身の上話 (光文社文庫 さ 11-11)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334763206

作品紹介・あらすじ

あなたに知っておいてほしいのは、人間にとって秘密を守るのはむずかしいということです。たとえひとりでも、あなたがだれかに当せんしたことを話したのなら、そこから少しずつうわさが広まっていくのは避けられないと考えたほうがよいでしょう。不倫相手と逃避行の後、宝くじが高額当選、巻き込まれ、流され続ける女が出合う災厄と恐怖とは。

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭と最後の雰囲気がまるで違う化ける小説だ。
    穏やかに、しかし過激的に、衝撃的にぐわんと変化する。
    全てがまとまった時に、とどめを刺されるように鳥肌が立ちました。

  •  「誰からも逃げ隠れする必要がない」状況に置かれることでやっと、ミチルも「私」もこれまでの様々なことに正面から向き合っていける。

  • この作者の「ジャンプ」や「Y」などの小説は、日常的なありふれた光景や何の変哲もない淡々とした生活を営む人たちを取り上げるのですが、ふとしたことからその光景が全く違った様相を見せる・・そのダイナミックともいえるような展開にいつも息を呑みます。今回のこの小説は、ミチルという自分の妻の身の上を語る夫の視点で話は進んでいきます。もしもあの時・・こうしていたなら、とかあっちの道に進んでいたならとあとで思い返すような人生の岐路は誰にでもあるものです。ミチルもふとしたことから、尋常ならざる人生を歩むことになります。いつのまにか生まれ育った地元を離れ、転々とすることになった彼女の交友関係でも目立たない人物が
    実は重要な鍵を握っていることに気づくのですが・・・
    忍び寄る恐怖とでもいうような怖さがこの小説にはあります。最後の展開でもまた驚くような真相が明かされることになります。
    それにしても、凡人は高額の宝くじなどには当たりたくないものだとつくづく思います。

  • 半ばまではぐいぐい引き込まれてしまうけど、ネタばれ以降の展開は期待外れだった。主人公の夫が淡々と物静かに語る形式で進行するのが変わった感じでとても面白いのだけど、それだけに半ば以降の尻切れトンボ感が残念です。初めての作家だったけど、ん これは大当り!と感じながら読んでいたら途中でハシゴを外された ような印象(笑)

  • ドラマ化もされた佐藤正午によるサスペンス。
    物語は主人公ミチルの夫が語る身の上話の体裁をとって進む。平凡な書店員だったはずのミチルがふとしたことで不倫相手の男についていくように東京に出てくる。その時、頼まれていた宝くじが当選したことで、ミチルの人生は少しずつ変わり始める。
    ミチルの性格ははっきり言ってそばにいられるとウザい。行動も突拍子もなく、行き当たりばったりな割りに周りに与える影響が大きく、たくさんの人の人生を狂わせてしまう。正直、関わり合いになりたくないと思う。
    そんなミチルを妻に迎えた語り手の心情がいかばかりのものだったろうと、それも何となく気になってはいたのだが、そうきたか。しかも、冒頭からの落ち着いた雰囲気の語り手の調子は最後まで乱れることなく、ただ淡々と語られることで、結末に向けた思いの強さを垣間見ることができる。

  • 最初、ダラダラと身の上話が綴られててこれちょっとしんどいかも!?とおもったけど、どんどん面白くなってのめり込んだ
    もっと書きたいことあったけど感想温めすぎて忘れた(^.^)

  • 後半から先、ぼんやりしつつもいざというときには頭の回転が速く、ときには思慮深ささえ感じるミチルと、冒頭で不倫相手を追って衝動的に東京に出てきてしまうミチルが上手くわたしの中で噛み合わなかった。たぶん、その男となぜ付き合う気になったのかとか彼にどういう魅力があったのかという背景が語られていないからだと思う。でもまあ面白かったことには違いなく、ほぼ一気読み。ミチルと香月さんの数年後の再会と幸せを祈る気持ち。
    って書いたけど、ある出来事を経験して見える景色や考えること(というか、考える習慣)がガラリと変化するということは、やはりあり得るな、と思い直した。自分自身を振り返ってみて。

  • 宝くじの高額当選したミチルのお話
    宝くじの当たり方にも工夫があり、また、話の進み方語り方が独特で面白かったです

    登場人物の言動、行動に疑問がないこともないけど、それは愛する人を守るために語っているというこの小説そもそもの構造のせいなのかなと勝手な解釈をしながら読みました。

  • なんてつまらない話。ずーっと一人称での単調な語り。色彩もなく、楽しさもドキドキ感もない。なのに、新幹線の中で時間も忘れ夢中で読みました。きっとすごい実力のある書き手さんなのでしょうね。もう一冊読んでみようと思います。

  • 佐藤正午の身の上話を読みました。

    ヒロイン、古川ミチルは地方都市に住む23歳の書店員です。
    ミチルは「土手の柳は風まかせ」という評価の通り、自己主張も少なく周囲に流されやすい性格です。

    物語の冒頭、ミチルは不倫相手の豊増を追って東京に行ってしまいます。
    強い主張もなく流されるままに東京に来てしまったミチルは、子供の頃からの知人、竹井を頼ってそのマンションに転がり込みます。
    そして、高額当選の宝くじを入手してしまったところから、彼女の運命が狂いだすのでした。
    高額のお金を持っているという意識が、彼女を追い詰めていきます。

    ところで、終盤物語が急展開するところで竹井が重要な役回りを担うのですが、この人物の得体の知れなさは怖いと思いました。

    人々は宝くじを気軽に買いますが、運良く(運悪く?)高額当選してしまった場合には、当選者には厳しい試練が待っていて、最悪の場合は身の破滅もありそうだなあ、と思ったのでした。

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著者プロフィール

1955年長崎県佐世保市生まれ。『永遠の1/2』ですばる文学賞、『鳩の撃退法』で山田風太郎賞受賞。おもな著作に『リボルバー』『Y』『ジャンプ』など。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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