カスピアン王子 ナルニア国物語4 (古典新訳文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334753566

感想・レビュー・書評

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  • 原題は"Prince Caspian: The Return to Narnia"、初出は1951年。出版順では2作目だが、ナルニア国の時系列では4巻となる。
    時系列では…と書いたけど、今回のナルニアは、前巻から1300年以上の時が経っている(作品中で年数ははっきりしなかったが、訳者あとがきによると、ルイスの遺した資料などから読み解かれたらしい。)。元の世界とナルニアでは、時間の進み方が全く違ったのだ。

    ナルニアで大人となり、王と女王として時を過ごしたピーター、スーザン、エドマンド、ルーシーだったが、元の世界に戻ったとき、時間は全く経っておらず、体は元に戻っていた。
    その冒険から1年後、学校に行くために列車を待って、駅にいた4人は、何か見えない力に引き寄せられ、別の世界に連れてこられる。4人は原生林の中を彷徨い、辺りを探索しているうちに偶然に廃墟を見つける。そこはかつての王都のケアパラベルだった。
    翌日、海に沈められそうになったドワーフを助けた4人は、ナルニア国が、テルマール人により支配され、もの言う獣、木や水の精、ドワーフ、ホーンらが虐待されて絶滅の危機に瀕していることを知る。そして、彼らと共に王と闘っているカスピアン王子を助けるため、彼らが布陣している石舞台を目指して歩き出す。

    カスピアン王子は、本来は正統な王位継承者なのだけど、叔父のミラーズの謀略により、もとより国では孤立無援となっている。
    彼は家庭教師(半分ドワーフの血を引いている賢者)から古き良きナルニアの話を聞き、心惹かれていたのだが、ミラーズに息子が生まれたことで、殺されそうになって逃げ出し、隠れ住んでいたナルニアの住人らに助けられる。
    ピーターたちを呼び寄せたのは、絶体絶命となったカスピアン王子が吹いた角笛だったのだ。

    このカスピカン王子は、今回はピーター達と出番が拮抗しているし、いいところはピーター達にもっていかれるのだが、この後も長く登場するらしい。
    アスランは、毎回ピンチの時に出てきて助けてくれるけれど、いじめられ追い出されてしまったナルニアの住民たちの前には姿を現さなかったのだな。神は気まぐれなの?王はアダムの子でなければならない」というところに、キリスト教的な傲慢さがあるような気がしてしまうのだが、これはうがった見方かしら。笑
    今回の決着の付け方には、あまりドキドキワクワク感がなかった。

  • ナルニア国物語の4巻目。これまた原著タイトルに忠実に、岩波書店版にはあった「つのぶえ」の表記がない。

    ピーター王らが築いた黄金時代から何百年も過ぎ、ナルニアの地は異国の民テルマール人に征服されていた。〈もの言うけものたち〉やドワーフは殺され、あるいは追い払われ、精霊たちの姿はない。
    カスピアンは、テルマール人の若き王子である。支配階級にありながら、古き良きナルニアに心を寄せていた彼は、半ドワーフの家庭教師に導かれ、ナルニアの仲間たちと共に叔父王に反旗をひるがえす。圧倒的な戦力差に絶体絶命となったカスピアンは、魔法の角笛を吹く。それは、ロンドンに戻り日常生活を送っていたピーターたち4きょうだいをナルニアへ呼び戻すものだった…。

    タイトルロールはカスピアン王子だが、これはやはりピーターたちの物語である。そして、成長し過ぎたピーターとスーザンにとっては、ナルニアでの最後の冒険となることがアスランによって告げられる。実際、今回、末っ子のルーシー以外はアスランの姿や声がわからない状況が続く。シビアだ。

    アスランは不思議な存在である。その姿は輝くライオン。海の彼方からやってきて、大帝の息子であるという。つまり、彼は至上の者ではない。ナルニアの地が、あの世界でどのよう位置を占めるのか曖昧だが、アスランはナルニアの他にもいくつもの地を管理しているとされる。今回、アスランはナルニアが荒廃するに任せていた。ナルニアの民からさえ、アスランの存在は消えかかっていたのである。そのくせ、ピーターたちをさも当然のように使い、ナルニアに復権するとカスピアンを王に指名するのだ。何がしたいのか、アスラン。
    しかし、多くの神話において、神のされることは理解不能なものである。理解することを拒絶するものである。信じるしかない。ナルニア国物語は、偉大なるアスランの神話でもある。

  • ずいぶん前に読んだはずなのに、内容をほとんど覚えていなかった。その前に読んでいる『ライオンと魔女』は如実に覚えているのに‥‥この違いは一体なんなんだろう?
    確かにライオンほどインパクトはなく、後付け感は免れない。しかし壮大なナルニアの歴史の一端として楽しめ、続きも気になる。

  • 再びナルニアへ。

    ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシーは再びナルニアに呼ばれる。自分たちが前にいたナルニアはすでに神話の世界となり、テルマール人に支配されていた。カスピアン王子を助けるためにきょうだいは仲間たちと共に戦う。

    よく知っているファンタジー。あのリーピチープが登場するのはここだったのか。悪をくじき、王子を助ける。最後にテルマール人がどこから来たのかが語られ、アスランによって元の世界に戻るよう計らわれる。わくわくするファンタジーで、映画にもしたくなるよなぁと。

    ピーターとスーザンは育ちすぎたからもうナルニアには戻れない、というところで、ピーターパンを思い出した。末っ子のルーシーに特別な立場があるのも、物語によくある感じ。

  • タイトル『カスピアン王子』だけど、カスピアン王子の影がうすかった…。期間限定でしかナルニアに出入りできないのは寂しい。

  • 発表では第2作、『ライオン…』の続編。子ども達(かつての兄弟姉妹4王)は一年後(夏季休暇直後、新学年初日)ナルニアに戻ったが/解説・井辻朱美も「映画のほうが面白い」ようなことを言っている。小説のクライマックスの「アスランが見えないの?私だけでも行かなくちゃ」はカルト宗教にハマった一員を家族が取り押さえかねているような感じ/この巻から(ナルニアを含む平面世界の)現代史に入る。ナルニア(を含む世界全体)の終わりは近い/「歴史教科書のはじめが神話であるのは故無きことではない」民族=nationの基は神話だから。

  • 『ライオンと魔女~』から1年後、夏休みが終わり駅のホームで列車を待っていた4人の子供達は不思議な力でナルニア国に呼び戻される。するとあちら側では長い時が過ぎており、森の精やもの言うけものは姿を消していた。一方冷酷な叔父ミラーズ王の手を逃れ森に逃込んだカスピアン王子は……。子供の頃もそうだったが、今読んでも食べ物の描写にワクワクする。ドワーフのトランプキンがこしらえる「クマ肉のりんご包み焼き」の美味しそうなこと。木の精のための“土”のごちそうメニューも楽しい。大人の読者向けに巻毎に解説が充実していて◎(1951)

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著者プロフィール

「ナルニア国物語」シリーズの著者。ケンブリッジ大学で中世・ルネサンス文学を講じた教授でもあり、『愛とアレゴリー』(1936年)などの評論やキリスト教に関する著作も多い。悪魔論『悪魔の手紙』(1942年)は世界的ベストセラーとなった。代表作「ナルニア国物語」シリーズ最終巻『最後の戦い』(1956年)は、優れた児童文学に贈られるカーネギー賞を受賞した。

「2023年 『新訳 ナルニア国物語7 最後の戦い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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