憎しみの巡礼 (光文社文庫 ヒ 5-10 修道士カドフェルシリーズ 10)
- 光文社 (2004年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334761431
感想・レビュー・書評
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カドフェル・シリーズ10作目です。シュルーズベリでは、聖ウィニフレッドの祭りが行われようとしていました。それを目指して、各地から多くの巡礼者が集まってきます。
今作ではシリーズ第1作のネタバレや、これまでに登場した人物の名前も出たりするので、うろ覚えだけれど誰だっけとなることも多かったです。(^^;
中盤過ぎまで物語は比較的淡々と進みますが、終盤の盛り上がりは読み応えがありました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
桂枝雀が落語で、日本人は真面目民族だから、物見遊山の旅行でも例えば“お伊勢参り”、つまり神様にお祈りしに行くのだという名目をつけるのだ、ということを言っていたが、イギリス人も真面目民族なのかしら。物語の中にも、宗教的な気持は一応あるけれど、どっちかというと観光旅行気分な人々が描写されている。“巡礼”という言葉はキリスト教とかイスラム教徒とかがすることで、日本には馴染みがないと思っていたけれど、お遍路と思えばいいのだろうか。今回は、聖人の奇跡をひたすら願ったり殺人犯を隠ぺいしたり、現代日本人にはイマイチ理解しにくい感情が描かれていてわかりにくかった。(2009-09-29L)
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修道士カドフェル・シリーズ10冊目。
1冊目の「聖女の遺骨求む」と話が関連しています。
個人的には、本書のメインな内容はさておき、カドフェルとオリヴィエが再会できて良かったです。
この2人のシーンは読んでいて心が温かくなります。 -
修道院は聖ウィニフレッドの移葬祭に参加する巡礼で溢れていた。巡礼者の中でカドフェルの興味を引いたのは裸足に十字架を背負って聖地への改悛の旅を続ける青年とその付き添いの青年、そして足の不自由な少年と少年の美しい姉であった。
――カドフェルの謎が一つこの巻では明かされます。 -
二人の若者の巡礼者、姉弟の巡礼者、さまざまな人間模様が絡まり合っているのですが、最後にほどけていくところは流石です。愛と憎しみとの不可解な関係に心惹かれます。
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第1作とつながりの強い作品。第1作でウェールズから連れ帰った「彼女」の棺の中身の真実を知る者として、普通に悩み、彼女に奇跡と救いを求めるカドフェル。修道士にもかかわらず、ある時は検死官、ある時は医者・薬剤師、ある時は探偵と、八面六臂の大活躍をするカドフェルだが、修道士ではあるけれど聖人君子ではない、ごくごく普通の中世人であることがよく分かる1冊。
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スティーブン王とモード女帝の内乱により不穏な空気の漂うイングランドでは、高位聖職者がウインチェスターに会議のため集められ、シュルーズベリのラドルファス院長もそれに参加して留守だった。
一方、シュルズベリでは聖ウィニフレッドの祭りの準備でたけなわとなり、修道院は奇跡を求めて訪れる旅人でごった返していた。その混雑の中カドフェルの目に付いたのは、足の悪い少年を連れた伯母と姉ミランゲル、そして、彼らと道づれになったと言う二人の巡礼の青年たちだった。
青年の一人は首から重い十字架をかけ裸足で歩くことを誓ったといい、もう一人のマシューは決して彼から離れないことを誓ったと言う。街にはなにやら怪しげな男たちも集まり、なにやら不穏な気配が漂う。
足の悪い少年の上に奇跡は訪れるのか、そして二人の青年のまことの思いとは?沢山の出来事が祭りを中心に集まって・・・・
今回もカドフェルは、祭りの準備や足の悪い少年の介抱、盗難事件の推理にスリの捜索、そしてマシューとミランゲルの恋の後押し、と大忙し。そしてこれまでの作品の登場人物も顔を出し、チラッとですが重要な役を演じて、楽しませてくれます。お互いを思いやりながら誓いに縛られる若い恋人たちの恋の行方も気になりますが、足の悪い少年に心を尽くす伯母さんが私は好きでしたね。
この作品は、以前にTVで見たことがあるのを思い出したのですが、確かに映像向き。さまざまな事件が例によって最後は心温まる結末を迎え、次への期待を抱かせました。