1,700円もしてびっくりした。

    第一次世界大戦後の混乱の中、価値観が物質文明、極度な資本主義へと移り替わる中、自然回帰、肉体回帰を訴えた作品。猥褻文書裁判の影響で猥雑部分のみに注目が集まることが多いが、現代の目で見ると猥雑というほどのものではない。むしろ、ヘンタイの最先端を行く現代日本人の目から見ると、D.H.ロレンスの方が時代の制約に縛られていて、逆にもの足りないくらい。

    興味深いのは、ラグビー邸に集まった友人の会話に「未来について書かれた本を読んでいた」として紹介される未来像が Brave New World そっくりなこと。解説を読んで知ったのだが、D.H.ロレンスは晩年、ハクスリーと親交があったらしく、ハクスリーが Lady Chatterlay のこの挿話に強く影響を受けたことは明らか。あの奇想のもとが D.H.ロレンスだったとは、びっくりだ。

  • 2015年7月の課題本でした。

    http://www.nekomachi-club.com/side/23828

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著者プロフィール

D.H.Lawrence.
1885 ~ 1930 年。イギリス出身の作家。
大胆な性表現や文明社会と未開社会の葛藤などを主なテーマに据えた。
イギリスからイタリア、オーストラリア、ニューメキシコ、メキシコと遍歴。
この間に、『アーロンの杖』『カンガルー』『翼ある蛇』などの問題作を
次々と執筆。ローロッパへ戻ってものした『チャタレイ夫人の恋人』が
発禁処分となるなど、文壇の無理解もあり長編の筆を折る。
その他の代表作に『息子と恋人』『虹』『アメリカ古典文学研究』
『アポカリプス論』など多数。

「2015年 『ユーカリ林の少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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