聊斎志異 (光文社古典新訳文庫)

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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334754396

感想・レビュー・書評

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  • 「聊斎志異」は機会があれば繰り返し読んできました。妖とか幽霊といった、この世のものではないのだけれど絶世の美女が不意にやってきては共寝します。あとは、儚くなってしまったり、富貴をもたらしてくれたりと不思議の世界です。黒田真美子さんがセレクトされた珠玉の作品が43編。かっぱえびせんかマックのフライドポテトのように、やめられず止まりません。しばし、異類の怪異世界に入り込んでいました。

  • 17世紀末、清の時代に蒲松齢が民間伝承などをもとに書いた短編怪異小説集で、仙女、妖怪、幽霊、化物が色々と出てくる。

    「聊斎志異」は怖い話ではない。幽界、冥界、仙界の人たちが出てくるが、面白いのはそっちにはそっちのルールや社会があって彼らはそれを守っており、人間界と交わったときに道士たちの仲介があって上手い落とし所や相手を出し抜く裏技でハッピーエンドに持ち込んだり、しくじればバッドエンドに終る。

    登場人物も基本的に幽霊たちを怖がらない。だからそこに恋が生まれ、人間と美女の幽霊(こういうのが多いのは男の妄想なのか?)が結ばれていくのである。

    まさに400年前の中国の不思議な話、伝承の集大成なのだ。

  • 面白かった。ただ、自分にその時代の知識がもっとあればもっと面白かったかもしれない。日本とは違って、人がぽんぽん生き返るものだから色々とこの本の論文あさってみたけど分からないことが多い。中国の冥界はどうなっているのか?盤古の死体化生神話とか、そのあたりから読まないと死と生のありかたがわからないかもしれない。日本だと死は穢れで火葬するし、転生はしても黄泉帰りはしないはず。道教とか神仙思想とかそういう中国の宗教知りたくなった。

  •  昔、国語の授業で学んだ書物だったので手に取ってみた。
     
     長い全体からの幾つかの抜粋とのことだったがどれも面白く、現代にも影響が見られるような良い作品ばかりであった。

     序文的な作者の書いた部分に、自分の身の上を憐れみ理解してくれるものは闇の中の妖怪怪異達ではないか?という部分があったがここにはとてもぐっときた。作者はこの作品を書いた時、色々と不遇だったらしくその影響が伺える。他の短編の中でも連れ合いや理解者を求める話が多く、信頼できる人が欲しかったのだろうか?このやうに古典にはたまに現代人でもいいな!新しいな!となる表現があるが、この時は今古の共感と発見で嬉しくなるのだ。
     
     一つの目玉に二つの瞳があるという話があったが最近見たアニメに似たようなのがあった。面白い偶然、あるいは元ネタなんだろうか?

     人間ではないが故に大笑いし続けるも情が深く優しい娘の話で、大切なものを笑いの中に隠していたに違いない、と作者が評しているのも好き。この作者は時折、とても優しく怪異に寄り添ったコメントを残しており人柄が伺える。

     香玉という作品は登場人物が赤牡丹白牡丹の精、黄という名の主人公、白牡丹を持ち去っていく藍 と色の名前縛りになっているのが面白いと思った。内容も作者らしい情を重視したものとなっている。

     鳳陽夫人は怪異の謎解きパートでも黒幕である謎の美人の正体がわからないのが不気味であった。

     本作では美女妖怪が多く登場するが、夜叉国や醜狐、画皮では逆に醜悪な女妖怪が現れる。しかしいずれの場合でも物語中ではむしろ彼女らに同情的にであり、夜叉国では夫との愛も変わらずにハッピーエンドを迎え、醜狐では作者直々に擁護が行われている。

     小謝は今でもよくあるハーレム物ではあるが、ダブルヒロインか可愛くて恥ずかしながら楽しんで読んでしまたった。


     この他にも厳選されているだけあり面白くて気になる話ばかりであり、原作の他の短編も見てみたくなってしまった。権力者への風刺や恋愛願望などの傾向はあるものの、全体的に怪異との友情(陸判や王六郎など、義賊との友情もあったがそれもそうだろうか?)や恋愛(多数だが多くの場合ハッピーエンドであり破局などはしない)の話が多く、その多くがハッピーエンドであり作者の異類への寄り添いの精神が感じられる。怪異の話ではあるが怖いと言うよりもホッコリとするお話も多かった。

     最後に特に印象に残った場面を記すと一つ目は李子鑑である。いきなり不正をしていた役人があの世からの罰だといって肉体を切り刻む様は不気味で恐ろしかった。自分の意思でやっているのがなお怖くて悍ましい。二つ目は瑞雲で描かれた理解者を求めての、友情に近いような恋愛。顔が汚れてもなお変わらぬ恋の様子と唯一の理解者である想い人への献身は、自序なども合間って作者の求めている理想像のようにも感じられた。

  •  岩波文庫では読んだことがあるから、再読になるのかな。感覚的にもっと荒唐無稽な話だったような気がしていたのだけど、普通に荒唐無稽な話だった。普通にというのも妙な言い方だけど。

     妖怪(とは言わないのかな?)や幽霊が出てくる話が味があってそれぞれ面白い。ただ怖かったり気味が悪かったり人にとって良くないものだったりするわけではなくて、情のあることもしてくれたり、利益をもたらしてくれたり、なかには恋愛して結婚してしまうものまであったりする。怪異がそこに息づいている様子は、日本の古典などとあまり変わらないのかなと思ったりする。

     なかでも気に入ったのは、「〈幽〉の巻」の「1 王六郎」。いや、もう、これ、ラブだよね! ラブでいいと思うのですよ!(←恋愛脳)

  • 清代の中国怪異小説集。
    怪異は怪異として、人間のデフォルメされ方もすごい。特に妻が夫を虐待する場面の凄まじいこと。古典ということでなんとなく勧善懲悪調の先入観をもって読み始めるとびっくりする。
    また、ひとつの話にいくつも不思議要素が盛り込まれていることもある。天界の姫に気に入られて結婚する話(p428)では、中盤でたまたま主人公の仲良くなった隣人が実は義賊であったことが分かる。姫と賊の登場には物語の中で特に因果はなく、現代の小説だったらストーリー上の謎は絞り込めと言われそうだ。

  • 異世界のものたちが当たり前のように現世のものと交わる幽玄譚。かなり昔にも読んだ記憶はあるが選ばれている話が異なるよう。今回の新訳はとても読みやすい。

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