- Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334761585
感想・レビュー・書評
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修道士カドフェルの第十七弾。
修道院同士で交換された土地。
冬小麦を育てようと六頭の牛のひいた鋤が土地を掘り起こした時、
豊かな黒髪の死体が発見される。
(現代のドラマでブルドーザーが掘り起こす工事現場に比べ、
なんて詩的なことか)
女は誰なのか、いつ、どうやって死んだのか、
そしてなぜ。
女性が殺されたかもしれないことよりも、
告解もせず亡くなったり、
浄められていない場所に埋められた方が問題なようで、
興味深かった。
二転三転する女の正体、
挙動不審の土地の寄進者の息子、
そして、二人の女の予想もつかぬ真実。
こんな衝撃的で、悲しく、愛ゆえの結末とは。
以前、カドフェルの下で働いていたオズウィンが、
その大きな手と頑丈な腕を生かして、
施療院で看護人としていきいきと活躍していているようで、
とても良かった。 -
ラストで明かされる、プライドと命をかけた果し合いが凄い。
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(2010-03-20L)
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修道士カドフェル・シリーズ17冊目。
(画像の題名の部分に何故か“?”がありますが、これは不要です) -
感想は<a href="http://naotya.exblog.jp/d2006-05-19" target="_NEW">ブログ</a>に。(06.5.19読了)
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修道士カドフェル・シリーズ 第17作
収穫も終わった1143年8月、シュルーズベリ修道院とホーモンド修道院の間で土地の交換が行われた。ホーモンドのものだったその土地は、一年半程前まで「陶工の畑」として知られていた。今はシュルーズベリ修道院の修道士となったブラザー・ルアルドが、神のお召しを感じるまで十五年の結婚生活を送った場所だったのだ。土地の所有者だったユード・ブラウントは、その土地をモーモンド修道院に寄進した後スティーブン王の軍に参加して戦死していた。そこに冬物の作物を植えつけるため土を耕そうとしていたカドフェルたちは、その一角で死体を発見する。長い黒髪の死体は、身元を証明するものもなく朽ちかけた布に包まれていたが、手には十字架を握っていた。この死体は、見捨てられたルアルドの妻か?何故死んで、何故こんなところに埋葬されているのか?もしや殺人か?それとも?真相究明を命じられたカドフェルの前に、次々と謎が浮かんで・・・
黒髪の死体の身元を探そうとするカドフェルとヒュー。やっと分かったと思った身元も、二転三転して、謎は深まるばかりです。なにしろ、身元が分からないことには、死の原因もその原因を作った人も判らないんですよね。鍵を握るのではと思われるのは、ユード・ブラウントの息子のサリエンですが、彼の握る鍵とは一体何?
いつもに比べると地味な展開で、若者の恋もそれほどには描かれていません。その代わり物語の中に浮かび上がるのは、「激しく、勇気があり、決然とした」女が強く人を愛した姿です。最後に明らかになる真実は、なんとも苦しくしかし印象的なものでした。
シリーズも後わずかになってきて、毎作、若い恋人たちだけでなく、私好みの女性が登場しますが、この作品もそう。愛しているから愛される、というものではない悲しさ・・・・愛することに苦しんでそのためにとった行動は罪なのか・・・・読み終えたあと、しみじみとしたものが心に残る作品でした。