おさがしの本は (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 939
レビュー : 126
  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334763220

作品紹介・あらすじ

和久山隆彦の職場は図書館のレファレンス・カウンター。利用者の依頼で本を探し出すのが仕事だ。だが、行政や利用者への不満から、無力感に苛まれる日々を送っていた。ある日、財政難による図書館廃止が噂され、和久山の心に仕事への情熱が再びわき上がってくる…。様々な本を探索するうちに、その豊かな世界に改めて気づいた青年が再生していく連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • この作品は、入職して七年の図書館員でレファレンス・カウンターに勤める、和久山隆彦が利用者らの「おさがしの本」を見つけ出す連作短編集です。

    作品内で「本」が重要な要素となるミステリーはビブリオ・ミステリーと呼ばれるそうです。それらの中にはこの作品のように図書館を舞台にした作品も少なくないそうです。

    第一話「図書館ではお静かに」は森林太郎をシンリンタロウと読む短大国文科の女子学生に、森鴎外の本名だとうんちくを語り、説教めいたことをしてしまいますが、最後には意外な事実が判明します。
    第二話は「赤い富士山」小学5年生の時に赤い富士山が表紙に描いてある本を置き忘れたから返してほしいと初老の男性が訪ねてきます。「赤い富士山」の絵の本とは何か?同僚の藤崎沙理と北斎の絵ではないかとか、太宰治の『富嶽百景』ではないかなどと推理していきますが、果たして真相は?
    第三話「図書館滅ぶべし」では新任の副館長が「図書館というのははたしてN市にほんとうに必要なのだろうか」と言い無理難題を隆彦らに出題します。
    そして第四話「ハヤカワの本」第五話「最後の仕事」へと、ストーリーは本探しをしながら図書館の存続問題となっていき、隆彦は図書館の存続のために演説をするという展開へと発展していきます。

    図書館の本探しは大変面白く、もっと続きが読みたいところでした。
    巻末の解説で、書評ライターの小池啓介さんが、ビブリオ・ミステリーで図書館を舞台にした作品を何冊か紹介されているので、そちらも是非読んでみたいと思っています。

    • やまさん
      まことさん
      こんにちは。
      いいね!有難うございます。
      アメリカ映画「パリの恋人」1957 のポスターで久々にオードリー・ヘップバーンを...
      まことさん
      こんにちは。
      いいね!有難うございます。
      アメリカ映画「パリの恋人」1957 のポスターで久々にオードリー・ヘップバーンを見ました。
      感激です。
      やま
      2019/12/01
    • まことさん
      やまさん♪こんにちは(*^^*)
      こちらこそ、ありがとうございます。
      オードーリー・ヘップバーンは『ローマの休日』『麗しのサブリナ』『暗...
      やまさん♪こんにちは(*^^*)
      こちらこそ、ありがとうございます。
      オードーリー・ヘップバーンは『ローマの休日』『麗しのサブリナ』『暗くなるまで待って』?(タイトルがちょっとあやふや)などを観たと思います。『パリの恋人』は観ていないです。素敵な女性ですよね!
      2019/12/01
  • 幼い頃からの本好きで、希望していた市立図書館のレファレンスカウンターに勤務するまでになった和久山。
    しかし現実の業務を日々こなすうち、利用者や行政への不満、そしていつしか融通のきかないお役所仕事に徹するようになってしまっていた自分にも嫌気がさしていた。

    そこに、異例のタイミングで副館長として赴任してきた潟田は、なんと就任の挨拶に『図書館不要論』を堂々と展開したのだ!
    やがて館長となった潟田は、何故かやたらと和久田にからんでくるのだが…


    門井慶喜さん、初読。
    『銀河鉄道の父』を読んでみたくて著者名を気にしていたら、図書館の棚にこのタイトルが。
    お、まさに『おさがしの本』かも?

    レファレンスカウンターに持ち込まれる難題を和久田が鮮やかに解き明かすミステリかと思い、実際最初の一編はそんな感じ。
    さてはこの女子大生がまた難問を持ち込むのかと思ったらそうではなく…
    最後は、和久田は「図書館の外」に飛び出して新しい活躍の場を得るという、予想外の展開。

    何より、はじめは和久田の悶々としている姿が、ただお仕事3年目のモヤモヤにハマって、自分は専門知識があるが…と見下している若造に見えてイラッとしたけれど、潟田の登場から俄然面白くなった。
    潟田という、大人の鉄壁の理屈をまとった読書家に挑むことで、和久田が逆に大人風の鎧を脱ぎ捨てて、いい意味で青臭さを取り戻していく。
    単純なお仕事小説でも、日常ミステリでもない、“初心にかえる成長物語”になっていた。

    もう何冊か読んでみたい。


    ところで、解説にあった“図書館の物語”にもまだ未読のものもあるけれど…
    私のブクログの本棚のなかでは、
    『図書室の秘密』ジョー・ウォルトン
    『図書館の魔女』高田大介
    『叡智の図書館と十の謎』多崎礼
    なんていかがでしょう?

  • 某市入職7年、市立図書館の調査相談課に配属されて3年の和久山隆彦は如何にも融通の利かない仕事一辺倒の独身男性。彼を取り巻く本が主役みたいな5編のリレー小説だけどけっこう洒落てる。
    各編 甲乙付け難いけど「赤い富士山」が良かったかなぁ。さすがに門井慶喜さんの作品、ちりばめられた書物に纏わる蘊蓄が知的好奇心を擽る♪
    冴えない和久山さんが だんだんキリリと見えてくるのが楽しいね。

  •  図書館のレファレンスカウンターの職員を主人公とした連作短編集。

     本の知識をはじめ様々な雑学を話の中に織り込んでの目的の本を探す過程が読んでいて楽しかったです。本来ならミステリーにすることのない本探しの過程を、見事ミステリーに昇華させた著者の門井さんの目の付け所がいいのだろうなあ、と思います。

     それだけでなく、連作の後半は主人公の勤める図書館の存続問題が持ち上がってきて図書館の存在意義とはなんなのか、という問題も問いかけられます。これに対する主人公の回答もよかったなあ、と思います。

     自分がよくいく図書館はこの本の図書館ほど大きいわけでもなく、レファレンスカウンターなんてしゃれたものもないのですが、こういう本を読むとすべての図書館員さんに感謝の気持ちがわいてきました。お金の問題とかいろいろあるけどやっぱり図書館は必要です!

  • うーん。図書館と本への愛に溢れた本に関するミステリ、または池井戸潤みたいな図書館を守るため戦う男のビジネスロマン、みたいな感じか。
    図書館のことを調べて書いてはいるのよね。
    でも、司書は借りている人の情報をP17のようには漏らしません。
    1話目、NDLは探さないの?と大いに疑問。
    2話目も、図書館は蔵書点検してるからありえない。当時(データベースがなかった時代)であれば原簿があり、原簿にない本は図書館の本ではない。図書館の本なら受け入れ印がある。あと、本当に児童書が好きな人は、ミッフィーじゃなくてうさこちゃんって言う人が多いです。石井桃子さんを尊敬しているので。
    3話目も、すぐアンパンマンかバーバパパだと思った。理由は地位の高い教養あるオジサンが出した問題なんだから、本人に相応しくなさそうな本だろう。さらに喃語で発音できる本とくれば、どっちかだろうよ、と。(バーバパパの方が発音はしやすい。アンパンマンは、パンパンマンになりやすい。)もちろん作者はアンパンマンありきで書いたんだろうけど、そこに至るまでの推理がかったるい。ここは児童書担当の人に訊いた方がよい。
    あと最終話の紅茶の出がらしで財をなしたエピソードは『日本永代蔵』の「茶の十徳も一度に皆」ですね。
    この本が図書館を知らない人に面白いのか、よくわからない。
    こういう熱意と能力のある若い司書なんて、公立図書館には、ほとんどいません。なぜならどこも指定管理になり、館長以外は業者から雇われた非正規労働者だから。能力があっても活かされないし低賃金です。コロナで給与がガクッと減って、皆不安でいっぱいだろう。
    この本みたいに他の施設の方が大事だから図書館を潰せという議員は実際にはいないが、指定管理で安くあげようとした結果とんでもないことになっているところはある。この本でも郷土資料などは役所にあればいいと言う人物が出てくるが、保存すればいいのではなく、管理・分類して、利用できるようにするのが図書館の仕事なんだから、主人公もそこはちゃんと言わないと。
    あと、レファレンスサービスは、本を探し出すことだけではないからね。
    描かれている図書館像がちょっと古いなあと思わざるを得なかった。

  • 目次
    ・図書館ではお静かに
    ・赤い富士山
    ・図書館滅ぶべし
    ・ハヤカワの本
    ・最後の仕事

    初めての門井慶喜でした。
    時代小説作家だと勘違いしていました。
    だから図書館の仕事について、本質的に理解されていることに驚きました。
    作家に対して失礼ですね。

    主人公は公立の図書館でレファレンスの仕事をしています。
    そこへ、課題のレポートを作成するために林森太郎の『日本文学史』を探す女子大生が現れます。
    主人公の和久山は”林森太郎”ではなく”森林太郎”ではないか?と確認します。
    (女子大生は、”もりりん”なんて変な苗字!と言いますが…国文学を勉強していてこの明治の文豪の本名を知らないのかと脱力したのは私です)

    結局探している本は存在しないのですが、その訳は本書を読んでいただくとして、「(本がないというのなら)どうすればいいでしょう」とあくまでも人任せの彼女に和久山は
    ”勉強するのは君自身。しかし勉強のための資料探しに話をかぎるなら協力を惜しまない。それがレファレンス・カウンター。”
    と言います。

    そう。
    レファレンス・カウンターが図書館の肝と言ってもいいくらい、大事な業務であることはあまり知られていません。

    しかし財政難を理由に市立図書館を閉鎖しようという動きが持ち上がります。
    救急医療センターや市営住宅、ごみ処理施設の整備など、市にはやらなければならないことがたくさんあるのに、無料の貸本屋のようなことを、どうして市のお金を使ってやらなければならないのか。
    必要な資料はネット検索でいくらでも調べられるのだから、図書館はもう不要だろう。

    ”図書館にはレファレンス・カウンターがあり、そこには人間がいるんです。コンピューターには絶対代わりの務まらない、血の通った人間が。そうしてその点こそ、図書館という地味な施設の、レンタルショップや貸本屋とは決定的に違う点なのです。”

    日々本に触れている本の専門職だから見つけられる資料というのが、確かにあるんです。
    それは学校の勉強に使うものだけではなく、子どもの頃に好きだった本を不確かな記憶をもとに探し出したり、趣味を深めたり興味の幅を広げるための本を紹介してくれたり。
    人の心に寄り添ったアドバイスができるのです。

    あともう1点。
    資料の保存・管理というのも図書館の大事な業務のひとつで、それについての言及がなかったのが残念でしたが、なせ図書館が必要なのか、市議会で参考人として和久山が主張したことだけでも、図書館不要論者には読んでいただきたいです。
    行政とはそういうものなので。
    本の貸し出しだけが図書館の仕事じゃないんだぞ!っていうことを書いてくれたことだけで、嬉しくて舞い上がっちゃいました。
    図書館司書でも何でもないですが。

    でも、ここの短篇としては図書館不要論とは無関係に「赤い富士山」と「ハヤカワの本」が面白かった。

    「ハヤカワの本」というタイトルから早川書房を想起するようにミスリードしているところまではわかりましたが、そこまでするか!という愛書家の世界が深すぎる。
    「赤い富士山」も、コンピュータでは絶対に辿りつかない富士山への着地が素晴らしい。

    図書館不要論筆頭の図書館長・潟田の人となりが謎のままというのが気になるけれど(なぜあれほどまでに図書に造詣が深いのか)、本探しのワクワクを十分堪能させていただきました。

  • 内容がとても渋い。レファレンスカウンターの仕事はある意味で探偵みたいなものだなぁと感じました。短い話が多くてサクサク読めますが、内容が渋すぎます。解決したところでその本を知っているわけでもなく、爽快感は薄め。でも答えに行き着くまでの過程や、意外にも役人的な図書館員の姿の描写なんかが興味深くて、読みやすさとコッテリ感がちょっとクセになる感じでした。
    先に、姉妹編の小説あります。を読んでいたので、和久山さんと例の彼女とのアッサリした関係がなんだか良かったです。最初の大学生とのやりとりも楽しかったのですが、和久山さんは不思議と応援したくなる有能な堅物さんです。

  • へえ〜〜〜〜。っていう感嘆の気持ち。図書館好きにはたまらないけど、そうじゃない人にはちょっと退屈かな。私は興味深く読んだ。

  • 図書館の職員さんはただの公務員さんなんだ、という事実になんとなく変な感じがしながら読み進めました。
    ただの仕事の一部として事務的に作業をこなしているような人も多い中、この作品の主人公たちのように親身になって、温かみを持って一生懸命対応してくれる方がいるのは嬉しいことです。

    この本を読んでから、図書館で本を借りるときには職員さんとちゃんと目を合わせて会話することを心がけるようになりました。

    公務員のもどかしさと、ちょっとした痛快さを味わいたい方にお勧めの1冊☆

  • 題名と裏書で興味を持ち読んでみましたが、
    面白くも無くつまらなくもないというのが正直な感想。
    会話文が多くて、ライトノベルに近い感覚で読みました。

    主人公が、小説の登場人物としては魅力に欠けている気がします。
    不器用とか堅物とか、反骨精神があるなどの表現はあるものの、なんだか薄っぺらい。
    財政難による図書館廃止は是か否かを問うところまで話が発展したのは一番の見せ場かと思ったのですが、
    結局、話をどこにもって行きたいのか不明なままで、
    宙ぶらりんな印象が残ってしまいました。

    図書館や本についての薀蓄が多かったのは良かったのですが、
    説明が長いうえに小難しく描かれ、謎を解く過程に面白みが少なく、
    答えがわかってもスッキリした感じを味わえなかったのが残念です。

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年「キッドナッパーズ」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。16年『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年、咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年『銀河鉄道の父』で直木賞受賞。他の作品に『東京帝大叡古教授』『家康、江戸を建てる』『屋根をかける人』『自由は死せず』『東京、はじまる』などがある。

「2020年 『銀閣の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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