オリバー・ツイスト (光文社古典新訳文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (863ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334754211

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  • オリバーは、全てが包括された"人生ガチャ"のハズレをひいただろう。サラサラと読めるこなれた翻訳だがそれ故に物語の理解度が高くなり、少々キツい。だが流石は文豪ディッケンズ(と新訳)、読ませ方が上手いのだ…

  • 途中、作者がオリバーをいじめるので、つらくて休み休み……つかの間の安らぎを手にしたときも、残りの長さを見ながら、あーこのまま幸せになるはずないと絶望したり(笑)。当時は連載だったから、先を見とおすなんてこともなく、読者は毎回胸をときめかせて読んだんだろうな。

    わたしこれまで、ディケンズは、主に翻訳にはばまれて何度となく挫折してきたんだけど、これは本当に読みやすかった。と同時に、ディケンズのちょっともってまわった、皮肉と風刺に満ちた言いまわしや、ほろっとくるような描写なんかも堪能することができた。

    ストーリーは、ある意味びっくりするくらいご都合主義なんだけど、この物語に関して言えば、予定調和万歳だよ(笑)そして、多くの人たちが指摘しているように、悪人たちの実在感のすごいこと。狂犬のようなサイクス(飼い犬可哀想だった(:_;))、美しい心を持ちながら掃きだめから逃れられないナンシー(DVから逃げられない女性の典型のようで、ディケンズすげーとなった)。彼らに対してディケンズは相応の報いを与えているけど、まなざしは決して冷ややかではない。むしろ、社会的地位にあぐらをかいて弱い者をいじめる教区吏のバンブル氏や救貧院のおかみを徹底的に軽蔑しているように思える。

    でもって、少し前なら、こういう人間のいやしさに対して、「むかしだからね」とか「ヴィクトリア時代のイギリスってこんなだったんだ」という人ごとのような感想を持ったかもしれないけれど、コロナウィルスが蔓延して、毎日、人間のいやしさと恐ろしさを伝えるニュースやら、困窮した人に対してまったく同情心のない施策のかずかずを目にしていると、ディケンズ時代と変わらないじゃん! という気持ちしか湧いてこないのであった。

  • 長かった…前半の名作劇場的な不運エピソードと打って変わり、後半はオリバーの出生の謎を探る探偵小説に。ほとんど主役は登場せず、何を読んでんだかよくわからなくなった。古典としての価値はやはりルパンのように犯罪者をヒロイックに描くのではなく、当時のロンドンの空気感をそのまま閉じ込めたような貧困、スリ、強盗、娼婦などを描いたことなのだろう。

  • 名前は知ってたけど、こんな話だったとは知らなかった。ミュージカルも見たことあったはずだけど、たまたま見たのが英語のままだったから、歌以外は記憶にない。
    800ページ以上もあったので、まず、読み終えたのがすごい達成感。

    このお話が展開したころ、日本はまだ江戸時代だった。訳にもよるだろうけど、その時代のものが古さを感じずに読めたのがすごいなって思う。まだ日本で小説が誕生する前。

    最初に気付いたのが、イギリス的というか皮肉と思われるような修飾語が使われていたこと。
    結構、登場人物が多いので、全員識別できるかな・・と心配していたけど、しっかり描き分けられてた。
    悪人がぞろぞろ登場する割には、凶悪な事件が起こらない(つまり殺人)のかなあ‥と思ってたら、残念ながらかわいそうな展開が待っていた。スコットランドヤードという名の機関がまだ誕生する前の話。この小説が後の探偵小説などにも影響を及ぼしているらしい。

  • オリバー・ツイストを主人公にして当時の英国の貧困問題を書いた話。800ページを超える大長編だが、エンタメよりも社会問題に比重あり。

  • 悪人の振る舞いから善を際立たせる描写手法がすごい
    登場人物ほぼほぼ性格悪すぎる

  • 200年近く昔の本、しかも文庫本で800ページを超える大作だが一気に読み終えた。救貧院で生まれたオリバー・ストーンの物語。今でいう孤児院だが、今とは比べ物にならないくらい劣悪な環境で、下層階級出身かつ親のいない子供は社会のお荷物で、「運河に捨てる方がマシ」などと言われていた時代。オリバーも、孤児院から売られ、親切な老人に助け出されるが、悪党一味に連れ去られる。その後、強盗の下働きで侵入した家で執事に撃たれ、怪我をするが、運よく家の令嬢に救われ、そこで事態が一変する。前半に仕込まれたいろいろな伏線が、最後の数章で一気に回収され、気持ちよく読み終えることができる。最下層の人々の生活を表現する上での差別的な単語も多いが、19世紀中盤〜後半は実際にそうだったのだろう。力を持たないオリバーが周囲の紳士淑女たちの献身的な支援で悪の淵から救い出されるのだが、女々しすぎてちょっといただけないと思うのは僕だけだろうか。

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著者プロフィール

1800年代を代表するイギリスの小説家。おもに下層階級を主人公とし、弱者の視点で社会を諷刺した作品を発表した。新聞記者を務めながら小説を発表し、英国の国民作家とも評されている。『オリバー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』『デイヴィッド・コパフィールド』『二都物語』『大いなる遺産』などは、現在でも度々映画化されており、児童書の発行部数でも、複数の作品が世界的なランキングで上位にランクされている。

「2020年 『クリスマス・キャロル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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