シャーロック・ホームズ最後の挨拶 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫 ト 2-6 新訳シャーロック・ホームズ全集)

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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334761783

感想・レビュー・書評

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  • 8冊目のホームズも短編集。全体のプロローグとしてワトスンによる序文があり、ホームズはすでに引退してるのでこれは過去の事件の回想録であるというようなことが記されている。

    そして収録最後の短編「最後の挨拶」ではホームズはすでにアラカン、戦争中の英国の危機を救うために引退生活から一度だけ復帰した事件を扱っている。この短編連載中に第一次世界大戦があった影響か、愛国主義というかなんというか、プロパガンダ的側面があり、作品としてはイマイチ。

    それにしても毎度のことながら、「最後の挨拶」と「最後」を強調したがるあたり、やっぱりコナン・ドイルは、人気連載を終わらせることを許してもらえないジャンプ作家のようだ(苦笑)そしてここまでこれが最後と強調しても、ホームズシリーズはあと1冊続く…。

    事件とあまり関係のないブードゥー教の儀式がおどろおどろしい「ウィステリア荘」や、犯人は人間ではなく悪魔では、と犯人に誘導される「悪魔の足」あたりはコナン・ドイルのオカルト趣味が部分的に表れてた気がする。一方でホームズを細菌に感染させて殺害しようとする犯人が登場する「瀕死の探偵」なんかは科学的ともいえるし、ドイルの中ではオカルトと科学が同居してたのだなという印象。

    ※収録
    ウィステリア荘/ブルース・パーティントン型設計書/悪魔の足/赤い輪団/レディ・フランシス・カーファクスの失踪/瀕死の探偵/最後の挨拶

  • ホームズの「正典」を深町訳、駒月訳、日暮訳で1、2冊ずつ読んできた。どれも読みやすくておすすめ。駒月訳は、ホームズとワトソンの関係に思い入れを込めているところが諸処にうかがわれ、この日暮訳はさすがシャーロキアンという、こまやかな註がうれしい。
    ホームズって意外に悪の組織とかスパイとか出てくる話が多いのね。ドイルってもう少しあとの時代の人だったらスパイ物たくさん書いていたんじゃないかなと思ってしまった。表題作の「最後の挨拶」には第一次大戦の影が投げかけられている(これも日暮氏の解説より)。いろいろ感慨深い。

  • 短編集四作目。この『最後の挨拶』はこれまでの一月に一作のペースではなく、丸九年かかって書かれたらしい。どうりで内容が濃い(一つの短編が長い)と思ったわけだ。

    個人的にこの短編集で一番好きな話が「瀕死の探偵」だったのでちょっとコメント。
    序盤はあのホームズが本当に死んでしまいそうでどうなるのかとハラハラしたのだが、後半になるとコントのように笑える展開になっている。
    ホームズシリーズのおもしろさがこのお話にギュッと濃縮している感じ。

    次は最後の長編『恐怖の谷』を読む。

  • この短編では、何度もホームズの最後を連想させる。
    静養のためにコーンウェルへ行ったり、
    ハドソンさんやワトソンを巻き込んだ「瀕死の探偵」なんて、読者も冷や冷やさせられた。
    「最後の挨拶」では、ホームズはもう過去の人物、伝説的な人物になっているように感じられる。

    それでも、この傲慢で自信家の探偵は、何度でも我々の前に現れて、
    その見事な変装や推理で驚かせてくれる。
    コナン・ドイルが何度もホームズを終わらせようとしたが、
    そのたびに読者の強い要望で再開されたいう、この探偵小説は、
    読者の強い気持ち、ホームズが存在してほしいという願いが作り上げたものだと改めて理解した。

    こんなにいきいきとした小説の主人公、他にいるだろうか。
    今でもベーカー街221Bにいて、退屈な街にイライラとしているように思えてならない。

  • 1ヶ月に1短編という驚異的なスピードで執筆していた著者、アーサー・コナン・ドイルが、9年かけて産み出したという短編集、『最後の挨拶』。

    タイトルの通り、ホームズが遭遇した最後の事件がここで語られている。

    探偵業を隠退して、もうかなりの年月が流れた頃。
    60代になって、ホームズとワトスンは再び出会うこととなる。
    第1次世界大戦という大きな歴史の裏側で、彼らは何をしていたのか…。

    他にも、感染してから4日で死に至るという病気に、
    ホームズが罹ってしまう『瀕死の探偵』。
    今の医学では、まだ治療法がないというこの病気を研究している第一人者は、医療関係者ではなく、とある農家の男だという。
    ワトスンがホームズを訪ねた時、既に3日が過ぎていた…。

    など、相変わらず波瀾万丈な物語が目白押しだ。

    今回は、知的で冷静で、淡白な皮肉屋のはずのホームズが、
    ふっと見せる温かな優しい人情味が随所に見られ、印象的だった。

    友、ワトスンを捜査の実験に巻きこみ、あと一歩で死なせてしまうところだった時、めずらしく弱気になり、心から謝罪するホームズに、
    「知ってるはずじゃないか、ホームズ。きみを助けることが、ぼくにとっていちばんの喜びであり特権でもあるんだよ」
    と応えたワトスンの強い想いを思うと、思わず胸が熱くなってしまった。

    『最後の挨拶』のエピローグで、夜の海を見つめ
    「東の風が吹いてきたね、ワトスン」(冷たい風、すなわち戦争の予感)
    と、祖国を想い、嘆く、ホームズと、
    「違うだろう、ホームズ。とても暖かいよ」
    と、彼の皮肉な比喩にも気付きもせずに、のんきで平和で、素直なワトスン。

    読めば読むほど、この2人を好きにならずにはいられない

  • 「ウィステリア荘」はじめ、全7編を収める。

    ・南米某国の残虐な独裁者だった男に復讐すべく機を伺う者たちが描かれる「ウィステリア荘」。そして「ブルース・パーティントン型設計書」では、新型潜水艦の設計技術書類を巡り、ドイツの諜報員が暗躍。さらに「赤い輪団」は、NYのイタリアマフィアがからむ短編。「レディ・フランシス・カーファクスの失踪」は、行方をくらました女性を追って舞台はスイスなど欧州へ。

    かような具合で、国際的な展開がからむ設定がめだつ作品集なのであった。

    「悪魔の足」は、ある薬草の強い毒性が真相に絡んでいた。だが、どういう薬草なのかは詳らかではなかった。緻密なホームズ作品にしては、そのへん、ちょっとご都合主義な印象をうけた。

  • ホームズの第4短編集で、久しぶりに再読。
    「瀕死の探偵」と「ブルース・パーティントン型設計書」はインパクトがあって有名な話だが、他はわりと地味で内容をすっかり忘れていた。「悪魔の足」では危険とわかっている実験にワトソンもつき合わせて二人で死にかけるというお茶目なホームズ。
    巻末には詳細な注釈があって読みごたえあり。

  • どこかで「ホームズは推理小説ではない」みたいなブログだか何かを見たような気がするけど確かに推理小説というより人間観察記の感じが生還あたりから強まってきたような気がする
    あと現代版でもダイイングメッセージを正解させてもらえない某警部と違って、ウィステリア荘のベインズ警部とか恐怖の谷のマクドナルド警部みたいな捜査力があってホームズが一目置くような警察が多く出るようになってきたような気もする

  • わかりにくいかもしれないが、シャーロックホームズ最後の事件ということで、最晩年の事件を中心に書かれたシャーロックホームズモノである。

  • シリーズ物ということもありストーリー展開が読めてきてしまうのは致し方なし。
    最後の話は途中まで「これはシャーロックホームズか?」と思わせるような政治ものの異色作。

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著者プロフィール

アーサー・コナン・ドイル(1859—1930)
イギリスの作家、医師、政治活動家。
推理小説、歴史小説、SF小説など多数の著作がある。
「シャーロック・ホームズ」シリーズの著者として世界的人気を博し、今なお熱狂的ファンが後を絶たない。

「2023年 『コナン・ドイル① ボヘミアの醜聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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