あなたと原爆 オーウェル評論集 (古典新訳文庫)

  • 光文社
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本棚登録 : 59
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334754082

感想・レビュー・書評

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  • なんていうか,オーウェルの好みとか感じ方とか,自分とよく似てるなって思うんです。不誠実が嫌いなところ,行動好きで即物的なところ,矛盾だらけのところ。だからオーウェルの文章を読んでるとすごく落ち着く。特に汚さや痛みの乾いた描写は最高だと思う。
    もしかすると逆に,昔読んだ『1984年』が好きで知らぬ間に影響されたのかもしれない。『イギリスにおける反ユダヤ主義』,読んだ後で大学生の頃に読んだことあるのを思い出した。いまの自分の差別に対する考え方はこのエッセイにそっくりだった。
    オーウェルは確かに時代や党派を超えた普遍性があると思う。けど,その普遍性は「21世紀の未来を予見」という側面も確かにあるけど,なんかそういうのとは違う気がする。もっとこう,人間そのものへの深い理解というか,まあ単純に僕の好みに合うというだけかもしれませんが,「誠実さ」があると思うんです。だから,訳者のあとがきは個人的には不要だったと思います。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/519607

  • オーウェル、鋭いっ!
    と言いたい場面が多々あった。
    『スポーツ精神』では、スポーツとは本来的に競争であって銃撃戦のない戦争と変わりないとバッサリ言い切られる。オリンピックに浮かれる日本に水を差されているみたいだがその通りかもしれない。韓国とこんな風になっている時にオリンピックをすることにいささか恐怖を覚えた。
    「サッカー場での清く健康的な対抗意識や、国民を統一するためにオリンピックが果たす多大な役割について戯言を言うよりも、現代のスポーツ崇拝がどのように、そしてなぜ、起こったのかを問うてみることの方が有益だろう。」
    なぜかというと、スポーツは
    「自分自身をより巨大な権力の単位と同一化して全てを競争的な名声を通して見るという狂気じみた現代的な慣習(=ナショナリズム)と、切っても切れない結びつきを持っている」から。

  • これが1945年前後(表題作はまさしく1945年)に書かれたものというから、その先見性に驚くしかない。
    冷戦構造しかり、国家とテロの関係やナショナリズム、差別の問題とまるで現代を論評しているようだ。
    アメリカでトランプ大統領が誕生した時、「1984年」がベストセラーになったという。歴史を自身の都合で書き換え、監視によって言論の自由も奪う世界なんて小説のなかだけで許してほしいけど。

  • 934.7||Or

  • 2019年8月読了。
    やはりこういう世相だからこそオーウェルを読んでおくべきだと思う。

    25ページ(科学とは何か?)
    「もっと物理学を、もっと化学を、もっと生物学をという方向にばかり狭く集中して、文学や歴史を蔑ろにしていくのであれば、大衆への科学的教育は殆ど役に立つことはなく、むしろ害になること大だ、ということだ。」
    →物理学、化学、生物学を法律学や経済学に変えても、行き着く結末は同じようなことのように思える。根っこがなくて手先だけ起用な輩はむしろ問題を起こす。

    111ページ(スペイン内戦回顧)
    「世界のどこかで残虐行為が行われなかった年などなく、左翼と右翼の双方が一致して残虐行為があったと認めているケースもまずない」
    →歴史の改竄はお手の物。古今東西を問わずに自分の都合に合わせて歴史を書き換えるのは歴史的に繰り返されてきている。

    131ページ(同)
    「長い目で見れば―長い目で見た場合に限った話だということは忘れないでいただきたい―労働者階級はファシズムに対する敵としてもっともあてになる存在であり続けるだろう。」
    →そういう意味ではウチの国では見事なまでに労働者階級は育っていない。おかげ様をもちまして自分がファシスト的な感覚を持っているという自覚もない層の思うがまま。

    151ぺージ(ナショナリズム覚え書き)
    「「ナショナリズム」ということばで私が言わんとしていることは、第一に、人間を昆虫のように分類することが可能で、何百万あるいは何千万という人間の集団全体に確信をもって「善良」とか「邪悪」だとラベル付けできると考えるような姿勢である。しかし第二に言いたいのは―実は、こちらの方がずっと大事なのだが―、自分をひとつの国家やなんらかの組織に一体化し、それを善悪の判断を超えた場所に措定して、その利益を増やしていくことのみが自分の務めであると認識するような姿勢のことである。」
    →「愛国」を声高に叫ぶ人々の何と居丈高なことか。付き合いきれない。

    156ページ(同)
    独ソ不可侵条約の締結を左右の専門家がどのように捉えていたかを紹介している。いかに自分の主張に都合のいい事実を切り取ってくるか、不利な情報は無視するか。やっていることは今も昔も大して変わりはない。

    170(同)
    「ナショナリストは自分たちの側が行った残虐行為を認めないばかりでなく、そういった残虐行為について聞く耳さえ持たないという驚くべき能力を持っている。ほぼ六年もの間イギリスのヒトラー崇拝者たちはダッハウやブーヘンヴァルトの強制収容所の存在をどうにかして知るまいと努めてきた。」
    →感想は上に同じ。

    193ページ(同)
    「現代の世界ではインテリと呼ばれるような人間は誰であろうが、政治を気にかけないという意味で、政治から距離を置いて関わらないことは許されない。誰でも政治―広い意味での政治―に関わらねばならないし、好みを持つべきだ。」
    →「政治についての発言ってなんかダサい」みたいな呑気なことを言っていられる時代も年齢もとうに過ぎているという気が最近頓にある。

    220ページ(おいしい一杯の紅茶)
    硬質なエッセイに続いて紅茶の淹れ方、しかも11もの特質的なルールがあるという。

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著者プロフィール

1903年~1950年。スペイン内戦に参戦した経験を描いた『カタロニア讃歌』、寓話小説『動物農場』を経て、1949年『一九八四年』刊行。後世の芸術・政治・思想にも多大な影響をおよぼした。

「2019年 『村上春樹の「螢」・オーウェルの「一九八四年」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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