シャーロック・ホームズの回想 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (497ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334761677

感想・レビュー・書評

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  • 4冊目(私は発表順で読んでいる)のホームズも短編集。解説によると最初の長編2作(緋色の研究、四つの署名)はそれほどパッとしなかったが、3冊目の~冒険(短編連載)で人気が出たため、この4冊目収録作の連載となった模様。しかしコナン・ドイルは他の作品も書きたいのにホームズばっかり飽きたんじゃボケーというジャンプの人気漫画連載終わらせてもらえない状態にへきえきしたのか、最後の作品でホームズを殺すという暴挙に出ます(苦笑)

    それが有名な「最後の事件」。ロンドンにはびこる悪の元凶モリアーティ教授が初登場。そして初登場にして最大のライバルとしてホームズと滝壺心中。映画やなんかだとモリアーティ教授はホームズの宿敵として何作にもわたり登場し、最後の最後で一騎打ち…となるイメージだったけれど、書かれた順=物語の中の時系列順ではないため、他のモリアーティ登場作品は本作より後に書かれたものだったんですね。

    そして本作で死んだと思われたホームズ、実は生きていて戻ってくるのは周知の事実ですし、作品自体はワトスン君がホームズが手掛けた事件をランダムに発表しているという形式なので、結局この「最後の事件」以降もホームズ作品は続いていったわけですが…。

    その他、注目すべき作品は、ホームズがカレッジ時代に手掛けた、探偵となるきっかけになる事件「グロリア・スコット号」や、ホームズ兄マイクロフトが初登場する「ギリシャ語通訳」など。「ボール箱」は、切り取られた耳が二つ(それぞれ別人のもの)ある婦人に送り付けられてくるという猟奇的な事件で、真相も愛憎もの、意外とこの手の作品はレアな気がする。

    「名馬シルヴァー・ブレイズ」は調教師が殺され競走馬が誘拐(?)される事件、「マスグレイヴ家の儀式書」はちょっとした暗号もの、「黄色い顔」は犬も食わない夫婦げんかの顛末である意味ほのぼのだけれど私がこの旦那なら奥さんを許せないかもと思ったり。

    事件の動機は概ね復讐や金目当ての裏切りなどですが、それでもバラエティに富んでいる気がするのは、解決の仕方がさまざまで、すっきりなぞ解きされるものもあれば、結局被害者が助からないものもあったりして、ありがちなオチにならないところがいいですね。あとはヴィクトリア朝ロンドンの紳士の持ち物や乗り物、ファッションなどの細部が楽しい。

    ※収録
    名馬シルヴァー・ブレイズ/ボール箱/黄色い顔/株式仲買店員/グロリア・スコット号/マスグレイヴ家の儀式書/ライゲイトの大地主/背中の曲がった男/入院患者/ギリシャ語通訳/海軍条約文書/最後の事件

  • 12の短編が楽しめます。
    シリーズ4作目です。
    1作目から読んできましたが、シリーズを読む前に抱いていたホームズ像が、ずいぶん変わりました。
    病的なほど事件にのめり込んだり、探偵の知識を努力の結果(本人は努力とは思っていませんが)身につけたりと、意外な一面を見せてくれます。
    今後のシリーズが楽しみです。

  • オリジナルの刊行順に読んでいるシャーロック・ホームズも4冊目。今作も面白かった。
    「シャーロック・ホームズの回想」というタイトル通り、ホームズが昔の事件を回想して、ワトスンに語る話がある。そして「ギリシャ語通訳」で、ホームズの兄マイクロフトが初登場。BBCドラマ「シャーロック」ではマーク・ゲイティス演じるマイクロフトが好きだったな~。あとはやっぱり、「最後の事件」が印象的だった。

  • 「名馬シルヴァー・ブレイズ」「ボール箱」「黄色い顔」「株式仲買定員」「グロリア・スコット号」「マスグレイヴ家の儀式書」「ライゲイトの大地主」「背中の曲がった男」「入院患者」「ギリシャ語通訳」「海軍条約文書」「最後の事件」冒険よりも内容覚えていないのはなぜだ…さらっと読んでしまったからか…マイクロフト初登場したけれど、割とキャラが濃いな(笑)。モリアーティ教授の存在感もすごい。

  • 大レースの本命馬が失踪、その調教師の死体も発見されて英国中が大騒ぎとなる「名馬シルヴァー・ブレイズ」。そのほか、ホームズが探偵になろうと決心した若き日の事件「グロリア・スコット号」、兄マイクロフトが初めて登場する「ギリシャ語通訳」、宿敵モリアーティ教授と対決する「最後の事件」まで、雑誌掲載で大人気を得た12編を収録した第2短編集。

  • 新訳版の「シャーロック・ホームズの回想」を読み終えました。「冒険」ほど読み返していないので、詳細を忘れていた作品もありましたが、やはり原作のホームズは面白いです。
    ドラマ化されたホームズも悪くないですが、原作には読者の想像を刺激して、何度読み返しても楽しめる魅力がありますね。

  • 「大レースの本命馬が失踪、その調教師の死体も発見されて英国中が大騒ぎとなる「名馬シルヴァー・ブレイズ」。そのほか、ホームズが探偵になろうと決心した若き日の事件「グロリア・スコット号」、兄マイクロフトが初めて登場する「ギリシャ語通訳」、宿敵モリアーティ教授と対決する「最後の事件」まで、雑誌掲載で大人気を得た12編を収録した第2短編集。」

    名馬シルヴァー・ブレイズ
    ボール箱
    黄色い顔
    株式仲買店員
    グロリア・スコット号
    マスグレイヴ家の儀式書
    ライゲイトの大地主
    背中の曲がった男
    入院患者
    ギリシャ語通訳
    海軍条約文書
    最後の事件
    あとがき  私のホームズ 旭堂南湖 著

  • 黄色い顔がいい話だったので好き

    短くて不思議で解決も鮮やかで読んでて面白い短編集だった
    さすがに古いのであっと驚くというほどではないけど、期待はずれでもない塩梅で人気も理解できるし安心して読める

  • ホームズファンにはお馴染みの
    ホームズの兄マイクロフト
    宿敵モリアーティが登場する短編集
    底本や出版社によって収録作品が違う

  • ヘビイな文芸もの読書が続いたので、息抜きにミステリーを読むことに。久々のホームズである。

    事件の真相…に関しては、斬新なものはあまり無いように思った。一方で、犯人たちのそれまでの半生、背景の描き方に人の哀れを思わせるものが幾つかあった。そうした人生の悲哀、物語の点が印象に残った。
    具体例は、ネタバレ度が強いので、あとの段落で後述する。↓

    ところで、ふと思う。
    究極的にはすべての探偵小説は「叙述トリック」なのではあるまいか、と。
    この作品集でホームズの短編を次々に読んでゆく。はじめは、事件の断片的な情報、限られた断面のみが報告される。やがて、ホームズの推理により、事件の別の断面が次第に姿を現し、その深層が詳らかになってゆく。
    終幕に至り、冒頭の事件の叙述は、あたかも海上の氷山の一角であった如く、限られた一断面のみが叙述されていたことがわかる。
    かようにして、読者は、筆者の語り口に翻弄され、掌の上で転がされながら、そうやって翻弄されることを楽しむのである。ホームズの短編を読んでいて、かように、真実を明らかにする語り口の定型の妙を実感。そして、極論かもしれないが、この作品集所収の短編の多くが「叙述トリック」のような気がしたのであった。


    <以下、大いにネタばれ あり>

    ********
    ・「黄色い顔」:英国の片田舎で暮らす白人女性…。彼女には秘めたる過去があった。かつて米国南部で黒人と初婚。肌の黒い娘もいる。そんな物語が明らかになる。

    ・「グロリア・スコット号」:1855年クリミア戦争の頃。オーストラリア行きの囚人護送船が舞台。囚人らは反乱を起こして船を奪取、看守や軍人を虐殺。しかし護送ん船は爆発事故で沈没。誰も知らぬ遭難事故となった。英国に帰った男はこの罪を隠して生き、財をなして地主となり老境にある。ところがある日、惨劇を生きのびた船員が現れる。地主の老人は過去の亡霊(罪の意識)におびえながら生きていたのだった。

    ・「背中の曲がった男」:インド植民地で功を成して英国に帰還した大佐。その軍人の前に「背中の曲がった男」が現れる、心身がボロボロになった苦労人らしいその男の出現に大佐は驚愕し怯える。男はかって自分がインドで「セポイの乱」のとき、恋敵だった彼を敵に売ったのだった。大佐に裏切られて敵地で拷問を受けるなど辛酸を嘗め尽くしズタボロの人生を生き延びてきた彼は「背中も曲がった男」になっていたのだ。
    ***
    この作品集、かように、秘めたる過去や裏切りの過去を生きて来た者の、怯えや後悔を織り込んだストーリーが目立ち、ちょっと異色な印象を与える。
    ***** 

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著者プロフィール

アーサー・コナン・ドイル(1859—1930)
イギリスの作家、医師、政治活動家。
推理小説、歴史小説、SF小説など多数の著作がある。
「シャーロック・ホームズ」シリーズの著者として世界的人気を博し、今なお熱狂的ファンが後を絶たない。

「2023年 『コナン・ドイル① ボヘミアの醜聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アーサー・コナン・ドイルの作品

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