馬と少年 ナルニア国物語3 (古典新訳文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334753498

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  • ナルニア国物語の3巻目。前作『ライオンと魔女と衣裳だんす』で即位したピーター、スーザン、エドマンド、ルーシーの治世の物語。

    ナルニア国の南方にあるカロールメン国の漁師の子シャスタは、父親が自分を奴隷として売ろうとしていることに気がつき、ナルニア出身の〈もの言う馬〉ブリーにまたがり、北へ向かって逃げ出す。旅の途中、これまたやんごとない事情で逃げ出してきた貴族の娘アラヴィスとその愛馬フインと道連れになるも、タシュバーンの街でナルニア国と隣国アーケン国に迫る危機を知ることになり…。

    翻訳ものを読むときは、せめてタイトルは原著タイトルを確認するようにしているが、解説にもあるように、本書の原著のタイトルは、“The Horse and His Boy”。そう、「馬と“彼の”少年」なのだ。メインは馬。もちろん、この「少年」ことシャスタが、少しずつ成長していくのが見どころでもある。冒険ファンタジーのおいしいところを、てんこ盛りにしたような本作。おもしろくないわけがない。世界中の子どもが夢中になって読むはずだ。

    舞台がナルニアの外にまで広がり、かつ前作とのつながりも、ちらほら見え隠れ。本作のアスランはますます神がかり、訳者が意識しているのか、その物言いまでも聖書の神のようになってきた。物語の世界観がぐんと深まった感があるナルニア国物語。さて、次巻に進もう。

  • これまでのナルニアと違った趣があって面白かった。ストーリーの展開も早く、王道の冒険物語。主人公はもともと気の弱い少年だったが、いざという時勇気を奮いお越し、お姫様のような暮らしをしていた少女は自由の本当の意味を知り、自分は良くできた馬だと自惚れていたブリーは謙虚になる。旅をして皆少しずつ成長した。

    イスラム世界を皮肉っているようでいて、反面イスラムの優美さも描かれている。

  •  もの言う馬と少年少女が、ナルニアを目指す旅の一部始終。
     馬のブリーが経験する感情や、気持ちの変化する様子がとてもいい。なんというか、含蓄に富んでいる。シャスタに乗馬を教え、道を示し、誇り高く、物知りな馬として語らっていたのが、シャスタの勇気ある行動(ライオンに素手で立ち向かう!)を目の当たりにし、そのうえ自分は命おしさに逃げることしか考えていなかった、とすっかりうちのめされてしまうのだ。
     立場というのはいとも簡単に逆転するものであり、固定された力関係などないと思わせられる。そしてそこから、仙人やアスランに諭されて立ち直るのだ。
     プライドが高いというと悪い意味に捉えられがちだけど、人の話に耳を傾ける度量があれば、誇り高いことはけして悪いことではないんだな、と。

     「いったい、<もの言う馬>ってもんは、ゴロンゴロン寝っ転がったりするものなのかな?」
     愛すべき<もの言う馬>、ブリー!

  • シリーズで唯一のナルニアと現代世界が交差しない、ピーター王統治時代のお話。
    旅する少年少女の王道大冒険談で、退屈せず話が進む。
    善悪宗教民族差をはっきりと描いていて、大人の今読む方がおもしろく感じた。

  • シャスタはまだ見ぬナルニアを目指す。

    ピーターたち四きょうだいが王や女王として即位していた時代のひとつの物語。カロールメン国の海辺に住み、漁師アルシーシュこき使われていた少年シャスタは、もの言う馬のブリーと一緒に北へ逃亡する。途中で出会った貴族の少女アラヴィスも、もの言う馬フインと一緒に逃げてきたところだった。2人と二頭が目指すのはナルニア。果たして無事に辿り着けるのか——。

    貧しいが勇気を持った少年は、実は高貴な生まれである。ありがちなパターンではあるが、旅の仲間たちの個性もあり面白い。愚かなカロールメンの王子に対するエドマンド王の態度が、『ライオンと魔女と衣装だんす』を読んでいると感慨深い。

    この物語でもまたアスランは、キリスト的な登場をしている。様々な姿で苦難や寂しさに寄り添い、わたしたちを助けてくださる主である。

  • 運の話と、"私はあなたについての話をしているのだ"が印象深い。

    シャスタとアラヴィスを助けてくれた仙人が言う。わしは運というものを見たことがない。今回のことはわしの理解を超えている。しかし、理解すべきことであれば、いずれ知れるときがくるだろう、と。
    これには信じることのプラスの側面を見た気がする。いまや実力も運のうちと理解する私であるが、境遇を奢らずかつ目を背けないでいられる、強い姿勢があるのだと知らしめられる。

    "私はあなたについての話をしているのだ"は、なかなか厳しい言葉だ。
    自分の行いを反省したあと、自分の過ちによって災いを被った人を慮る。それ自体は間違ってはいないのだろう。しかし、それは誤った自己慰撫に転化しうる。償ったからもうよいであろう、それほどの害とはならなかったからよいであろう、と。しかし、問題はあくまで自分自身の中にあるということ。そのことから目を逸らすことを許してくれない。

  • 好きなお話。登場人物がそれぞれ個性豊かで面白い。

  • 物語世界が一貫しているので読みやすい。一度読み出すと止まらない面白さと、考えさせる何かがある。

  • 新訳3作目。自由を求めてナルニア国を目指す馬と少年少女の冒険譚。物語としては最初2作よりこれが面白いと思いましたが、肌の色が白く金髪の人種(北の国)が肌が浅黒くイメージとしては中東付近?(南の国)よりも高潔で素晴らしいような、そこはかとなく感じ取れる描き方が、どうも気になってしまって…。うむむ。

  • 少年より馬が先に来るタイトル通り、少年少女の成長はもちろん、馬の成長も面白かったりする。

    身分の差異、母国の差異とそれに伴う文化の際、種族の差異が際立って描かれている印象を受ける。それ自体はいいのだけど、勧善懲悪的なストーリー展開と、アスランの掌の上で物語が進んでいるような感覚があることから、どことなく抱くべき感想や教訓に導く意図を感じてしまう。これが正しい、こっちは間違い、的な。
    気のせいかな。

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著者プロフィール

「ナルニア国物語」シリーズの著者。ケンブリッジ大学で中世・ルネサンス文学を講じた教授でもあり、『愛とアレゴリー』(1936年)などの評論やキリスト教に関する著作も多い。悪魔論『悪魔の手紙』(1942年)は世界的ベストセラーとなった。代表作「ナルニア国物語」シリーズ最終巻『最後の戦い』(1956年)は、優れた児童文学に贈られるカーネギー賞を受賞した。

「2023年 『新訳 ナルニア国物語7 最後の戦い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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