聖域の雀―修道士カドフェルシリーズ〈7〉 (光文社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334761363

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  • 修道士カドフェルの第七弾。

    夜半の祈りの最中に若者が逃げ込み、
    それを追いかけ、激昂した町の人々なだれ込んできた。
    かなりドラマチックな幕開けだが、
    盗みや殺人、人質をとった立てこもりと事件は起こるが、
    結婚や家庭を主題としたかなりこじんまりとした、
    それゆえドロドロとした話だった。

    長年、女主人として家庭を支えてきたのに、
    弟が嫁を迎えたとたん地位を失う姉という女性の立場には
    同情を禁じ得ない。

    カドフェルが芸人の嘘を暴くために、
    まさか女性を夜に一人で帰したのか?と怒ったふりをして、
    罠にかけたのには笑った。
    それと、
    助手のオズウィンが成長して、
    物を壊さなくなったのには感心。

  • 修道士カドフェル・シリーズ第7作です。
    旅芸人の若者が、結婚披露宴の後で起きた盗難事件の犯人と疑われて、教会へと逃げ込んできました。騒ぎの元のオーリファーバー家と関わりのあったカドフェルは、真実を探るために調査を開始します。
    家族のドロドロが物語のメインだったせいか、内容的に今ひとつなお話でした。

  • 理不尽な境遇にも負けずに自分の足で立とうとした女性が、最後に不運に捕まった悲劇

  • 個人的に、シリーズで最も犯人が可哀想すぎて辛いです。

  • 修道院の静かな時間をぶち破る騒動から始まった今回は、若さからくる冒涜を過ぎ、最後は不覚にも涙が出てしまった。したたかな女性陣に比べて、一部男性陣の浅ましいこと。その中で、愛しい者を守ろうとした男女が迎えたそれぞれの結末は、遠い未来に幸福があることを願わずにいられない。共に歩んでいける者も、そうでない者も……。ああ、でもやっぱり切ないなあ。

  • 洋の東西を問わず蔑まれていた旅芸人。そんな人にもカドフェルはひとしく優しいです。それにしても、彼のハーブに限らない植物に対する知識、観察眼はすごい! 

  • このシリーズに登場する女性は、皆とても気が強い。中世の女性って、意思がなくただ守られているだけのお姫さまっていうイメージが強かったのだけれど、それは映画とか漫画でヒーローが活躍するために、都合よくつくられたキャラクターだったに過ぎないのかな。ま、この作品も、20世紀のひとが書いた所詮フィクションだから、どこまで事実に近いかはわかんないけれど。3人の女性が“主婦の仕事”というものに、強い誇りを持っていたことが印象的だった。電気もガスも水道もない時代には、家事は男性の労働に匹敵する、当に重労働だったわけで、恐らく男性と女性で“守るべきもの”の役割分担がパッキリ分かれていたように思う。様々な文明の利器によって、とってもラクチンになっている現代の家事。軽く見られがちになっているような気がするなあ。それを言ったら、男性の労働だって命がけ度低くなってるんだけどね。(2009-08-12L)

  • 修道生活の秩序だった静謐さと、民衆の賑やかさ、騒がしさが渾然一体となった名作。なんたって、話の始まりがミサのシーン。そこへ、一人の乱入者と、それを追ってきた暴徒たちが修道院内に押しかけるのだから!

  • 金細工人の跡取り息子の結婚披露宴の夜、主人を殴って金銀を盗んだ疑いをかけられた若い旅芸人が教会に逃げ込んできた。旅芸人が教会の庇護を受けられるのは40日。彼の無実を信じるカドフェルは、その間に事件の真相を明らかにしようと、真犯人を追い求める。
    カドフェルの前に、金細工人一家の強欲な老婆と主人、浮気な跡取り息子と平凡に見えるがしっかり者の若妻、若妻と未婚の姉の女主人争い、など、さまざまな人間模様が浮き彫りにされてくる。やがて、金細工人の店子の死体が川で発見され・・・・・・

    教会と言う聖域に逃げ込んできた若い旅芸人は、最初か弱い雀のようにおびえていますが、カドフェルや音楽をつかさどる修道士に暖かく守られて、やがてその羽を伸ばします。そして、金細工人の下働きの少女と小さな恋を語り合うのですが、そのいじらしさや危なっかしさが、いつもながら優しく描かれています。
    一方、金細工人の一家の女性たちは、それぞれ強く逞しく自分自身を主張して、それに比べると男性陣の影の薄いこと(笑)。それにしても、この時代の女は割りがあわない。なんだか悔しいなあ。

    物語の最後に交わされるカドフェルとヒューの会話が切ないお話でした。

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